【風俗トラブル】店に「警察を呼んでください」と頼んだら、不利になる?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

風俗店でトラブルになり、店員から高額な支払いを求められたり、なかなか帰してもらえなかったりしたとき、「それなら警察を呼んでください」と言ってよいのか迷う方は少なくありません。自分にも何か落ち度があったかもしれないと感じていると、警察の名前を出すこと自体がかえって不利になるのではないか、と不安になるのも自然なことです。この記事では、店に警察を呼ぶよう頼んだ場合に何が起こり得るのか、どのような場面で不利な方向に働くおそれがあるのかを、状況ごとに整理します。

本記事は、2026年10月時点の法令(2023年改正後の刑法に定める不同意性交等罪など)を前提に、一般的な考え方をご説明するものです。個別の事案の見通しは、事実関係や残っている記録によって変わります。


「警察を呼んでください」と頼むこと自体が不利に扱われるわけではありません

 まず前提として、トラブルの場面で警察を呼ぶよう求めることは、誰にでも認められている自然な行動です。頼んだという事実だけで、罪を認めたことになったり、後の手続で不利に扱われたりするわけではありません。むしろ、隠し立てをせず中立的な第三者に入ってもらおうとした姿勢として受け止められることもあります。

 ただし、警察官が来れば、その場で何があったのかを店側と客側の双方から聞き取ることになります。「不利になるかどうか」は、頼んだという行為よりも、警察に伝わる事実の中身によって左右されます。この2つを分けて考えることが出発点になります。

警察が来たとき、その場で起きること


双方から事情を聞き、身元を確認する

 通報を受けて駆けつけた警察官は、まず当事者の安全を確かめ、店側と客側のそれぞれから事情を聞くのが一般的です。その際、氏名や連絡先の確認を求められることもあります。警察官からの確認には落ち着いて応じるのが一般的であり、これは店側から身分証の撮影を求められることとは別の問題として考える必要があります。

お金の争いそのものは、警察が決めるものではない

 料金や「罰金」「示談金」の額をめぐる争いは、基本的には当事者間の民事の問題とされます。警察官がその場で支払うべき金額を決めたり、支払いを命じたりすることは通常ありません。「当事者同士で話し合ってください」と言われて終わることもあります。

 一方で、暴力をふるう、脅して支払わせようとする、店から出さないといった行為があれば、刑事事件として扱われる可能性があります。東京都では、性風俗店などによる不当な料金の取立てを条例で規制しており、こうした場面で警察を呼ぶことには、支払いを強いられる状況から抜け出す意味があります。

女性側から被害の申告があれば、捜査の入口になり得る

 注意が必要なのは、女性従業員がその場で「同意のない行為をされた」などと警察官に申告した場合です。この場合、話は料金の争いにとどまらず、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪などの疑いとして、警察署で詳しく事情を聞かれる流れになることがあります。警察を呼んだのが客側であっても、申告の内容によっては捜査が始まる可能性があります。

不利に働くかどうかは、何が起きたかで分かれます


その場の状況警察を呼ぶことの意味合い気をつけたいこと
身に覚えのない請求や言いがかりを受けている第三者が入り、やり取りの記録が残る推測を交えず、事実だけを伝える
店員に囲まれ、帰してもらえない身体の安全を確保する手段になる安全を優先し、言い争いを避ける
説明と違う高額な料金を求められている支払いを強いられる状況から抜け出しやすくなる警察は金額を決めないため、支払いの判断は保留する
禁止行為をしてしまった心当たりがある女性側の申告が捜査のきっかけになるおそれがある事実と異なる説明や、実際以上の認め方をしない


 表の上の3つのように、客側に思い当たる落ち度がない場面では、警察を呼ぶことはむしろ身を守る手段として働きます。不利な方向に働き得るのは、主に4つ目のように、店側の主張の中に客側の行為として問題になり得る事実が含まれている場面です。この点については自分にも非がある場合の警察相談|恐喝被害を申告する際の障害でも詳しく解説しています。

迷わず警察を呼んだ方がよい場面


  • 殴る・押さえつけるなどの暴力を受けている、または受けそうな場面。
  • 出口をふさがれたり複数の店員に囲まれたりして、店や部屋から出してもらえない場面。
  • 財布やスマートフォン、身分証を取り上げられ、返してもらえない場面。
  • ATMやコンビニへの同行を求められ、その場で現金を引き出すよう迫られている場面。
  • 「家族や職場に知らせる」「ただでは帰さない」などと告げられ、強い恐怖を感じている場面。


 これらの場面では、自分に落ち度があったかどうかを考えるより先に、身体の安全を確保することが優先されます。不当に帰さない行為は監禁にあたる可能性があり(その場から帰してもらえない|監禁と不退去の境界)、金銭を脅し取ろうとする行為は恐喝にあたる可能性があります(店の請求が恐喝に変わる線引き|正当な権利行使との境界)。店に頼んでも呼んでもらえないときは、ご自身の携帯電話から110番通報してかまいません。

警察を呼ぶ前後に気をつけたいこと


その場の発言は、後から確かめられることがある

 警察官の前で話した内容や、店側が録音した会話は、後の捜査や交渉の場面で取り上げられることがあります。動揺して「全部私が悪いです」などと、実際の出来事を超えて認める言い方をしてしまうと、後から説明を整えるのが難しくなることがあります。覚えていないことは「覚えていない」、分からないことは「分からない」と伝え、推測で話を埋めないことが大切です。取調べの場面での注意点は「認める調書」を作られないために|風俗トラブルの取調べ対応の注意点で解説しています。

店が用意した書面には、その場で署名しない

 警察官が到着する前後に、示談書や念書、借用書への署名を求められることがあります。内容を確かめる余裕のない状態で署名した書面は、後から効力を争う余地があるとしても、そのために手間と時間がかかります。「持ち帰って検討します」と伝え、その場での署名は控えるのが無難です。署名してしまった場合の考え方は脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いをご覧ください。

警察署への同行を求められたら、任意かどうかを確かめる

 その場で、警察署まで来て詳しく話を聞かせてほしいと言われることがあります。逮捕されていない段階での同行は任意ですが、応じるかどうかは、断った場合の見通しも含めて判断する必要があります。迷うときは、任意の同行なのかを確かめたうえで、弁護士に連絡を取りたい旨を伝えることも考えられます。詳しくは「任意同行」は断れるのか|断った場合に起きることで解説しています。

店のほうが「警察を呼ぶ」と言い出した場合

 反対に、店側から「警察を呼ぶ」「警察に行く」と言われる場面もあります。客側が「では呼んでください」と答えたとき、店が実際には通報せず、金銭での解決を強く求めてくることがあります。店の側にも、営業の実態や交渉の進め方について警察に知られたくない事情がある場合があるためです。店が女性従業員に代わって示談交渉や示談金の受け取りを行ったことが、弁護士法違反の疑いとして問題になった報道例もあります。

 ただし、店が通報をためらっているように見えても、それだけでこちらに有利な状況だと決めつけるのは避けたいところです。女性本人が後日、自ら警察に相談する可能性は残ります。「警察」という言葉が交渉の材料として使われていると感じたときは、その場で結論を出さず、弁護士を通じて話をする選択肢があります。こうした言葉が脅迫にあたるかどうかの線引きは「訴えるぞ」「警察に行くぞ」は脅迫か|正当な権利行使との境界線で解説しています。

自分にも思い当たる点があるときの考え方

 本番行為や盗撮など、客側の行為が問題になり得る心当たりがある場合、警察に相談すると、店側からの脅しや取立ての被害を訴えられる一方で、ご自身の行為についても事情を聞かれる可能性があります。そのため、身の危険が差し迫っていない場面では、警察への相談より先に弁護士に相談し、代理人として店側とのやり取りを任せる方法がとられることもあります。

 とはいえ、身の危険がある場面で通報をためらう必要はありません。その場の安全の確保と、その後の法的な対応は、分けて考えることができます。まずは安全に離れることを優先し、落ち着いてから、警察への対応や店とのやり取りをどう進めるかを弁護士と整理するのが現実的です。相談先の選び方は風俗トラブルは警察・弁護士どっちに相談すべき?状況別の判断基準も参考にしてください。

よくあるご質問


警察を呼んだら、その場で逮捕されることはありますか

 警察官が駆けつけたからといって、直ちに逮捕されるとは限りません。多くの場合は、まず双方から事情を聞く段階にとどまります。ただし、女性側から重い被害の申告があり、その場の状況から犯罪の疑いが強いと判断されれば、身柄を確保される可能性も否定はできません。見通しは事案ごとに異なるため、早めに弁護士へご相談ください。

警察を呼んだことで、店からの請求額が上がることはありますか

 通報したことを理由に請求額を引き上げる、という扱いに法的な根拠はありません。請求できる額は、実際に生じた損害などの事情に照らして検討されるものです。もっとも、店側が感情的になって要求が強まることはあり得ますので、その後のやり取りは記録を残しながら慎重に進めることをおすすめします。

警察官に「当事者同士で話してください」と言われたらどうすればよいですか

 料金や示談金の争いについては、警察官が間に入らずに引き上げることがあります。その場合でも、その場で支払いや署名をする必要はありません。いったん持ち帰って検討する姿勢で構いませんし、その後の交渉は弁護士が窓口となって進めることもできます。

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まとめ

 店に「警察を呼んでください」と頼むこと自体が、不利な扱いの理由になるわけではありません。不利な方向に働き得るかどうかは、その場で警察に伝わる事実の中身によって分かれます。身の危険がある場面では迷わず安全を優先し、ご自身にも思い当たる点がある場合は、その場で認めすぎたり書面に署名したりせず、早めに弁護士へご相談いただくことが、その後の選択肢を残すことにつながります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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