【親子問題】子が税金や国保を滞納している、親に請求が来る?
この記事は、2026年10月時点の生活保護法と厚生労働省の通知をもとにしています。扶養照会や世帯の扱いなどの運用は自治体によって異なることがあるため、実際の手続ではお住まいの地域の福祉事務所にご確認ください。
収入のない子に生活保護の利用を勧めたところ、「そんな恥ずかしいことはできない」「親戚に知られたらどうするのか」と強く拒まれた、というご相談は少なくありません。親としては、自分たちの年金や貯蓄がいつまでも続くわけではないと分かっているからこそ勧めているのに、話はそこで止まってしまいます。
本記事では、子が生活保護を拒むときに背景にある気持ちを整理したうえで、説明の前に親が押さえておきたい制度の骨格、伝え方の組み立て、避けたい対応、本人が拒み続けるときに親の側でできることを順に解説します。
子が生活保護を拒むとき、背景にある気持ち
「恥ずかしい」という一言の中には、いくつかの別々の不安が重なっていることが多くあります。ご相談の場でよく聞かれるのは、次のような言葉です。
- 働いていない自分が税金で暮らすのは恥ずかしい。
- 親戚や昔の同級生に知られるのが怖い。
- 役所で働けと責められるのではないか。
- 一度受けたら二度と抜け出せないのではないか。
- 親が自分を見捨てようとしているのではないか。
このうち、制度の仕組みを知ることで和らぐものと、制度の説明だけでは届かないものがあります。特に最後の「親に見捨てられる」という受け止め方は、生活保護の話を親から切り出したときに起こりやすく、どれだけ正確に制度を説明しても、この不安が残っている限り話が進みにくいことがあります。まずは、子の「恥ずかしい」がどの不安から来ているのかを見極めることが出発点になります。
説明の前に押さえておきたい制度の骨格
生活保護は法律に基づく制度であること
生活保護は、憲法25条の理念に基づき、生活に困窮する人に最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助けることを目的とする制度です(生活保護法1条)。厚生労働省も、生活保護の申請は国民の権利であり、必要とする可能性はどなたにもあるため、ためらわずに相談してほしいという趣旨の案内をしています。子に伝えるときも、「施しを受ける」のではなく「法律で用意された仕組みを使う」という位置づけで話すほうが、受け止めてもらいやすくなります。
申請するのは誰か
生活保護法7条は、保護を受ける本人のほか、扶養義務者や同居の親族も申請できると定めています。そのため、法律上は親が申請すること自体は可能です。ただ、申請後には本人との面談や収入・資産の申告、家庭訪問などが続くため、本人が納得しないまま進めても手続が滞ったり、利用が続かなかったりするおそれがあります。実務上は、本人が自分の意思で申請者になる形を目指すのが現実的です。
同居していると「世帯」で判断される
生活保護は原則として世帯を単位に要否を判断します(生活保護法10条)。親と同居している子が申請すると、親の収入や資産も含めて判断されるため、親に一定の年金や預貯金があると保護の対象にならないことがあります。例外として個人単位で扱う「世帯分離」という考え方もありますが、認められる場面は限られています。そのため、子が家を出て単身の世帯として申請する形がとられることが多くあります。詳しくは【親子問題】ひきこもりの子に生活保護は使えるのか|世帯分離の考え方で解説しています。
扶養照会は親族全員に必ず連絡がいくわけではない
生活保護では親族の扶養が保護に優先するとされており(生活保護法4条2項)、福祉事務所が親族に援助の可否を問い合わせる「扶養照会」が行われることがあります。子が「親戚に知られる」と恐れるのは、主にこの手続です。
もっとも、2021年3月に厚生労働省が運用を見直し、おおむね10年程度音信不通である場合や、借金・相続をめぐる対立など関係が著しく悪い場合、過去に暴力や虐待があった場合などは、扶養義務の履行が期待できない者として照会を行わない扱いが示されました。また、本人が照会を拒んでいる場合は、その理由を特に丁寧に聞き取るよう求める通知も出されています。照会を避けたい親族がいる場合は、申請の際にその事情を具体的に伝えることができます。照会の実際については【親子問題】生活保護の申請に同行するということ|扶養照会の実際もあわせてご覧ください。
「恥ずかしい」に対する説明の組み立て方
正しさで説き伏せようとしない
「権利なのだから恥ずかしくない」と制度の正しさを繰り返しても、気持ちの抵抗は残ることがあります。最初は「恥ずかしいと感じるのは自然なことだ」といったん受け止め、そのうえで何が一番嫌なのかを本人の言葉で話してもらうほうが、話が先に進みやすくなります。
「ずっと」ではなく「立て直すまでの土台」として話す
生活保護は、働いて収入を得られるようになれば、その収入に応じて保護費が調整され、最低生活費を上回る収入が続けば保護は終わります。「一度受けたら抜け出せない」という不安には、生活を立て直すまでの土台として使うという見通しを示すことが役に立ちます。
誤解を一つずつほどく
子が抱いている不安の中には、制度の実際とは異なる思い込みが含まれていることがあります。代表的なものを整理すると、次のとおりです。
| 子の不安 | 実際の扱い |
|---|---|
| 親戚全員に知られる | 関係の悪い親族などには照会を行わない扱いがあり、照会を避けたい事情を申請時に伝えられる |
| 近所や知人に知られる | 福祉事務所の職員には守秘義務があり、申請したことが周囲に知らされる仕組みはない |
| 一生抜け出せない | 収入が最低生活費を上回る状態が続けば保護は終わる |
| すぐに働けと責められる | 働く能力の有無は判断されるが、心身の状態や通院状況などの事情は考慮される |
| 持ち物をすべて手放させられる | 生活に必要な物の保有は認められており、車など一部の資産は個別に判断される |
表の内容は一般的な扱いであり、最終的な判断は福祉事務所が個別に行います。断定的に「大丈夫」と約束するのではなく、「こういう扱いがあるから、一度一緒に聞きに行ってみよう」という形で伝えるほうが、後で行き違いが生じにくくなります。
親の側の事情も正直に伝える
親が高齢になり、年金や貯蓄で子の生活を支え続けることが難しくなっている場合は、その事情を隠さずに伝えることも大切です。「あなたを追い出したい」のではなく、「親がいなくなった後もあなたが暮らしていける形を、親が元気なうちに一緒に作っておきたい」という順序で話すと、見捨てられるという受け止め方を和らげやすくなります。親の年金に頼る生活の見通しについては【親子問題】親の年金で生活している子|年金が止まった後の設計で解説しています。
話す人を親以外にする
同じ内容でも、親から言われると反発し、第三者から聞くと受け入れられることがあります。生活困窮者自立支援制度の相談窓口、ひきこもり地域支援センター、本人と面識のある支援者など、利害のない立場の人から制度を説明してもらう方法も検討に値します。本人が支援者に会うこと自体を拒む場合については、【親子問題】カウンセラーと会うことを子が拒んだ場合もご参照ください。
避けたい伝え方
子が拒んでいる段階で次のような対応をとると、生活保護の話だけでなく、親子の関係そのものがこじれるおそれがあります。
- 「生活保護を受けないなら家を出ていけ」と、条件として突きつけること。
- 本人に知らせないまま、親が申請書類を用意して提出すること。
- 本人より先に、親戚に生活保護の話を相談してしまうこと。
- 話し合いのたびに期限や条件を変えること。
特に、本人の知らないところで手続を進めると、「やはり親は自分を厄介払いしたいのだ」という受け止めを強め、その後の話し合いが難しくなることがあります。
本人が拒み続けるときに親ができること
子がすぐに納得しなくても、親の側で進めておけることはあります。
- 家族だけで福祉事務所や自立相談支援機関に相談し、地域の運用や必要書類を確かめておくこと。
- 子の通院状況や体調の変化を記録しておくこと。
- 親として支えられる金額と期間の上限を決めておくこと。
- 生活保護以外に使える制度があるかを確認しておくこと。
通院や体調の記録は、後に申請する際、働くことが難しい事情を説明する材料になることがあります。また、親が成人した子に対して負う扶養義務は、一般に自分の生活を維持したうえで余力の範囲で援助する程度のものと考えられています。親が無理を重ねて共倒れになることは避ける必要があります。扶養義務の範囲については【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで解説しています。本人が相談自体を拒む場合に家族だけで動ける範囲は、【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲にまとめています。
当事務所の関わり方
当事務所では、弁護士が親の代理人として関わり、民間の自立支援カウンセラーとチームを組んで、子の自立に向けた支援を行っています。子と時間をかけて話をし、家を出て一人で暮らすことを本人が受け入れた後は、カウンセラーが住まい探しや仕事探し、生活保護の申請のサポート、日々のお金の管理などを継続して支えます。支援の期間は、家を出てからおおむね半年程度を目安に設け、収入を得る手段の確保と生活の組み立てを一緒に進めていきます。
生活保護は、あくまで子が自分の生活を立て直すための手段の一つです。本人が利用を受け入れるまでには時間がかかることもありますが、弁護士が親への金銭要求などを受け止める窓口となり、カウンセラーが本人の生活面を支えるという役割分担によって、親と子それぞれが無理なく次の段階に進めるよう取り組んでいます。サービスの詳細は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応、独立までの流れは【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順をご覧ください。
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まとめ
子が生活保護を「恥ずかしい」と拒むとき、その背景には、周囲に知られる不安や、親に見捨てられるのではないかという不安が重なっていることがあります。制度の正しさで説き伏せるよりも、どの不安から来ているのかを見極め、誤解を一つずつほどき、必要に応じて親以外の人から説明してもらうことが、話を前に進める手がかりになります。親だけで抱え込まず、早い段階で専門家に相談することもご検討ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


