【親子問題】就労支援の選択肢|サポステ・就労準備支援事業の実際
子が大声を出したり物を壊したりするたびに、「ごめんね」「お母さんが悪かった」と謝って、その場を収めてきた。そうした日々を重ねるうちに、「このままでいいのだろうか」と迷い始める親御さんは少なくありません。
この記事は、主に成人した子、またはそれに近い年齢の子と同居し、暴力や暴言に悩んでいる親御さんを想定しています。いま身の危険を感じている場合は、この記事を読み進めるより先に、その場を離れて110番通報をしてください。
先にお伝えすると、謝ることそのものが間違いというわけではありません。ただ、「暴れると親が謝り、要求が通る」という流れが繰り返されると、暴力が収まりにくくなることがあります。この記事では、謝る対応を続けたときに起きやすいこと、法律の上での位置づけ、対応を少しずつ変えていくための順序を整理します。
暴れるたびに謝ってしまうのは、珍しいことではありません
子が暴れたときに親が謝ってしまう背景には、たとえば次のような気持ちがあります。
- 謝れば、とりあえずその場は静かになる。
- 近所に声が聞こえるのが気になって、早く収めたい。
- 自分の育て方が悪かったのではないかと思ってしまう。
- 言い返すと、もっとひどくなるのが怖い。
どれも、家族を守ろうとする中で自然に出てくる気持ちです。危険を感じる場面で言い返さずにやり過ごすことは、身を守るうえで意味のある判断でもあります。この記事は、これまで謝ってきた親御さんを責めるためのものではありません。そのうえで、同じ対応を何年も続けたときに何が起きやすいのかを、一度立ち止まって考えてみることには意味があります。
謝ることで場が収まるとき、起きやすいこと
謝ることで一時的に落ち着いたとしても、その積み重ねが次のような形で表れることがあります。
暴れることが「話を通す方法」になりやすい
暴れる、親が謝る、要求が通る、という経過が何度も続くと、子の側に「強く出れば親は折れる」という受け止め方が残ることがあります。本人が意識しているかどうかにかかわらず、暴れることが親とのやり取りの手段になり、次に不満が生じたときにも同じ方法が選ばれやすくなります。
謝る範囲が少しずつ広がっていく
最初は「言い方が悪かった」と謝る程度だったものが、やがて「お前のせいで人生が狂った」と過去の子育て全体への謝罪を求められたり、謝罪の言葉と引き換えにお金や物を求められたりする形に変わっていくことがあります。土下座や謝罪文を求められるようになっている場合は、謝罪がすでに要求の一部になっていると考えられます。
親の側の判断が擦り減っていく
謝り続けるうちに、どこが親として本当に振り返るべき点で、どこが暴力によって引き出されている謝罪なのか、親御さん自身にも区別がつきにくくなることがあります。「自分が悪いのだから仕方がない」という受け止め方が強くなるほど、外へ相談するきっかけを失いやすくなります。
謝ることと、暴力を受け入れることは分けて考える
親が過去の言動を振り返り、悪かったと思う点を子に伝えることは、関係を立て直すうえで意味を持つ場合もあります。見直したいのは、謝罪が暴力を止めるための対価として差し出されている場面です。両者を分けて整理すると、次のようになります。
| 場面 | 謝罪の性質 | 考えたいこと |
|---|---|---|
| 落ち着いた時間に、親が自分から過去の言動を振り返って伝える | 親自身の判断による謝罪 | 伝える内容と時期を親が選べているか |
| 暴れている最中に、収めるために謝る | 身を守るための一時的な対応 | 謝罪とあわせて要求にまで応じていないか |
| 子から謝罪の言葉や土下座、謝罪文を求められて応じる | 暴力や威圧によって引き出された謝罪 | 暴力や脅しを伴う場合、法的な問題を含みうる |
| 謝罪と一緒にお金や物を渡す | 要求への応諾 | 応じた経過を記録し、続けるかどうかを見直す |
一つ目の謝罪まで否定する必要はありません。気をつけたいのは、二つ目から四つ目の流れが繰り返し続いている状態です。
親子の間でも、暴力は法律の上で暴力として扱われます
「家族の中のことだから」と思われがちですが、親子の間であっても、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)の規定が当てはまらなくなるわけではありません。物を壊せば器物損壊罪(刑法261条)、「殺すぞ」などと言って怖がらせれば脅迫罪(刑法222条)が問題になる場合があります。親族の間の特例(刑法244条)が及ぶのは窃盗などの一部の財産犯に限られ、暴行や傷害には及びません。親子間の暴力が立件される場面については、【親子問題】親子間の暴行・傷害は立件されるのか|特例が及ばない範囲で解説しています。
謝罪に関していえば、暴行や脅迫を用いて土下座をさせたり謝罪文を書かせたりするなど、義務のないことを行わせた場合には、強要罪(刑法223条)が問題になる余地があります。考え方の詳細は土下座・謝罪文の強要|「義務のないこと」の広さをご覧ください。
もっとも、どの行為を刑事事件として扱うかは、被害の程度や続いている期間、家族の意向など、個別の事情によって判断されます。法律上の位置づけを知っておく意味は、警察に届けるかどうかを今すぐ決めることよりも、「謝って済ませるしかない」という前提をいったん外して考えられるようになる点にあります。
今の対応を少しずつ変えていくために
対応を変えるといっても、明日から急に謝るのをやめる、というやり方が適しているとは限りません。これまでの流れが急に変わると、子の側の反発が強まることもあるためです。次のような順序で、少しずつ形を変えていくことが考えられます。
危ない場面では、身を守ることを優先する
暴れている最中に、謝るのをやめて正面から言い返すことはおすすめできません。その場では刺激を避け、別の部屋や家の外へ離れることを第一に考えてください。刃物を持ち出す、首を絞めるなど命に関わる危険があるときは、ためらわずに110番通報をしてください。通報の判断については、【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかも参考になります。
謝ることと、要求に応じることを切り離す
その場を収めるために謝ったとしても、そのあとでお金を渡す、無理な約束をするといった要求への応諾まで一緒にする必要はありません。「謝ってもお金は渡さない」という線を一つ決めておくだけでも、暴れることと要求が通ることの結びつきを弱めるきっかけになります。金銭の要求を断ることの位置づけは、【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで解説しています。
起きたことを記録に残す
謝って済ませてきた出来事は、家の外に何も残っていないことがほとんどです。後で警察や弁護士に相談するときに経過を伝えられるよう、次のような点をメモに残しておくと役立ちます。
- 日時と場所。
- 暴れるきっかけになった出来事。
- 子が言ったこと、したこと。
- けがや壊れた物の有無と、その写真。
- 親が謝ったかどうかと、渡したお金や物。
暴れた翌日にしておきたいことは【親子問題】子が夜中に暴れた翌朝|親がその日のうちにすることで、応じてきた経過を残す意味は【親子問題】金銭要求に応じ続けた記録は、後で意味を持つかで、それぞれ整理しています。
家族の中で対応をそろえる
一方の親は厳しく接し、もう一方の親は謝ってかばう、というように対応が分かれていると、子は応じてもらいやすい方へ要求を向けがちです。対応を変える前に、同居する家族の間で「何には応じ、何には応じないか」を話し合っておくことが大切です。夫婦で考え方が分かれているときの整理は、【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときで取り上げています。
親自身が休める時間をつくる
謝り続ける生活が長くなると、親御さんの心身にも疲れがたまっていきます。疲れた状態では、どうしても目の前の衝突を早く収めることが優先になり、謝る対応から抜け出しにくくなります。親が先に休むための手配については、【親子問題】子の問題で親自身が限界|親が先に休むための手配をご覧ください。
家族だけで変えようとしなくてよい理由
長く続いた親子のやり取りの型は、家族の内側だけで変えるのが難しいことが少なくありません。親が態度を変えたとたんに、その矛先がさらに親へ向かうこともあります。第三者が間に入ることで、親が一人で子と向き合う場面を減らすことができます。
相談先としては、警察署の生活安全課、精神保健福祉センター、ひきこもり地域支援センター、医療機関などがあり、それぞれ担う役割が異なります。窓口の選び方は、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担で解説しています。
当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として子との話し合いの窓口を引き受け、金銭の要求などに親が直接応じなくてよい形を整えたうえで、自立支援カウンセラーと役割を分担しながら子の生活の立て直しを支える取り組みを行っています。必要に応じてご自宅を訪問し、子と直接話をすることもあります。ご家庭ごとに事情が異なるため、対応の内容はお話を伺ったうえで決めていきます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応で、実際の進め方は【親子問題】弁護士とカウンセラーはどう介入するのか|4つの事例で見るサービスの実際でご紹介しています。
よくあるご質問
謝るのをやめたら、暴力がひどくなりませんか
対応を変えた直後に、子の反発が一時的に強まることはあります。そのため、急に態度を変えるよりも、身を守る手段や相談先を先に整えてから進めることが考えられます。第三者が入った後に子が逆上した場合の備えについては、【親子問題】介入の後に子が逆上した|再度の暴力への備えをご覧ください。
過去の子育てについて子に謝ることも、やめた方がよいのでしょうか
親が自分の判断で、落ち着いた場面で過去の言動を振り返って伝えることまで避ける必要はありません。ただし、その謝罪を理由に、お金や生活の世話を際限なく求められている場合は、謝罪と要求を分けて考えることが必要です。謝ることと、求められたものに応じることは、別々に判断してかまいません。
子から謝罪文を書くよう求められています。書いてもよいですか
謝罪文は、後で「親が非を認めた」ものとして示されたり、追加の要求の材料にされたりすることがあります。暴力や脅しを受けて書かされる場合には、強要罪が問題になる余地もあります。書くかどうか迷っている段階で、一度ご相談いただくことをおすすめします。
まとめ
- 暴れるたびに謝ってしまうのは、家族を守ろうとする中で自然に生じる対応です。
- ただ、謝罪とあわせて要求に応じる流れが続くと、暴れることが話を通す方法として残りやすくなります。
- 親子の間であっても、暴行や傷害、器物損壊、脅迫、謝罪の強要は法的な問題になりえます。
- 対応を変えるときは、身を守ること、謝罪と要求を切り離すこと、記録を残すことから始めると進めやすくなります。
- 家族だけで抱え込まず第三者に入ってもらうことで、親が一人で子と向き合う場面を減らせます。
謝ることで保ってきた家庭の均衡を変えるには、時間と手順が必要です。今の対応を続けてよいのか迷い始めたこと自体が、見直しの入口になります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


