不倫慰謝料の時効|「知ってから3年・行為から20年」の数え方
この記事は、2026年10月時点の民法、弁護士法、ストーカー行為等の規制等に関する法律(令和7年12月施行の改正を反映)、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律にもとづいて作成しています。個別の事情によって結論が変わることがあるため、具体的な対応はご相談の際にご確認ください。
「別れたいと伝えたら、何をされるか分からない」「以前、別れを口にしたときに物を投げられた」。交際を終えたいのに、相手が怖くて言い出せないという方からのご相談は少なくありません。法律相談の場にも、自宅を知られているので一方的に連絡を絶てば家に来るのではないか、別れるなら大金を用意しろと言われている、といった悩みが寄せられています。
結論からいえば、弁護士が代理人として、別れの意思を相手に伝えることはできます。ただ、相手が怖いという事情があるときは、「誰が伝えるか」と同じくらい、「伝える前に何を整えておくか」が大切になります。
この記事では、怖さの中身ごとに伝える前の準備と、通知の内容、通知後の備えを説明します。弁護士に任せたときの手続全体の流れは【男女トラブル】別れ話を弁護士に任せるときの流れ|本人と会わずに関係を終えるで、相談してよい段階の目安は【男女トラブル】別れを切り出せない|弁護士に相談してよい段階なのかで扱っています。
弁護士から別れを伝えてもらうことはできるのか
お互いが独身で婚約もしていない交際は、どちらか一方が終わりにすると伝えれば、相手が納得していなくても終わります。弁護士は依頼を受けて代理人となり、交際を終える意思と、今後の連絡は弁護士にしてほしいという意向を、書面などで相手に伝えます。婚約や内縁の関係にある場合や同棲している場合は、通知の後に決めることが増えるため、その点も相談の段階で確認しておきます。
相手が怖い方にとって、弁護士から伝えてもらう意味は、別れの言葉を代わりに届けることだけではありません。その後のやり取りの窓口が弁護士に移り、相手の反応をご本人が一人で受け止めずに済むことに、代理人を立てる大きな意味があります。
「怖い」の中身によって、伝える前の準備は変わる
ひとくちに「相手が怖い」といっても、何が怖いのかによって、通知の前に整えておくべきことは変わります。主な場面を整理すると、次のようになります。
| 怖さの中身 | 通知の前に整えておきたいこと | 関係する主な手続 |
|---|---|---|
| 殴られた・物を投げられたことがある | 身を寄せる先の確保と警察への事前相談 | 保護命令(同棲の場合)、被害届 |
| 「別れたら殺す」「家に行く」と言われている | 言葉の記録と警察への事前相談 | 脅迫罪の被害届、ストーカー規制法の警告 |
| 「別れたら死ぬ」とほのめかされている | 緊急時の通報先と、相手の家族など連絡先の確認 | 警察・救急への通報 |
| 自宅や勤務先を知られている | 通知後の待ち伏せへの備えと、勤務先への相談の要否 | ストーカー規制法の警告・禁止命令 |
| 同棲していて生活の拠点が同じ | 転居先の確保と荷物の持ち出しの段取り | 保護命令、住民票の閲覧制限の支援措置 |
暴力を受けたことがある場合
生活の本拠を共にする交際相手からの暴力には、配偶者暴力防止法の保護命令の規定が準用されます(配偶者暴力防止法28条の2)。令和6年4月施行の改正により、身体への暴力に加えて、生命や身体などに対する脅迫を受けた場合にも、接近禁止命令を申し立てられるようになっています。同居していない交際相手の場合は保護命令の対象にならないため、ストーカー規制法や刑事手続での対応を検討します。詳しくは交際相手からのDV(デートDV)|保護命令は使える?同棲の有無で変わる対応をご覧ください。
脅しの言葉を向けられている場合
生命、身体、自由、名誉、財産に害を加えると告げる行為は、脅迫罪にあたる可能性があります(刑法222条)。言われた日時や言葉を、メッセージの画面保存やメモで残しておくと、警察に相談するときに経緯を伝えやすくなります。相手に危害を加えると言われている場合と、相手自身を傷つけるとほのめかされている場合とでは、とるべき対応が異なります。前者は【男女トラブル】「別れたら殺す」と言われた|自傷の予告とは別の対応が必要になる理由、後者は「別れたら死ぬ」と言われて別れられない|自傷をほのめかす相手への対応で整理しています。
住まいや勤務先を知られている場合
別れを伝えた後に、拒んでいるのに待ち伏せや押しかけ、連続した連絡が続けば、ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたる可能性があります(同法2条1項)。令和7年12月30日施行の改正で、被害者からの申出がなくても、警察が職権で警告できる仕組みが設けられました。勤務先も被害者を援助するよう努める立場に加えられたため、勤務先に事情を伝えるかどうかも通知の前に考えておきたい点です。
怖い相手に伝えるときの順序
相手が怖いときは、別れを伝えることを最初ではなく、準備が整った最後に置くのが基本の考え方です。一般的な順序は次のとおりです。
- 危険が差し迫っていないかの確認と、差し迫っている場合の110番での安全確保。
- これまでの暴力や脅しの記録の保全。
- 警察への事前相談と、相談した記録の確保。
- 同棲中であれば、転居先の確保と荷物の持ち出し。
- 共有しているパスワードや位置情報共有の扱いの整理。
- 弁護士からの通知の発送。
パスワードの変更や位置情報共有の停止は、それ自体が相手に「何か起きている」と気づかせるきっかけになることがあります。切り替える時期は、通知の時期とあわせて決めておくのが安全です。考え方は【男女トラブル】相手がSNSのパスワードを知っている|別れる前に切り替える順序で取り上げています。
警察に先に相談しておく意味
暴力や脅しがあった場合は、通知を送る前に、最寄りの警察署や警察相談専用電話(#9110)に相談しておくことを検討します。事前に経緯を伝えておくと、通知の後に相手が押しかけてきたときなどに、状況を一から説明せずに済むことがあります。弁護士は、警察への相談と交渉をどの順序で進めるかを一緒に組み立てます。窓口の使い分けは警察に相談すべきか、弁護士に相談すべきか|窓口の使い分け早見表にまとめています。
同棲中は「家を出てから伝える」
同じ部屋で暮らしている状態で通知が届くと、相手の感情がその場でご本人に向かうおそれがあります。暴力のおそれがある場合は、転居先や身を寄せる先を確保し、必要な荷物を持ち出してから通知を送る順序が考えられます。荷物の持ち出しは相手の不在時に行い、危険があるときは事前に警察に相談しておきます。避難の手順は交際相手から避難したい|安全な別居・避難と保護の手続き、転居先を知られないための手続は【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序をご覧ください。
通知が届く日の過ごし方を決めておく
通知を発送する日は、弁護士とあらかじめ共有しておきます。届く見込みの日は、一人で自宅にいる時間を避ける、相手からの連絡には返事をせず内容を保存する、弁護士にすぐ連絡できるようにしておく、といった備えをしておくと落ち着いて過ごしやすくなります。
弁護士からの通知で伝えること・伝えないこと
通知に書く主な内容
事案によって異なりますが、通知には主に次のような内容を記載します。
- 交際を終える意思。
- 今後の連絡は弁護士にしてほしいという求め。
- ご本人やご家族、勤務先への接触を控えてほしいという求め。
- 清算が必要な物やお金がある場合の、協議の申入れ。
- すでに脅しやつきまといがある場合の、その行為をやめるよう求める旨。
通知に書かないこと
通知の連絡先は弁護士の事務所になるため、ご本人の転居先や現在の住所を記載する必要はありません。別れの理由を詳しく並べて相手を責めるような表現も、反発を招きやすいため避けるのが一般的です。相手を必要以上に刺激しない文面にするのか、すでに続いている行為をはっきり指摘するのかは、これまでの経緯を踏まえて弁護士と決めていきます。通知の働きは受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで説明しています。
弁護士から伝えてもらっても、できないこと
相手の行動を強制的に止める力はない
弁護士からの通知は、今後の連絡を弁護士にするよう求めるものであり、それだけで相手からの連絡が法律上禁じられるわけではありません。多くの場合は直接の連絡が落ち着きますが、続くときは警察の警告や禁止命令、裁判所の手続を組み合わせて対応します。効きやすい場面とそうでない場面は弁護士に窓口を移すという選択|代理人通知が効く場面・効かない場面で整理しています。
身辺の警護はできない
弁護士は交渉や法的な手続を担いますが、ご本人のそばに付き添って身を守ることはできません。危険が差し迫っているときに駆けつけるのは警察の役割です。弁護士と警察の両方の窓口を確保しておくことが備えになります。
通知の後に相手がとりうる反応と備え
通知を受け取った相手の主な反応と、それぞれの備えを整理します。
| 相手の反応 | ご本人の対応 | 弁護士・警察の対応 |
|---|---|---|
| 弁護士に連絡してくる | やり取りは弁護士に任せる | 言い分を聞き、清算や接触しない約束を協議 |
| ご本人に直接連絡してくる | 返事をせず、内容を保存して弁護士に共有 | 直接の連絡をやめるよう改めて求める |
| 自宅や職場の付近に現れる | その場で応じず、危険を感じたら110番 | 警察への相談、警告・禁止命令の検討 |
| 自傷をほのめかす | 一人で抱えず、緊急時は110番・119番 | 相手の家族への連絡などを検討 |
直接連絡が来たときの対応は依頼後に相手方から直接連絡が来たら|窓口一本化の実践、待ち伏せが続くときの手続は元交際相手のつきまとい・待ち伏せ|ストーカー規制法でできる対応で扱っています。脅しや暴力で別れられなかった方の代理人として関与した例として、【解決事例】交際相手からの脅迫・暴行で別れられなかった事例|弁護士介入で穏便に解決もご参照ください。
よくあるご質問
一度も別れを口にしていなくても、いきなり弁護士から伝えてもらってよいのでしょうか
差し支えありません。相手が怖い場合は、ご本人が先に伝えないほうが安全なこともあります。ただ、相手にとっては突然の通知になるため、届く時期や文面は、相手の性格やこれまでのやり取りを踏まえて検討します。
相談したことが相手に知られることはありませんか
弁護士には守秘義務があり(弁護士法23条)、相談した事実や内容が、ご本人の了解なく相手に伝わることはありません。通知を送るかどうかは、相談の後にあらためて決められます。詳しくは【男女トラブル】相手に知られずに相談できるか|相談しただけで相手に伝わることはないをご覧ください。
まとめ
- お互いが独身で婚約もしていない交際は、一方が終わりを伝えれば終わり、弁護士が代理人としてその意思を伝えることができます。
- 相手が怖いときは、何が怖いのかによって、通知の前に整えるべきことが変わります。
- 同棲中の交際相手からの暴力には、保護命令の規定が準用されます(配偶者暴力防止法28条の2)。
- 令和7年12月30日施行の改正で、警察が職権でストーカー行為の警告をできるようになりました。
- 怖い相手には、安全の確保と警察への相談を先に済ませ、通知を最後に送る順序が基本です。
- 弁護士の通知に相手の行動を強制的に止める力はなく、身辺の警護もできないため、警察の窓口とあわせて備えます。
- 今まさに危険が迫っているときは、まず110番などで安全を確保してください。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。別れたいのに相手が怖くて言い出せない方には、安全を確保する順序の組み立てから、代理人として別れの意思をお伝えする対応まで、ご事情に合わせて方針をご提案します。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


