【親子問題】子が夜中に暴れた翌朝|親がその日のうちにすること
子が激しく暴れた後、しばらくすると別人のように穏やかになり、「ごめん」と謝ってきたり、家事を手伝ってくれたりする。そうした姿を見ると、親としては「本当は優しい子なのだ」「もう繰り返さないかもしれない」と感じるものです。ところが数日から数週間たつと、また同じように暴れてしまう。この繰り返しの中で、どう受け止めればよいのか分からなくなっている親御さんは少なくありません。
この記事では、暴れた後に優しくなるという流れをどう理解すればよいか、優しい時期に親が気をつけたいこと、法的な位置づけ、そして穏やかな時期だからこそ進めておける準備について整理します。
本記事は、成人した子・未成年の子のいずれにも共通する考え方を中心に説明しています。いま差し迫った危険がある場合は、記事を読み進める前に110番などで安全を確保してください。
暴れた後に優しくなる流れは、めずらしいものではありません
DVの分野では、暴力が「緊張が高まる時期」「暴力が起きる時期」「謝罪や優しさが見られる穏やかな時期」という局面を繰り返すことがあると説明されてきました。親子間の家庭内暴力でも、これに近い流れが見られることがあります。
穏やかな時期の謝罪や優しさが、本心からのものである場合も当然あります。子自身も、暴れてしまったことに後悔や自己嫌悪を抱えていることは珍しくありません。ただ、本心かどうかを見極めることよりも、同じ流れが繰り返されているかどうかに目を向けるほうが、親がとるべき行動を考えやすくなります。謝罪があっても暴力が繰り返されているのであれば、家庭の中だけで収まる状態ではなくなりつつある、と受け止めることが大切です。
優しい時期に、親が受け止めがちなこと
「もう大丈夫」と考えて準備をやめてしまう
穏やかな時期が続くと、避難先の確認や記録をつけることが「子を疑っているようで申し訳ない」と感じられ、手を止めてしまうことがあります。しかし、次に暴れたときに慌てずに済むかどうかは、穏やかな時期にどれだけ準備できていたかに左右されます。準備をすることは、子を見放すことではありません。
暴力そのものを「なかったこと」にしてしまう
謝ってくれたのだから水に流そう、と考える親心は自然なものです。一方で、けがの写真を撮らない、壊れた物をすぐに片付ける、誰にも話さないといった対応が重なると、後から相談したときに経緯を説明しづらくなります。許すことと、起きた事実を記録しておくことは、両立させることができます。
謝罪と引き換えの要求に応じてしまう
優しい態度とあわせて、「お金を貸してほしい」「欲しい物がある」といった要求が出てくる場合があります。関係が穏やかなうちに波風を立てたくないと応じ続けると、要求が通ることと暴力の後の優しさが結びつき、流れが固定されてしまうおそれがあります。金銭の要求への向き合い方は、【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで解説しています。
優しくなっても、起きた行為の法的な評価は変わりません
親子の間であっても、暴力や物を壊す行為は刑法上の罪にあたり得ます。窃盗などについては親族間の特例(刑法244条)がありますが、暴行や傷害には及びません。主な罪名は次のとおりです。
| 行為の例 | 罪名 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 殴る・蹴る・突き飛ばす | 暴行罪(刑法208条) | 2年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料 |
| 暴力によってけがをさせる | 傷害罪(刑法204条) | 15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 「殺す」などと告げて怖がらせる | 脅迫罪(刑法222条) | 2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 |
| 壁や家具、親の持ち物を壊す | 器物損壊罪(刑法261条) | 3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料 |
後から謝罪があったことや、親子関係が修復に向かっていることは、警察や検察が対応を考えるうえで事情として考慮されることはあります。ただし、謝罪によって行為そのものがなかったことになるわけではありません。
また、警察に相談したからといって、すぐに子が逮捕されるとは限りません。弁護士ドットコムに寄せられた相談への回答でも、警察が介入するかどうかは緊急性や重大性を総合的にみて判断され、相談を重ねることや診断書・被害届の提出によって介入が必要と判断される段階が来ることがある、と説明されています。繰り返しがあるご家庭では、相談の記録を残しておくこと自体に意味があります。詳しくは【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続をご覧ください。
繰り返しを「見える形」にする記録のつけ方
暴れた後に優しくなる流れでは、穏やかな時期の記憶が強く残り、暴力の頻度や程度を実際より軽く感じてしまうことがあります。そこで、暴れたときだけでなく、その前後の様子も含めて書き残しておくことをおすすめします。
- 日付と時間帯、その場にいた家族。
- 暴れる前のきっかけや、緊張が高まっていた様子。
- 暴力や暴言、物を壊すなどの具体的な内容。
- けがの部位や壊れた物(写真があれば一緒に保存)。
- 暴れた後の謝罪や優しい言動、あわせて出てきた要求。
- 前回から今回までの間隔。
記録を並べてみると、穏やかな期間が短くなっている、暴力の程度が強まっているといった変化に気づけることがあります。こうした変化は、相談先に状況を伝える際の重要な手がかりになります。暴力を受けたときに最初に確保したいことは、【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録と【親子問題】子が夜中に暴れた翌朝|親がその日のうちにすることで詳しく取り上げています。
穏やかな時期だからこそ、進めておけること
子が落ち着いている時期は、親が冷静に考え、外とつながる準備ができる貴重な時間でもあります。たとえば次のようなことを、無理のない範囲で整えておくと安心です。
- 一時的に身を寄せられる場所(親族宅、宿泊施設など)を決めておくこと。
- 身分証や保険証、通帳、常用している薬をすぐ持ち出せる場所にまとめておくこと。
- 警察や相談窓口の連絡先を、家族全員がすぐ分かるようにしておくこと。
- 家族の間で「この状態になったら通報する」という目安を共有しておくこと。
避難先の考え方は【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択、通報の目安は【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかで解説しています。
穏やかな時期に話し合いをするときの注意
落ち着いているときに、暴力についてきちんと話しておきたいと考えるのは自然なことです。ただ、過去の出来事を責める形になると、かえって緊張が高まるきっかけになることもあります。「次に暴れたら外の機関に相談する」と親の方針を短く伝えるにとどめ、長い説得や約束の取り付けは避けたほうが落ち着いて話せる場合が多いでしょう。約束を書面にすることにも一定の意味はありますが、それだけで暴力が止まるとは限りません。書面の意味と限界は【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で整理しています。
子の側の背景にも目を向ける
暴れた後に強い後悔を見せる背景には、本人も感情のコントロールに苦しんでいる事情がある場合があります。精神的な不調や発達の特性、飲酒や薬物の問題などが関わっていることもあり、そのときは医療機関や精神保健福祉センターなどにつなぐことが、繰り返しを断つ糸口になることがあります。子が18歳未満であれば、児童相談所も相談先になります。
背景を理解することは、暴力を許すこととは別のことです。親の安全を確保しながら、子に必要な支援につなぐという順序で考えると、整理しやすくなります。医療につなぐ判断については【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断もあわせてご覧ください。
距離をとることも、関係を守る選択肢です
暴力と謝罪の繰り返しは、親子の距離が近すぎることで生まれている面もあります。同じ家の中で、親が子の機嫌に合わせて生活を組み立て続けると、親の心身が先に限界を迎えてしまうこともあります。親子が一時的にでも離れて暮らすことは、関係を断つためではなく、お互いが落ち着いて自分の生活を立て直すための方法として考えることができます。距離の考え方は【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点、親御さん自身の休み方は【親子問題】子の問題で親自身が限界|親が先に休むための手配で取り上げています。
弁護士に相談すると何ができるのか
当事務所では、親御さんの代理人として親子の問題に介入し、子との連絡や金銭の要求への対応の窓口を担うことがあります。親が直接向き合い続けることで繰り返しが固定されている場合、窓口を第三者に代えることで流れが変わることがあります。
あわせて、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、子の住まい探しや仕事探し、生活面の支えを担ってもらう形で、親と子それぞれの自立を目指します。暴力の危険がある事案では、警察と連携しながら安全に配慮して進めます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
よくあるご質問
謝ってくれるなら、警察に相談しなくてもよいのでしょうか
謝罪があっても暴力が繰り返されているのであれば、一度相談しておくことをおすすめします。相談したことがすぐに逮捕などにつながるとは限らず、記録を残しておくことで、いざというときに状況を説明しやすくなります。
優しい時期に被害届を出すと、関係が悪くなりませんか
関係への影響を心配されるのは当然です。被害届を出すかどうかは、暴力の程度や繰り返しの状況、家族の安全を踏まえて判断することになります。出す前に考えておきたい点は、【親子問題】被害届を出すと家族関係はどうなるのか|出す前に考えることで解説しています。
穏やかな期間が短くなってきた気がします
暴れる間隔が短くなる、暴力の程度が強まるといった変化は、外部の支援が必要になっているサインの一つと考えられます。記録をもとに、早めに警察や専門機関、弁護士に相談することを検討してください。
暴れた後の優しさは、親にとって希望を感じさせるものです。その気持ちを大切にしながらも、繰り返しそのものに目を向け、穏やかな時期を準備と相談のために使うことが、親子双方を守ることにつながります。一人で受け止め続けず、外の力を借りることを考えてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


