【ストーカートラブル】相手に弁護士がついた|相手方の代理人との話し方
本記事は、刑法(名誉毀損罪・侮辱罪)、民法、ストーカー行為等の規制等に関する法律(令和7年法律第83号による改正後のもの)、情報流通プラットフォーム対処法をもとに、2026年10月時点の内容で記載しています。個別の事案での判断は、投稿の内容や前後の経緯によって変わります。
「別れた相手がSNSに『ストーカーされていた』と書いている。共通の知人も見ているので、事実と違うと書き返したい」。ストーカーだと言われている側からのご相談では、このようなお話を伺うことがあります。一方で、投稿した側からは「怖かった体験を書いただけなのに、名誉毀損だと言われた」というご相談もあり、同じ投稿が双方からまったく違って見えていることも少なくありません。
「事実と異なる投稿は名誉毀損になり得る」「反論するのは自由」という説明は、それぞれ誤りではありません。ただ、ストーカーだと言われている立場で反論する場合には、反論の内容や方法によって、その反論自体がストーカー規制法上の「つきまとい等」や名誉毀損として扱われるおそれがあるという、この場面に特有の事情があります。
この記事では、相手から「ストーカーされた」とSNSに書かれた側に絞って、その投稿が名誉毀損に当たるかの見方、反論の方法ごとのリスク、反論以外に取れる手段を整理します。SNS上の書き込みがストーカー規制法の対象になる場合については【ストーカートラブル】SNSに毎日コメントされる|ネット上の行為は規制法の対象になるかで、正当な用件の連絡がストーカーと受け取られる場面については【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で取り上げていますので、あわせてご覧ください。
反論する前に、まず投稿の中身を確かめる
反論するかどうかを考える前に、相手が何を、どのように書いているのかを落ち着いて確認しておくことが大切です。同じ「ストーカー」という言葉が使われていても、法的な評価は書き方によって変わります。
事実を書いているのか、感想を書いているのか
「ストーカーされた」「家まで来られた」といった書き方は、具体的な出来事があったことを示すものとして、事実の摘示と評価されやすい表現です。公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した場合には、名誉毀損罪が問題になります(刑法230条1項)。条文上、この罪は摘示した事実が本当かどうかにかかわらず成立し得るとされています。
これに対し、「気持ち悪い人だった」「関わらない方がいい」といった書き方は、事実というより評価や感想に近く、侮辱罪(同法231条)の問題として検討されることが多いでしょう。どちらに当たるかによって、相手側が反論として主張できる内容も変わってきます。
あなたのことだと分かる書き方か
名誉毀損が成立するには、投稿の対象があなたであると読み手に分かることが前提になります。実名が書かれていなくても、共通の知人が読めばあなたのことだと分かる書き方であれば、この点は満たされ得ます。
反対に、誰のことか分からない書き方であれば、あなたが「それは私のことだが事実ではない」と名乗り出ることで、かえって周囲に投稿とあなたを結び付けてしまうことがあります。反論を考える際には、この点も見落とさないようにしたいところです。
書かれた内容に、心当たりのある部分はあるか
つらい作業ですが、投稿の内容に事実と重なる部分がないかも確認しておく必要があります。何度も連絡をした、自宅の近くに行った、警察から連絡があったなど、一部でも事実に当たる部分があると、相手側の主張の見通しが変わるためです。
名誉毀損罪では、公共の利害に関する事実について、公益を図る目的で、真実であることが証明された場合には処罰されません(同法230条の2第1項)。さらに、起訴される前の人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなされます(同条2項)。ストーカー行為をされたという投稿は、この「犯罪行為に関する事実」に当たり得るものです。もっとも、私的な恨みを晴らす目的が主であれば公益目的は否定されやすく、真実であることや、真実と信じたことに相当の理由があることの立証も相手側に求められます。インターネット上の個人の投稿だからといって、この相当の理由の判断基準が緩められるわけではないとした最高裁判所の判断もあります(最決平成22年3月15日)。
投稿の内容がすべて事実と異なるのか、一部は事実と重なるのかによって、取れる手段も、反論に伴うリスクも大きく変わります。この整理は、ご自身だけで行うより、第三者の目を通した方が正確になります。
反論が「つきまとい等」として扱われるおそれ
ストーカーだと言われている立場での反論には、一般的な名誉毀損の場面にはない注意点があります。相手に向けた反論そのものが、ストーカー規制法の問題として扱われる可能性があることです。
相手の投稿へのリプライやコメントは「電子メールの送信等」に当たり得る
ストーカー規制法は、相手が情報を公開しているページに付随する機能を使って、その人に情報を伝える行為を「電子メールの送信等」に含めています(ストーカー規制法2条2項2号)。相手の投稿へのリプライやコメントは、これに当たる可能性があります。そして、拒まれたにもかかわらず連続して電子メールの送信等をする行為は、「つきまとい等」の一つとされています(同法2条1項5号)。
ブロックされた後に別のアカウントから反論を書き込んだり、相手の投稿に何度も訂正を求めるコメントを付けたりすることは、内容が正当な反論であっても、拒絶を認識したうえでの連続した送信と評価されるおそれがあります。相手の投稿を確認し続けること自体の問題については、【男女トラブル】相手のSNSを見続けてしまう|自分の行動が問題になる場面で取り上げています。
自分のアカウントでの反論でも、内容によっては問題になる
自分のアカウントに投稿する場合は、相手のページへの送信ではないため、5号の問題にはなりにくいと考えられます。ただし、規制法は、相手の名誉を害する事項を「知り得る状態に置く」行為も対象にしています(同法2条1項7号)。共通の知人が見ている場で、相手の名誉を害する内容を繰り返し投稿すれば、この観点から検討される余地があります。
規制法の対象は、好意の感情や、それが満たされなかったことによる恨みの感情から行われる行為です。元交際相手や、好意を伝えたことのある相手との間で起きている場合には、反論の投稿もこうした感情から行われたものと受け取られやすい面があることは、意識しておく必要があります。
すでに警告や禁止命令が出ている場合
警察から警告を受けている場合や、公安委員会から禁止命令が出ている場合には、反論の方法はさらに慎重に考える必要があります。禁止命令に反してつきまとい等を行えば、罰則の対象になります。DMで投稿の削除を求める、リプライで訂正を求めるといった行為も、内容にかかわらず避けるべき場面があります。警告と処分の関係については【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合を、1回の連絡がどう扱われるかについては連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いをご参照ください。
反論の内容が正しいかどうかとは別に、「相手に向けて」「繰り返し」行われると、それ自体が規制法上の問題になり得るという点が、この場面でもっとも注意したいところです。
反論の書き方次第で、こちらが名誉毀損や侮辱に問われることも
事実と異なる投稿をされた側であっても、反論の書き方によっては、今度はあなたが名誉毀損や侮辱の責任を問われる立場になり得ます。
「嘘つき」「虚言癖がある」といった言い返し
相手の投稿を否定するつもりで「あの人は嘘つきだ」「前から虚言癖があった」と書くと、相手の社会的評価を下げる表現として、名誉毀損や侮辱の問題が生じ得ます。言われたことへの反論であっても、その点だけで責任が否定されるわけではありません。投稿によって刑事と民事の両面で何が問題になるかは、SNSの投稿で名誉毀損と言われた|刑事と民事の違いで整理しています。
やり取りのスクリーンショットや交際中の事情を載せる
自分の正しさを示そうとして、相手とのLINEのやり取りや、交際中の私的な出来事を投稿することも考えられます。しかし、相手のプライバシーに関わる情報を公開することは、名誉毀損とは別に、プライバシー侵害として損害賠償の対象になり得ます(民法709条・710条)。証拠として意味のある資料ほど、SNSではなく、手続の中で使うべきものです。
知人による拡散や引用にも気を配る
あなたを擁護しようとした知人が相手の投稿を引用して批判したり、あなたの反論を拡散したりすることもあります。拡散行為にも責任が生じ得ることは、引用リポスト・いいねは名誉毀損になるのか|拡散行為の責任で取り上げています。周囲の方には、気持ちに感謝しつつ、投稿は控えてもらうようお願いしておく方が安全です。
反論の目的は「周囲の誤解を解くこと」であり、「相手を言い負かすこと」ではないと意識しておくと、書いてよい内容とそうでない内容の線が引きやすくなります。
反論の方法ごとのリスクを比べる
反論を考えている場合、どの方法を選ぶかによって、生じ得る問題が異なります。主な方法と注意点を整理すると、次のとおりです。
| 反論の方法 | 起こり得ること | 注意しておきたい点 |
|---|---|---|
| 相手の投稿へのリプライ・コメント | 規制法上の「電子メールの送信等」に当たり得る | 拒まれた後に繰り返すと、つきまとい等の問題が生じやすい |
| 引用リポストでの反論 | 元の投稿をさらに多くの人に広める | 相手に通知が届くことがあり、拡散範囲を自分で広げてしまう |
| DMで削除や訂正を求める | 相手に直接向けた連絡になる | 拒まれた後や警告を受けた後は避ける |
| 自分のアカウントで相手を名指しして反論 | 内容によっては名誉毀損・侮辱や、規制法7号の問題になり得る | 相手の人格や私生活に触れない |
| 名指しせず、事実と異なる旨だけを書く | 相手への到達や評価の低下は比較的小さい | かえって注目を集め、投稿とあなたを結び付けることがある |
| 弁護士を通じて削除や訂正を求める | 代理人からの正式な連絡として扱われる | 費用と一定の時間がかかる |
書くとすれば、どのような内容にとどめるか
それでも周囲への説明として何か書いておきたい場合は、次のような点を意識して、内容を最小限にとどめることをおすすめします。
- 相手の名前やアカウントを出さず、相手の投稿にもリプライや引用をしない。
- 相手の人格、私生活、交際中の出来事には触れない。
- 「事実と異なる内容が投稿されているため、しかるべき方法で対応します」といった程度の記載にとどめる。
- 感情的な言葉や、相手を責める表現を使わない。
- 投稿は一度で終え、続報や追加の説明を重ねない。
- コメント欄を閉じるなど、そこでやり取りが始まらないようにする。
投稿する前に、文面を弁護士に見てもらうのも一つの方法です。書いてしまった投稿は、後から削除しても、保存や拡散によって残り続けることがあります。
共通の知人への説明は、個別に行う方が安全とは限らない
SNSに書く代わりに、共通の知人に個別に事情を説明しようと考える方もいます。名誉毀損罪の「公然」は不特定または多数の人が知り得る状態をいいますが、伝える相手が少人数であっても、そこから広がる可能性があれば公然と評価され得るとした最高裁判所の判例があります(最判昭和34年5月7日)。説明する場合も、相手を悪く言うことは控え、ご自身の立場を簡潔に伝える程度にとどめておく方がよいでしょう。
反論の方法としては、相手に向けないこと、相手の名前を出さないこと、繰り返さないことの3点が、リスクを抑える基本になります。
反論以外に取れる手段
SNSで言い返すことだけが、投稿に対応する方法ではありません。むしろ、反論以外の手段の方が、相手との接触を避けながら投稿そのものに対処できる場合があります。
まず記録を残す
相手が投稿を消してしまうと、後から内容を示すことが難しくなります。次のものを保存しておきましょう。
- 投稿の画面のスクリーンショット。投稿日時、URL、相手のアカウント名とユーザーIDが写るようにする。
- 投稿に付いたリプライ、引用、いいねの数など、広がり方が分かる画面。
- 共通の知人など、誰が見ている可能性があるかのメモ。
- 相手とのこれまでのやり取りと、あなた自身が送ったメッセージ。
あなたが送ったメッセージを消してしまうと、どのような経緯だったのかを示す材料も失われます。ご自身の投稿ややり取りの削除については、アカウントを消せばよいのか|投稿削除と証拠保全の関係もご参照ください。
プラットフォームへの削除申出
権利侵害を理由として、SNSの運営事業者に投稿の削除を申し出ることができます。情報流通プラットフォーム対処法により、大規模なプラットフォーム事業者には、削除の申出に対して一定の期間内に判断と通知を行うことが求められるようになりました。この方法は相手に直接連絡する必要がない点で、ストーカーだと言われている立場の方にとって取りやすい手段です。制度の内容は【男女トラブル】情報流通プラットフォーム対処法で削除依頼はどう変わったのかで取り上げています。
弁護士を通じた請求と、法的手続に進むときの考え方
弁護士が代理人として、相手に投稿の削除や訂正を求めることもできます。代理人からの連絡であれば、あなたが直接相手に連絡することによる問題を避けられます。投稿が名誉毀損に当たる場合には、損害賠償や名誉を回復するための処分を求めること(民法709条・710条・723条)や、刑事告訴を検討することも考えられます。名誉毀損罪は告訴がなければ起訴されない罪で(刑法232条)、告訴は原則として犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります(刑事訴訟法235条)。相手が匿名アカウントの場合の進め方は、【不当要求対応】拡散された後の順序|削除と発信者特定のどちらを先に動かすかで整理しています。
ただし、法的手続に進むことは、相手の投稿が事実かどうかが正面から争われることでもあります。相手からは、あなたのこれまでの連絡や行動が証拠として出されることが想定されますし、個人間のSNS上の名誉毀損で認められる慰謝料は、事案によりますが、手続にかかる費用に比べて大きくならないこともあります。法的手続は「相手を負かす手段」ではなく、「投稿を消し、これ以上広がらないようにする手段」として位置付けると、見通しを立てやすくなります。
警察から連絡が来ている場合・これから来るかもしれない場合
SNSへの投稿と並行して、相手が警察に相談していることもあります。この場合は、SNSでの反論よりも、警察への対応を優先して考える必要があります。
投稿と相談は同時に進んでいることが多い
「ストーカーされた」という投稿は、相手がすでに警察に相談した後に書かれていることもあります。その場合、あなたの反論の投稿やリプライは、相手から警察に伝えられ、警告や禁止命令を判断する際の事情として考慮される可能性があります。弁護士から警告の書面が届いている場合の対応は、【刑事事件】弁護士から警告の書面が届いた|ストーカーと名指しされたときの返し方で取り上げています。
説明すべき場所は、SNSではなく手続の中
事実と異なる部分について説明したいという思いは自然なものです。ただ、その説明が意味を持つのは、警察からの事情聴取や、弁護士を通じた相手方とのやり取りといった、手続の中です。SNSに書いた内容は、後から本人の言い分として引用され、手続の中での説明と食い違っていると受け取られるおそれもあります。言い分は、SNSではなく、それが正式に受け止められる場で伝えるという順序を意識しておくとよいでしょう。
よくあるご質問
相手が投稿を消したら、もう名誉毀損を問うことはできませんか。
投稿が削除されても、投稿されていたという事実がなくなるわけではありません。削除前の記録が残っていれば、損害賠償の請求や告訴を検討することは可能です。もっとも、相手が自ら削除したことは、その後の交渉や、損害の評価の中で考慮される事情になり得ます。削除されたことで目的が達せられたのであれば、それ以上の手続に進むかどうかは、費用や相手との関係を踏まえて判断することになります。
黙っていると、ストーカー行為を認めたことになりませんか。
SNSで反論しなかったことによって、法的にストーカー行為を認めたと扱われることはありません。周囲の受け止め方が気になるお気持ちは理解できますが、警察や裁判所の判断は、SNSでのやり取りの多さではなく、実際の行為とその証拠に基づいて行われます。反論しないという選択は、多くの場合、ご自身を守る選択でもあります。
相手の投稿で仕事に影響が出た場合、その損害も請求できますか。
投稿が名誉毀損に当たり、その投稿によって仕事上の不利益が生じたといえる場合には、慰謝料とあわせて、その損害の賠償を求めることが考えられます(民法709条)。ただし、投稿と不利益との間の因果関係を示す必要があり、勤務先とのやり取りの記録などを整理しておくことが求められます。勤務先への説明の仕方を含め、早めに弁護士に相談しておくと進め方を組み立てやすくなります。
まとめ
- 「ストーカーされた」という投稿は事実の摘示と評価されやすく、真実かどうかにかかわらず名誉毀損が問題になり得る(刑法230条1項)。
- 相手が書いた内容が犯罪行為に関する事実であれば公共の利害に関する事実とみなされ、公益目的と真実性が認められれば処罰されない(同法230条の2)。一部でも事実と重なる場合は見通しが変わる。
- 相手の投稿へのリプライやコメントは「電子メールの送信等」に当たり得るため、拒まれた後に繰り返すと、反論であっても「つきまとい等」の問題が生じ得る(ストーカー規制法2条1項5号・2条2項2号)。
- 自分のアカウントでの反論でも、相手の名誉を害する内容を知り得る状態に置けば、規制法上の問題や名誉毀損・侮辱の問題になり得る(同法2条1項7号、刑法230条・231条)。
- やり取りのスクリーンショットや交際中の事情の公開は、プライバシー侵害として賠償の対象になり得る(民法709条・710条)。
- 反論するなら、相手に向けない、名前を出さない、繰り返さないことが基本。記録の保存とプラットフォームへの削除申出は、相手に連絡せずに取れる手段になる。
- 損害賠償や告訴(民法723条、刑法232条、刑事訴訟法235条)は、相手の投稿の真偽が正面から争われる手続であることを踏まえて検討する。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカーをめぐるトラブルについて、被害を受けている方からも、ストーカーだと言われている方からも、池袋と新橋の事務所でご相談をお受けしています。SNSへの投稿への対応、削除の申出や相手方への請求の進め方、警察からの連絡への備えなど、状況に応じた対応をご一緒に検討します。
SNSに書かれた内容に反論したいと考えている方、すでに反論を書いてしまい不安を感じている方は、投稿する前でも、投稿した後でもかまいませんので、お早めにご相談ください。


