【風俗トラブル】出禁と言われた店に別の名前で予約したら、問題になる?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月時点の刑法(2025年6月施行の拘禁刑への一本化を反映)、民法、ストーカー行為等の規制等に関する法律と、公表されている最高裁判所の判断をもとに、一般的な考え方を整理したものです。個別の事情によって結論は変わります。


「以前トラブルになった店から『出禁』と言われたが、名前を変えたら予約が取れてしまった。このまま利用して大丈夫だろうか」。客の立場の方から、こうしたご相談が寄せられることがあります。反対に、店の側からは「出禁にした客が別の名前で予約を入れていて、来てから気付いた」という話を聞くこともあります。

 「出禁に法的な拘束力はない」「名前を変えるくらいなら問題にならない」といった説明を見かけることがあります。出禁を告げられただけで直ちに罪に問われるわけではない、という意味では誤りではありません。ただ、出禁の後にあらためて利用しようとする場面では、利用の形態、名前を偽った経緯、出禁のときに交わした書面、誰に会うことが目的か、といった事情によって評価が変わってきます。

 この記事では、出禁と言われた店に別の名前で予約することがどのような問題につながり得るかを、刑事・民事の両面から整理します。出禁と言われたこと自体と請求との関係は【風俗トラブル】「ブラックリストに載せた」「出禁だ」と言われた|出入り禁止と請求の関係で、偽名で利用していた場合の請求の扱いは【風俗トラブル】偽名で利用していた|本名を知られていない場合の請求で詳しく扱っています。

出禁とは何か|店が客を断ることの法的な意味

店には、誰と取引するかを決める自由がある

 民法は、法令に特別の定めがある場合を除いて、契約をするかどうかを自由に決められると定めています(民法521条1項)。これに加えて、店舗の所有者や管理者には、建物の中に誰を立ち入らせるかを決める権限(施設管理権)があると考えられています。いわゆる出禁は、この2つを根拠に、店が「今後はこの客とは取引しない、店にも入れない」と意思表示するものと整理するのが一般的です。

 出禁を告げられたこと自体で罪に問われるわけではありません。問題になり得るのは、出禁と分かったうえで、あらためて店のサービスを利用しようとしたときです。

名前を変えても、店から見れば「同じ人」

 別の名前で予約するという行動は、店が「この人とは取引しない」と決めていることを知りながら、その判断が働かないようにする行動と受け取られやすいものです。出禁を知らずに来店した場合や、うっかり以前と同じ名前で予約した場合と比べると、店の意思に反していることを自覚していた、と評価される材料になり得ます。この「自覚して避けた」という点は、後で説明する刑事・民事のそれぞれの論点で共通して意味を持ちます。

 また、店の側は名前だけで客を管理しているとは限りません。電話番号、顔、利用履歴、会員番号などで照合していることも多く、予約管理の仕組みで特定の電話番号からの予約を受け付けないようにしている店もあります。名前を変えても気付かれる可能性は相応にある、という前提で考えておく方が安全です。予約時に伝えた情報の扱いについては【風俗トラブル】予約時に伝えた本名・電話番号はどう使われるのかもご覧ください。

店舗型と派遣型で何が違うか|建造物侵入の問題

 出禁の店を別の名前で利用した場合にどのような問題が生じ得るかは、まず、客がどこに立ち入るかによって変わります。大まかに整理すると、次のとおりです。

利用の形態客が立ち入る場所主に問題になり得ること
店舗型(店舗型ヘルス、ソープランド、店舗を構えるメンズエステなど)店の建物・個室建造物侵入、詐欺、誓約書との関係、キャストとの関係
店が用意したマンションの一室などに出向く形態店が管理する部屋店舗型に近く、立入りの評価が問題になり得る
派遣型(デリヘル、出張型のメンズエステなど)自宅やホテルの部屋詐欺、誓約書との関係、キャストとの関係


店舗型の店に入る場合は、建造物侵入が問題になり得る

 刑法130条は、正当な理由がないのに人の看守する建造物に侵入した者などを、3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処すると定めています。最高裁判所は、ここでいう「侵入」を、管理権者の意思に反して立ち入ることと解しています(最高裁昭和58年4月8日判決)。

 出禁を告げられた客が店舗型の店に入ることは、管理権者である店の意思に反する立入りと評価される余地があります。最高裁は、外見上は一般の利用客と変わらない態様で銀行の出張所に立ち入った事案でも、管理権者が立入りを許さないことが明らかな場合には建造物侵入罪が成立すると判断しています(最高裁平成19年7月2日決定)。受付を通り料金を払っていたとしても、出禁の客だと分かっていれば店は入れなかった、という事情がある場合には、別の名前で受付を通ったこと自体が、店の意思に反していたことを示す事情として扱われるおそれがあります。

 もっとも、出禁がどの程度はっきり告げられていたか、その店舗だけか系列店まで含むのか、どれくらい時間が経っているのかといった事情によって評価は変わります。実際に警察が動くかどうかは、店が被害を申告するかどうかにも左右されます。建造物侵入が成立する範囲については住居侵入・建造物侵入はどこから成立するのかを、店が用意した部屋に出向く形態については【風俗トラブル】出張型・マンション型の個室サービス|住居侵入が加わる場面をあわせてご覧ください。

派遣型の場合は、店の建物に入るわけではない

 自宅やホテルにキャストを呼ぶ派遣型の場合、客が店の建物に立ち入ることは通常ありません。ホテルの部屋は客が利用する権限を持つ場所ですから、店舗型と同じ意味での建造物侵入は問題になりにくいと考えられます。

 ただし、それで問題がなくなるわけではありません。次に述べる詐欺との関係や、出禁のときに交わした書面、特定のキャストとの関係は、派遣型でも同じように問題になり得ます。

名前を偽ることの問題|詐欺と書類への記入

名前を偽って申し込むことと詐欺罪

 刑法246条は、人を欺いて財物を交付させた者を10年以下の拘禁刑に処し(1項)、同じ方法で財産上の利益を得た場合も同様とすると定めています(2項)。お金を払って受けるサービスであっても、その提供を受けることは「財産上の利益」にあたり得ます。

 身分や属性を偽ってサービスを利用した場合に詐欺罪が成立するかについては、最高裁が同じ日に結論の分かれた2つの判断を示しています。暴力団関係者の利用を断っていたゴルフ場で、暴力団関係者であることを申告せずに利用を申し込んだ事案では、申込みの際に確認する措置が十分にとられていなかったことなどから、人を欺く行為にあたらないとされました(最高裁平成26年3月28日判決)。これに対し、入会時に暴力団関係者を同伴しないと誓約していた会員が、同伴者の身分を告げずに利用を申し込んだ事案では、詐欺罪の成立が認められています(最高裁平成26年3月28日決定)。

 これらの判断からは、その事項が店にとって取引するかどうかを判断する基礎となる重要な事項か、店がそれを確認する措置をとっていたかが、分かれ目の一つになると読み取れます。出禁にした客と取引しないことは店にとって重要な事項といえますし、別の名前を名乗る行為は、単に何も申告しなかった場合よりも積極的なものです。他方で、風俗店の予約では名前を厳密に確認しない運用も多く、料金も通常どおり支払っているのが一般的です。この考え方が風俗店の出禁と別名義の予約という場面にどこまで当てはまるかは個別の事情によりますが、詐欺との関係が問題になる余地があることは知っておいてよいでしょう。

店の書類に別の名前を書く場合

 店舗型の店では、会員登録の用紙や利用時の同意書などに氏名を書くよう求められることがあります。そこに実在する他人の名前を書いた場合や、書類の性質によっては架空の名前を書いた場合にも、私文書偽造(刑法159条)が問題になる余地があります。電話で名前を名乗るだけの場合と、書面に署名する場合とでは、問題の性質が異なる点に注意が必要です。

民事面とキャストとの関係で問題になり得ること

出禁のときに誓約書や示談書を書いている場合

 出禁のきっかけがトラブルだった場合、その際に「今後は来店しない」「当店および系列店を利用しない」といった誓約書や示談書を書いていることがあります。そこに違約金の定めがあれば、別の名前で予約して利用したことは、その約束に反する行為として違約金を請求される根拠になり得ます。民法は、当事者が損害賠償の額をあらかじめ定めておくことを認めています(民法420条1項)。

 もっとも、違約金の額が不相当に高い場合や、書面を作った経緯に問題がある場合には、定められた額をそのまま払わなければならないとは限りません(民法90条)。書面の内容を正確に覚えていない場合は、手元の控えや写真を確認することから始めます。誓約書の条項ごとの考え方は店が示す誓約書の条項別チェック|どこが効き、どこが効かないかで整理しています。

特定のキャストに会うことが目的の場合

 出禁の理由が特定のキャストとのトラブルで、別の名前で予約する目的がそのキャストに会うことにある場合は、さらに注意が必要です。キャストの側から見れば、自分を守るために店が出禁にした相手が、名前を変えて予約してきたことになります。本人の意思に反して会いに行こうとする行動と受け取られやすく、以前のトラブルが再燃するきっかけにもなります。

 ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、特定の人の勤務先などに押し掛けることなどを「つきまとい等」と定めています(同法2条1項1号)。キャストにとって店は勤務先にあたるため、指名して予約を重ねるような場合には、この規定との関係が問題になることがあります。いったんは店の出禁で収まっていた話が、警察への相談や被害届に進むこともあり得ます。つきまとい等とストーカー行為の関係については連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いをご覧ください。

別名義の予約が店に分かったとき・分かる前にできること

その場で求められやすいこと

 来店時や派遣先で出禁の客だと分かった場合、店のスタッフから、罰金や違約金の名目での支払い、身分証の提示や撮影、「二度と利用しない」という誓約書への署名などを求められることがあります。動揺した状態で求めに応じると、後から内容を見直すことが難しくなります。

  • その場で現金を払う、借用書を書くといった、金額を確定させる行動は急がない。
  • 支払いを求められた名目、金額、相手の名前と連絡先を控えておく。
  • 身分証を預ける、写真を撮らせることには慎重になる。
  • 退去を求められたら、言い分があってもまずはその場を離れる。


 店舗の場合、退去を求められたのに応じないと、それ自体が不退去罪(刑法130条後段)にあたり得ます。その場での支払いについては【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断、身分証の扱いについては身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結、派遣先のホテルにスタッフが来た場合については【風俗トラブル】ホテルの部屋に店のスタッフが来た|ドアを開ける前に考えることで詳しく扱っています。

すでに予約してしまった、利用してしまった場合

 予約の段階であれば、利用をやめてキャンセルするのが現実的です。キャンセル料の扱いは店の定めによりますが、来店後や派遣後に出禁の客だと分かった場合と比べると、問題は小さく収まりやすいといえます。

 利用した後で店から連絡が来た場合は、出禁になった経緯、そのときに書いた書面、今回の利用の内容を整理してから対応します。連絡を無視し続けることも、言われるままに支払うことも、どちらも状況を難しくすることがあります。同じ店でトラブルが重なると、以前の件も含めて交渉の前提が変わることがある点にも注意が必要です(【風俗トラブル】同じ店で複数回トラブルになった|常習性が交渉に与える影響)。

出禁を解いてもらいたい場合

 その店をもう一度利用したいのであれば、名前を変えて予約するのではなく、出禁を解いてもらえるかを店に正面から問い合わせるのが筋です。もっとも、店には出禁を解く義務はなく、断られた場合はそれを受け入れるほかありません。トラブルが絡んでいた場合は、自分で直接連絡すると話がこじれることもあるため、問い合わせの方法を含めて相談しておくと安心です。

よくあるご質問

系列店であれば、本名で予約しても問題ないのでしょうか。

 出禁がどこまで及ぶかは、店の告げ方や書面の内容によります。系列店でも運営会社が同じであれば出禁の情報が共有されていることがありますし、誓約書に「系列店を含む」と書かれていれば、その約束との関係も問題になります。一方、運営主体が異なる店に、出禁の効力が当然に及ぶわけではありません。告げられた範囲がはっきりしない場合は、利用する前に確かめておく方が安全です。店同士の情報共有については【風俗トラブル】系列店からも連絡が来た|店同士の情報共有と請求の関係もご覧ください。

理由に納得できないまま、一方的に出禁と言われました。従う必要はありますか。

 店には取引する相手を選ぶ自由があるため、理由に納得できなくても、出禁そのものを争うことは一般に難しいとされています。ただし、出禁と同時に支払いを求められている場合や、事実と異なる理由を他人に広められている場合は、出禁とは別の問題として検討できます。出禁に納得できないことは、別の名前で予約してよい理由にはならない点に注意が必要です。

何年も前の出禁でも、まだ有効なのでしょうか。

 出禁に法律上の期限が定められているわけではありません。期間を区切って告げられたのでなければ、店が解除していない限り、出禁の意思は続いていると考えておくのが無難です。ただし、時間の経過や出禁の告げ方によっては、店の意思に反することを自覚していたかどうかの評価が変わることもあります。

まとめ


  1. 出禁は、契約自由(民法521条1項)と施設管理権を根拠に、店が今後の取引と立入りを断る意思表示と整理される。
  2. 出禁を告げられただけで罪に問われるわけではないが、別の名前で予約することは、店の意思に反することを自覚していた事情として扱われやすい。
  3. 店舗型の店に入る場合は、管理権者の意思に反する立入りとして建造物侵入(刑法130条前段)が問題になり得る。退去を求められて応じなければ不退去(同条後段)にもあたり得る。
  4. 名前を偽って申し込む行為は、事情によっては詐欺(刑法246条2項)との関係が問題になる余地がある。店の書類に別の名前を書けば私文書偽造(同法159条)が問題になることもある。
  5. 出禁の際に誓約書や示談書を書いていれば、違約金(民法420条1項)を請求される根拠になり得る。ただし額が不相当に高い場合は全額とは限らない(同法90条)。
  6. 特定のキャストに会うことが目的の場合は、ストーカー規制法2条1項の「つきまとい等」との関係にも注意が必要。
  7. 店に分かった場合は、その場での支払いや署名を急がず、記録を残してから対応を考える。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店の利用をめぐるトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。出禁の経緯や、そのときに書いた書面の内容をうかがったうえで、今後の対応を一緒に整理します。

出禁と言われた店との間で請求や連絡が続いている方、すでに別の名前で予約・利用してしまい店から連絡を受けている方は、状況が動く前にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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