【風俗トラブル】出張型のメンズエステで施術者から被害を訴えられた
風俗店でトラブルになった際、店のスタッフから「念のため」「連絡がつかなくなったときのために」と、家族の電話番号や実家の住所を書くよう求められることがあります。その場の雰囲気に押されて答えてしまい、後になって「家族に連絡されるのではないか」と不安を抱える方は少なくありません。本記事では、家族の連絡先を聞かれたときに答える義務があるのか、答えた場合に何が起こり得るのか、その場でどう断ればよいのか、すでに答えてしまった場合に何ができるのかを順に整理します。
本記事は2026年10月時点の法令と一般的な実務をもとに作成しています。個別の事情によって見通しが変わることがありますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
家族の連絡先を答える義務はない
店から家族の連絡先を聞かれても、法律上それに答える義務はありません。店の側に、利用者の家族の情報を強制的に聞き出す権限があるわけではないためです。
店との関係は利用者本人との契約にとどまる
風俗店の利用は、利用者本人と店との間のサービス契約です。仮に利用中のトラブルで店や女性が損害を受けたと主張する場合でも、責任を問われうるのは本人であり、成人した利用者の家族が代わりに支払う義務を負うことは通常ありません。家族はトラブルの当事者ではないため、店が家族と連絡を取る必要性も、本来は乏しいといえます。
店が利用者と連絡を取りたいのであれば、本人の電話番号やメールアドレスで足ります。そのうえ家族の連絡先まで求める理由は、法律の面からは見当たらないのが通常です。
「念のため」という言葉に込められやすい意味
「念のため」「形式的なものだから」という言い方は、求めを軽く見せる言葉として使われることがあります。しかし、トラブルの最中に家族の連絡先を押さえておくことは、店の側から見れば「支払いが滞ったら家族に知らせることができる」状態を作ることにつながります。言葉が穏やかであっても、その情報が後でどのように使われうるかを考えたうえで判断することが大切です。
店が家族の連絡先を聞くときに考えられる目的
| 店側の説明 | 考えられる実際の目的 | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| 連絡がつかなくなったときのため | 本人が着信に出ない場合の別の連絡経路 | 本人の連絡先を伝えていれば足りる |
| 身元を確かめるため | 立ち去りにくくするための心理的な圧力 | 身元の確認と家族の情報は別の問題 |
| 示談の手続に必要だから | 示談金の支払いを確実にさせる材料 | 示談の当事者は本人であり、家族の情報は不要 |
| 店のルールだから | 後日の請求や連絡の手がかり | 店の内部ルールが利用者の義務を生むとは限らない |
もちろん、すべての店が悪意をもって聞いているとは限りません。ただ、トラブルの直後という場面で求められた家族の情報は、利用者の側から見て不利に働くことが多いのが実情です。
答えてしまった場合に起こり得ること
家族の連絡先を伝えた後には、次のようなことが起こる可能性があります。必ずこうなるというものではありませんが、備えを考えるうえで知っておくと役に立ちます。
- 本人が電話に出ないと、家族の携帯電話や実家に電話がかかってくることがあります。
- 「家族に話す」「実家に書面を送る」と告げられ、支払いを急がせる材料にされることがあります。
- 家族が電話に出てしまい、事情が分からないまま交渉に巻き込まれることがあります。
- 話がまとまった後も、店の手元に家族の情報が残り続けることになります。
家族が店からの電話に出てしまった場合の対応は、【風俗トラブル】家族が店からの電話に出てしまった|家族への説明とその後の交渉で詳しく解説しています。
家族への連絡をほのめかされたときの法的な見方
恐喝・脅迫・強要が問題になる場面
「払わなければ家族に知らせる」と告げて金銭の支払いを求める行為は、その態様によっては恐喝罪(刑法249条)にあたる可能性があります。店が損害の賠償を求めること自体は正当な権利の行使でありえますが、判例は、権利の行使であっても社会通念上許される範囲を超える方法をとれば恐喝罪が成立しうるとしています(最高裁昭和30年10月14日判決)。
また、本人やその親族の名誉などに害を加える旨を告げて脅す行為については脅迫罪(刑法222条)が、脅して義務のないことを行わせる行為については強要罪(刑法223条)が問題になることがあります。「家族の連絡先を書かなければ帰さない」と迫って書かせた場合などは、こうした観点から検討されることもあります。どこからが恐喝にあたるのかの線引きは、店の請求が恐喝に変わる線引き|正当な権利行使との境界で整理しています。
個人情報の取扱いという視点
事業者が個人情報を取り扱う場合、個人情報保護法により、利用目的をできる限り特定し、その範囲内で扱うことが求められます(個人情報保護法17条、18条)。違法または不当な行為を助長・誘発するおそれのある方法で利用することも禁じられ(同法19条)、本人の同意のない第三者への提供も原則として制限されています(同法27条)。
家族の連絡先は、家族自身の個人情報でもあります。「念のため」という曖昧な理由で集めた情報を、支払いの催促や圧力のために使うことには問題があると考えられます。ただし、個人情報保護法は主に行政による監督を通じて守られる仕組みであり、違反があったからといって直ちに刑事罰が科されるわけではない点には注意が必要です。
その場での断り方
家族の連絡先を求められたときは、感情的にならず、短い言葉で断ることが基本です。たとえば、次のような伝え方が考えられます。
- 「連絡は本人の携帯電話にいただければ対応します」と伝えます。
- 「家族はこの件と関係がないので、お伝えできません」と伝えます。
- 「お答えする前に、弁護士に相談させてください」と伝えます。
あわせて、自分の電話番号やメールアドレスなど、本人への連絡手段は伝えておくと、話し合いから逃げるつもりはないという姿勢を示しやすくなります。連絡の窓口を本人に絞ることで、家族を巻き込まずに話を進める余地が生まれます。
偽の連絡先を書くことは避ける
断りにくい雰囲気の中で、架空の番号や知人の番号を書いてしまう方もいます。しかし、無関係な人に連絡が行けば新たな迷惑をかけることになり、後で偽りが分かれば、店との関係がこじれて話し合いが難しくなるおそれもあります。答えたくない情報は、偽るのではなく「お答えできません」と断る方が、後の対応を組み立てやすくなります。
立ち去ることを妨げられたとき
「連絡先を書くまで帰さない」と出入口をふさがれるなど、立ち去ることを妨げられた場合には、監禁罪(刑法220条)などが問題になりうる状況です。身の安全を最優先に考え、必要であれば110番通報をためらわないでください。警察を呼ぶことに不安がある場合の考え方は、「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法も参考になります。
すでに答えてしまった場合に今日からできること
家族の連絡先を伝えてしまった後でも、できることはあります。慌てて店に連絡を入れる前に、次の順に整えていくことをおすすめします。
- 店に伝えた情報(家族の氏名、続柄、電話番号、住所など)を、覚えている範囲で書き出します。
- 連絡先を書いた紙や念書がある場合は、その内容と、控えや写真の有無を確かめます。
- 店から届いたメッセージや着信の日時を消さずに残し、今後の連絡も記録していきます。
- 家族に事前に伝えておくかどうかを、家族との関係や連絡が来る可能性を踏まえて考えます。
- 支払いや新たな書面への署名をする前に、弁護士に相談します。
家族に連絡が来てしまったら
実際に家族へ電話や郵便が届いた場合、家族の方には、その場で事実を認めたり支払いを約束したりせず、「本人に確認します」とだけ伝えてもらうのがよいでしょう。あわせて、相手の名乗り、日時、話の内容を控えておいてもらうと、後の対応に役立ちます。成人した本人のトラブルについて、家族が支払いの義務を負うことは通常ありません。
郵便が届くおそれがある場合の備えは【風俗トラブル】配偶者宛てに郵便を送ると言われた|家族に届く前にできること、実家への連絡が心配な場合は【風俗トラブル】実家の住所を知られていた|親に知らせると言われたときの備えもご覧ください。
弁護士が入ると何が変わるか
弁護士が依頼を受けると、店に対して受任したことを知らせる通知を送り、今後の連絡は弁護士にするよう、本人の家族や勤務先へは連絡しないよう求めます。通知の働きについては、受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで解説しています。通知を送れば必ず連絡が止まるというものではありませんが、窓口が明確になることで、家族が直接やり取りに巻き込まれる場面は少なくなると考えられます。
また、示談をまとめる段階では、店が控えた家族の連絡先や本人の個人情報について、返還や破棄、第三者に伝えないことを合意書の条項に入れるよう交渉することも考えられます。なお、弁護士に相談しただけで、その内容が店や家族に伝わることはありません。詳しくは【風俗トラブル】弁護士に相談すると、こちらの個人情報が店に伝わる?をご覧ください。
よくあるご質問
家族の連絡先は断りましたが、身分証は見せてしまいました。家族のことも知られていますか?
身分証から分かるのは、基本的に本人の氏名、住所、生年月日などです。ただし、住所欄が実家のままになっている場合は、実家の所在地が伝わっている可能性があります。相手が何をどこまで知っているかを書き出したうえで、備えを考えることが出発点になります。身分証を見られた後の対応は、風俗店・キャストに個人情報を握られた|悪用・晒しを防ぐにはで解説しています。
家族の連絡先を書いた紙を返してもらうことはできますか?
店が任意に応じれば返してもらえますが、本人だけで求めても応じてもらえないことがあります。示談の交渉の中で、書面の返還や破棄を求め、その内容を合意書に盛り込むのが一つの方法です。写しを取られている可能性もあるため、情報を第三者に伝えたり利用したりしない旨の条項もあわせて検討します。
「家族の連絡先を言わないなら警察に行く」と言われました。答えた方がよいですか?
警察に相談するかどうかは店や女性の側の判断であり、家族の連絡先を渡すことと引き換えになる性質のものではありません。刑事手続についての心配がある場合ほど、家族の情報を渡す前に弁護士に相談し、見通しを確かめておくことが大切です。
関連する解説記事
答える前に、一度立ち止まる
家族の連絡先は、一度渡してしまうと取り戻すことが難しい情報です。「念のため」と言われても、答える義務はなく、本人への連絡手段を示したうえで断ることができます。すでに答えてしまった場合でも、伝えた情報を整理し、窓口を弁護士に移すことで、家族への影響を抑える手立てを講じられることがあります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


