【親子問題】重層的支援体制整備事業とは|市町村窓口の使い方
成人した子の自立に向けて、親が仕送りを減らしたり、お金の要求には応じないと決めたりしたのに、祖父母がこっそりお金を渡してしまう。親が「家を出て暮らす準備を」と話した直後に、祖父母が「うちにいればいい」と声をかけてしまう。親子問題のご相談では、このように祖父母の関わり方が親の方針と食い違い、話がなかなか前に進まないという場面が少なくありません。
この記事でいう「祖父母」はご相談者の親または配偶者の親を、「孫」は成人したご相談者のお子さんを指します。孫が未成年の場合や、孫が祖父母の家で暮らしている場合は、考え方が変わる部分があります。
祖父母の側にも、孫を案じる気持ちや、親が厳しすぎるのではないかという思いがあることが多く、「やめてください」と伝えるだけでは、かえって関係がこじれることがあります。この記事では、祖父母の甘やかしが親子の問題にどう影響するのか、法律の上で親にできること・できないことを確認したうえで、祖父母との話し合いの組み立て方と、話し合いで止まらないときの選択肢を整理します。
祖父母の甘やかしは、どんな形で親の方針とぶつかるのか
「甘やかし」といっても、その中身はご家庭ごとにさまざまです。ご相談でよく見られるのは、次のような形です。
- 親が断った金銭の要求に、祖父母が代わりに応じています。
- 家賃・携帯料金・カードの支払いなど、親が止めた援助を祖父母が肩代わりしています。
- 親と衝突した孫が祖父母の家に行き、そのまま寝泊まりしています。
- 親が決めた方針や、相談している支援者のことを、祖父母が孫に話してしまいます。
- 孫の前で、祖父母が「親が厳しすぎる」と親を批判します。
いずれも祖父母の善意から出ていることがほとんどです。ただ、親が要求に応じないと決めた場面で祖父母が応じると、孫から見れば「親に断られたら祖父母に頼めばよい」という道筋ができます。要求そのものはなくならず、行き先が親から祖父母に移るだけ、ということも起こりえます。親が時間をかけて組み立てた自立への計画が、家族の中の別のルートから崩れてしまうおそれがある点に、この問題の難しさがあります。
また、祖父母は高齢であることが多く、孫の求めに応じ続けることで、祖父母自身の老後の資金や生活が圧迫されることもあります。祖父母の甘やかしは、孫の自立の問題であると同時に、祖父母の暮らしを守る問題でもあります。
法律の上で、祖父母のお金の使い方を親が止めることはできるのか
最初に確認しておきたいのは、祖父母が自分の財産をどう使うかは、原則として祖父母自身が決めることだという点です。祖父母が孫にお金を渡すことは贈与にあたり、判断能力のある祖父母が自分の意思で行っている限り、親がそれを法的に差し止める手段は基本的にありません。孫が成人していれば、親が孫に代わって受け取りを断ることもできません。
したがって、祖父母の甘やかしへの対応は、「止めさせる」ことよりも「祖父母に納得して協力してもらう」ことが中心になります。そのうえで、次の2つの点を知っておくと、話し合いの助けになります。
祖父母にも孫を扶養する義務はあるが、範囲は限られる
民法877条1項は、直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養をする義務があると定めています。祖父母と孫は直系血族にあたるため、法律上は扶養義務を負う関係にあります。
ただし、成人した孫に対する扶養義務は、一般に、扶養する側が自分の生活を維持したうえで余力がある範囲で、相手の最低限の生活を援助する義務と考えられています。孫の遊興費や借金の返済、望むままの生活費まで負担しなければならないわけではありません。孫から「面倒を見るのは当然だ」と言われて断れずにいる祖父母には、この点を伝えるだけで気持ちが楽になることがあります。親の扶養義務の範囲については、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで解説しています。
祖父母の判断力の衰えや、意に反する受け渡しがある場合は別に考える
一方で、祖父母が自分の意思で渡しているとはいえない場合は、見方が変わります。たとえば、認知症などで判断力が低下している祖父母から孫が繰り返しお金を受け取っている、強く迫られて断れずに渡している、孫が祖父母の通帳やキャッシュカードを預かって引き出している、といった場合です。
高齢者虐待防止法は、養護者または高齢者の親族が、高齢者の財産を不当に処分することや、高齢者から不当に財産上の利益を得ることを、虐待の一つとして定めています(同法2条4項2号)。孫は祖父母の親族にあたるため、事情によってはこの枠組みで市町村や地域包括支援センターが関わる場面があります。祖父母の判断力に不安があるときは、成年後見制度の利用を検討することもあります。
| 祖父母の状況 | 法的な見方 | 主な相談先 |
|---|---|---|
| 判断力があり、自分の意思で渡している | 祖父母の自由な贈与。親が差し止める手段は基本的にない | 家族での話し合い。必要に応じて弁護士 |
| 孫から強く迫られ、断れずに渡している | 祖父母も要求を受けている立場。暴力や脅しを伴う場合は刑事の問題になりうる | 警察、弁護士 |
| 判断力が低下した状態で渡している | 経済的な虐待にあたる可能性がある | 市町村、地域包括支援センター |
| 孫が祖父母の通帳やカードを使っている | 使い道によっては経済的な虐待や財産をめぐる紛争になりうる | 市町村、地域包括支援センター、弁護士 |
高齢の親が被害を受けている場合に行政がどう動くかは【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みで、高齢の親の財産を家族の一人が使っている場合については【親子問題】親が高齢で、きょうだいの一人が親の財産を使っているで取り上げています。
祖父母に話す前に、家族の側で整理しておきたいこと
祖父母に協力をお願いする前に、親の側で次の点を整理しておくと、話し合いが感情的な言い合いになりにくくなります。
- 祖父母がいつ、何を、どのくらい孫に渡しているか(分かる範囲の事実)。
- 親が決めた方針と、その目的(いつまでに何を目指しているか)。
- 祖父母にお願いしたいことの具体的な中身。
- 祖父母自身の生活や老後の資金への影響。
- 夫婦の間で方針がそろっているかどうか。
特に大切なのは、2つ目の「方針と目的」です。祖父母から見ると、親が援助を止めたことは「孫を突き放した」ように映ることがあります。仕送りを減らすのは孫が自分で生活を組み立てる力をつけるためであり、要求を断るのは関係を断つことではない、という目的が伝わらないと、孫をかばう祖父母の気持ちはかえって強くなりがちです。
祖父母が配偶者の親である場合は、配偶者から話してもらうほうが受け入れられやすいことが多いでしょう。夫婦の間で方針が割れているときは、先にその調整が必要です。この点は【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときもご参照ください。ご相談の際に整理しておきたい情報は、【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報にまとめています。
祖父母への伝え方|「やめて」より「こうしてほしい」
祖父母との話し合いでは、これまでの甘やかしを責めるより、これからの役割を一緒に決めるほうが進みやすい傾向があります。
これまでのことを責めず、事実と方針を共有する
祖父母が渡してきたお金や、孫をかばってきたことについて「そのせいでこうなった」と伝えると、祖父母は自分を守ろうとして、話し合いが止まりがちです。過去の評価はいったん脇に置き、「いま孫の状況はこうなっている」「親としてはこういう方針で進めたい」という事実と方針を共有するところから始めます。
全部をやめてもらうのではなく、役割を決める
祖父母に、孫との関わりをすべて断ってもらう必要はありません。孫にとって、祖父母が気持ちを話せる相手であることは、むしろ大切な支えになることもあります。そこで、お金や物は渡さない、援助を求められたら親と相談するように返す、親の方針や支援者の情報は孫に伝えないといった具体的な線を決め、それ以外の関わり(話を聞く、食事をともにするなど)は続けてもらう、という形が考えられます。
孫の頼みを断るのが難しい祖父母には、断るときの一言をあらかじめ決めておくのも一つの方法です。「お金のことは、お父さん(お母さん)と決めることになっているから」と判断を親に戻す言葉があるだけで、祖父母の負担は軽くなります。
祖父母自身の暮らしを守る話として伝える
孫の自立の話としてだけでなく、祖父母の老後の資金や生活を守る話として伝えることも有効です。祖父母の年金や預貯金は、祖父母自身の医療や介護に必要なお金でもあります。援助が続いた結果、祖父母の生活が立ち行かなくなれば、家族全体の負担にもつながります。「孫のためにやめる」だけでなく「自分の暮らしのために線を引く」と考えてもらえると、協力を得やすくなることがあります。
決めたことを書き留めておく
話し合いで決めたことは、簡単なメモでよいので書き留めて家族で共有しておくと、後から「そんな話はしていない」という食い違いを防ぎやすくなります。家族間の申し合わせは、法的な強制力という点では限界がありますが、何を約束したかを確認する手がかりにはなります。書面の意味と限界は【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で、親戚に家族の方針を伝えるときの考え方は【親子問題】親戚から子の問題に口出しされる|家族の方針を守る伝え方で解説しています。
話し合っても止まらないときに考えること
方針を共有しても、孫から直接頼まれると祖父母が断りきれず、援助が続くことはあります。その場合は、次のような視点で状況を見直します。
祖父母も「要求を受けている側」として考える
祖父母が本心ではやめたいのに断れずにいる場合、祖父母は孫からの要求を受けている立場にあります。このとき問題になっているのは祖父母の甘さというより、要求が誰に向かい、誰が応じるかという家族の中の構造です。親と祖父母がそれぞれ別々に孫と向き合う形をやめ、要求の窓口を一つにまとめることで、要求の行き先が移り続ける状態を止めやすくなります。子からの金銭の要求を断ることの法的な位置づけは、【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけをご覧ください。
祖父母の家に孫が居着いている場合
親と衝突した孫が祖父母の家で暮らし始め、そのまま居着いている場合、その家から出てもらうかどうかを決めるのは、原則として家の所有者や借主である祖父母です。祖父母が孫を受け入れ続けたいと考えているなら、親が代わりに退去を求めることは通常は難しくなります。祖父母自身が出てもらいたいと考えている場合は、話し合いから法的な手続まで、祖父母を当事者として段階を踏んで進めることになります。退去の考え方は【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで解説しています。
暴力や脅しがある場合
孫が祖父母に対して暴力をふるう、物を壊す、「渡さないとどうなるか分からない」などと迫るといった言動がある場合は、家族の話し合いだけで抱え込まず、警察への相談を検討する段階です。祖父母が高齢で一人では動きにくいときは、親が付き添って相談することも考えられます。
弁護士に窓口を移すという選択
当事務所では、暴力やお金の要求に悩む親御さんの代理人として弁護士が介入し、子(祖父母から見れば孫)とのやり取りの窓口を引き受ける形で、親子の問題に取り組んでいます。窓口を弁護士に移すことで、親や祖父母に直接向かっていた要求を弁護士が受け止め、家族の中で誰が応じるかによって揺れていた状態を整理しやすくなります。窓口を代えることの意味は、【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で解説しています。
ただ、子を孤立させるだけでは自立にはつながりません。当事務所では民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、弁護士は親側の保護を、カウンセラーは住まい探しや仕事探し、金銭管理など日々の生活の支援を担う形で、子の自立と親の子離れを目指しています。役割を分ける理由は【親子問題】弁護士とカウンセラーが組むという形|役割を分ける理由で、サービスの全体像は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
祖父母が関わっているご家庭では、祖父母の意向や財産の状況も含めて、ご家族の中で誰がどの立場で依頼するのかを最初に整理します。弁護士は依頼者の代理人として動くため、親と祖父母の考えが食い違っているときは、その点も踏まえて進め方を検討します。
祖父母の甘やかしは、多くの場合、孫を思う気持ちから始まっています。祖父母を責めるのではなく方針と役割を共有し、それでも要求が祖父母に向かい続けるときは窓口を整える。この順序で考えることで、祖父母との関係を保ちながら、孫の自立に向けた計画を守りやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


