お触りの証拠を捏造するメンズエステ美人局の見分け方と現場での対処法
メンズエステの中には、マイクロビキニやディープリンパといった露出度・密着度の高い「オプション」を追加料金で用意している店舗があります。際どい装いのセラピストから肌を密着させた施術を受けるうちに、「これは触ってもいい雰囲気だ」「同意があるはずだ」と受け取ってしまい、施術者の体に手を伸ばしてトラブルになる——そんな相談が実際に寄せられます。
このとき多くの方が口にするのが、「同意があると思っていた」という言い分です。では、過激なオプションがある店で施術を受けていたことを理由に、「同意があると誤信していたのだから罪にならない」という主張(同意の誤信)は、法律上どこまで通用するのでしょうか。性風俗を利用する男性の側に立つ立場から、抑制的に整理します。
「過激オプション」がつくる誤解と、その落とし穴
マイクロビキニなどのオプションは、性的サービスを直接うたわなくても、それを想起させる雰囲気を演出するために設けられていることがあります。利用する側からすれば、「ここまで過激なら、多少のことは許される店なのだろう」と感じてしまうのも無理はない面があります。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。店の営業形態や演出と、目の前のセラピスト個人が身体に触れられることへ同意しているかは、まったく別の問題です。過激なオプションは「サービスの形式」を示すものであって、特定の相手が特定の接触を承諾したことを意味しません。店の宣伝文句や料金体系がどれほど際どくても、それが個人の同意を自動的に生み出すわけではないのです。
施術者に無断で触れると成立しうる罪
セラピストの同意を得ないまま胸や陰部などに触れた場合、**不同意わいせつ罪(刑法176条)**が成立するおそれがあります。令和5年7月13日に施行された同罪は、暴行・脅迫がなくても、相手が「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」でわいせつな行為をした場合に成立し得ます。
メンズエステの施術は、個室でうつ伏せになり、タオルなどで視界を遮られた状態で行われることが少なくありません。こうした状況は、とっさに拒絶しづらい状態と評価される余地があります。態様によっては東京都迷惑防止条例(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、常習は加重)にとどまる場合もありますが、近年は同種事案を不同意わいせつで立件する傾向もみられ、どちらになるかを利用者自身が判断するのは困難です。
なお、不同意わいせつ罪には罰金刑がなく(6月以上10年以下の拘禁刑)、起訴されれば正式な裁判となります。また平成29年改正で非親告罪となっているため、後で相手が告訴を取り下げても当然に不起訴になるとは限りません。「抜きあり」を期待して店を選んだこと自体は、触れる行為への同意とは評価されない、という点も押さえておく必要があります。
「同意の誤信」は、そもそも法律上どう扱われるか
ここで本題の「同意の誤信」です。結論から言えば、同意があると本気で誤信していた場合、故意(相手が嫌がっていると分かっていながらあえて行うという認識)を欠くとして、犯罪が成立しないことは理論上あり得ます。これは、事実の錯誤が故意を否定するという刑法の一般原則(刑法38条1項)に基づくもので、性犯罪の弁解として実務でも一定の場面で問題になります。
ただし、これは「思い込みさえあれば罪を免れる」という都合のよい抜け道ではありません。捜査機関や裁判所は、被告人の主観的な言い分をそのまま受け入れるわけではなく、その誤信に客観的な裏づけがあったかを、当時の状況や証拠から厳しく吟味します。「同意があったと思った」という主観的な思い込みだけでは通用しない、というのが実務の実感です。
過激オプションを根拠にした「誤信」が通りにくい理由
では、「マイクロビキニのオプションを選んだのだから、触れることにも同意があると思った」という主張は認められるでしょうか。通りにくい、と考えるのが妥当です。理由は次のとおりです。
- 服装やオプションは「同意」ではない:露出度の高い装いや過激なメニューは、店が用意したサービスの枠組みにすぎず、施術者個人が身体接触を承諾した事実を示すものではありません。
- 「期待」と「同意」は別物:「こういう店なら許されるはず」という期待は、相手の意思とは無関係な自分の側の推測です。相手の承諾を推認させる客観的事情がなければ、誤信の裏づけにはなりません。
- 困難な状況の利用と評価されやすい:施術という名目で密着が生じる関係を利用して接触に及んだと見られれば、かえって不利に働くことがあります。
つまり、「過激オプションがあったこと」だけを根拠にした誤信の主張は、客観的な裏づけを欠くため、故意を否定する材料としては弱いのが実情です。
「誤信」が問題になり得る場面との線引き
一方で、施術者自身が言葉や態度で積極的に接触を促していた、明確に応じる意思表示があった、といった客観的な事情が存在する場合には、話が変わってきます。もっとも、こうした事情の有無は、後から水掛け論になりやすく、店側が「触ったら罰金」といった誓約書を用意して因縁をつける、いわゆる美人局の構図と交差することもあります。自分に有利な事情があると感じても、その場での自己判断は危険です。証拠の残し方や評価は、専門家に委ねるのが安全です。
トラブルになったときの初動
実際にトラブルになった場合、押さえておきたい初動は次のとおりです。
- その場で高額を払わない・書面にサインしない:慌てて応じると、後から覆すのが難しくなります。
- やり取りの記録を消さない:予約履歴、店との連絡、その場の状況は、後の判断材料になります。
- 単独で交渉しない:相手方や店と直接やり取りせず、窓口を一本化することがトラブルの拡大を防ぎます。
- 早めに弁護士へ相談する:被害届の前か後かで取り得る手が変わります。
示談は、不起訴や処分の軽減を目指すうえで重要ですが、不同意わいせつは非親告罪であり、示談が成立すれば当然に不起訴になるわけではなく、宥恕(許す意思)を含む内容が求められます。交渉は捜査機関を介して相手の連絡先の取次ぎを受けるなど、相手の匿名性に配慮した進め方が必要です。
まとめ
「マイクロビキニ等の過激オプションがあったから、同意があると思った」という言い分は、法律上まったく無意味ではありませんが、それだけで罪を免れる魔法の言葉でもありません。同意の誤信が認められるには客観的な裏づけが必要であり、店の演出やオプションの存在は、施術者個人の同意を示すものではないからです。
自分では「誤信していた」と感じる事情があっても、その評価は容易ではありません。トラブルの初動を誤ると不利益が大きくなりますので、早い段階で弁護士にご相談ください。当事務所は、性風俗の利用者(客側)の立場に立って対応しています。


