【男女トラブル】情報流通プラットフォーム対処法で削除依頼はどう変わったのか

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

インターネット上に自分を傷つける投稿が残っているとき、まず考えるのは「消してもらえないか」ということだと思います。これまでは、運営会社に削除を求めても返事が来ないまま時間が過ぎる、削除されなかった理由が分からない、といった声が多く寄せられていました。2025年4月1日、それまでのプロバイダ責任制限法が「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」に改められ、大規模なプラットフォーム事業者に削除申出への対応手続が義務づけられました。

 ただし、この改正で変わったのは、主に事業者の側の手続です。どのような投稿であれば削除されるのかという判断の物差しそのものが置き換わったわけではありません。ここを取り違えると、「法律が変わったのに削除されなかった」という受け止めになってしまいます。

 この記事では、情プラ法によって削除依頼の何が変わり、何が変わっていないのかを整理したうえで、実際に申し出るときに押さえておきたい点をまとめます。

この記事で扱うこと・扱わないこと

 削除の申出という場面に絞って説明します。投稿者を特定する手続や、その後の損害賠償の見通しは、別の記事で扱います。

  • 扱うこと=情プラ法で新しく設けられた手続と、その使い方。
  • 扱うこと=申出をした後の通知と、結果ごとの次の一手。
  • 扱わないこと=発信者情報開示の具体的な手続の流れ。
  • 扱わないこと=名誉毀損やプライバシー侵害が成立するかどうかの詳しい要件。
  • 扱わないこと=賠償額の目安。


情プラ法で変わった4つのこと


1.申出の窓口が公表されるようになった

 総務省から指定を受けた大規模な事業者には、削除の申出を受け付ける方法を公表する義務があります(法22条)。窓口はインターネットから申し出られること、申出者に過重な負担を課さないこと、受け付けた日時が分かることが求められています。各社の窓口と後述する削除基準は総務省にも届け出られ、まとめて公表されています。

 施行前は、どのフォームから出せばよいのか、そもそも窓口があるのかが分かりにくいサービスもありました。入口が公表された点は、申し出る側にとって分かりやすい変化です。

2.調査が義務づけられ、担当する専門員が置かれた

 申出を受けた事業者は、権利侵害があったかどうかを遅滞なく調査する義務を負います(法23条)。省令では、サービスごとに「侵害情報調査専門員」を選任することとされ、総務省のガイドラインでは、弁護士などの法律専門家や、日本の社会状況について十分な知識と経験のある方を選任することが示されています。

 これまでは、海外の基準をそのまま当てはめた形式的な回答にとどまる例も指摘されていました。少なくとも、日本の事情を踏まえて中身を見る担当者が置かれる建て付けになっています。

3.結果が原則7日以内に通知される

 法25条1項と省令により、事業者は申出を受けた日から7日以内に、送信防止措置(削除など)をとったときはその旨を、とらなかったときはその旨と理由を、申出者に通知することとされています。実際に、大手SNSのなかには、申出から7日以内に判断して申出時のメールアドレスへ通知すると公表しているところがあります。

 法律の条文だけを見ると「14日以内」と書かれているため、14日と説明している解説も見かけますが、条文は上限を定めたもので、実際の期間は省令で7日とされています。待つ目安を立てるうえで、ここは押さえておきたい点です。

4.削除基準と実施状況が公表される

 指定を受けた事業者は、どのような情報を削除するのかという基準を定めて公表し、変更するときは事前に知らせることとされています(法26条)。あわせて、削除の実施状況も年度ごとに公表されます。総務省は、どのような情報が権利侵害や法令違反に当たるのかを例示したガイドラインを定めており、直近では2026年8月にも改定されています。

 申出をする前に基準を読み、自分が問題にしている投稿がどの項目に当たるのかを示せるようになった点は、実務のうえで意味があります。

申し出る側から見た場面情プラ法の下での扱い
どこに申し出ればよいか分からない指定事業者は受付方法を公表し、総務省にも届け出ている
申し出ても返事が来ない原則として申出の日から7日以内に結果が通知される
削除されなかった理由が分からないとらなかった場合はその理由も通知の対象になる
判断の基準が見えない各社が削除基準を公表し、変更するときは事前に知らせる


変わっていないこと


削除が認められる範囲が広がったわけではない

 名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害など、どの権利がどのように侵害されているのかを示す必要がある点は、従来と同じです。事業者は自社が公表した基準に照らして判断しますので、基準に当たらないと判断されれば削除されません。批判的な意見や感想にとどまると評価される投稿は、申出をしても残ることがあります。

申し出れば削除される制度ではない

 事業者に課されたのは、窓口の公表、調査、結果の通知、基準と実施状況の公表という手続についての義務です。個々の投稿を削除する義務が新しく設けられたわけではありません。7日以内に届く通知の内容が「削除しない」であることも当然にあり得ます。

対象は指定された事業者のサービスに限られる

 この仕組みが及ぶのは、総務省が指定した大規模なサービスです。YouTube、X、Instagram、Facebook、Threads、TikTok、Yahoo!知恵袋、LINEオープンチャット、ニコニコ、Amebaブログなどが指定を受けています。一方、個人のブログ、多くの口コミサイトや掲示板、まとめサイトは対象外で、そちらは従来どおりの依頼か、裁判所の手続によることになります。

投稿者を特定する手続とは別

 削除の申出と、発信者情報開示の請求や開示命令の申立ては、目的の異なる別の手続です。投稿が削除されても、書き込んだ相手が分かるわけではありません。通信記録の保存期間には限りがあり、時間が経つほど選べる手が狭まる傾向があります。

投稿された場所申出の受け方
指定を受けた大規模サービス公表された窓口から申出。原則7日以内に結果の通知がある
指定されていないサイト・掲示板運営者の問い合わせ窓口や送信防止措置の依頼書。対応の期限は定められていない
運営者が応じない・連絡先が分からない裁判所への削除の仮処分などを検討する


申出をするときに押さえておきたいこと

 窓口が整えられても、申出の中身が伝わらなければ調査は進みません。順序としては次のように考えると整理しやすくなります。

  1. 先に画面を保存する。URL、投稿の日時、アカウント名、画面全体が分かる形で残す。削除された後では取り直せない。
  2. 投稿を1件ずつ特定する。「このアカウントの投稿すべて」というまとめ方では、調査の対象が定まりにくい。
  3. どの権利がどのように侵害されたのかを書く。事実を述べた投稿なのか意見なのか、事実であればどこが真実と異なるのかを分けて説明する。
  4. 自分のことだと分かる理由を書く。実名が出ていない場合は、勤務先や写真など、読んだ人が結び付けられる事情を示す。
  5. その事業者の削除基準を確認し、どの項目に当たるのかを指摘する。
  6. 求める措置を明確にする。投稿全体の削除か、画像だけの削除かで扱いが変わることがある。
  7. 通知の受け取り先を確認する。申出時のメールアドレスに届く運用があるため、受信できる状態にしておく。


通知が届いた後にどう動くか

 7日以内の通知は、削除の可否を知らせるものであると同時に、次の手続を選ぶための材料でもあります。とくに「削除しない」という通知には理由が記載されますので、その理由に応じて対応を組み立てることになります。

通知の内容次に考えられること
削除された同じ内容の再投稿や転載がないかを確認する。責任を問うことを考える場合は、保存した記録が前提になる
削除しない旨と理由が届いた理由に沿って資料を補い改めて申し出るか、裁判所の仮処分を検討する
一部だけ削除された残った投稿について理由を確かめ、別に手続を検討する
期間内に通知がない・対象外だった窓口とのやり取りを記録に残し、任意の依頼や裁判所の手続へ切り替える


「7日」は2つあることに注意

 情プラ法をめぐる説明では、7日という数字が2か所で出てきます。混同されやすいところですので、分けて理解しておくと見通しを立てやすくなります。

  • 申出者への通知の7日=指定を受けた事業者が、削除したかどうかの結果を申出者に知らせるまでの期間。
  • 発信者への照会の7日=事業者が投稿者に削除してよいか照会し、反論を待つ期間。旧法から続く、事業者が投稿者に対して責任を問われにくくなる仕組み。


 後者は、事業者が投稿者に問い合わせる場面の話です。申出をした側から見ると、事業者の内部で照会が行われている間も、結果の通知そのものは申出の日から数えた期間で届くことになります。

避けておきたい進め方


  • 保存をしないまま削除だけを求める。削除された後は、内容を示す資料が手元に残らなくなる。
  • 投稿者に直接連絡して削除を迫る。やり取りが長引き、別のトラブルにつながることがある。
  • 同じ内容の申出を短い間隔で繰り返す。調査の対象が分かりにくくなり、かえって時間がかかることがある。
  • 事実と評価を混ぜた長い文章で申し出る。どの部分が権利侵害なのかが伝わりにくくなる。
  • 通知が届いた後、そのまま時間を置く。投稿者の特定を考える場合、記録の保存期間の影響を受ける。


よくあるご質問


削除されると、投稿した人は分からなくなりますか

 削除と特定は別の手続ですので、削除されたこと自体が特定を妨げるわけではありません。ただし、手元に投稿の内容を示す資料がないと、その後の手続で説明が難しくなります。画面の保存を先に済ませておくことをおすすめします。

弁護士に依頼しないと申し出られませんか

 ご本人でも申し出ることができます。未成年の方であれば保護者の方が、また代理人として弁護士が申し出ることもできます。申出の方法が分からない場合の相談先として、総務省の支援事業である違法・有害情報相談センターがウェブフォームで相談を受け付けています。

投稿は消えましたが、検索結果に残っています

 投稿そのものの削除と、検索サービスでの表示は別の事業者が扱っています。それぞれの窓口に分けて求めることになり、判断の枠組みも同じではありません。

まとめ


  1. 情プラ法で変わったのは、窓口の公表、調査、7日以内の結果通知、基準と実施状況の公表という手続の部分。
  2. 削除が認められるかどうかの判断の物差しは、従来と大きく変わっていない。
  3. 仕組みが及ぶのは総務省が指定した大規模サービスで、それ以外は従来の依頼か裁判所の手続による。
  4. 申出は、保存を先に済ませ、投稿を1件ずつ特定し、どの権利がどう侵害されたのかを示すことが要になる。
  5. 7日以内に届く通知は、次の手続を選ぶための材料として使う。
  6. 削除と発信者情報開示は別の手続で、記録の保存期間の影響を受ける点に注意する。


ご相談について

 削除の申出は、ご本人でも進められる手続です。一方で、どの投稿を対象にするか、どの権利の侵害として構成するか、削除と並行して投稿者の特定を目指すかどうかは、事案によって判断が分かれます。通知として届いた「削除しない理由」をどう読むかも、次の一手を左右します。

 当事務所では、投稿の内容や経緯をうかがったうえで、削除の申出、裁判所の手続、投稿者の特定といった選択肢を整理し、進め方をご提案しています。すでに申出をして結果の通知が届いた段階でのご相談も承っています。お一人で抱え込まず、記録が残っているうちにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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