【風俗トラブル】キャストに怪我をさせたと治療費を請求されたら相談前に揃えたい資料と整理メモ|チェックリスト付き

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

本記事は2026年11月時点の法令にもとづいて記載しています。刑罰の表記は、2025年6月施行の改正刑法による「拘禁刑」で統一しています。


風俗店を利用した後に、店やキャストから「プレイ中に怪我をさせられた」「治療費を払ってほしい」と連絡が来ることがあります。身に覚えがある場合もない場合も、突然の請求に戸惑い、言われた金額をすぐに振り込んでしまいたくなるかもしれません。

 ただ、治療費の請求は、怪我の有無や程度、利用中に何があったのかによって、支払うべき範囲が大きく変わります。相談の前に手元の資料と記憶を整理しておくと、弁護士が状況を早く正確に把握でき、取れる手段の検討にもすぐ入れます。この記事では、キャストに怪我をさせたとして治療費を請求された方が、相談前に揃えておきたい資料と、整理メモの作り方をまとめました。最後にチェックリストも付けています。

治療費の請求で、まず押さえておきたい考え方

 資料を集める前に、治療費の請求がどのような仕組みで成り立つのかを簡単に確認しておきます。何を集めればよいかは、この仕組みから逆算すると分かりやすくなります。

請求できるのは「必要かつ相当な範囲」に限られる

 利用中の行為によって相手が怪我をした場合、客側は民法上の不法行為として損害賠償の責任を負うことがあります(民法709条)。ただし、賠償の対象になるのは、実際に生じた怪我と、その治療に必要で相当といえる費用に限られます。治療費のほか、通院の交通費、仕事を休んだ分の休業損害、慰謝料などが請求されることもありますが、それぞれに根拠が必要です。

 たとえば、軽いすり傷で一度受診しただけなのに、数十万円の治療費を求められるといった場合には、請求額と実際の損害が見合っているかを確かめる必要があります。

怪我と因果関係を示すのは、請求する側

 損害賠償を求める側は、怪我があったこと、その怪我が利用中の行為によって生じたこと、損害の額を示す必要があります。そのため、診断書や治療費の領収書など、裏づけとなる資料が示されないまま金額だけを告げられている段階では、すぐに支払いに応じる前に中身を確かめる余地があります。

 ここで大切なのは、こちらが「怪我をさせていない」と証明しなければならないわけではない、という点です。一方で、こちら側にも利用時の状況を説明できる材料があると、話し合いを落ち着いて進めやすくなります。

刑事事件として扱われる可能性もある

 怪我の経緯によっては、刑事事件として扱われる可能性もあります。わざと怪我をさせた場合は傷害罪(刑法204条、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)、不注意による場合は過失傷害罪(刑法209条、30万円以下の罰金または科料)が問題になりえます。過失傷害罪は、被害者の告訴がなければ起訴されない罪です。

 「治療費を払わなければ被害届を出す」と告げられている場合、民事の請求と刑事手続の両方を見据えて対応を考える必要があります。逆に、請求する側が脅すような言葉で支払いを迫っている場合には、その行為が恐喝などにあたる可能性もあるため、やり取りの記録を残しておくことに意味があります。

相談前に揃えたい資料

 ここからは、相談の前に手元で集めておきたい資料を種類ごとに紹介します。すべて揃っていなくても相談はできますので、残っているものから確認してください。

店・キャストとのやり取りの記録

 請求の経緯を示すいちばん基本的な資料です。消してしまうと復元が難しいものもあるため、まずは保存を優先します。

  • 店やキャストから届いたメッセージ(SMS・LINE・メールなど)の画面の保存。
  • 着信履歴(日時・電話番号・回数が分かる画面)。
  • 通話を録音している場合はその音声データ。
  • 店から届いた書面や封筒(消印や差出人の記載を含む)。


 メッセージは、相手の名前や送信日時が表示された状態で画面を保存しておくと、後から経緯をたどりやすくなります。

請求の中身を示す資料

 相手から示された金額の根拠です。見せられただけで受け取っていない場合も、何を見せられたかを書き留めておきます。

  • 請求額と、その内訳(治療費・交通費・休業損害・慰謝料など)が分かるもの。
  • 診断書を見せられた場合は、その写しまたは撮影した画像。
  • 病院の領収書や診療明細書を示された場合は、その写し。
  • 支払期限や振込先の指定があれば、その内容。


 診断書については、日付、医療機関名、傷病名、治療に要する見込み期間が確認のポイントになります。原本を見せてもらえなかった場合や、写真の一部しか送られてこなかった場合も、その事実自体を記録しておいてください。診断書の見方については、【風俗トラブル】キャストの診断書を見せられた|怪我や体調不良を理由にした請求で詳しく解説しています。

利用したときの記録

 利用中に何があったかを説明するための材料です。時間が経つと記憶があいまいになるため、早めに集めておきます。

  • 店名、利用した日時、コース内容、利用時間が分かるもの。
  • 予約時のメッセージや予約サイトの画面。
  • 支払いの記録(クレジットカードの利用明細、領収書など)。
  • ホテルを利用した場合は、ホテル名と入退室の時刻が分かるもの。


書かされた書面や預けた物の記録

 店の事務所などで念書や誓約書に署名した場合、その内容が後の話し合いに影響することがあります。

  • 署名した書面の控えや、撮影した画像。
  • 控えがない場合は、書かされた日時・場所・書面のタイトル・覚えている文言のメモ。
  • 身分証や免許証を撮影された場合は、その事実と撮影された物の種類。
  • 財布やスマートフォン、身分証などを預けた場合は、その内容と預けた相手。


 控えを受け取っていない場合の確かめ方は、【風俗トラブル】店の事務所で書かされた紙の写真を撮っていない|内容を後から確かめる方法にまとめています。

すでに支払ったものの記録

 その場で一部を支払った場合や、後日振り込んだ場合は、その記録も重要です。振込の控え、受け取った領収書、現金で渡した場合は日時・場所・金額・受け取った人のメモを残しておきます。支払い済みの金額があるかどうかで、その後の話し合いの組み立てが変わることがあります。

整理メモに書いておきたいこと

 資料とあわせて、ご自身の記憶を一枚のメモにまとめておくと、相談の時間を有効に使えます。うまくまとめる必要はなく、思い出せる範囲で箇条書きにするだけでも十分です。分からないことは「分からない」と書いておいてください。

項目書いておく内容書くときのポイント
利用の概要店名、日時、場所、コース、利用時間予約記録や明細と照らし合わせて書く
怪我の経緯いつ、どの場面で、何があったとされているか自分の認識と相手の言い分を分けて書く
直後の様子キャストの反応、店への連絡の有無、その場でのやり取り誰が何と言ったかを、言葉どおりに近い形で残す
請求の内容請求額、内訳、支払期限、振込先示された資料があればその種類も書く
相手の言動「警察」「家族」「会社」などへの言及の有無日時と、どの手段で言われたかを添える
自分の対応支払った金額、署名した書面、預けた物控えの有無もあわせて書く
心配していること家族や勤務先に知られたくない、出張が控えているなど優先して避けたいことを順に書く


 「怪我の経緯」については、自分の記憶と相手の主張が食い違っていることも少なくありません。どちらが正しいかをメモの段階で決める必要はなく、それぞれを分けて書いておくことが大切です。身に覚えがない場合の考え方は、【風俗トラブル】キャストに怪我をさせたと言われたが身に覚えがないでも取り上げています。

 また、自分側の記録の作り方全般については、【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料もあわせてご覧ください。

相談前に避けたい行動

 資料を集めている間にも、店やキャストからの連絡が続くことがあります。その間の対応次第で、後の話し合いが難しくなる場合があるため、次のような行動はできるだけ控えてください。

  • 金額の根拠を確かめないまま、全額を振り込むこと。
  • 求められるままに、新たな念書や支払いの約束書に署名すること。
  • キャスト本人に直接連絡して、謝罪や事情の説明をしようとすること。
  • やり取りのメッセージや着信履歴を削除すること。
  • 「怪我をさせた」と認める内容を、口頭やメッセージで繰り返し伝えること。


 怪我をさせてしまったという自覚がある場合、誠意を示したいと考えるのは自然なことです。ただ、謝罪の伝え方や支払いの範囲は、事実関係を整理してから決めても遅くはありません。直接のやり取りを重ねるほど、条件が増えたり、話がこじれたりすることもあります。店との交渉をご自身で進めるか弁護士に任せるかの判断材料は、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情で紹介しています。

弁護士に相談すると何ができるか

 弁護士が代理人になると、店やキャストとの連絡窓口を弁護士に移すことができます。そのうえで、請求の根拠となる資料の提示を求め、治療費として相当な範囲がどこまでかを整理し、示談の条件を交渉します。

 示談をする場合には、支払う金額だけでなく、今後お互いに請求をしないことを確認する条項や、被害届を出さないこと、家族や勤務先に連絡しないことなどを書面に盛り込めるかどうかも検討します。資料と整理メモがそろっていると、こうした検討を相談の段階から具体的に進めやすくなります。

 当事務所が扱ったケースとして、【解決事例】デリヘル利用後にキャストの怪我を主張された男性が、店舗との合意書締結で解決した事例や、【解決事例】酔って転倒しキャストが負傷、治療費等を請求された|解決金約22万円で示談が成立した事例もご参照ください。結果は事案ごとに異なりますが、どのような流れで話し合いが進むのかをイメージする手がかりになります。

相談前のチェックリスト

 最後に、相談の前に確認しておきたい項目をまとめます。チェックが付かない項目があっても相談はできますので、確認できたものから準備してください。

  • 店やキャストとのメッセージ・着信履歴の保存。
  • 請求額と内訳が分かる資料の確保。
  • 見せられた診断書や領収書の写し、または見せられた内容のメモ。
  • 利用した店名・日時・コース・利用時間の確認。
  • 予約記録や支払い記録の保存。
  • 署名した書面の控え、または覚えている内容のメモ。
  • 預けた物や撮影された身分証の有無の確認。
  • すでに支払った金額と、その記録の確保。
  • 怪我の経緯についての、自分の認識と相手の言い分の書き分け。
  • 相手から「警察」「家族」「会社」への言及があったかどうかの確認。
  • 家族や勤務先に知られたくないなど、優先したい事情の整理。


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まとめ

 キャストに怪我をさせたとして治療費を請求された場合でも、支払うべき範囲は、怪我の有無や程度、利用中の経緯によって変わります。請求の根拠となる資料を確かめ、ご自身の記録と記憶を整理しておくことが、落ち着いて対応するための第一歩になります。手元の資料が少ない段階でも、残っているものとメモを持ってご相談いただければ、そこから一緒に状況を整理していきます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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