【親子問題】連絡が取れない成人の子の居場所を、親は調べられる?
子が独立して家を出た後も、実家の合鍵をそのまま持ち続けている。返してほしいと伝えても「何かあったときのため」「自分の家でもある」と言われ、話が進まない。親子の間では珍しくない行き違いですが、留守中に入られた形跡がある、物の置き場所が変わっている、といった事情が重なると、親にとっては落ち着いて暮らせない状態にもなります。
この記事では、独立した子に渡したままの合鍵について、返還を求める根拠、子が無断で家に入った場合の扱い、鍵を替えるときの注意点を順に整理します。
本記事は、成人した子がすでに別の住まいで暮らしている場面を前提にしています。子がまだ同居している場合や、子が未成年の場合は考え方が異なります。
独立した子が合鍵を持ち続けると、何が問題になるのか
合鍵は、家族の間では深く考えずに渡されていることが多いものです。子にとって実家の鍵を持っていることは自然なことで、独立した後も回収されないまま年月が経つことも少なくありません。ただ、住む場所が分かれると、家に住んでいる人と鍵を持っている人が一致しない状態になります。親の知らないうちに家に入れる状態が続くことは、親の生活の平穏や財産の管理に関わってきます。
ご相談の中で問題になりやすいのは、たとえば次のような場面です。
- 留守中に子が家に入っており、物の位置が変わっていたり、物がなくなっていたりします。
- 親の通帳や印鑑、権利証などの保管場所を子が知っています。
- 金銭の要求をめぐって関係がこじれ、子が突然訪ねてくることに不安を感じています。
- 子の交際相手や知人に、合鍵が渡っているかもしれないと心配しています。
こうした場面で最初に確かめたいのは、合鍵の返還を求められる立場にあるかどうかと、返してもらえないときに何ができるかの2点です。
返還を求める根拠は、持ち家か賃貸かで整理が変わる
合鍵の返還を求める法的な根拠は、親が住んでいる家が親の持ち家か、借りている部屋かによって整理の仕方が異なります。
| 住まいの種類 | 鍵の持ち主 | 返還を求める根拠の考え方 |
|---|---|---|
| 親の持ち家 | 家と鍵の所有者である親 | 所有者として、貸していた鍵の返還を求める |
| 賃貸住宅 | 貸主(大家) | 子に鍵を使わせていた目的が、子の独立によって終わったとして返還を求める |
持ち家の場合、鍵は親の物ですから、子に使わせていた鍵を返すよう求めることができます。子が自分で複製した鍵についても、親の意思に反して家に入る手段になりうることから、引渡しや廃棄を求めることが考えられます。
賃貸住宅の場合、鍵の所有者は貸主です。親は借主として、同居している子に鍵を使わせていたにすぎません。無償で物を使わせる関係は民法上の使用貸借として整理されることがあり、目的に従った使用が終わったときに終了し、目的を定めていなかったときは貸した側がいつでも解除できるとされています(民法597条、598条)。同居のために渡した鍵であれば、子が家を出て別に暮らし始めた時点で、返してもらうよう求める根拠があると考えられます。
「家族なのだから持っていてもよいはずだ」という子の言い分には、心情として理解できる部分もあります。ただ、家にだれを入れるかを決めるのはそこに住む人であり、別に暮らす子が鍵を持ち続ける権利が当然にあるわけではありません。
独立した子が無断で家に入ると、住居侵入にあたることがある
別に暮らしている子が、親の了解なく合鍵を使って家に入った場合、住居侵入罪(刑法130条)にあたる可能性があります。住居侵入罪は、そこに住む人の意思に反して立ち入ることを処罰するもので、相手が家族だというだけで成立が否定されるわけではありません。古い判例には、家出していた子が強盗の目的で深夜に実父の家へ入った事案で、住居侵入罪の成立を認めたものがあります(最高裁昭和23年11月25日判決)。
もっとも、実際に罪に問われるかどうかは、立ち入った目的、親がそれまで出入りを認めていたか、親が入らないでほしいとはっきり伝えていたか、といった事情に左右されます。合鍵を渡したまま何も言っていなかった段階では、子が「入ってよいと思っていた」と受け止めていることも少なくありません。返還を求めるときに、今後は無断で入らないでほしいと伝えておくことには、親の意思を明らかにしておくという意味があります。
なお、子が家に入って親の物を持ち出した場合、それが窃盗にあたる行為であっても、親子など直系血族の間では刑が免除される規定があります(刑法244条1項)。ただし、この規定は住居侵入罪には及ばず、刑が免除されることと、民事上の返還や賠償を求められるかどうかも別の問題です。持ち出しが疑われる場合は、【親子問題】親の預貯金を勝手に引き出された|刑事と民事の分かれ道や【親子問題】子が親の実印や権利証を持ち出した|悪用を止める手続の順序と、使われていた場合の対応もあわせてご覧ください。
合鍵を返してもらうための進め方
いきなり鍵を替える前に、次の順序で進めておくと、後から行き違いが生じにくくなります。
- 渡している鍵の本数と種類を確かめます。
- 返してほしい理由と期限を添えて、子に伝えます。
- 受け取りの方法を決め、返ってきた鍵を記録します。
- 応じない場合や複製が疑われる場合は、鍵の交換を検討します。
鍵の本数と種類を確かめる
玄関の鍵だけでなく、オートロックの鍵やカードキー、勝手口、郵便受け、車庫、物置の鍵なども、子が持っていないか思い出しておきます。記憶があいまいな場合は、家にある鍵を数え、本来の本数との差から子の手元にある鍵を把握するという方法もあります。
理由と期限を添えて伝える
「返して」とだけ伝えると、子は責められていると受け止めやすくなります。独立を機に家の管理を見直したい、留守中の出入りが不安だ、といった理由を、相手を非難しない言い方で添えるほうが受け入れられやすい傾向があります。口頭で話がまとまらない場合は、メールや手紙など、送った日と内容が残る方法で返却の期限と方法を伝えておくと、その後の判断材料になります。
直接会うと言い争いになりそうなときは、郵送での返却を提案する、ほかの家族に受け取りを頼む、といった方法も考えられます。
返ってきた鍵を記録する
返ってきた鍵の本数と種類を確かめ、受け取った日とあわせて記録しておきます。複製されていないかまでは確かめようがないため、返却を受けた後も不安が残る場合は、鍵の交換もあわせて検討します。
鍵を替えるときに気をつけたいこと
子が返還に応じない場合や、複製の心配がある場合、親が自宅の鍵を替えることは、基本的に親の判断で行えます。子がすでに別に暮らしているのであれば、鍵を替えても子の住まいを奪うことにはならないためです。子がまだその家に住んでいる場合に締め出すこととは、この点で事情が異なります。同居中の場合については【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界で整理しています。
賃貸住宅では貸主の了承を得る
賃貸住宅の場合、鍵は貸主の物であり、契約上も無断での交換が禁じられていることが多いため、管理会社や貸主に事情を伝え、了承を得てから交換します。オートロックの鍵やカードキーについては、管理会社を通じて登録の変更などができる場合もあります。
子の荷物が家に残っている場合
子の私物がまだ家に残っているときは、鍵を替える前に、引き取りの日時や方法を決めておくと、子が「荷物を取りに行けない」と訴えて争いが広がることを避けやすくなります。残された荷物を親の判断だけで処分することには、慎重さが求められます。
交換費用を子に求められるか
返してほしいと伝えたにもかかわらず子が合鍵を返さず、そのために鍵の交換が必要になったという場合には、交換費用を損害として子に請求できる余地があります。ただし、複製されているかもしれないという不安だけでは、子の行為による損害とまでは言いにくい面があります。親子の間で費用の請求を強く進めると関係がさらにこじれることもあるため、請求するかどうかは、ほかの課題との兼ね合いで考えるのが現実的です。
子が応じないとき、無断で入られたときの対応
返還を求めても応じない、鍵を替えた後に扉や鍵をいじった形跡がある、留守中に入られたことが分かった、という場合は、親だけで解決しようとせず、外部の手を借りることを考えます。
- 入られた日時、なくなった物、室内の変化などを、写真やメモで記録しておきます。
- 物がなくなったり身の危険を感じたりした場合は警察に相談し、相談した日と対応した担当者を控えておきます。
- 弁護士が親の代理人となり、合鍵の返還と、無断で立ち入らないことを書面で子に求める方法があります。
- 話し合いがまとまった場合は、返還の方法や今後の出入りのルールを書面にしておくことが考えられます。
弁護士が窓口になると、親と子が直接やり取りする場面を減らせるため、鍵の問題をきっかけに言い争いが繰り返されている家庭では、話を落ち着いて進めやすくなることがあります。警察への相談や書面の作り方については、【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続、【親子問題】弁護士から子に最初の連絡が入るとき|通知で伝えること、【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で解説しています。
返してもらった後の関係をどう整えるか
合鍵の回収は、親子の縁を切ることとは違います。子の側には「実家から締め出された」と感じる気持ちが生じやすいため、鍵の問題と、親子の連絡や行き来の問題は分けて伝えるのが望ましいところです。来るときは事前に連絡してもらう、親が在宅のときに会う、といった形で関係を続ける道を示しておくと、子も受け入れやすくなります。
高齢の親が一人で暮らしていて、子が安否確認のために合鍵を持っておきたいと言う場合もあります。この場合は子の言い分にも理由があるため、見守りサービスや近くに住む親族など、ほかの手段で代えられないかを一緒に検討する余地があります。
独立後の連絡については【親子問題】独立した後に連絡が来なくなったら|安否確認の順序と「報告の枠組み」、再び家に戻りたいと言われた場合については【親子問題】独立した子が家に戻りたいと言ってきた|再同居を断るときもご覧ください。
よくあるご質問
子は「家族だから鍵を持つ権利がある」と言います。本当にそうなのでしょうか。
家族であることだけで、別に暮らす子が親の家の鍵を持ち続ける権利が当然に認められるわけではありません。家にだれを入れるかは、そこに住む人が決めることです。ただし、子が家の共有持分を持っている場合など、権利関係が入り組んでいる場面では別の検討が必要になります。
鍵を替えたことを、子に伝える必要はありますか。
法律上の義務があるわけではありませんが、知らずに訪ねてきた子が鍵が合わないことで混乱し、扉を叩く、大声を出すといった事態になるおそれもあります。安全面に問題がなければ、替えたことと、来るときの連絡の方法をあわせて伝えておくほうが、後のもめごとを減らしやすいと考えられます。
鍵のことだけで弁護士に相談してもよいのでしょうか。
鍵の問題の背景に、金銭の要求や無断での持ち出し、暴力への不安などがあることも少なくありません。鍵のことをきっかけに、家庭全体の状況を整理するご相談もお受けしています。
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ご相談について
独立した子が合鍵を返さないという問題は、鍵そのものよりも、その背後にある親子の距離の取り方が問われる場面でもあります。返還の求め方、鍵を替える時期、子との今後の関わり方を、ご家庭の事情に合わせて一緒に考えます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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