【風俗トラブル】出張先・旅行先の店でトラブル|東京に戻ってからの交渉
この記事は、2023年7月施行の刑法改正(不同意性交等罪の新設)と、2025年6月施行の拘禁刑への一本化を反映した内容です。個別の事情によって結論は変わりますので、具体的な判断はご相談のうえで行ってください。
風俗店を利用した後、店から「本番行為があった」と告げられ、罰金や示談金といった名目で金銭を求められることがあります。家族や勤務先に知られたくないという思いから、まずは自分で店とやり取りをして収めたいと考える方も少なくありません。
ご本人が直接対応すること自体は禁止されていませんし、事案によっては自分で話をまとめられる場合もあります。ただ、最初の数回のやり取りで口にしたことや署名した書面は、後から見直すことが難しくなりがちです。この記事では、店と連絡を取る前に手元で確認しておきたい8つの項目と、弁護士への相談に切り替えたほうがよい目安を整理します。
自分で動く前に押さえておきたい前提
店が使う「罰金」という言葉は、刑事裁判で科される刑罰としての罰金とは別のものです。私人である店が刑罰を科すことはできず、法律上は、店の規約に基づく違約金か、損害賠償(キャストへの慰謝料を含む)として扱えるかを考えることになります。規約への同意があったとしても、金額が実際の損害と比べて著しく高い場合には、公序良俗(民法90条)に照らして全部または一部の効力が否定されることがあります。この点は「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないでも解説しています。
刑事面では、二つの場面を分けて考える必要があります。キャストとの合意のうえで性交に至った場合、売春防止法は売春をした当事者や客を処罰する規定を置いていないため、客がそのことだけで処罰されることは通常ありません。一方で、キャストが「同意していなかった」と主張している場合には、不同意性交等罪(刑法177条、5年以上の有期拘禁刑)の成否が問題になります。どちらの主張が出ているかによって、自分で動いてよい範囲は大きく変わります(本番があった場合、処罰されるのは誰か|客・嬢・店の責任の違い)。
自分で動く前に確認したい8項目
次の8つの項目は、店と連絡を取る前に紙やメモに書き出しておくと整理しやすくなります。すべてに答えが出なくても構いません。答えの出ない項目が残ること自体が、相談に切り替えるかどうかを考える材料になります。
確認1 請求しているのは誰か
連絡をしてきたのが店の担当者なのか、キャスト本人なのか、キャストの知人を名乗る人物なのかを確認します。キャストへの慰謝料を店が代わりに受け取ると言っている場合、その合意がキャスト本人にも及ぶのかは別に確かめる必要があります。店とだけ合意しても、後でキャスト本人から別の請求や被害届が出されるおそれが残るためです。店が報酬を得る目的でキャストの代わりに交渉を担う点については、弁護士法との関係が問題になることもあります(店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点)。
確認2 請求の名目と金額の根拠
「罰金」「違約金」「示談金」「慰謝料」「迷惑料」など、どの名目で、何を根拠に請求されているかを確認します。店のホームページや受付時の説明に「本番行為は罰金100万円」といった表示があったか、利用の際にその規約に同意する手続があったかも、後で金額を検討するときの手がかりになります。表示があったからといって、その金額をそのまま支払う義務が当然に生じるとは限りません(誓約書の「罰金100万円」は本当に払う義務がある?法的効力を検証)。
確認3 行為の経緯と、相手の主張との食い違い
どのような流れで行為に至ったのか、キャストの言葉や反応はどうだったのかを、自分の記憶に沿って時系列で書き出しておきます。そのうえで、相手が「同意していない」と言っているのか、「店のルールに違反した」と言っているだけなのかを区別します。前者であれば刑事事件に発展する可能性を含むため、ご本人が経緯を説明する言葉の一つひとつが重くなります。謝罪の気持ちから、事実と異なる内容まで認めてしまわないよう注意が必要です(本番を認める発言をしてしまった後にできること|自認の撤回と限界)。
確認4 すでに渡したもの・書いたもの
その場で身分証を見せた、またはコピーを取られた、念書や示談書に署名した、謝罪の様子を動画で撮影された、といった事情がないかを確認します。書面に署名した場合、手元に控えや写真が残っているかどうかで、その後の検討のしやすさが変わります。内容を覚えていない書面がある場合は、自分で交渉を始める前に、その扱いを整理しておくことをおすすめします(店が用意した示談書にサインする危険性|宥恕条項・清算条項の落とし穴)。
確認5 相手が把握している個人情報の範囲
店が知っているのは電話番号だけなのか、本名・住所・勤務先・家族の連絡先まで知られているのかを確認します。予約時に伝えた情報、身分証に記載されていた情報、会話の中で話した勤務先などを振り返ってみてください。相手が把握している情報が多いほど、「家族に知らせる」「会社に連絡する」といった言葉が交渉の圧力として使われやすくなります(【風俗トラブル】予約時に伝えた本名・電話番号はどう使われるのか)。
確認6 支払期限と支払方法の指定
「今日中に」「明日までに」といった期限が切られているか、現金の手渡し、個人名義の口座への振込などの方法を指定されていないかを確認します。期限が短く設定されていても、その場で支払いを決める必要はありません。振込先が店の名義でない場合は、受け取る人物と合意の相手が一致しているかも確かめておく必要があります(【風俗トラブル】支払期限を切られた|『今日中に』に応じないための伝え方)。
確認7 警察が関わっているか、関わる可能性があるか
その場に警察官が来たか、警察署から連絡があったか、店やキャストから「被害届を出す」「警察に相談した」と告げられているかを確認します。警察がすでに関わっている場合、店との金銭のやり取りだけで問題が終わるとは限りません。示談が成立しても刑事手続が直ちに止まるわけではないため、刑事面の見通しとあわせて考える必要があります(【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間)。
確認8 合意した場合に書面へ何を残せるか
金銭を支払って解決する場合、その合意を書面にできるか、誰が署名するのかを確認します。一般に、風俗トラブルの合意書面では、これ以上の請求をしないこと(清算条項)、被害届を出さないこと(提出済みであれば取り下げること)、口外しないこと、今後連絡を取らないこと、身分証の写しや動画を削除することなどが検討されます。キャスト本人の署名が得られるのか、原本や控えを受け取れるのかも、自分で進める場合に見落としやすい点です(風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かない)。
8項目を一覧で確認する
書き出した内容を見直すときは、次の表のように「自分で進めにくくなる例」に当てはまるものがないかを確かめておくと、次の判断につなげやすくなります。
| 確認項目 | 主に確かめること | 自分で進めにくくなる例 |
|---|---|---|
| 請求しているのは誰か | 店・キャスト本人・第三者のいずれか | 名乗る人物が連絡のたびに替わる |
| 名目と根拠 | 罰金・違約金・示談金などの区別と規約の有無 | 根拠を尋ねても説明がない |
| 経緯と食い違い | 同意の有無が争われているか | 「同意していない」と言われている |
| 渡したもの・書いたもの | 身分証・念書・示談書・動画 | 内容の分からない書面に署名した |
| 相手が知る個人情報 | 本名・住所・勤務先・家族 | 家族や勤務先への連絡をほのめかされた |
| 期限と支払方法 | 期限の長さ・振込先の名義 | 当日中の現金払いを求められている |
| 警察の関与 | 臨場・連絡・被害届の話の有無 | 警察から連絡が来ている |
| 書面に残せる内容 | 清算条項・署名者・控えの交付 | キャスト本人の署名が得られない |
自分で動く場合に避けたい対応
8項目を確認したうえで自分で対応すると決めた場合でも、次の対応は後まで影響が残りやすいため、慎重に考えてください。
- 期限に追われて、一部だけでも先に支払うこと。
- 店が用意した書面に、内容を確かめないまま署名すること。
- 謝罪の文面の中で、事実と異なる点まで認めること。
- 店の事務所など、相手が指定する場所に一人で出向くこと。
- 連絡を一切絶って、相手の動きが分からないままにすること。
一部を支払うと、残りの金額や追加の名目を後から求められるきっかけになることがあります。反対に、連絡を完全に絶ってしまうと、相手が家族や勤務先に連絡する、警察に相談するといった動きに出たときに、その状況を把握しにくくなるおそれがあります。返答する場合も「確認してから連絡します」とだけ伝え、その場で結論を出さないことが一つの方法です。
弁護士への相談に切り替える目安
次のような事情が一つでもある場合は、自分で交渉を続けるよりも、早めに弁護士へ相談することを検討してください。
- キャストから「同意していなかった」と主張されていること。
- 警察から連絡があったこと、または被害届を出すと告げられていること。
- 家族や勤務先に知らせると言われていること。
- 請求額が連絡のたびに変わること、または名目が次々に追加されること。
- 身分証や財布、スマートフォンなどを店に預けたままになっていること。
- すでに支払ったのに、追加の請求を受けていること。
- 交渉の相手が誰なのか、合意が誰に対して効力を持つのかがはっきりしないこと。
弁護士が代理人になると、店との連絡窓口が弁護士に移るため、ご本人が直接店と話す必要はなくなります。請求の根拠や金額を検討したうえで交渉し、合意する場合には清算条項などを含む書面を整えることになります。刑事事件に発展する可能性があるときに、示談の進め方と捜査への対応をあわせて検討できる点も、相談に切り替える意味の一つです。自分で交渉するか任せるかの考え方は、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情でも整理しています。
すでに自分で連絡してしまった場合
この記事を読む前に、すでに店と何度かやり取りをしている方もいると思います。その場合でも、途中から弁護士に交渉を引き継ぐことはできます。これまでのやり取りの内容、送ったメッセージ、受け取った書面は消さずに残しておくと、引き継ぎの際に状況を正確に把握しやすくなります(【風俗トラブル】弁護士に頼む前に自分で連絡してしまった|その後の交渉への影響)。
交渉は自分で進め、合意の書面だけを専門家に確認してもらうという方法もあります。どこまでを自分で担い、どこからを任せるかは、事案の内容に応じて相談しながら決めることができます(示談書の作成だけを弁護士に頼めるか|交渉は自分で進めた場合)。
よくあるご質問
店のホームページに「本番行為は罰金」と書いてあった場合でも、支払わなくてよいのですか
表示があったことは、店と客との間で違約金の合意があったかどうかを考える事情の一つになります。ただし、その金額が実際の損害と比べて著しく高い場合には、全部または一部の効力が否定されることがあります。支払うかどうか、いくらであれば合意できるかは、経緯や相手の主張を踏まえて個別に検討することになります。
店からの電話に出ないままでも問題はありませんか
電話に出る義務があるわけではありません。ただ、まったく応答しないでいると、相手が別の手段で接触しようとすることがあります。すぐに折り返すのが難しい場合は、折り返す前に伝える内容を決めておくか、弁護士に連絡の窓口を任せることを検討してください(【風俗トラブル】帰宅途中に店から着信が続いている|折り返す前に決めておくこと)。
合意の書面を自分で作っても効力はありますか
当事者が内容を理解したうえで署名した書面であれば、弁護士が作成したものでなくても、合意としての効力が認められ得ます。ただ、清算条項や署名者の範囲が不十分だと、後から追加の請求や別の当事者からの請求を防ぎにくくなります。署名する前に、誰と何を約束する書面なのかを確認しておくことが大切です。
まとめ
本番行為を理由に店から金銭を求められたとき、自分で対応するか迷うのは自然なことです。請求しているのは誰か、何の名目か、相手の主張と自分の記憶はどこで違うのか、警察は関わっているのかといった8つの項目を書き出してみると、自分で進められる範囲と、そうでない部分が見えやすくなります。答えの出ない項目や、相談に切り替える目安に当てはまる事情が見つかった場合は、その段階で状況を専門家に伝えることで、選べる対応の幅を残しやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


