【男女トラブル】元恋人が配信や動画で私のことを話していたら、止めてもらえる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

本記事は、2026年11月時点の民法、刑法、ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)、情報流通プラットフォーム対処法(2025年4月にプロバイダ責任制限法から改称)などの規定に基づいて解説しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。


「別れた相手がライブ配信で私とのことを話している。名前は出していないけれど、共通の知り合いには誰のことか分かってしまう」。男女間のトラブルのご相談では、このような声を聞くことがあります。反対に、「自分の体験を配信で話しただけなのに、元交際相手から削除しろと言われた。話すこと自体がいけないのか」というご相談を受けることもあります。

 ネット上の被害については、「プラットフォームに削除を申し出る」「投稿者を特定して損害賠償を求める」といった説明がよく見られます。それ自体は誤りではありません。ただ、元恋人の配信や動画の場合は、話しているのが誰かは最初から分かっている、ライブ配信は記録が残らないことがある、すでに公開された動画を消してもらうことと「これからの配信で話さないでもらうこと」とでは使える手段が違う、といった事情があり、一般的な説明だけでは見通しを立てにくいところがあります。

 この記事では、元恋人が配信や動画で自分のことを話している場合に、どのような内容なら法的に止めるよう求められるのか、止めてもらうための手段と順序を、話された側の立場から整理します。交際中の写真や動画そのものを公開された場合は交際中の写真・動画をSNSに晒された|肖像権・プライバシー侵害での削除で、名前を出さずにほのめかす投稿が続く場合は【男女トラブル】元恋人が「匂わせ」の投稿を続けている|どこから違法になるかで解説しています。

元恋人の配信や動画のどんな話が違法になり得るのか

名前を出していなくても「誰のことか分かる」かどうかが分かれ目

元恋人が配信で話す場合、実名までは出さないことが多いと思います。警察に相談した際に「名前が出ていないので難しい」と言われたというご相談もあります。

 ただ、名誉毀損やプライバシー侵害が成立するかどうかは、実名の有無だけでは決まりません。問題になるのは、その話が誰のことかを周りの人が見分けられるかどうか(同定可能性)です。配信者が顔を出していて交際していたことが知られている、勤務先や地元、あだ名、時期などが語られている、といった事情があれば、聞いた人には誰の話か分かることがあります。実名が出ていなくても、配信者を知る人や共通の知人から見て自分のことだと分かる内容であれば、法的な問題として扱える可能性があります。

社会的評価を下げる話・私生活を明かす話・侮辱する言葉

問題になり得る話は、大きく三つに分けられます。

話の内容問題になり得るもの例
社会的評価を下げる事実を語る名誉毀損(刑法230条、民法709条)「浮気をしていた」「お金を返さなかった」「暴力をふるわれた」など
人に知られたくない私生活を明かすプライバシー侵害(民法709条)病歴、妊娠や中絶、性的な事柄、借金、家族の事情、住所や勤務先など
事実を示さずにけなす侮辱(刑法231条、民法709条)容姿や人格をおとしめる言葉、繰り返しの罵倒など


 名誉毀損については「本当のことなら話してもよいのでは」と考える方もいます。しかし、事実を語っても免責されるのは、公共の利害に関する事実で、公益を図る目的があり、真実と証明された場合に限られます(刑法230条の2)。交際中の私的な出来事は、公共の利害に関わるとはいえない場合が多いでしょう。また、プライバシー侵害は、話の内容が本当であっても問題になります。

思い出話や感想にとどまる場合

一方で、元恋人が自分の体験を話すこと自体が、すべて違法になるわけではありません。誰のことか分からない形で「別れて落ち込んだ」と話す程度であれば、法的に止めることを求めるのは難しいでしょう。

 自分のことを話されて不快に感じることと、法的に止めるよう求められることは、必ずしも一致しません。どの発言が、誰に、どのように伝わっているのかを具体的に確かめることが、対応を考える出発点になります。共通の知人に直接悪口を広められている場合については、【男女トラブル】別れた相手が共通の友人に悪口を広めている|名誉毀損になる線もご参照ください。

すでに公開された配信や動画を止めてもらう手段

元恋人本人に削除と今後の言及の中止を求める

匿名の投稿者による書き込みと違い、元恋人の配信では、話しているのが誰かが最初から分かっています。そのため、投稿者を特定する手続を経ずに、本人に削除を求めることができます。

 ただ、ご自身で直接連絡すると、そのやり取りが次の配信の話題にされたり、連絡を取ったこと自体を責められたりすることがあります。弁護士が代理人として通知書を送り、削除と今後の言及の中止を求める形にすれば、ご本人が元恋人とやり取りをせずに済みます。通知を受けた元恋人が、法的な問題になり得ると理解して自ら削除に応じることも少なくありません。

配信サービスへの削除の申出

動画や配信のサービスには、プライバシー侵害や名誉毀損を報告する窓口が設けられています。情報流通プラットフォーム対処法では、利用者の多い大規模なプラットフォーム事業者に、削除の申出を受け付ける窓口を整え、一定の期間内に対応を判断して申出者に通知することが求められるようになりました。

 申出では、どの動画の何分何秒の部分が、どのような理由で権利を侵害しているのかを具体的に示す必要があります。制度の内容は【男女トラブル】情報流通プラットフォーム対処法で削除依頼はどう変わったのかと【男女トラブル】削除申出への回答期限|以前と何が違うのかで、申出に応じてもらえない場合は【不当要求対応】削除を求めたのに応じてもらえない|プラットフォームが動かない場合で解説しています。

裁判所の手続と刑事告訴

本人やプラットフォームが削除に応じない場合は、裁判所に削除を命じる仮処分を申し立てることが考えられます(民事保全法23条2項)。あわせて、精神的な苦痛に対する慰謝料の請求(民法709条、710条)や、名誉を回復するための措置の請求(同法723条)を検討することもあります。

 刑事手続としては、名誉毀損罪や侮辱罪で告訴する方法があります。これらは告訴がなければ起訴されない親告罪で(刑法232条)、告訴は原則として犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります(刑事訴訟法235条)。告訴期間と示談の関係は名誉毀損は親告罪|告訴期間と示談による解決をご覧ください。

 なお、視聴者が配信の一部を切り抜いて別のアカウントで公開している場合は、その投稿者が誰か分からないこともあります。削除と投稿者の特定のどちらを先に進めるかについては、【不当要求対応】拡散された後の順序|削除と発信者特定のどちらを先に動かすかで整理しています。

これからの配信で話さないでもらうには

将来の発言を裁判所に禁じてもらうハードルは高い

すでに公開された動画の削除とは別に、「今後の配信で自分のことを話さないでほしい」という希望を持つ方も多いと思います。

 しかし、まだ行われていない表現をあらかじめ禁じることは、表現の自由との関係で慎重に扱われています。表現行為の事前の差止めは、厳格かつ明確な要件のもとでのみ認められるとされています(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決)。同じ内容の配信が繰り返されているといった事情があれば検討の余地はありますが、裁判所の手続だけで将来の配信を止めることは、一般に容易ではありません。

合意書で「言及しない約束」を取り付ける

そこで現実的な方法になるのが、元恋人との話し合いによって約束を取り付けることです。公開済みの動画の削除に加えて、今後の配信や投稿で相談者について言及しないこと、個人を特定できる情報を公開しないこと、約束に反した場合の違約金などを合意書に定めておけば、将来の配信に対する歯止めになります。

 違約金の額は、あまりに高額にすると無効とされたり減額されたりするおそれがあるため、事案に応じて検討します。合意書の条項の考え方は、手切れ金を払って関係を終わらせる|口外禁止・清算条項付き合意書の作り方でも触れています。

ストーカー規制法が関わる場面

元恋人が、復縁を望む気持ちや、それがかなわなかったことへの恨みから配信を続けている場合には、ストーカー規制法が関わることがあります。同法は、相手の名誉を害する事項を本人が知り得る状態に置くことや、性的羞恥心を害する事項を知り得る状態に置くことを「つきまとい等」に含めています(ストーカー規制法2条1項7号、8号)。

 こうした行為が繰り返されている場合は、警察に相談し、警告(同法4条)や禁止命令(同法5条)を求めることも選択肢になります。ネット上の行為と規制法の関係は【ストーカートラブル】SNSに毎日コメントされる|ネット上の行為は規制法の対象になるかで、配信で住所などを明かされてしまった場合は【ストーカートラブル】ネットに自宅の住所を書き込まれた|削除とその日の安全確保で解説しています。

記録の残し方と、避けたい対応

配信は「消える前に」記録する

ライブ配信はアーカイブが残らないことがあり、動画も相手が気づいて削除すれば見られなくなります。対応を考える前に、まず記録を残しておくことが大切です。

  • 配信や動画のURL、チャンネル名、配信日時。
  • 該当する発言の画面録画と、何分何秒の部分かのメモ。
  • 発言内容の書き起こし。
  • コメント欄で視聴者が自分のことだと気づいている書き込みの画面。
  • 切り抜き動画や、配信を話題にした他の投稿の画面。


 コメント欄の反応は、配信の話が誰のことか周りに伝わっていることを示す材料になります。相手に削除されても困らないよう、記録はご自身の端末と別の保存先の両方に残しておくと安心です。

コメント欄や自分の配信で反論しない

事実と違うことを話されると、すぐに訂正したくなるものです。しかし、配信のコメント欄やご自身のSNSで反論すると、それが次の配信の題材になり、視聴者を巻き込んで話が広がることがあります。反論の内容によっては、ご自身が相手の権利を侵害したと言われるおそれもあります。

 知人に頼んでコメント欄に書き込んでもらったり、元恋人に直接抗議の連絡をしたりすることも、同じ理由で控えたほうがよいでしょう。反論をめぐる考え方は、【ストーカートラブル】相手が「ストーカーされた」とSNSに書いている|反論してよいかもご参照ください。

よくあるご質問


元恋人は「自分の体験を話しているだけ」と言っています。それでも削除を求められますか?

自分の体験であっても、相手が誰か分かる形で、その人の社会的評価を下げる事実や私生活の事柄を語れば、名誉毀損やプライバシー侵害が問題になり得ます。交際は二人の関係ですので、自分の体験だという理由だけで、相手のことを自由に話してよいことにはなりません。ただ、どの発言が問題になるかは内容次第ですので、記録をもとに個別に検討することになります。

ライブ配信でアーカイブが残っていません。今からでも対応できますか?

録画がなくても、配信を見ていた知人の話、ご自身のメモ、視聴者のコメントや切り抜き動画などから、発言の内容を確かめられる場合があります。ただ、証拠が少ないと、法的な手続で発言を示すことは難しくなります。今後の配信に備えて、次回からは録画を残せるようにしておくとよいでしょう。

弁護士から通知を送ると、そのことを配信で話されませんか?

その可能性が全くないとはいえません。通知書では、削除と今後の言及の中止に加えて、通知を受けたこと自体を配信で話さないよう求めるのが一般的です。それでも話された場合は、その配信も新たな記録になり、合意書の取り付けや仮処分、警察への相談といった次の手段を検討する材料になります。

まとめ


  1. 実名が出ていなくても、周りの人から見て誰の話か分かれば、名誉毀損(刑法230条、民法709条)やプライバシー侵害が問題になり得る。
  2. 私的な交際の出来事は公共の利害に関わらないことが多く、本当の話でも免責されにくい(刑法230条の2)。
  3. 元恋人の配信は話し手が分かっているため、投稿者の特定を経ずに、弁護士から削除と言及の中止を求められる。
  4. 本人が応じない場合は、プラットフォームへの削除の申出や、裁判所の仮処分(民事保全法23条2項)を検討する。
  5. 名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪で、告訴は原則として犯人を知った日から6か月以内(刑法232条、刑事訴訟法235条)。
  6. 将来の配信を裁判所に禁じてもらうハードルは高く、言及しない約束と違約金を定めた合意書が現実的な歯止めになる。
  7. 恋愛感情や恨みからの配信が繰り返される場合は、ストーカー規制法(2条1項7号、8号、4条、5条)の対象になり得る。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。弁護士が代理人として元交際相手との窓口になり、配信や動画の削除、今後の言及の中止、合意書の作成まで対応します。サービスの内容は【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご紹介しています。

元恋人の配信や動画で自分のことを話されてお困りの方も、ご自身の配信について元交際相手から削除を求められ、どこまで応じるべきか迷っている方も、記録が残っているうちにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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