風俗・メンエスで法外な料金を請求された|支払いを拒否できるケース
風俗店でトラブルになり、店長やスタッフ数名に囲まれた状態で話をした。そうしたご相談は少なくありません。狭い部屋や事務所で複数の人に向き合われると、頭の中が真っ白になり、落ち着いて考えることが難しくなります。
この記事で扱うのは、囲まれた状況そのものの是非ではありません。その場で口にした一言や、とっさに取った行動が、後の話し合いや手続きの中でどう読まれるかという点です。数十分の出来事が、後になって金額の話や刑事の手続きに影響することがあるためです。
なお、店の求めをかわす方法や、ルール違反をなかったことにする手順を説明するものではありません。実際に問題のある行為があったのなら、その事実は残ります。ここでお伝えするのは、事実と違うことが事実として固まってしまうのを避けるための考え方です。
この記事が想定している場面
- 成人同士のトラブルで、客側の立場にある場合を想定しています。
- 店舗の一室や事務所で、店長やスタッフ複数名から説明を求められている場面を想定しています。
- 自分の側に落ち度があると感じている場合も含みます。
- すでに逮捕されている場合や、警察から呼び出しを受けている場合は、この記事を読むより先に弁護士へご相談ください。
請求されている金額が妥当かどうか、誓約書や示談書の条項がどこまで効くのか、店から出られない状態をどう考えるか、ATMへの同行を求められた場合はどうかといった論点は、それぞれ別の記事で扱っています。この記事は「囲まれている間に自分が何を言い、何をしたか」に絞ります。
「囲まれている」ことは、法律上どう扱われるのか
人数そのものを正面から取り上げた条文があるわけではありません。ただ、相手の言い方や求め方が行き過ぎているかどうかを判断する場面では、言われた言葉の内容だけを切り離して見るのではなく、場所、時間帯、その場にいた人数、体格といった周囲の事情を含めて、一般の人を基準に客観的に判断されると説明されています。
同じ言葉でも、一対一の落ち着いた場で言われた場合と、逃げ場のない部屋で数名に取り囲まれた状態で言われた場合とでは、受け止め方が変わります。その差は、法律の世界でも事情の一つとして見られるということです。
囲まれたこと自体が、直ちに違法とは限らない
一方で、複数の従業員が同席していること自体が問題だとは限りません。事実関係を確認するために担当者と責任者が同席する、記録係が入る、といった形は珍しくありません。人数が多いというだけで、店側の対応が違法になるわけではないという点は、公平に押さえておく必要があります。
問題になりやすいのは、人数が「説明を聞くため」ではなく「その場で結論を出させるため」に使われている場合です。出口をふさぐ位置に立つ、席を立とうとすると人が動く、支払うと言うまで話が終わらない。こうした形が積み重なると、求め方として行き過ぎだったのではないかという評価に傾くことがあります。
「出られない状態」かどうかは、別の枠組みで判断される
その場から帰れない状態だったかどうかは、身体の自由という別の枠組みで判断されます。囲まれていたことと、法律上「出られない状態」と評価されることは、同じではありません。この点は別の記事で詳しく扱っています。
人数が増えると、後の場面で何が変わるのか
ここが、この記事でお伝えしたい中心です。囲まれた場面の難しさは、その場の圧迫感だけではありません。後になってから、次の三つの形で効いてきます。
- 誰が何を言ったのかが、曖昧になります。複数の人が入れ替わりに話すと、後から「そんなことは言っていない」「別の者が言った」と整理されることがあります。
- 同じ内容を語る人が、複数そろいます。店側は複数名がその場にいたことになり、後で経緯を説明するとき、似た内容の話が複数から出ることになります。
- 自分の言動だけが、単独で切り出されます。こちらは一人ですから、言ったこと、書いたこと、渡したものは、すべて一人の判断として扱われます。
「言った・言わない」の構図が一対複数になる
後から経緯が争いになったとき、こちらの説明を裏づけるものが自分の記憶しかない、という状態になりがちです。だからこそ、その場で何を残せるかが、後の説明の具体性を左右します。この点は後の章で扱います。
その場の言動は、後のどこで意味を持つのか
| その場の言動 | その場で起きること | 後で意味を持ちやすい場面 |
|---|---|---|
| 話した言葉 | 相手が内容を記憶し、メモを取ることもある | 警察や検察の聴取、店との話し合い |
| 書面への署名・記入 | 約束の形が文書として残る | 支払いを求められる場面、内容を争う場面 |
| お金を渡す・振り込む | 支払いの事実と日時が記録に残る | 返還を求める場面、経緯を評価する場面 |
| とっさの身体の動き | 新しいトラブルが生まれることがある | 別の問題として扱われる場面 |
| 黙る・その場を離れる | 相手の側の記録だけが残る | 後から経緯を説明する場面 |
どれも「その場では小さな出来事」に見えますが、後で参照されるときには、前後の事情が抜け落ちた形で登場します。表の右の列は、数日後から数か月後の話です。
言動は残り、囲まれていた状況は残りにくい
囲まれた場面をめぐる相談で、いちばん多い行き違いがここにあります。後から振り返ったときに手元に残っているものと、残っていないものには、はっきりした偏りがあります。
| 残りやすいもの | 残りにくいもの |
|---|---|
| 自分が話した言葉の要旨 | その場に何人いたか |
| 署名した書面と日付 | どのくらいの時間続いたか |
| 支払いや振込の記録 | どんな口調で何を言われたか |
| 入退店の時刻や移動の記録 | 断りにくいと感じた事情 |
左の列は形として残り、後から取り出せます。右の列は、意識して残さないかぎり、当事者の記憶の中にしかありません。その結果、「囲まれていたから、そう言うしかなかった」という説明をしたくても、その状況を示す手がかりが自分の側に何もないという事態が起こります。
言い換えれば、その場でできることは二つです。残ってしまう言動を減らすことと、残りにくい状況の手がかりを自分で作っておくことです。
扱いが難しい四つの言動
「すみません」という言葉
場を収めるために出た言葉が、後から「事実を認めた」という意味で受け取られることがあります。何に対する言葉なのかは、口にした側が思っているほど明確ではありません。認める発言をしてしまった後の考え方については、別の記事で扱っています。
つかまれた手を振りほどく、押しのける
囲まれた状態から出ようとして、相手の身体に触れる形になることがあります。ここは注意が必要です。他人に対する不法な有形力の行使は、けがの有無にかかわらず問題になりうると説明されており、身体に直接触れていない場合でも同じように扱われることがあります。転倒してけがにつながれば、より重い評価になることもあります。
もっとも、身を守るための動きがすべて違法とされるという趣旨ではありません。状況によって評価は分かれます。ただ、こちらが先に触れたという事実は、後で相手側の主張の材料になりやすいのも確かです。距離を取る、大きな動作を避けるという対応のほうが、後の説明はしやすくなります。
黙っていたこと
黙っていたことが、それだけで「認めた」ことになるわけではありません。ただし、後から経緯を説明する段階で、なぜ何も言わなかったのかを問われることはあります。何も言えなかったのであれば、その事情を後で書き出しておくことに意味があります。
こちらも強い言葉で返す、人を呼ぶ
人数の差を埋めようとして、大きな声を出す、知人を呼ぶ、といった対応を取りたくなることがあります。ただ、その場が対立の形になると、双方の言動が並べて評価されることになります。相手の求め方が行き過ぎていたとしても、こちらの言動が別に問題視される余地が生まれます。
その場で伝えてよいこと
その場で結論を出さないという選択は、逃げることとは違います。次のような伝え方であれば、話を打ち切らずに時間を確保できます。
- 内容を確認したいので、この場では決めずに持ち帰りたいと伝える。
- 書面は、写真を撮るか写しをもらえないかと尋ねる。
- 支払いについては、金額の根拠を書面で示してほしいと伝える。
- 連絡先を交換し、後日あらためて連絡すると伝える。
- 体調や時間の都合を理由に、いったん退出したいと伝える。
その場で決めないと伝えるのは、不誠実な対応ではない
持ち帰りたいという申し出は、支払いを踏み倒す意思表示ではありません。内容を確認したうえで対応するという、通常の進め方です。落ち度があると感じている場合でも、その場で金額まで決める必要はありません。
その場で残しておけること
右の列、つまり残りにくい情報を手元に置くための作業です。可能な範囲でかまいません。
- 何時ごろ始まり、何時ごろ終わったかを覚えておく。
- その場にいた人数と、それぞれの役割や呼ばれ方を覚えておく。
- 言われた言葉のうち、印象に残ったものをそのままの言い回しで覚えておく。
- 自分が何を言い、何を言わなかったかを整理しておく。
- 書面を見せられた場合は、表題と主な項目だけでも記憶しておく。
録音について
自分が当事者として参加している会話を記録することは、一般に問題ないと説明されています。ただし、その場で機器を操作することが新たな摩擦を生む場面もあります。難しいと感じたときは、店を出た直後に、覚えている範囲を音声か文字で残しておくだけでも意味があります。
その場を離れた後にできること
- その日のうちに、時系列で経緯を書き出す。日付と時刻を入れておく。
- 書面に署名した場合は、その内容をできるだけ正確に思い出して記録する。
- 支払いや振込をした場合は、明細や履歴を保存する。
- その後に届いた連絡は、削除せずそのまま残しておく。
- どう対応するかを決める前に、弁護士に事実関係を整理してもらう。
記憶は日を追って薄れます。特に人数、時間の長さ、言われた順番といった情報は、数日で曖昧になります。完璧でなくてかまいませんので、覚えている範囲で早めに書き出しておくことをおすすめします。
落ち度がある場合の考え方
自分の側にルール違反や問題のある行為があった場合、「囲まれたことについて何か言える立場ではない」と感じる方が多くいます。ただ、自分に落ち度があるかどうかと、店の求め方に限度があるかどうかは、別々に判断されます。
落ち度があっても、求め方までが自由になるわけではありません。逆に、店の求め方が行き過ぎていたとしても、自分の行為についての責任がそれで消えるわけでもありません。二つを分けて考えることが、その後の見通しを立てるうえで役に立ちます。
弁護士が関わると変わること
- 店とのやり取りの窓口を移すことができます。
- 求められている内容と、その法的な根拠を分けて整理できます。
- 書面については、署名する前に内容を確認できます。
- 刑事の手続きが動く可能性がある場合に、並行して備えることができます。
ただし、早い段階で相談すれば良い結果が約束されるという趣旨ではありません。事案によって取りうる方針は変わります。それでも、その場の記憶が新しいうちに事実関係を整理しておくことは、どの方針を選ぶにしても土台になります。
まとめ
- 人数そのものを扱う条文はありませんが、相手の言動を評価する際の事情の一つとして見られると説明されています。
- 複数名が同席していること自体が、直ちに問題だとは限りません。
- 人数が増えると、発言の帰属が曖昧になり、同じ話をする人が複数そろう構図になります。
- その場の言葉、署名、支払い、身体の動き、沈黙は、いずれも後の場面で意味を持ちます。
- 言動は形として残りやすい一方、囲まれていた状況は残りにくいという偏りがあります。
- つかまれた手を振りほどく、押しのけるといった動きは、別の問題として扱われることがあります。
- その場で決めずに持ち帰りたいと伝えることは、不誠実な対応ではありません。
- 自分に落ち度があるかどうかと、店の求め方に限度があるかどうかは、別々に判断されます。
当事務所では、風俗店とのトラブルについて初回のご相談を無料でお受けしています。その場で何を言ってしまったか分からないという段階でも、ご相談いただけます。


