【親子問題】子の暴力を近所に聞かれている、近所にどう説明すればいい?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は、成人した子から親への暴力や大きな物音が続き、近所の方に聞かれているのではないかと悩んでいるご家庭を主に想定しています。お子さんが18歳未満の場合や、親御さんが高齢の場合は、関わる窓口が異なることがあります。


子が大声を出したり物を壊したりする音が、壁越しや窓越しに近所へ届いているのではないか。翌朝、隣の方と顔を合わせたときに何と言えばよいのか分からない。家庭内暴力に悩む親御さんからは、暴力そのものと同じくらい、近所への説明に気をもんでいるというお話を伺うことがあります。

 近所への説明に、決まった正解があるわけではありません。ただ、話す範囲と順序を整理しておくと、家族の事情を必要以上に明かさずに済み、いざというときに周囲の助けも得やすくなります。この記事では、近所にどこまで、どのように伝えるかを考える手がかりを、法律上の注意点とあわせて整理します。

説明よりも先に確かめておきたいこと

 近所への説明を考える前に、まずご家族の安全が確保できているかを振り返ってください。近所に聞こえるほどの物音や声が続いているのであれば、家の中で起きていることも軽いものとは限りません。

 暴力でけがをしている、刃物などを持ち出された、身の危険を感じるといった場面では、近所の目を気にして通報をためらう必要はありません。110番をしたことで近所に知られてしまうのではないかと心配される方もいますが、その場の安全が何より優先されます。通報の目安は【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかで整理しています。

 また、近所の方に聞かれていること自体は、見方を変えれば、異変があったときに気づいてくれる人がいるということでもあります。説明の仕方を考えるときは、「隠す」ことだけでなく、「必要なときに助けてもらう」という視点も持っておくとよいでしょう。

近所の方は何を知り、何を気にしているのか

 説明の範囲を決めるために、近所の方の立場から状況を見てみます。

多くは物音や声から推し量っている段階

 壁越しに聞こえる怒鳴り声や物が倒れる音だけでは、誰が誰に何をしているのかまでは分からないことがほとんどです。近所の方は、夫婦げんかなのか、子どもへの虐待なのか、急病なのかといった見当がつかないまま、不安を感じていることがあります。こちらが思っているほど詳しい事情は伝わっていない一方で、事情が分からないからこそ心配している、という状態だと考えられます。

近所の方が警察などに知らせることもある

 大きな物音や悲鳴が続けば、近所の方が110番することもあります。お子さんが18歳未満であれば、虐待を疑った住民が児童相談所や市町村に知らせることもあり、児童虐待防止法は、虐待を受けたと思われる児童を見つけた人に通告を求めています(同法6条)。親御さんが高齢の場合には、高齢者の支援を担う行政の窓口が関わることもあります(【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組み)。

 通報を受けて警察官が訪ねてきた場合は、起きていることをありのままに伝えれば足ります。近所の方を責めたり、通報した人を探したりすることは控えたほうがよいでしょう。

どこまで説明するかを決める

 近所の方に家庭の事情を説明しなければならない法律上の義務はありません。説明しないという選択も十分にありえます。そのうえで説明するなら、相手との関係や住まいの形によって、伝える範囲を変えるのが現実的です。

相手伝える範囲の目安ねらい
あいさつ程度の近所の方物音で迷惑をかけたことへのおわび不安や憶測を和らげる
日ごろ行き来のある隣の方家族の事情で専門家に相談しながら対応していること見守りと、異変があったときの通報をお願いする
賃貸住宅の大家・管理会社物音の状況や設備の破損の有無、今後の対応の方針契約上のトラブルに広げない
分譲マンションの管理会社・管理組合苦情が出ている場合の対応状況共用部分や他の住戸とのトラブルを防ぐ


 いずれの場合も、伝えるのは「起きたことへのおわび」と「対応していること」までにとどめ、子の病名や過去の経緯、警察や医療機関とのやり取りといった詳しい事情は話さないのが基本です。

伝え方の例

 たとえば、次のような言い方が考えられます。

  • おわびだけを伝えるなら、「夜分に大きな音を立ててしまい、ご迷惑をおかけしました」とひと言添えるだけでも十分です。
  • 事情があることを伝えるなら、「家族のことで、いま専門家に相談しながら対応しています」と、対応中であることだけを伝える方法があります。
  • 見守りをお願いするなら、「もし悲鳴や大きな音が聞こえたら、ためらわずに110番していただけると助かります」と、具体的にお願いしておく方法があります。


 「何があったのですか」と重ねて聞かれた場合も、「家族のことなので詳しくはお話しできませんが、対応はしています」と答えれば十分です。詳しく説明しないことは、失礼にはあたりません。

説明するときに気をつけたいこと

 近所への説明は、言い方によっては家族の関係や今後の対応に影響することがあります。とくに次の点に注意してください。

子の病名や前歴など、詳しい事情は話さない

 子の精神的な不調や通院の状況、過去に警察が関わったことなどは、子本人にとって知られたくない情報であることが多いものです。人の社会的な評価を下げるような事実を周囲に伝えると、たとえそれが事実であっても名誉毀損(刑法230条)や、民事上のプライバシー侵害が問題になる可能性が全くないとは言えません。近所の一人に話したつもりでも、そこから周囲に広がることがあり、少人数に話した場合でも、広がるおそれがあれば問題とされることがあります。

 また、近所に事情を話したことが子に伝わると、「親に恥をかかされた」と受け止められ、親への反発が強まることもあります。説明の内容は、子の耳に入っても困らない範囲にとどめておくと安心です。

「大丈夫です」と言い切らない

 心配して声をかけてくれた方に、つい「何でもありません」「大丈夫です」と答えてしまうことがあります。ただ、そう言い切ってしまうと、次に大きな音が聞こえたときに、近所の方が通報を控えてしまうかもしれません。本当に危ないときに助けを得られる余地を残すためにも、「対応しています」「何かあればお願いします」という言い方のほうが望ましいでしょう。

賃貸住宅では、壁や設備の破損に注意する

 賃貸住宅で子が壁やドアを壊した場合、借主には退去時に損傷を元に戻す義務があるため(民法621条)、修理費の負担が問題になることがあります。また、騒音の苦情が重なると、大家や管理会社との関係が悪くなることもあります。苦情が届く前に、破損の有無と今後の対応を自分から伝えておくほうが、話がこじれにくいでしょう。物の破損を法的にどう扱えるかは【親子問題】壁や家具を壊された|器物損壊として扱えるかで解説しています。

近所に知られることを恐れて、相談を遅らせないために

 「警察に相談したら、パトカーが来て近所中に知られてしまう」という不安から、相談をためらう方も少なくありません。けれども、緊急の場面でなければ、親御さんが警察署へ出向いて相談することもできます。相談した記録は、後に被害届や保護の手続を考えるときの手がかりにもなります(【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続)。

 弁護士に相談した内容が、弁護士から近所や子に伝わることもありません。弁護士には守秘義務があり、子に連絡をとる場合も、いつ、どのように伝えるかをご家族と相談したうえで進めます(【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方)。

 当事務所では、親御さんの代理人として子との窓口を担い、自立支援カウンセラーとチームを組んで、子が家を出て自立するまでを支えています。親子が距離をとることで家の中の衝突が減り、結果として近所への気がかりも小さくなっていくことがあります。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

よくあるご質問


近所の方に「虐待ではないか」と疑われていないか心配です

 物音だけでは事情が分からないため、親が暴力を受けている側であっても、逆の立場だと受け取られることはありえます。警察や行政から事情を聞かれた場合は、子からの暴力の状況や、これまでの相談の経過を落ち着いて伝えてください。日ごろから日時や出来事を記録しておくと、説明の助けになります。

近所に知られたので、引っ越したほうがよいでしょうか

 近所に知られたことだけを理由に、引っ越しを急ぐ必要はありません。ただ、子との同居を続けることで危険が続く場合には、親が一時的に家を離れることも選択肢になります。その場合も、近所への気兼ねではなく、安全を基準に考えることが大切です(【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択)。

子が近所の人にも怒鳴ったり、からんだりするようになりました

 子の言動が家の外に及び、近所の方に迷惑や被害が生じている場合は、近所の方との関係を親だけで抱え込まないことが大切です。成人した子の行為について親がどこまで責任を負うのかは、【親子問題】子が近所の人とトラブルを起こした|成人した子の賠償と親の責任で整理しています。

関連する解説記事



近所への説明に迷ったら

 近所への説明に悩むのは、家の中の状況がまだ落ち着いていないことの表れでもあります。伝え方を整えることと並行して、子との関係そのものをどう変えていくかを考えることが、近所への気がかりを減らす近道になることもあります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【親子問題】子の暴力を近所に聞かれている、近所にどう説明すればいい?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼