【親子問題】子が障害者雇用で働くことは、できる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

本記事は、2026年10月時点の制度(2026年7月に引き上げられた法定雇用率、2025年10月に始まった就労選択支援など)を前提に解説しています。個別の手続や給付の可否は、お住まいの自治体や各窓口でご確認ください。


成人した子が仕事に就けないまま年月が過ぎ、医療機関で障害の診断を受けている、あるいは障害者手帳を持っている。そうしたご家庭から、「障害者雇用という働き方があると聞いたが、うちの子にもできるのか」というご相談をいただくことがあります。

 障害者雇用は、法律に基づいて企業に障害のある方の雇用が求められている仕組みのなかで、障害を伝えたうえで働く方法です。ただし、応募には原則として障害者手帳が必要であること、障害者雇用のほかにも働き方の選択肢があること、そして決めるのはあくまで本人であることなど、事前に押さえておきたい点があります。この記事では、親の立場から知っておきたい制度の全体像と、関わり方の注意点を整理します。

障害者雇用とはどのような働き方か

 障害者雇用促進法は、一定規模以上の事業主に対し、雇用している労働者のうち一定の割合以上の障害者を雇用することを義務づけています。この割合を法定雇用率といい、民間企業では2026年7月1日から2.7%に引き上げられました。あわせて、雇用義務の対象となる企業も、常用労働者40人以上から37.5人以上へと広がっています。

 企業がこの義務を果たすために設けている求人が、いわゆる障害者雇用枠です。応募する側は、障害があることを会社に伝えたうえで選考を受け、入社後は通院への配慮や業務量の調整など、障害の特性に応じた配慮を受けながら働くことを前提にします。これに対して、障害を伝えずに一般の求人に応募して働く方法もあり、障害を開示するかどうかで「オープン就労」「クローズ就労」と呼び分けることもあります。

 なお、障害者雇用促進法は、募集・採用や待遇の面で障害を理由とする差別を禁じ、事業主に合理的配慮の提供を求めています。これらの規定でいう「障害者」は、障害者手帳を持っている人に限られていません。障害者雇用枠で働くかどうかにかかわらず、職場で配慮を求める余地はあるということです。

障害者雇用枠に応募するための条件


原則として障害者手帳が必要になる

 企業が法定雇用率を計算する際に数に入れられるのは、主に身体障害者手帳、療育手帳(自治体によって名称が異なります)、精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持っている方です。そのため、障害者雇用枠の求人では、応募の条件として手帳の所持を求めるのが一般的です。うつ病や統合失調症、発達障害などの診断を受けている場合は、精神障害者保健福祉手帳の取得を検討することになります。

 精神障害者保健福祉手帳は、初診日から6か月以上が経過していることが申請の条件とされているため、診断を受けてすぐに取得できるとは限りません。障害者雇用での就職を考えるのであれば、手帳の申請と就職活動の準備を並行して進めるといった時間の見通しを立てておくことが役に立ちます。

手帳がない段階でもできること

 手帳を取得する前の段階でも、就職に向けた相談を始めることはできます。ハローワークには障害のある方を対象とする専門援助部門があり、窓口によっては、手帳がなくても主治医の意見書を提出すれば相談を受けられる場合があります。また、就労移行支援などの障害福祉サービスは、手帳がなくても医師の診断書などをもとに市区町村の支給決定を受けて利用できることがあります。

 手帳を取らずに一般の求人で働きながら、必要な配慮を個別に相談していく道もあります。手帳の取得を急がせるより、本人が何を望んでいるのかを先に確かめるほうが、その後の話し合いは進めやすくなります。

障害者雇用以外の働き方と比べる

 障害のある方の働き方は、企業などと雇用契約を結ぶかどうか、障害を開示するかどうかで大きく分かれます。主な選択肢は次のとおりです。

働き方内容考えられる場面の例
一般雇用(クローズ)障害を伝えずに一般の求人で働く症状が安定し、特別な配慮がなくても働ける見込みがある場合
一般雇用(オープン)障害を伝えたうえで一般の求人で働く特定の配慮があれば力を発揮しやすい場合
障害者雇用障害者雇用枠の求人で、配慮を受けながら働く手帳があり、通院や体調への配慮を受けながら働きたい場合
就労継続支援A型事業所と雇用契約を結び、支援を受けながら働く企業での就労には不安があるが、雇用契約のもとで働ける場合
就労継続支援B型雇用契約を結ばず、体調に合わせて作業を行い工賃を受け取るまずは通所して作業に慣れるところから始めたい場合


 このほか、一般企業への就職を目指して、原則2年間、職業訓練や就職活動の支援を受けられる就労移行支援もあります。どれが適しているかは、障害の内容や体調の波、これまでの職歴によって変わります。最初から障害者雇用だけを目標にするのではなく、段階を踏んで働く場所を移していくという考え方もあります。

就職までに使える相談先と支援

 障害のある方の就職には、いくつもの公的な相談先や支援が用意されています。主なものは次のとおりです。

  • ハローワークの専門援助部門:障害のある方向けの職業相談・職業紹介や、応募書類・面接についての助言を行う窓口。
  • 地域障害者職業センター:職業評価や職業準備支援、職場に支援者が入るジョブコーチ支援などを行う機関。
  • 障害者就業・生活支援センター:仕事のことと生活のことをあわせて相談できる身近な窓口。
  • 就労移行支援事業所:一般企業への就職に向けた訓練と就職活動の支援を行う障害福祉サービス。
  • 就労定着支援:就職後に生じた職場や生活上の課題について、一定期間支援を受けられる障害福祉サービス。


 障害者手帳の対象とならない場合や、障害の有無がはっきりしない段階であれば、地域若者サポートステーションなど、障害に限らない就労支援の窓口を利用する方法もあります。

2025年10月に始まった就労選択支援

 2025年10月からは、就労選択支援という新しい障害福祉サービスが始まりました。短期間の作業体験や面談を通じて、本人の希望や得意なこと、苦手なことを整理し、どの働き方や支援を選ぶかを本人が決めていくための支援です。新たに就労継続支援B型を利用する場合は、原則としてこの就労選択支援を先に受けることになりました(50歳以上の方や障害基礎年金1級を受給している方などは例外とされています)。就労移行支援や就労継続支援A型についても、今後、原則として利用する対象に加えられる予定です。

親が関わるときに気をつけたいこと


決めるのは本人である

 成人した子の就職活動や手帳の申請は、本人の意思で行うものです。親が代わりに求人に応募したり、本人の同意なく支援機関と契約したりすることはできません。障害者雇用という言葉に抵抗を感じる方や、手帳を持つことで将来の選択肢が狭まるのではないかと不安を抱く方も少なくありません。親から見て最善と思える道でも、本人が納得していなければ、就職できても長続きしないことがあります。まずは本人の考えを聞き、情報を手渡すところから始めるのが現実的です。

会社に何をどこまで伝えるか

 障害者雇用枠で働く場合、会社は雇用率の算定のために手帳の情報を確認します。厚生労働省は、障害者であることの把握・確認は本人の同意を得て行うよう求めるガイドラインを示しています。一方、一般雇用で障害を伝えずに働いている場合でも、年末調整で障害者控除を受けると、会社に手帳の情報が伝わることがあります。法律相談サイトにも、手帳のコピーの提出を求められて初めて雇用率の算定に使われると知った、といった相談が寄せられています。何を、誰に、どの段階で伝えるかは、本人が支援者と相談しながら決めていくことが大切です。

収入と給付の関係を確かめておく

 障害年金や生活保護を受けている場合は、働いて得た収入がそれらにどう影響するかも確認しておく必要があります。生活保護では、働いて得た収入は一定の控除を差し引いたうえで収入として認定され、保護費が調整されます。障害年金についても、精神の障害では、更新時の審査で就労の状況が考慮されることがあります。「働くと給付が止まるのではないか」という不安が本人の一歩を止めていることもありますので、年金事務所や福祉事務所、社会保険労務士などに事前に確認しておくと安心です。

家庭内の問題が重なっているとき

 子の就労の問題は、家庭内の暴力やお金の要求、長期のひきこもりと重なっていることが少なくありません。親に対する攻撃が続いている状態では、支援機関への相談や通所を始めること自体が難しくなります。そのような場合は、就労の話を進める前に、家庭内の安全と親子の距離を整えることが先になることもあります。

 当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として子との窓口を担い、自立支援カウンセラーが仕事探しや生活保護の申請、日々の金銭管理などの生活面を支えるという形で、親子の問題に取り組んでいます。障害者雇用や就労支援の窓口につなぐことも、子が自分の生活を組み立てていくための選択肢の一つとして考えています。取り組みの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

よくあるご質問


障害者雇用で働き始めると、一般の求人には移れなくなりますか?

 そのような決まりはありません。障害者雇用で経験を積んだうえで一般の求人に応募する方もいれば、反対に一般雇用から障害者雇用に切り替える方もいます。いずれも、本人の体調や希望に応じて選ぶことになります。

障害者雇用の給与は低いのですか?

 短時間勤務や補助的な業務から始める求人も多く、一般雇用と比べて給与が低めになることがあるといわれています。もっとも、職種や勤務時間、企業によって条件は大きく異なるため、一律にはいえません。障害者雇用であっても、最低賃金などの労働法令は一般雇用と同じように適用されます。

親だけで支援機関に相談に行ってもよいですか?

 窓口によっては、ご家族からの相談に応じているところもあります。ただし、求職の登録や障害福祉サービスの利用は本人の手続になるため、最終的には本人とつながることが必要です。本人が相談を拒んでいる段階では、家族が先に情報を集め、本人に伝える準備を整えておくという関わり方が考えられます。

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 障害者雇用は、障害のある子が自分の状態に合った形で働くための選択肢の一つです。ただ、手帳の取得や開示の範囲、給付との関係など、本人とご家族だけでは整理しにくい点もあります。家庭内に暴力やお金の要求といった問題を抱えている場合は、就労の話とあわせて、親御さん自身の生活を守る手立てを考えておくことも大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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