【親子問題】通帳・カードを取り上げられた場合の対応
親が再婚を考えたとき、成人したひきこもりの子がいることを相手にどう伝えるかで悩まれる方は少なくありません。打ち明けたら結婚を考え直されるのではないか、子の将来の負担まで背負わせることになるのではないか、と考えて切り出せないまま時間が過ぎてしまうこともあります。この記事では、再婚によって子と再婚相手の法律上の関係がどう変わるのかを整理したうえで、伝える前に決めておきたいことと、伝え方の順序を考えます。
この記事は、2026年10月時点の民法の規定をもとに、成人した子がいる親の再婚を想定して書いています。未成年の子がいる場合は、親権や養育費の扱いが加わるため、考え方が一部異なります。
伝えないまま再婚すると、何が起きやすいのか
ひきこもりの子がいることを再婚相手に伝える義務が、法律にそのまま書かれているわけではありません。ただ、同居をしない場合でも、子の存在はいずれ相手の知るところとなることが多いものです。親の家に子が住んでいる、毎月の生活費を親が出している、親族の集まりで話題になる、といった日常の場面から自然に伝わっていきます。
結婚した後に初めて知った場合、再婚相手が問題にするのは、子がひきこもっていることそのものよりも「なぜ黙っていたのか」という点であることが多いようです。隠していたことだけで直ちに婚姻の取消しや離婚が認められるとは限りませんが、夫婦の信頼関係に影響し、その後の話し合いを難しくするおそれがあります。
また、親自身が子のことで判断に迷ったとき、配偶者に相談できない状態が続くと、親が一人で抱え込む構造は再婚前と変わりません。伝えることは、再婚相手のためだけでなく、親自身が支えを得るための準備でもあります。
再婚によって、子と再婚相手の法律上の関係はどうなるのか
再婚相手の不安の多くは「自分もこの子の面倒を見なければならなくなるのか」という点にあります。伝える側の親も、法律上の関係を正確に知っておくと、相手の不安に具体的に答えやすくなります。
親が再婚しても、それだけで再婚相手と子が親子になるわけではありません。再婚相手から見て配偶者の子は「姻族1親等」という関係にとどまり、養子縁組をした場合に初めて法律上の親子になります。主な違いは次のとおりです。
| 項目 | 養子縁組をしない場合 | 養子縁組をした場合 |
|---|---|---|
| 法律上の関係 | 姻族(配偶者の子) | 親子(養親と養子) |
| 扶養義務 | 原則として負わない | 親子として扶養義務を負う |
| 相続 | 再婚相手が亡くなっても子は相続人にならない | 子は再婚相手の相続人になる |
| 親が亡くなった後 | 再婚相手は姻族関係を終了させる届出ができる | 親子関係は離縁しない限り続く |
扶養義務についての考え方
民法上、互いに扶養する義務を当然に負うのは、直系血族と兄弟姉妹です(民法877条1項)。親と子はこれにあたりますが、再婚相手と配偶者の子はあたりません。三親等内の親族について、家庭裁判所が「特別の事情」があるときに扶養の義務を負わせることができるという規定はあるものの(同条2項)、これが認められる場面は限られていると考えられています。
つまり、養子縁組をしない限り、再婚相手が子の生活費を負担する法律上の義務を当然に負うことはありません。この点は、再婚相手の不安を和らげる材料として率直に伝えてよい事実です。
同じ戸籍に入っても、親子にはならない
親が戸籍の筆頭者である場合、再婚相手がその戸籍に入り、結婚していない子と同じ戸籍に記載されることがあります。この場合でも、同じ戸籍にいることを理由に再婚相手と子が親子になるわけではありません。法律相談サイトでも、同じ戸籍だから実の親子と同じだと誤解している相談が見られるため、話し合いの前に親の側で整理しておくと誤解を避けられます。
親が亡くなった後の再婚相手の立場
親が先に亡くなった場合、再婚相手は市区町村に届け出ることで、子との姻族関係を終了させることができます(民法728条2項)。届出に子の同意は必要ありません。再婚相手が「将来、子のことを一人で背負わされるのではないか」と心配している場合、こうした仕組みがあることも、隠さずに伝えておくほうがよいでしょう。
伝える前に、親の側で整理しておきたいこと
再婚相手に伝える場面では、子の状態をどう説明するかに意識が向きがちです。しかし、相手が知りたいのは、結婚した後の生活に何が関わってくるのかという点です。伝える前に、少なくとも次の点を親の側で整理しておくと、話が具体的になります。
- 子の年齢と、ひきこもりの状態が続いている期間。
- 子の生活費を誰が、毎月どの程度負担しているか。
- 子がどこに住んでいて、再婚後に同居するかどうか。
- 暴力や物を壊す行為、金銭の要求があるかどうか、あった場合はいつ頃か。
- 医療機関や支援機関、相談窓口に関わってもらっているか。
- 親の財産と収入のうち、子の生活にどの程度充てる見込みか。
- 親が亡くなった後の子の生活について、考えていることがあるか。
特に、暴力や金銭の要求がある場合は、伝えずに同居を始めることは避けたほうがよいと考えられます。再婚相手の安全に関わるうえ、事情を知らない人が家に加わることで、子の側が強く反発する場合もあるためです。
伝え方の順序
伝える内容が整理できたら、順序を考えます。一度にすべてを話そうとすると、相手は何を聞かれているのか分からないまま答えを迫られる形になりがちです。次のような順序で、何回かに分けて話すことも一つの方法です。
- 子がいること、ひきこもりの状態にあることを、事実として簡潔に伝える。
- 現在の生活の形(住まい、生活費、子との関わり方)を説明する。
- 再婚相手に求めないこと(扶養や介護を当然とは考えていないこと)をはっきり伝える。
- 同居するかどうか、するならどのような形にするかを相談する。
- 親の財産と、親が亡くなった後のことについての考えを共有する。
見通しは楽観的にも悲観的にもしすぎない
相手を安心させたい気持ちから「そのうち働くと思う」「今だけのことだから」と伝えてしまうと、状況が変わらなかったときに、かえって信頼を損なうおそれがあります。反対に、子のことを必要以上に悪く語ると、再婚相手が子に対して最初から警戒心を持つことにもなりかねません。現状をそのまま伝え、分からないことは分からないと伝える姿勢が、長い目で見ると話し合いを続けやすくします。
子の側に再婚を伝える順序も考えておく
再婚相手に子のことを伝えるのと同じように、子に再婚のことをどう伝えるかも考えておく必要があります。子が再婚を知らないまま相手が家に出入りするようになると、子が自分の居場所を脅かされると受け止めることがあります。どちらに先に伝えるかは家庭によって異なりますが、双方が知らない状態のまま顔を合わせることは避けたほうがよいでしょう。
同居するかどうかで、考えることが変わる
再婚後に子と同じ家で暮らすかどうかは、伝え方以上に大きな分かれ目になります。再婚相手が親の家に移り住む場合、再婚相手にとっては、もともと子が暮らしていた家に後から入る形になります。生活の時間帯や台所・浴室の使い方など、細かな点が積み重なって、再婚相手と子の関係が悪くなることもあります。
法律相談サイトにも、成人した子を連れて再婚した後、再婚相手から子の生活態度を責められ続けているという相談が寄せられています。同居を前提にする場合は、生活のルールを事前に話し合い、親が再婚相手と子の間に立つ役割を担うことを意識しておく必要があります。
一方で、子に暴力の傾向がある場合や、再婚相手が子との同居に強い不安を持っている場合は、別々に暮らすことも選択肢になります。再婚を機に子の独立を考える家庭もありますが、その場合も、再婚相手のために子を家から出すという形にならないよう、子の生活の準備と並行して進めることが大切です。再婚相手が子から暴力を受けた場合の対応は、【親子問題】再婚相手(継親)に子が暴力をふるう|養子縁組の有無で変わる法的な関係と対応で詳しく扱っています。
財産と相続について、結婚前に話しておくこと
再婚相手と子の関係で、後から最も話し合いが難しくなりやすいのが相続です。親が亡くなった場合、再婚相手は配偶者として相続人になり、子も相続人になります。子が一人であれば、法定相続分は再婚相手と子で2分の1ずつです。
たとえば、親名義の自宅に子が住み続けていて、再婚相手も同じ家で暮らしている場合、親が亡くなった後に自宅を誰が引き継ぐのかが問題になります。再婚相手には、一定の条件のもとで自宅に住み続ける権利(配偶者居住権)を得る仕組みがありますが、子も同じ家に住んでいる場合の調整は簡単ではありません。
こうした事態に備える方法として、遺言で財産の分け方を決めておくことが考えられます。ただし、子には遺留分という最低限の取り分が認められているため、遺言ですべてを再婚相手に渡すと定めても、子から遺留分の請求を受ける可能性は残ります。反対に、子の生活を守るために子へ多く残す内容にした場合は、再婚相手の理解を得ておかないと、後の不信につながりかねません。親が亡くなった後の子の生活をどう設計するかについては、【親子問題】親亡き後問題|子の生活をどう設計しておくかもあわせてご覧ください。
養子縁組は急いで決めなくてよい
再婚相手が子との養子縁組を申し出てくれることもあります。成人した子との養子縁組には、子本人の同意が必要です。縁組をすると、再婚相手は子に対する扶養義務を負い、子は再婚相手の相続人になります。いったん縁組をすると、解消するには離縁の手続が必要になるため、再婚の時点で急いで決める必要はありません。夫婦と子の関係がある程度落ち着いてから、改めて考えることもできます。
伝えた後に、夫婦の考えが分かれたとき
伝えた後、再婚相手から「子のことをもっと厳しくするべきだ」「家を出てもらうべきだ」といった意見が出ることもあります。反対に、親の側が子をかばい、再婚相手が孤立感を抱くこともあります。夫婦で方針が分かれた場合の考え方は、【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときで整理しています。
また、再婚をきっかけに親戚から子のことで意見されることもあります。家族として決めた方針をどう守るかについては、【親子問題】親戚から子の問題に口出しされる|家族の方針を守る伝え方が参考になります。
話し合いの結果、生活費の負担や同居の条件について取り決めができた場合は、書面に残しておくことも考えられます。ただし、家族間の取り決めは、法的な拘束力の点で限界がある場合もあります。詳しくは【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界をご覧ください。
弁護士に相談できること
再婚相手に子のことを伝える場面そのものに、弁護士が立ち会うことは多くありません。ただ、伝える前の整理や、伝えた後の具体的な取り決めについては、弁護士が関わることで話が進みやすくなる場合があります。
- 再婚によって子と再婚相手の法律上の関係がどう変わるかを、夫婦そろって確認する場を設けることができます。
- 子の生活費の負担や同居の条件について、取り決めの内容を整理することができます。
- 相続や遺言について、再婚相手と子の双方の立場を踏まえた設計を考えることができます。
- 子に暴力や金銭の要求がある場合、親の代理人として子との窓口になり、再婚相手を含む家族を守る方法を検討できます。
当事務所では、自立支援カウンセラーと連携して、子の自立と親の生活の立て直しに取り組んでいます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応で、ご相談から自立までの流れは【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問でご紹介しています。
ひきこもりの子がいることを再婚相手に伝えるのは、決して簡単なことではありません。それでも、子の状態と生活の形、法律上の関係を整理したうえで伝えれば、再婚相手が抱く不安の多くには具体的に答えることができます。再婚を家族全体の生活を見直す機会と捉え、一人で抱え込まずに準備を進めていくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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