【親子問題】ひきこもりの子が「親のせいだ」と責め続けるときは?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

ひきこもりの状態が続く子から、「こうなったのは親のせいだ」「育て方が悪かった」と繰り返し言われ、どう返せばよいか分からなくなっている親御さんは少なくありません。言い返せば口論になり、黙っていれば責める言葉が続く。そのうちに、親自身も「本当に自分のせいかもしれない」と考え込んでしまうことがあります。

 この記事では、責める言葉の受け止め方と応じ方、言葉が金銭の要求や脅しに変わったときの法的な整理、そして家族だけで抱え込まないための相談先について解説します。

本記事は、2026年10月時点の法令や公的機関の資料をもとに、一般的な考え方を整理したものです。個別のご事情によって取るべき対応は異なりますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。


「親のせいだ」という言葉の背景にあるもの

 子が親を責める理由は家庭ごとに異なります。ただ、ひきこもりの状態にある本人は、いまの状況に満足しているわけではなく、将来への不安や家族への申し訳なさを抱えていることが多いとされています。自治体の調査報告でも、親から叱責や干渉を受けることで本人の精神的な負担が増していく様子が報告されています。

 自分を責める気持ちが行き場を失い、いちばん身近な親に向かう。「親のせいだ」という言葉には、そうした面が含まれていることがあります。もちろん、子の訴えのなかに、親として振り返るべき出来事が含まれている場合もあるでしょう。どちらであっても、言葉の勢いだけで「すべて自分の責任だ」と結論を出す必要はありません。

親が自分を責め続けることの影響

 責められる日が続くと、親も「育て方が悪かった」と自分を責めたり、夫婦の間で責任を押しつけ合ったりしやすくなります。公的機関の資料でも、家族の意識が原因探しに向かうと、これからどうするかを考える余裕がなくなることが指摘されています。過去の検証よりも、いまの生活をどう立て直すかに目を向けることが、本人にとっても家族にとっても出発点になります。

責める言葉に、どう応じるか

 責められる場面での応じ方に唯一の正解はありません。それでも、関係をこれ以上こじらせないために意識しておきたい点があります。

過去の正誤を言い争わない

 「そんなことはしていない」「あなたにも原因がある」と反論すると、話は過去の出来事の正誤をめぐる言い合いになりがちです。同じ出来事でも親と子で記憶や受け止め方が食い違うのは自然なことで、どちらかが納得するまで話し合おうとすると、かえって衝突が長引くことがあります。親として思うところがあっても、その場で決着をつけようとしないことが大切です。

気持ちは受け止め、結論は保留する

 「つらかったんだね」と気持ちを受け止めることと、「すべて親のせいだ」という結論を認めることは別のことです。気持ちには耳を傾けつつ、責任の所在についての結論はいったん保留する。この切り分けを親の側が意識しておくと、必要以上に自分を追い込まずにすみます。

謝ることと、要求に応じることを分ける

 振り返って謝るべきことがあると感じたなら、謝ること自体は関係を見直すきっかけになり得ます。ただし、謝罪が「だから金を出せ」「言うことを聞け」といった要求に結び付けられる場合は注意が必要です。謝罪と要求への応諾を一体にしてしまうと、責めれば要求が通るという流れができてしまうおそれがあります。謝るとしても、要求には別に答えるという線を引いておきます。

 具体的な場面での応じ方を整理すると、次のようになります。

子の言葉や行動避けたい応じ方応じ方の一例
「親のせいでこうなった」「そんなことはない」と全面的に否定する「そう感じてきたんだね」と気持ちを受け止め、結論は保留する
「謝れ」謝罪と引き換えに要求をのむ謝るべき点があれば謝り、要求は別の話として扱う
「責任を取って金を出せ」責められるたびにお金を渡す家計の範囲で出せるものと出せないものを決め、一貫して伝える
夜中に何時間も責め続ける最後まで付き合い、言い返す「今日はここまでにしよう」と区切り、その場を離れる


「親のせい」が金銭の要求や脅しに変わったとき

 責める言葉そのものは、親子の間の言い合いとして、直ちに法的な問題になるものではありません。しかし、言葉が金銭の要求や脅し、暴力と結び付いてきたときは、法的な観点からも整理しておく必要があります。

「責任を取れ」と金銭を求められた場合

 民法877条1項は、直系血族の間に扶養の義務を定めています。ただ、成人した子に対する扶養は、一般に、親が自分の生活を維持したうえで余力のある範囲で援助するものと考えられています。「親のせいだから払え」という理屈で、際限のない支払い義務が生じるわけではありません。

 断ることの法的な位置づけは【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで、独立した子から同様の請求を受けた場面は【親子問題】独立した子から「親のせいだ」と金銭を請求された|応じる前に分けて考えることで詳しく解説しています。

脅しの言葉や暴力が加わった場合

 「金を出さなければ家に火をつける」「殺してやる」のように、生命や身体、財産などに害を加えることを告げて脅す行為は、脅迫罪(刑法222条)にあたることがあります。脅して義務のないことをさせれば強要罪(刑法223条)、脅して金銭を出させれば恐喝罪(刑法249条)が問題になります。なお、恐喝罪には親子などの間で刑が免除される特例があります(刑法251条・244条1項)が、脅迫や暴行、傷害にはこの特例は及びません。

 身の危険を感じる場面では、ためらわずに110番通報を検討してください。脅しの言葉の扱いは【親子問題】「殺す」と言われた|脅迫罪として扱われる線引きで、暴力を受けているときの初動は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録で解説しています。

過去の育て方を理由に損害賠償を求められた場合

 子から「育て方のせいで人生が狂った」として、慰謝料などを請求されることもあります。過去の出来事を理由とする損害賠償が認められるかどうかは、違法といえる具体的な行為があったか、それを裏付ける証拠があるか、時効にかかっていないかといった点によって判断されます。「親のせいだ」という言い分だけで、ただちに支払い義務が生じるものではありません。

 請求の内容によって考えるべきことが変わるため、書面や金額を示された段階で、応じる前に弁護士へご相談いただくことをおすすめします。子が警察や行政に「虐待された」と訴えた場面については【親子問題】子が「親に虐待された」と警察や行政に訴えた|窓口ごとの扱いと親が整理しておきたいことで解説しています。

記録を残しておく意味

 責める言葉が長く続いている家庭では、その経過を記録しておくことが後で役に立つことがあります。相談先に状況を正確に伝える材料になるほか、要求や脅しに発展した場合の証拠にもなり得ます。記録には、次のような内容を残しておくとよいでしょう。

  • 日付と時刻、責められた時間の長さ。
  • 子が口にした言葉(できるだけそのまま)。
  • 金銭や行動の要求の有無と、その内容。
  • 物を壊す、大声を出すといった行動の有無。
  • 親の応じ方と、その後の経過。


 録音や子から届いたメッセージの保存も、記録の一つです。ただし、記録を取っていることを子に突きつけると、かえって刺激になることがあります。記録はあくまで親の手元で静かに残しておくものと考えてください。

家族だけで抱え込まないために

 「家庭の問題だから」と外に相談しにくい気持ちは自然なものです。しかし、家族だけで抱え込むほど親は疲れ、よい考えも浮かびにくくなります。

ひきこもりや心の不調の相談先

 都道府県や指定都市にはひきこもり地域支援センターが置かれ、家族からの相談も受け付けています。子の言動の背景に心の不調がうかがえる場合は、精神保健福祉センターや保健所に相談することも考えられます。窓口でできることは【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないことで、医療につなぐかどうかの判断は【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断で整理しています。

 親自身が限界を感じているときは、まず親が休むための手配を優先してください。具体的な手配は【親子問題】子の問題で親自身が限界|親が先に休むための手配で解説しています。

弁護士が親の窓口になるという選択

 責める言葉が金銭の要求や脅しを伴うようになり、親が直接向き合うことが難しくなった場合には、弁護士が親の代理人として子との窓口を担う方法があります。親が一人で受け止めていた言葉や要求を弁護士が引き受けることで、親子の間にいったん距離を置き、落ち着いて今後を考える時間をつくることができます。

 当事務所では、弁護士が親御さんの側に立ち、民間の自立支援カウンセラーとチームを組んで対応しています。弁護士が親への要求を受け止める一方、カウンセラーが子の生活の立て直しを支える形で役割を分けています。詳しくは【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択と【親子問題】弁護士とカウンセラーが組むという形|役割を分ける理由をご覧ください。

よくあるご質問


子の言い分に思い当たる点がある場合でも、相談してよいですか

 ご相談いただいて差し支えありません。思い当たる点があることと、いまの責め方や要求をそのまま受け入れ続けることは別の問題です。振り返るべき点は振り返りつつ、これからの生活をどう守るかを一緒に整理します。

責められるのがつらく、しばらく家を離れたいと考えています

 一時的に親が家を離れることも、身を守る選択肢の一つです。避難先の確保や、その間の生活費の扱いなど、事前に決めておきたいことがあります。【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択もあわせてご覧ください。

相談したことは子に伝わりますか

 弁護士には守秘義務があり、ご相談の内容が親御さんの了解なく子に伝わることはありません。連絡の取り方も、ご相談のうえで決めることができます。詳しくは【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方をご覧ください。

まとめ

 ひきこもりの子から「親のせいだ」と責め続けられるとき、親が過去の正誤を一人で背負い込む必要はありません。気持ちは受け止めつつ結論は保留し、謝罪と要求への応諾は分けて考える。言葉が金銭の要求や脅し、暴力に変わってきたら、記録を残し、外部の窓口や弁護士につなぐ段階と考えてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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