【親子問題】壁や家具を壊された|器物損壊として扱えるか
本記事は、18歳以上の子が万引き(窃盗)で警察の対応を受けた場面を想定しています。18歳・19歳の子は「特定少年」として少年法の手続によるため、20歳以上の子とは流れが異なります。刑罰の表記は、2025年6月施行の改正刑法(拘禁刑)に基づいています。
「お子さんが店の商品を持ち出したので、警察署まで来ていただけますか」。成人した子について警察や店からこうした連絡が入ると、多くの親御さんは何が起きているのか分からないまま動き出すことになります。
成人した子の万引きは、本人が自分で責任を負う刑事事件です。一方で、警察から迎えを求められる、店から弁償の話をされるなど、親が関わる場面は少なくありません。この記事では、連絡を受けた当日に確かめることから、その後の手続の見通し、親が負う責任の範囲、繰り返しを防ぐために家族が考えたいことまでを順に整理します。
連絡を受けたら、まず相手と状況を確かめる
最初に確かめたいのは、連絡してきた相手が本当に警察や店なのかという点です。家族が事件を起こしたように装い、「今日中に示談金を払えば事件にならない」などと振り込みや現金の受け渡しを求める手口は以前から知られています。警察が電話で示談金の振り込みを指示することは通常ありません。少しでも不審に感じたら、いったん電話を切り、警察署の代表番号を自分で調べてかけ直すと安心です。
相手が確認できたら、次の点を落ち着いて聞いておくと、その後の判断がしやすくなります。
- どこの警察署の、誰からの連絡か。
- 子が逮捕されているのか、任意で事情を聞かれているだけなのか。
- 親に迎え(身元引受)を求めているのか。
- 何を、どのくらいの金額ぶん持ち出したとされているのか。
- 店への支払いが済んでいるか、店が被害届を出す意向か。
- 今後、警察や検察から呼び出しがある予定か。
電話の段階で、親が事実関係について説明したり、子の代わりに謝罪の約束をしたりする必要はありません。聞き取った内容をメモに残しておくことが、後で弁護士などに相談するときにも役立ちます。
迎えを求められたとき|身元引受人になるということ
初めての万引きで被害額が小さく、本人が事実を認めている場合などには、警察署で調書を作った後、その日のうちに帰宅を認められることがあります。このとき、家族に迎えに来てもらい、身元引受書への署名を求める運用が一般的です。
身元引受人は、本人が逃げたり証拠を隠したりしないよう見守り、警察や検察からの呼び出しに応じさせることを約束する立場です。子の代わりに罪を負ったり、店への支払いを保証したりするものではありません。もっとも、署名した後は、捜査機関から本人の様子や連絡先について問い合わせを受けることがあります。署名の前に、どのようなことを約束する書面なのかを担当者に確かめておくとよいでしょう。
親子の関係が悪く引き受けにくい事情があるときに、無理に引き受ける義務はありません。ほかの家族や知人が引き受けることもあり、法律相談サイトには、引受人がいないため警察官が自宅まで送ったという相談も寄せられています。ただ、引受人がいないことが身柄の扱いの判断に影響する可能性もあるため、断る前に担当者へ事情を伝えて相談するのが現実的です。
身元引受人の役割は【親子問題】身元引受人になることの意味と責任で、書面の書き方は身元引受書は誰が何を書くのか|記載事項と文例で詳しく解説しています。
逮捕されて帰ってこない場合
被害額が大きい、同じような前歴がある、その場から逃げようとした、住まいが定まっていないといった事情があると、逮捕されたまま警察署に留め置かれることがあります。逮捕後は、警察が48時間以内に事件を検察官に送り、検察官が24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。勾留が認められると原則10日間、延長されるとさらに最長10日間、身体拘束が続く可能性があります(刑事訴訟法203条・205条・208条)。
なお、逃げる際に店員を突き飛ばすなどの暴行があった場合は、窃盗ではなく事後強盗(刑法238条)として扱われるおそれがあり、手続も重くなりがちです。
逮捕から勾留が決まるまでの間、家族は通常、面会できません。この段階でも面会できるのは弁護士です。仕事や家族の事情を本人に確かめたい、早く身柄を解いてもらうための材料を整えたいという場合は、早めに弁護士へ相談することを考えてみてください。逮捕直後の動き方は【親子問題】子が逮捕された|親が最初にすべきことにまとめています。
その後の手続はどう進むのか
万引きは刑法235条の窃盗罪にあたり、法定刑は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。実際の処分は、被害額、店への弁償の有無、前歴や余罪の有無、本人の反省の様子などを踏まえて決まります。主な行き先は次のとおりです。
| 処分の行き先 | 考えられる場面 | その後 |
|---|---|---|
| 微罪処分 | 被害がごく軽く、弁償が済み、前歴がないなど一定の条件を満たす場合 | 警察限りで手続が終わり、検察には送られない |
| 不起訴(起訴猶予) | 書類送検された後、事情を踏まえて検察官が起訴を見送る場合 | 裁判にはならないが、前歴として捜査機関の記録に残る |
| 略式命令による罰金 | 事実を認めており、罰金が相当と判断された場合 | 書面だけの手続で罰金が科され、前科となる |
| 正式な裁判 | 被害額が大きい、繰り返しているなどの場合 | 法廷で審理され、拘禁刑が求められることもある |
微罪処分にならなかった場合、警察で書類が整えられて検察庁に送られ(書類送検)、数週間から数か月後に検察から呼び出しを受ける流れが一般的です。この間は連絡が途絶えたように感じられますが、手続が終わったわけではありません。呼び出しの通知を本人が放置しないよう、親としても気にかけておきたいところです。
それぞれの手続については、微罪処分とは|警察限りで終わる事件の条件、略式命令が届いた|罰金の納付と正式裁判の申立て、【親子問題】前科・前歴が残ると何が変わるのか|親が知っておくことで詳しく扱っています。
店への謝罪や弁償を親がするときの注意点
成人した子の万引きを、親が弁償する法的な義務は原則としてない
責任能力のない子の行為については、親が監督義務者として賠償責任を負うことがあります(民法714条)。しかし、成人した子は自分の行為について自ら責任を負うのが原則で、親が子に代わって店に支払う法的な義務は通常ありません。店から親に請求の連絡があっても、それだけで支払う義務が生じるわけではない点は押さえておきたいところです。
親が支払う場合に気をつけたいこと
それでも、本人に支払う力がない、早く店との話をまとめたいといった理由で、親がお金を用意することはあり得ます。その場合は、次の点を意識しておくと、後の行き違いを避けやすくなります。
- 謝罪と弁償の主体はあくまで本人とし、可能であれば本人も同席させます。
- 支払った金額と名目は、領収書や受領書で残します。
- 商品代金を超える請求(対応にかかった人件費など)には、根拠を確かめてから応じるかを判断します。
- 親が立て替えたお金を子に返してもらうのかどうかを、子との間で決めておきます。
なお、店によっては、方針として示談や謝罪の受け入れを断ることもあります。断られた場合でも、弁償を申し出た経緯は処分の判断で考慮されることがあるため、やり取りの記録は残しておきましょう。親がお金を出すかどうかの考え方は【親子問題】示談金を親が払うべきか|払う場合の条件で、店とのやり取りで気をつけたい点は【親子問題】被害者側への対応を親が担う場面の注意点で解説しています。
万引きが繰り返されているときに考えたいこと
一度きりの過ちであれば、手続が終わった後に本人と向き合うことで区切りをつけられる場合もあります。一方、余罪が判明した、以前にも同じことがあったという場合は、背景にある事情に目を向ける必要があります。親子問題のご相談では、次のような事情が重なっていることが少なくありません。
- 仕事が続かず、収入のない状態が長く続いていること。
- 親にお金を求めて断られたことをきっかけに、持ち出しが始まったこと。
- ひきこもりの生活が続き、必要な物を自分で買う手段がないこと。
- 必要のない物まで持ち出してしまう、衝動の抑えにくさがあること。
衝動の抑えにくさがうかがえる場合には、窃盗症(クレプトマニア)や摂食障害などが関係していることもあり、医療機関への相談が選択肢になります。治療に取り組んでいることは処分を決める際の事情として考慮されることがありますが、それだけで処分が軽くなると決まっているわけではありません。
また、過去10年以内に窃盗などで6か月以上の拘禁刑の執行を3回以上受けた人が、常習としてさらに窃盗をした場合には、盗犯等防止法3条により3年以上の拘禁刑の対象となることがあります。繰り返すほど選べる処分の幅は狭まっていくため、早い段階で立て直しの手立てを考えておくことが大切です。
家庭で見守れる範囲には限りがあります。家族が担える部分と担えない部分の分け方は【親子問題】再犯を防ぐために家庭が担える部分・担えない部分で、診断と処分の関係はクレプトマニア(窃盗症)と言われた|診断が処分に与える影響で解説しています。
万引きの背景にある親子の問題を、家族だけで抱えないために
万引きをきっかけに、子のお金の使い方や生活の実態を初めて知ったという親御さんも少なくありません。万引きそのものは本人の刑事手続として進みますが、その背景に親へのお金の無心や暴言・暴力が続いている場合、刑事手続が終わっても家庭の状況は変わらないことがあります。
当事務所では、成人した子の問題に悩む親御さんの代理人として弁護士が子と向き合い、自立支援カウンセラーが住まい探しや仕事探し、日々の金銭管理といった生活面を支える形で対応しています。家庭ごとに事情が異なるため、支援の内容はご事情を伺ったうえで組み立てます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
お金の要求への向き合い方は【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで、刑事事件全般で親が関われる範囲は【親子問題】成人した子の刑事事件で親ができること・できないことで整理しています。
子が万引きで捕まったという連絡は、親にとって突然で動揺の大きい出来事です。まずは相手と状況を確かめ、身元引受や弁償など親に求められていることの意味を理解したうえで、一つずつ対応していくことが大切です。繰り返しやお金の問題が背景にあると感じたときは、手続が落ち着くのを待たずに、家族のこれからを含めて相談先を探してみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


