【親子問題】子が交際相手に暴力をふるっていると知ったら?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

交際相手から「暴力を受けている」と連絡が来た、子の部屋を訪ねたら交際相手にけがの跡があった、警察から子のことで電話があった。成人した子が交際相手に暴力をふるっていると知ったとき、親は驚きと戸惑いの中で、何から手をつければよいのか判断がつかないことが多いと思います。この記事では、交際相手への暴力が法的にどう扱われるのか、親が負う責任の範囲、親として取れる対応と避けたい対応を、順を追って整理します。

本記事は、2026年10月時点の法令に基づいて記載しています。2024年4月に施行された改正配偶者暴力防止法(DV防止法)と、2025年6月から懲役・禁錮に代わって導入された拘禁刑を反映しています。


交際相手への暴力は「二人の間のこと」では済まない

 交際している二人の間のことでも、殴る、蹴る、物を投げつけるといった行為は暴行罪(刑法208条)にあたり、けがをさせれば傷害罪(刑法204条)が問題になります。「別れるなら何をするか分からない」といった言葉は脅迫罪(刑法222条)に、相手の持ち物を壊せば器物損壊罪(刑法261条)にあたることがあります。交際相手だから、口論の延長だから、という理由で扱いが軽くなるわけではありません。

 二人が同じ部屋で暮らしている場合には、DV防止法の対象にもなります。同法の「配偶者」には、法律婚・事実婚の相手方のほか、生活の本拠を共にする交際相手も含まれます。被害を受けた側が申し立てれば、裁判所が子に対して接近禁止命令や住居からの退去等命令といった保護命令を出すことがあり、命令に違反すると2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象になります。

 別れた後に子が相手につきまとったり、連絡を繰り返したりすれば、ストーカー規制法の問題にもなります。交際中の暴力は、別れた後の行動まで含めて見ていく必要があります。子の状況によって、問題になる法律や手続は次のように変わります。

子の状況主に問題になること
交際相手と別々に暮らしている暴行罪・傷害罪・脅迫罪などの刑事手続、慰謝料などの損害賠償
交際相手と同じ部屋で暮らしている上記に加え、DV防止法の保護命令(接近禁止命令・退去等命令など)
すでに別れている上記に加え、ストーカー規制法による警告・禁止命令
子が20歳未満家庭裁判所に送られる少年事件の手続(18歳・19歳は「特定少年」として扱われる)


知ったときに最初に確かめること


交際相手が今、安全な状態にあるか

 まず優先したいのは、交際相手の身の安全です。今まさに暴力が続いている、けがをして動けない、子が刃物などを持ち出しているといった状況であれば、わが子のことであっても110番をためらわないでください。警察を呼ぶことは子を見捨てることではなく、取り返しのつかない結果を防ぐための手段です。

何を、どこから知ったのか

 子本人から聞いたのか、交際相手やその家族から連絡が来たのか、警察から知らされたのかによって、次にとるべき行動は変わります。この段階では、聞いた内容を「いつ・どこで・何があったか」に分けて書き留め、受け取ったメッセージや書面は消さずに残しておきます。

 親の耳に入る話は、どうしても一方の側からの話になりがちです。判断を急がず、事実として確認できることと、まだ分からないことを分けておくことが、その後の対応を誤らないための土台になります。

子の年齢と、どこで暮らしているか

 子が20歳未満であれば、事件は家庭裁判所に送られる少年事件として扱われます。18歳・19歳の子は「特定少年」として、成人に近い扱いを受ける場面があります。また、二人が親の家で暮らしているのか、子や交際相手の名義の部屋で暮らしているのかによって、保護命令が出たときの影響や、親が関われる範囲も変わります。

成人した子の暴力について、親が負う責任の範囲

 子が交際相手に暴力をふるったとき、親もまとめて責任を問われるのではないかと心配される方は少なくありません。成人した子が自分の判断で起こした行為について、親が法律上の賠償責任を負うことは原則としてありません。民法714条の監督義務者の責任は、自分の行為の責任を判断する能力がない人(責任無能力者)について定められたもので、通常の判断能力のある成人には及ばないためです。

 したがって、交際相手やその家族から「親が慰謝料を払え」と求められても、親に支払う義務があるわけではありません。親が任意に示談金を立て替えることはできますが、それは義務ではなく、払う場合にも条件を整えておく必要があります。詳しくは【親子問題】示談金を親が払うべきか|払う場合の条件で整理しています。

 一方、子が未成年の場合は事情が異なります。親権者には子を監護する義務があり、暴力を知りながら放置していたなど、監督の不十分さと被害との間につながりが認められる場合には、親自身の責任(民法709条)が問題になることがあります。成人した子が起こしたトラブルと親の責任の関係は、【親子問題】子が近所の人とトラブルを起こした|成人した子の賠償と親の責任でも解説しています。

親がしてよいこと・避けたいこと


子と話すとき

 子と話すときは、頭ごなしに責めるよりも、何があったのかを本人の言葉で聞くところから始めるほうが、事実が見えやすくなります。ただし、「相手が先に挑発した」「軽く押しただけ」といった説明を、そのまま受け入れる必要はありません。どのような理由があっても暴力は認められないこと、相手が怖がっているなら距離を置く必要があることは、はっきり伝えてよい部分です。

 子が「そこまでのことはしていない」と受け止めている場合は、【男女トラブル】デートDVの加害者だと言われた|自分の言動を法的に見直すを一緒に読んでみるのも一つの方法です。

交際相手や、その家族に連絡するとき

 子に代わって謝りたい、事情を説明したいと考えるのは自然なことです。ただ、被害を受けた側にとって、加害者の家族からの連絡は、それだけで負担や恐怖になることがあります。親が直接連絡をとるかどうかは、慎重に考える必要があります。

 特に避けたいのは、「被害届を出さないでほしい」「取り下げてもらえないか」と頼むことです。刑事事件になっている場合、事件の関係者に面会を強く求めたり、威圧的な言動をとったりすると、証人等威迫罪(刑法105条の2)が問題になることがあります。親にそのつもりがなくても、相手が圧力と受け止めるおそれがあります。謝罪や示談の申し入れは、相手の意向を確かめたうえで、弁護士を通じて行うのが穏当です。相手の家族から先に連絡が来た場合の受け答えは、【刑事事件】被害者の家族から加害者の家族へ直接連絡が来た|最初の受け答えと弁護人へのつなぎ方で解説しています。

子をかばうつもりの行動

 子を守りたい気持ちから、次のような行動をとってしまうことがあります。

  • 子の居場所を警察に伏せることや、子を親の家にかくまうこと。
  • 暴力の様子が残ったメッセージや動画を消させること。
  • 警察からの問い合わせに、子に代わって事実と違う説明をすること。


 犯人をかくまう行為や証拠を消す行為は、犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪にあたるおそれがあります。親族が本人のために行った場合には刑が免除されることがあるという規定(刑法105条)もありますが、必ず免除されるわけではありません。何より、こうした行動は捜査の中で子にとって不利な事情として見られやすく、結果として子の立場を悪くすることになりかねません。

警察が関わった場合の流れと、親にできること

 交際相手が110番したり被害届を出したりすると、警察が子から事情を聴くことになります。逮捕されずに自宅で生活しながら捜査が進む場合もあれば、逮捕・勾留されて身体を拘束される場合もあります。逮捕された場合には、警察での最大48時間、検察での24時間を経て、勾留が認められると原則10日間、延長されるとさらに最大10日間、身体の拘束が続くことがあります。この間、親にできることとして、主に次のようなものがあります。

  • 弁護士を選び、早い段階で子と面会してもらうこと。
  • 接見禁止がついていなければ、面会や差し入れをすること。
  • 釈放に向けて、身元引受人として子の生活を見守る体制を整えること。
  • 勤務先やほかの家族への連絡の仕方を、弁護士と相談しながら決めること。


 逮捕直後の動き方は【親子問題】子が逮捕された|親が最初にすべきこと、身元引受人の役割は【親子問題】身元引受人になることの意味と責任で詳しく説明しています。子が20歳未満の場合の手続は、【親子問題】少年事件の流れ|家庭裁判所送致から審判までをご覧ください。

 身元引受人になるということは、交際相手に近づかない、連絡しないといった約束を子が守れるよう見守る役割を引き受けることでもあります。保護命令が出ている場合や、示談の条件として接触しないことを約束した場合には、その内容を家族も把握しておく必要があります。

暴力を繰り返させないために

 刑事手続や示談が終わっても、暴力に至った背景が変わらなければ、別の相手との間で同じことが起きるおそれがあります。自治体や民間団体の中には、パートナーへの暴力をやめるための加害者向けのプログラムを実施しているところがあり、飲酒や精神的な不調が関係している場合には、精神保健福祉センターや医療機関に相談する道もあります。親が子に勧めることはできますが、本人が自分の問題として向き合わなければ続かないことも多いのが実情です。

 子の暴力が交際相手だけでなく親やきょうだいにも向いている場合は、家族自身の安全を確保することが先になります。【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録もあわせてご確認ください。

 親が一人で子と交際相手の間に立ち続けることには限界があります。当事務所では、弁護士が親の代理人として窓口に立ち、自立支援カウンセラーとチームを組んで子の生活の立て直しまで関わる取り組みを行っています。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

よくあるご質問


交際相手の親から「親として責任をとれ」と言われたら、どう答えればよいですか

 成人した子の行為について、親に法律上の支払い義務があるわけではありません。ただ、その場で「関係ない」と突き放すと、相手の感情を強め、示談の道を狭めることにもなりかねません。「事実を確認したうえで、弁護士を通じてお返事します」と伝え、その場で金額や条件に応じないようにするのが穏当です。

子は「相手からも暴力を受けていた」と言っています

 お互いに手を出していた場合でも、子の行為が罪にあたるかどうかは、子のした行為そのものを基準に判断されます。相手から先に暴力を受け、身を守るためにやむを得ず反撃したといえる場合には正当防衛が問題になることもありますが、その判断は具体的な経緯によって大きく変わります。子の言い分を裏づける記録があれば残しておき、早めに弁護士に相談してください。

親が相談したことは、子に伝わりますか

 弁護士には守秘義務があり、ご相談の内容がご相談者の了解なく子に伝わることはありません。連絡の取り方も含めてご相談いただけます。詳しくは【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方をご覧ください。

 子が交際相手に暴力をふるっていると知ったとき、親は子をかばいたい気持ちと、相手への申し訳なさの間で揺れ動くものです。交際相手の安全を優先する、事実を記録する、相手方への連絡は弁護士を通じて行う、という順序を意識するだけでも、事態がこじれるのを防ぎやすくなります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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