【親子問題】子の一人暮らしの初期費用は、誰が出すのが普通?
親が離婚や死別を経て新しいパートナーと交際を始めたとき、成人した子がその交際相手に強く反発することがあります。最初は不機嫌な態度や無視にとどまっていても、交際相手への暴言、繰り返しのメッセージ、勤務先や周囲への書き込みなど、交際相手本人に向けた行動に広がっていくと、親は子と交際相手の間に挟まれ、どちらをどう守ればよいのか分からなくなりがちです。
この記事では、子が親の交際相手に嫌がらせをしている場面について、行為ごとの法的な位置づけ、背景にある子の不安の切り分け方、親が最初に整えておきたいこと、弁護士に相談した場合の進め方を順に整理します。
本記事は、成人した子が、親の交際相手(婚姻していない相手を中心とし、再婚した配偶者についても一部触れます)に嫌がらせをしている場面を想定しています。子が未成年の場合や、交際相手の側が子に暴力をふるっている場合は、対応の順序が変わります。
どのような行為が「嫌がらせ」として問題になるのか
親の側から寄せられる相談では、次のような悩みがよく聞かれます。
- 交際相手に「別れろ」「財産目当てだろう」というメッセージを何十通も送っている。
- 交際相手の家の前や勤務先の近くに現れる。
- SNSに交際相手の実名や写真を載せて悪口を書いている。
- 交際相手の勤務先に電話をかけ、根拠のない話を伝えている。
- 交際相手が家に来たときに大声で怒鳴ったり、物を投げたりする。
- 交際相手の車や持ち物に傷をつけた。
こうした行動は、家族の感情的な対立として受け止められやすい一方で、内容によっては交際相手に対する違法な行為にあたるおそれがあります。親子の間では「家庭の問題」として扱われがちな行為も、向けられている相手が家族ではない第三者になると、法的な見え方が変わる点に注意が必要です。
最初に押さえておきたい前提|被害を受けているのは交際相手本人
子の行為が交際相手に向けられている場合、法的に被害を受けているのは交際相手本人です。親は事情を最もよく知る立場にありますが、警察に被害届を出すか、損害賠償を求めるか、どこまでの対応を望むかは、基本的には交際相手が自分で決めることになります。
親が代わりに決めないほうがよいこと
「子のことは自分が何とかするから、警察には行かないでほしい」と親が交際相手に頼む場面は少なくありません。気持ちとしては自然ですが、交際相手が身の危険を感じているときに届け出を控えるよう求めると、二人の関係にも負担が残ります。交際相手の安全にかかわる判断は本人に委ね、親は子の側への働きかけを担う、という役割の分け方を意識すると整理しやすくなります。
親の立場でできることは別にある
親は交際相手の代理人ではありませんが、子の親として、子に行動をやめるよう求めること、子と交際相手が接触しにくい環境を整えること、起きた出来事の記録を交際相手と共有することなどはできます。また、子からの暴言や金銭の要求が親自身にも向いている場合には、親自身が当事者として対応を取ることもできます。
行為ごとに見る法的な位置づけ
子の行為がどのような法律上の問題になりうるかは、行為の内容と程度によって異なります。主なものを整理すると、次のようになります。
| 子の行為 | 問題となりうる法律 | 主な留意点 |
|---|---|---|
| 交際相手の身体や生命に危害を加えると告げる | 脅迫罪(刑法222条) | 交際相手の親族への危害を告げる場合も対象になりうる |
| 殴る、突き飛ばす | 暴行罪・傷害罪(刑法208条・204条) | けがの有無によって罪名が分かれる |
| 車や持ち物を壊す | 器物損壊罪(刑法261条) | 親告罪のため、処罰を求めるには交際相手の告訴が必要 |
| SNSや周囲に悪評を広める | 名誉毀損罪(刑法230条)・民事上の不法行為 | 書かれた内容が事実であっても成立することがある |
| 勤務先にうその話を伝える、電話を繰り返す | 偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪(刑法233条・234条) | 勤務先の業務にどの程度の影響が出たかが問われる |
| 待ち伏せ、押しかけ、つきまとい | 迷惑防止条例・ストーカー規制法 | 行為の目的によって適用される法律が分かれる |
実際にどの罪にあたるかは、個別の事情によって判断されます。表は、行為の種類ごとにどのような法律が関係しうるかの目安としてご覧ください。
ストーカー規制法が当てはまりにくい理由
ストーカー規制法は、特定の人に対する恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことによる恨みの感情を満たす目的で行われるつきまといなどを対象としています。子が親の交際相手に向ける反発は、こうした恋愛感情に基づくものではないことが多いため、同法の対象にはなりにくいと考えられます。
一方、東京都のいわゆる迷惑防止条例には、ねたみや恨みなどの悪意の感情を満たす目的で行われるつきまといや待ち伏せを規制する規定があります。地域の条例の内容によって扱いが変わるため、警察に相談する際は、行為の日時や回数をできるだけ具体的に伝えることが役立ちます。法律の分かれ目については【ストーカートラブル】交際相手の元恋人からつきまとわれている|ストーカー規制法と迷惑防止条例の分かれ目でも解説しています。
親族間の特例は交際相手には及ばない
刑法には、配偶者や直系血族、同居の親族の間で起きた窃盗などについて刑を免除する特例があります(刑法244条)。親子の間の金銭トラブルが刑事事件として扱われにくい理由の一つですが、婚姻していない交際相手は子の親族ではないため、子が交際相手の持ち物を持ち去った場合などには、この特例は及びません。親が再婚して交際相手と子が同居している場合には扱いが異なることもありますが、親子の問題として見てきた感覚のまま対応すると、事態の重さを見誤るおそれがあります。
背景にある子の不安を切り分ける
嫌がらせの背景には、交際相手そのものへの反感だけでなく、子なりの不安が隠れていることがあります。行為をやめさせることと並行して、何が不安の中心にあるのかを切り分けておくと、話し合いの糸口が見つけやすくなります。
- 相続財産が交際相手に渡ってしまうのではないかという不安。
- 実家に住み続けられなくなるのではないかという不安。
- 親からの仕送りや援助が減るのではないかという不安。
- 親を取られてしまうような寂しさや、亡くなった親・離婚した親への思い。
相続の不安が理由になっている場合
婚姻していない交際相手は、法律上の相続人にはなりません。交際相手に財産を残すには遺言などの準備が必要であり、何もしなければ、財産は子を含む相続人に引き継がれます。一方、親が交際相手と婚姻すれば、交際相手は配偶者として相続人になり、子の法定相続分は変わります。
子が「財産が奪われる」と思い込んでいる場合、こうした仕組みを第三者から説明してもらうことで、反発が和らぐこともあります。ただし、相続の方針をどう決めるかは親自身の判断であり、子の嫌がらせに押されて決めるものではありません。
住まいや援助の不安が理由になっている場合
親と同居している子が「交際相手が家に入り込んでくる」「自分が追い出される」と感じている場合、住まいの見通しが不安の中心にあることがあります。親名義の家であれば、誰を住まわせるかは基本的に所有者である親が決められますが、長く同居してきた子にすぐ退去してもらうことは難しい場面もあります。子の生活の見通しを示さないまま交際を進めると、不安が攻撃の形で表に出やすくなるため、住まいと援助についての方針を親の側で整理しておくことが大切です。
親が最初に整えておきたいこと
子の行動が続いているときに、親が最初に取りかかっておきたいことは次のとおりです。
- これまでに起きた出来事を、日時と内容ごとに交際相手と記録として共有すること。
- メッセージ、SNSの投稿、留守番電話などを削除せずに保存しておくこと。
- 交際相手の住所や勤務先、予定などが子に伝わらないよう管理すること。
- 身の危険を感じる行為があれば、交際相手とともに警察に相談しておくこと。
- 子と話す場合に、誰が、どこで、何を伝えるかを事前に決めておくこと。
記録は、警察に相談するとき、弁護士が子に通知を送るとき、交際相手が後で損害賠償を求めるときのいずれにも役立ちます。警察に相談した事実そのものも、後の手続で意味を持つことがあります。詳しくは【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続をご覧ください。
子と話すときに避けたい伝え方
親が子に直接話をする場合、交際相手を一方的にかばう言い方や、「交際を認めないなら縁を切る」といった言い方は、子の反発を強めるおそれがあります。伝える中心に置きたいのは、交際の是非ではなく、「交際相手に連絡したり近づいたりする行為はやめてほしい」という行動についての具体的な求めです。感情的なやり取りになりそうな場合は、無理に一人で話そうとせず、第三者を間に入れる方法を検討します。
また、交際相手を子との話し合いの場に同席させることは、慎重に考えたほうがよい場面が多くあります。直接顔を合わせることが、新たな衝突のきっかけになることもあるためです。
弁護士に相談した場合の進め方
親だけでは子の行動が止まらない場合、弁護士が親の代理人として子に連絡し、窓口を代える方法があります。弁護士からの通知では、交際相手への連絡や接近をやめること、今後の連絡は弁護士を通すことなどを伝え、守ってほしい行動の線を具体的に示します。通知の内容や届け方については【親子問題】弁護士から子に最初の連絡が入るとき|通知で伝えることで詳しく解説しています。
誰が依頼者になるかを最初に整理する
この問題では、親と交際相手の利害が重なる部分と、分かれる部分があります。たとえば、交際相手は子に損害賠償を求めたいと考える一方で、親は子との関係をできるだけ保ちたいと考えることもあります。親の代理人として子に向き合うのか、交際相手が自分の立場で対応を求めるのかによって、取れる手段や進め方が変わるため、相談の最初の段階で誰が依頼者になるのかを整理しておくことが大切です。
約束を書面にする場合
子が交際相手への接触をやめることに応じた場合、その内容を合意書にまとめておく方法もあります。連絡や接近をしないこと、SNSの投稿を削除することなどを書面にしておくと、後で約束が守られなかったときに確認する材料になります。ただし、親子間の合意書には限界もあるため、何をどこまで書くかは事情に応じて検討します。【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界もあわせてご覧ください。
子の生活の立て直しを並行して進める
嫌がらせの背景に、子の孤立や生活の不安定さがある場合、行為を止めるだけでは同じことが繰り返されるおそれがあります。当事務所では、弁護士が親の代理人として子からの攻撃をブロックしつつ、自立支援カウンセラーが子の住まい探しや仕事探し、日々の金銭管理などを支える形で、親子それぞれの生活を立て直す取り組みをしています。子が親以外の人とのつながりを持てるようになると、親の交際相手に向いていた関心が少しずつ和らいでいくこともあります。
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まとめ
子が親の交際相手に嫌がらせをしている場面では、被害を受けている交際相手本人の判断を尊重しつつ、親は子の側への働きかけと記録の整理を担う、という役割の分け方が出発点になります。行為の法的な位置づけと、背景にある子の不安を分けて考えることで、交際相手の安全と子との関係の両方に目を配った対応を組み立てやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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