【男女トラブル】交際相手と共同名義で借りた部屋を、一人で解約できる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

本記事は、2026年10月時点の民法(2020年4月施行の改正債権法を含む)をもとに、一般的な居住用の賃貸借契約を想定して解説しています。実際の扱いは、契約書の条項や貸主・管理会社の運用によって異なることがあります。


交際相手と同棲を始めるとき、二人の収入を合わせて入居審査を通すために、賃貸借契約を二人の名前で結ぶことがあります。ところが別れることになり、「自分はもう出ていくので、この部屋の契約を終わらせたい」と考えても、相手が解約に応じてくれないという相談は少なくありません。

 結論からいうと、二人がともに借主となっている契約は、原則として一人だけの意思では解約できません。ただし、契約書の書き方によっては「共同名義」だと思っていたものが実は一人の契約だったということもあり、その場合は取れる手段が変わります。この記事では、契約の形の確かめ方から、一人で解約できないときに選べる道、お金の清算で気をつけたい点までを順に整理します。

最初に確かめたいのは、本当に「共同名義」なのか

 「二人で借りた」という感覚があっても、契約書の上で二人とも借主になっているとは限りません。同棲の部屋でよく見られる契約の形は、おおむね次の3つです。

契約書での書かれ方二人の立場解約の申入れ
賃借人の欄に二人の名前がある二人とも借主(共同賃借人)原則として二人そろって行う
賃借人は一人で、もう一人は入居者・同居人の欄にある借主は一人、もう一人は同居人借主が単独で行える
賃借人は一人で、もう一人は連帯保証人の欄にある借主は一人、もう一人は保証人借主が単独で行える


 賃借人の欄に二人の名前が並んでいる場合は「共同賃借人」と呼ばれ、この記事で扱う「共同名義」にあたります。一方、借主は一人で、もう一人は入居者や同居人として書かれているだけの場合、契約の当事者は借主一人です。この場合は借主が単独で解約を申し入れることができますが、同居人がその後も住み続けているときは、部屋の明渡しをどう進めるかという別の問題が残ります。この点は【男女トラブル】同棲していた部屋から相手が出ていかない|名義を貸した側にできることで解説しています。

 契約書が手元にない場合は、管理会社や仲介した不動産会社に写しを求めると、借主の欄の記載や解約に関する条項を確かめられます。

共同名義の部屋は、二人そろって解約するのが原則

 民法544条1項は、契約の当事者の一方が複数いる場合、契約の解除はその全員から、または全員に対してしなければならないと定めています(解除の不可分性)。一部の借主との間でだけ契約が残るような複雑な関係が生じるのを避ける趣旨とされており、借主が二人の賃貸借で借主側から契約を終わらせる場合も、二人がそろって意思表示をすることが求められると解されています。

 契約書の「解約の申入れ」の条項に基づいて期間の途中で契約を終わらせる場合も、実務上は共同賃借人全員の署名がそろった解約通知書を求められるのが一般的です。そのため、一人だけが管理会社に解約を申し入れても受け付けてもらえない、あるいは契約全体が終わらないということが起こります。

 例外として、契約書に「各賃借人は単独で解約を申し入れることができる」といった特約が置かれていることもあります。解除の不可分性は当事者の合意で変えられる規定と考えられているため、まずは契約書の解約に関する条項を読み、特約の有無を確かめてください。

部屋を出ても、家賃を払う義務は残る

 共同名義の契約で注意したいのは、自分だけ先に引っ越しても、契約が続く限り借主としての立場は残るという点です。

 共同賃借人の家賃の支払義務については、それぞれの借主が全額について支払う義務を負うと考えるのが判例の立場です(不可分債務)。貸主から見れば、二人のどちらに対しても家賃の全額を請求できることになります。二人の間で「家賃は半分ずつ」と決めていても、それは二人の内部の取り決めにとどまり、貸主に対して「自分は半額だけ払えばよい」と主張することは難しいと考えられます。

 相手が家賃を滞納すると、部屋を出た側にも督促が届いたり、保証会社が立て替えた分を請求されたりするおそれがあります。親が連帯保証人になっている場合は、親に請求が及ぶこともあります。自分が多く負担した分を相手に求めること(求償)はできますが、相手に支払う力がなければ回収に時間がかかります。

一人で解約できないときに選べる道


二人で合意して解約する

 手続として最も分かりやすいのは、二人で解約に合意し、そろって解約通知を出す方法です。解約の予告期間は契約書で1か月前、2か月前などと定められていることが多いため、退去日から逆算して通知の時期を決めます。あわせて、退去までの家賃の負担、退去費用、敷金の受け取り方まで話し合っておくと、後の争いを減らせます。

相手が住み続けるなら、相手の単独名義に切り替える

 相手がその部屋に住み続けたいと考えている場合は、自分が契約から抜け、相手一人の契約に切り替える方法があります。契約の内容を変えることになるため、貸主の承諾が必要です。貸主や保証会社が相手一人の収入で改めて審査を行い、通らなければ切り替えられないこともあります。新たに契約を結び直す形をとる場合は、費用の負担や敷金の引継ぎについても管理会社に確かめておくとよいでしょう。

自分が住み続けるなら、自分の単独名義に切り替える

 反対に、自分が残って相手に出ていってもらう場合も、相手の名前を契約から外すには、相手と貸主の双方の同意が必要です。共同賃借人である相手にも部屋を使う権利があるため、名義を外す前に一方的に鍵を替えたり、荷物を運び出したりすることは避けてください。

相手が話し合いに応じないとき

 相手が解約にも名義の切り替えにも応じない場合、相手に解約への同意を強制する簡単な手続は用意されていません。まずは書面やメッセージで解約を希望する理由と提案する条件を伝え、それでも進まなければ、弁護士を窓口にした交渉や、簡易裁判所の民事調停を利用して合意を目指すことが考えられます。貸主や管理会社に事情を伝えると、相手に連絡をとってもらえたり、名義変更の手順を案内してもらえたりすることもあります。相手と連絡そのものが取れないときの進め方は、【男女トラブル】相手が話し合いに応じない|連絡が取れないまま清算する方法でも取り上げています。

解約と一緒に整理しておきたいお金のこと

 共同名義の部屋を解約するときは、次のような費用の分け方が問題になりやすいです。

  • 退去日までの家賃と、予告期間に満たない場合の違約金。
  • 初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など)を誰がいくら出したか。
  • 原状回復費用やハウスクリーニング代の負担。
  • 敷金が返ってきたときの受け取り方と分け方。
  • 二人で使っていた家具・家電や、生活費の立替分。


 敷金がどちらの口座に返ってくるかは手続によって異なり、受け取った側がもう一人に渡すかどうかで争いになることがあります。初期費用を出した割合に応じて分けるのか、退去費用と差し引きするのかを、解約の前に決めておくと安心です。

 退去費用の分け方は同棲解消の敷金・原状回復・退去費用は誰が払う?、家賃や生活費の立替分の清算は【男女トラブル】同棲中の生活費|別れた後に家計を清算する、家具や家電の分け方は【男女トラブル】同棲を解消するとき、家具・家電はどう分けるのか|共同で買ったものの扱いで詳しく解説しています。

避けたほうがよい対応

 解約が思うように進まないと、強い手段を取りたくなることがあります。しかし、次のような対応は、かえって話をこじらせるおそれがあります。

  • 相手に無断で鍵を交換すること。
  • 相手の荷物を勝手に処分すること。
  • 解約が成立していないのに、自分の分の家賃だけを止めること。
  • 一人で解約を申し入れたまま、契約が終わったものと考えて放置すること。


 共同賃借人である相手にも部屋を使う権利があるため、鍵の交換や荷物の処分は、相手から損害賠償を求められるきっかけになりかねません。また、家賃の支払いを止めると、滞納を理由に貸主から契約を解除され、退去を求められるだけでなく、保証会社の利用や次の部屋探しに影響が出ることもあります。鍵や荷物の扱いについては、【男女トラブル】別れた相手が合鍵を持っている|返してもらう交渉と、鍵を替える判断と【男女トラブル】相手の荷物が家に残っている・自分の荷物を取りに行きたい|勝手に処分してよいかもあわせてご覧ください。

話し合いの結果は書面に残す

 解約や名義の切り替えについて合意できたら、口約束で終わらせず、書面にしておくことをおすすめします。書面に入れておきたいのは、解約日と退去日、退去までの家賃の負担、退去費用と敷金の分け方、残った荷物の扱い、そして今後お互いに金銭を請求しないという清算の取り決めなどです。

 別れ話がこじれていて相手と直接やり取りするのが難しい場合や、相手から強い言葉を向けられている場合は、弁護士が代わりに窓口となって条件を詰める方法もあります。進め方については【男女トラブル】別れ話を弁護士に任せるときの流れ|本人と会わずに関係を終えるをご覧ください。

よくあるご質問


自分の負担分の家賃だけ払っていれば問題ありませんか

 二人の間でそう決めていても、貸主に対しては全額の支払義務を負うと考えられているため、相手が払わなければ残りを請求されるおそれがあります。部屋を出た後も、契約が終わるか名義が切り替わるまでは、支払状況に気を配っておくことが大切です。

管理会社に「お一人では解約できません」と言われました。退去の連絡だけしておけばよいですか

 退去の連絡をしただけでは、契約から抜けたことにはならないのが通常です。相手の同意を得て解約するか、名義の切り替えを進めるかを、管理会社と相談しながら決めていく必要があります。管理会社から受けた説明は、日付とともにメモしておくと後で役立ちます。

相手が名義の切り替えに応じる代わりにお金を求めてきました

 部屋の契約の整理と金銭の請求は、分けて考える必要があります。求められた金額に初期費用の負担割合や立替金といった根拠があるかを確かめ、根拠のはっきりしない請求にその場で応じることは控えたほうがよいでしょう。

まとめ

 共同名義で借りた部屋は、原則として二人そろわなければ解約できず、一人が先に出ていっても家賃の支払義務は残ります。まずは契約書で借主の欄と解約の条項を確かめ、そのうえで二人での解約、名義の切り替え、第三者を交えた交渉と、状況に合った道を選んでいくことになります。

 当事務所では、同棲の解消にともなう部屋の解約や名義の整理、費用の清算について、ご本人に代わって相手方とのやり取りを担うご依頼をお受けしています。サービスの内容は【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご紹介しています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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