【風俗トラブル】「ブラックリストに載せた」「出禁だ」と言われた|出入り禁止と請求の関係

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月時点の民法・消費者契約法・個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」)・刑法の規定に基づいて作成しています。刑法の法定刑は、2025年6月1日に施行された拘禁刑への改正を反映しています。


「店から『もう出禁だ、ブラックリストにも載せた』と言われ、そのうえで罰金30万円を払えと言われた」。「出禁は受け入れるつもりだが、系列の店すべてで共有されると聞いて不安になった」。風俗トラブルのご相談では、出入り禁止を告げられたことと、金銭を求められたことが、ひとつの出来事として語られることが少なくありません。

 ネット上では「店の罰金に支払義務はない」という説明がよく見られます。この説明自体は誤りではありませんが、「出禁」「ブラックリスト」という言葉が加わると、店がしていること、店が主張していること、客の側に残る責任が混ざり合い、何を確認すればよいのかが見えにくくなります。

 この記事では、出入り禁止とブラックリストへの登録が法的にどういう意味を持つのか、それが金銭の請求とどう関係するのか(あるいは関係しないのか)を、客の立場から整理します。「罰金」という名目そのものの法的な位置づけや、規約の効力の詳細は別の記事に委ね、ここでは「出禁・ブラックリスト」と「請求」の関係に焦点を絞ります。

「出禁」と「ブラックリスト」は何を意味しているのか

 まず、店が口にする二つの言葉を分けて考えることが出発点になります。

出禁は「今後は契約しない」という店の意思表示

 契約をするかどうかは、原則として当事者が自由に決めることができます(民法521条1項)。風俗店も、特定の客と今後サービスの契約を結ばないと決めることは、基本的に店の判断に委ねられています。そのため、出禁そのものは「次からは利用を受け付けない」という意思表示であり、それだけで客に支払義務が生じるものではありません。

 出禁の理由に納得できないこともあるでしょう。ただ、理由に納得できないからといって、店に利用を受け付けるよう求める法的な手段は限られています。出禁については争うよりも、「出禁と一緒に何を求められているのか」を確認することに目を向けたほうが、実際の解決につながりやすいといえます。

ブラックリストは「記録」と「共有」の問題

 「ブラックリストに載せた」という言葉は、店の内部で客の情報を記録したという意味の場合もあれば、系列店や他の店舗と情報を共有したという意味の場合もあります。実際に、出禁にした客の電話番号などを店舗間で共有するためのデータベースサービスも存在します。

 店の内部での記録と、別の事業者への共有とでは、法的な評価が異なります。この点は、後の章で個人情報保護法の観点から整理します。

出禁と請求は、根拠がそれぞれ別にある

 出禁は「将来の契約をしない」という話で、金銭の請求は「過去の出来事について損害があるか」という話です。店から「出禁にするから罰金を払え」と一続きに言われても、両者は法的には別々に検討するものです。出禁を受け入れることと、請求に応じることは連動しません。

出禁を理由に金銭を求められたとき

 出禁とあわせて金銭を求められた場合、その請求に法的な根拠があるかどうかを、名目に引きずられずに確認していきます。

「罰金」という名目では支払義務は生じない

 刑罰としての罰金を科すことができるのは国だけで、店が客に罰金を科す仕組みはありません。店が求める「罰金」に法的な意味があるとすれば、それは損害賠償(民法709条・415条)か、あらかじめ定めた違約金(民法420条3項により賠償額の予定と推定されます)として請求できる場合に限られます。この点は「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないで詳しく扱っています。

 規約に違約金の定めがある場合でも、消費者契約である以上、平均的な損害の額を超える部分は無効となります(消費者契約法9条1項1号)。「出禁になるほどのことをしたのだから」という理由だけでは、金額の根拠にはなりません。規約の効力を確かめる手順は【風俗トラブル】店から『うちの規約では』と言われた|規約の効力を確かめる順序を、違約金の定めの有効性は損害賠償額の予定(民法420条)は風俗の規約でも有効かをご参照ください。

「出禁解除料」「リスト削除料」という名目

 ご相談の中には、「お金を払えば出禁を解除する」「払えばブラックリストから外す」と言われたという例もあります。出禁を解除するかどうかは店の判断の問題で、客がそれを求める権利はない一方、解除と引き換えに金銭を支払う義務もありません。

 支払えば利用を再開できるという条件は、客にとって「今後も利用したい」という気持ちに働きかけるものです。しかし、その金額は過去の損害とは結びついていないことが多く、損害賠償としての根拠を説明できるかどうかを確認する必要があります。

実際に損害がある場合に残る部分

 一方で、客の側に実際の行為があった場合には、話が変わります。キャストの同意のない行為や盗撮などがあったときは、キャスト本人に対する損害賠償の問題が生じ、刑事手続に進む可能性も残ります。また、無断キャンセルのように店の営業に実損害が出たときは、その範囲で賠償を求められることがあります。キャンセル料の考え方はチェンジ・キャンセル料・延長料金でのトラブル|支払い義務の有無で整理しています。

 このような場合でも、「出禁」「ブラックリスト」とは別に、何についての、誰の、いくらの損害なのかを分けて確認することになります。提示された金額をそのまま受け入れるのではなく、内容に見合った金額かどうかを検討する余地があります。

ブラックリストへの登録と共有|個人情報保護法から見る

 客の不安が大きいのは、「他の店でも利用できなくなるのではないか」「情報がどこまで広がるのか」という点です。

店の内部で記録すること自体

 店が、トラブルのあった客の電話番号や来店記録を、自店の営業のために記録しておくこと自体は、直ちに違法とはいえません。電話番号だけの記録であっても、氏名や来店履歴と結びつけて管理されていれば、個人情報にあたると考えられます。個人情報を取り扱う事業者は、規模にかかわらず個人情報保護法の規律を受けます(同法16条2項)。

別の店への共有と第三者提供の制限

 同じ事業者が運営する店舗の間での共有と、別の会社が運営する店舗や外部のデータベースへの提供とでは、意味が異なります。後者は第三者提供にあたる可能性があり、本人の同意がない提供は原則として認められていません(個人情報保護法27条1項)。

 ただし、例外もあります。人の生命・身体・財産の保護のために必要で、本人の同意を得ることが難しい場合(同項2号)や、共同で利用する旨や利用する事業者の範囲などをあらかじめ本人に通知したり、本人が容易に知り得る状態に置いたりしている場合(同条5項3号)です。どのような理由で、どの範囲に、どのような形で共有されたのかによって評価が分かれるため、「共有されたら必ず違法」とも「共有は自由」とも言い切れません。

開示・利用停止を求めるという手段

 本人は、事業者が保有する自分の個人データの開示を請求でき、第三者に提供した記録の開示も求めることができます(個人情報保護法33条1項・5項)。法の定めに反して第三者に提供されている場合には、提供の停止を求めることができ(同法35条3項)、本人の権利や正当な利益が害されるおそれがある場合には、利用停止や第三者提供の停止を求められる場面もあります(同条5項)。

 もっとも、これらの請求をすること自体が店との新たな接点になるため、請求の要否や伝え方は、事情全体を踏まえて慎重に判断することをおすすめします。店に個人情報を握られたときの全体的な対処は、風俗店・キャストに個人情報を握られた|悪用・晒しを防ぐにはで扱っています。

「載せた」「載せる」が請求の材料として使われる場面

 ブラックリストの話が、金銭の請求を後押しするために持ち出されることがあります。

削除と引き換えに支払を求められた場合

 「払わなければ全国の店に回す」「払えばリストから消す」といった言い方は、支払わない場合の不利益を示して支払を促すものです。正当な損害賠償の請求であっても、その手段が社会的に許される範囲を超える場合には、恐喝罪(刑法249条)の成否が問題となり得ます。どの言い方がどこから問題になるかは、金額や経緯、言葉の内容によって異なるため、一律には判断できません。

ネット上で公開すると言われた場合

 店の間の閉じた共有を超えて、氏名や顔写真をSNSや掲示板に載せると告げられた場合には、名誉毀損やプライバシー侵害の問題として別の検討が必要になります。この場面についてはSNSでの脅迫・晒しはどの罪になるかもあわせてご覧ください。

やり取りを記録に残しておく

 出禁やブラックリストが話題に出たときの言葉は、後に請求の性質を判断する材料になります。次のような記録を残しておくと、相談の際に状況を正確に伝えやすくなります。

  • 店とのLINE・メッセージ・メールの画面と、送受信の日時。
  • 通話の日時と、相手が名乗った立場や名前。
  • 「出禁」「ブラックリスト」「罰金」などについて、相手が実際に使った言葉。
  • 提示された金額と、その内訳として説明された内容。
  • 身分証の提示や撮影、書面への署名を求められたかどうか。


 身分証を見せた、あるいは撮影された場合の対応は身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結で整理しています。

出禁を告げられた後に客側が気をつけること

 出禁を告げられた後の客側の行動が、新たなトラブルの原因になることもあります。

出禁後の来店と建造物侵入・不退去

 店舗型の店で出入り禁止を明確に告げられた後に立ち入ると、管理する側の意思に反する立入りとして、建造物侵入罪(刑法130条前段、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)が問題となる可能性があります。また、退去を求められたのに店内にとどまれば、不退去罪(同条後段)の問題となり得ます。出禁の当否に納得できない場合でも、店に出向いて直接話をつけようとすることは控えたほうが安全です。

別の名前や番号での利用

 別の名前や電話番号を使って予約し直すことも、発覚した際に新たなトラブルの火種になりかねません。利用を続けたい気持ちがあるとしても、出禁を告げられた店や、その系列と分かっている店の利用は避けるのが無難です。

店への連絡は必要な範囲にとどめる

 出禁の撤回を求めて何度も連絡したり、強い言葉で抗議したりすると、店側に「新たな迷惑行為」の記録を残すことになりかねません。一方で、請求を一切無視すれば解決するとも限りません。店からの連絡にどう向き合うかは、店からの電話・LINEを無視し続けるとどうなるか|放置の先に起きることの時系列も参考にしてください。

店の言葉ごとの確認ポイント

 ここまでの内容を、店から告げられた言葉ごとに整理すると、次のようになります。

店の言葉法的な意味合い確認したいこと
「出禁だ」今後の契約をしないという店の意思表示それ自体で支払義務は生じない。来店や再予約は控える
「罰金を払え」損害賠償か違約金として根拠があるかの問題何についての、誰の損害か。規約の定めと金額の妥当性
「払えば出禁を解除する」解除は店の判断で、支払義務とは結びつかない金額が過去の損害と結びついているか
「ブラックリストに載せた」内部の記録か、外部との共有かで評価が変わる共有の範囲・理由・事前の通知の有無
「払わないと他店にも回す」支払を促すための不利益の告知言葉の内容と経緯を記録に残す
「ネットに載せる」名誉毀損・プライバシー侵害の問題具体的な予告の内容と日時を記録に残す


よくあるご質問

出禁を受け入れれば、請求も終わりになりますか。

 出禁と金銭の請求は別の問題なので、出禁を受け入れたことで請求が消えるわけではありません。反対に、出禁を受け入れたからといって請求を認めたことにもなりません。請求については、根拠と金額を別に確認する必要があります。

ブラックリストから外してもらうことはできますか。

 店の内部の記録について、削除を求める権利が当然にあるわけではありません。ただし、法の定めに反して外部に提供されている場合などには、個人情報保護法に基づいて第三者提供の停止などを求められる場面があります。どのような請求が可能かは、共有の経緯によって異なります。

系列店で利用を断られたのは、ブラックリストのせいでしょうか。

 同じ事業者が運営する店舗間では、情報が共有されていることは珍しくありません。別の事業者の店舗で断られた場合には、外部との共有があった可能性もありますが、断られた理由を店が説明するとは限らず、外から確かめるのは難しいのが実情です。気になる場合は、開示請求という手段の要否を含めて検討することになります。

まとめ


  1. 出禁は今後の契約をしないという店の意思表示で、それだけで支払義務は生じない(民法521条1項)。
  2. 店が求める「罰金」は、損害賠償か違約金として根拠がある場合に限って意味を持つ(民法709条・415条・420条3項)。
  3. 違約金の定めがあっても、平均的な損害を超える部分は無効となる(消費者契約法9条1項1号)。
  4. 出禁の解除やリストからの削除と引き換えの支払には、それ自体の根拠がない。
  5. 別の事業者への共有は第三者提供にあたる可能性があり、例外の有無で評価が分かれる(個人情報保護法27条1項・5項3号)。
  6. 本人は開示や第三者提供の停止などを求められる場面がある(同法33条・35条)。
  7. 出禁後の来店は建造物侵入や不退去の問題になり得るため、店に出向くことは控える(刑法130条)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。出禁やブラックリストへの登録を告げられ、あわせて金銭を求められている場合には、支払や連絡をする前の段階でご相談いただくことで、請求の根拠と対応の順序を整理しやすくなります。

「出禁だから罰金を」と一続きに言われていても、確認すべきことは一つずつ分けることができます。ひとりで判断がつかないときは、お気軽にお問い合わせください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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