風俗の性犯罪で前科をつけない|不起訴処分を得るための示談の重要性
同じ店で二度目、三度目のトラブルになったとき、店側から「前にもありましたね」「常習ですよね」と言われることがあります。
この言葉が出てくると、前回と同じようには収まらないのではないかと感じる方が多いようです。繰り返しがあったという事情は、たしかに交渉の進み方に影響します。ただし、影響する場所は限られており、回数が増えたことがそのまま金額や処分の重さに置き換わるわけではありません。
この記事では、風俗店とのトラブルで「複数回」「常習」と言われたときに、その事情が交渉のどこに効き、どこには効かないのかを分けて整理します。
この記事で扱うこと・扱わないこと
同じ店との間で二度目以降のトラブルになり、店側から過去の経緯を持ち出されている場面を想定しています。
- 「常習」という言葉が法律の中でどのように使われているかを整理します。
- 繰り返しという事情が、交渉のどこに影響するのかを場面ごとに分けます。
- 前回がどのような形で終わっていたかによって、今回の位置づけが変わることを説明します。
- 示談書の条項の作り方、分割払いの設計、刑事手続の細かな流れは、それぞれ別の解説に譲ります。
「常習」という言葉には二つの使われ方がある
店側が口にする「常習」と、法律の条文が使う「常習」は、同じ言葉でも指しているものが違います。ここを分けておかないと、相手の言い分をそのまま法的な評価だと受け取ってしまうことがあります。
条文の要件としての「常習」
法律が「常習として」という言葉を犯罪の要件に置いている例は、それほど多くありません。賭博に関する規定、一定の窃盗や暴力行為について繰り返しを重く扱う特別法、いくつかの都道府県の迷惑防止条例などが挙げられます。これらは、繰り返しがあること自体を条文が正面から取り込んでいる類型です。
一方で、風俗店とのトラブルで問題になりやすい場面については、回数そのものを加重の要件とする定めが置かれていないことが一般的です。行為があったといえるかどうかは、その一回ごとの事実と、それを裏づける材料によって判断されます。二度目だから成立しやすくなる、という仕組みにはなっていません。
交渉の場で言われる「常習」
これに対して、店側が交渉の中で使う「常習」は、条文上の要件を指しているとは限りません。前にも同じことがあった、だから今回は前回と同じようには終わらせない、という姿勢を伝える言葉として出てくることがあります。
この違いを踏まえると、「常習だから金額が上がる」という説明をそのまま受け取る必要はないことが分かります。もっとも、相手の姿勢が変わること自体は、交渉の現実に影響します。
回数が効く場所と、効かない場所
繰り返しという事情がどこに作用するのかを場面ごとに分けると、次のように整理できます。
| 場面 | 繰り返しの影響 | 実際に動いているもの |
|---|---|---|
| 行為があったといえるか | 直接には影響しにくい | その一回ごとの事実と証拠 |
| 請求できる範囲 | 影響することがある | 過去の分を別に立てられるか |
| 相手の態度と提示条件 | 影響しやすい | 金銭以外の条件、窓口の硬さ |
| 刑事の手続に進むかどうか | 影響することがある | 被害届を出すかどうかの判断 |
| 最終的な支払額 | 間接的に影響する | 相手の姿勢を通じて |
表のとおり、繰り返しが直接に働くのは「相手がどう出るか」という部分です。行為があったといえるかどうかや、一回あたりの評価そのものを動かす力は限られています。
前回がどう終わっていたかで、今回の位置づけが変わる
二度目以降の交渉では、今回の出来事だけでなく、前回がどのような形で区切られていたかが効いてきます。
書面を交わして終わっていた場合
前回、示談書や合意書を作って解決していた場合、その書面が対象としていた範囲については、原則として改めて請求されることはありません。ただし、書面がどこまでを対象にしていたかは文言によって変わります。前回の書面が手元にあるのであれば、今回の話に入る前に確認しておきたいところです。前回の合意の読み方と使い方は、別の解説で扱っています。
支払って終わったが書面がない場合
金銭を渡して収めたものの、書面が残っていないという形は少なくありません。この場合、前回の分がどこまで清算されたのかを示す材料が乏しく、今回の話の中で改めて持ち出されることがあります。振込の記録や当時のやり取りが残っていれば、前回の範囲を示す材料になります。
その場の注意だけで終わっていた場合
店内で注意を受けただけ、あるいは代金を精算して帰っただけという場合、前回の件は整理されないまま残っています。今回の交渉で過去の分を含めた話になりやすいのは、この形です。
店側が前回を把握していなかった場合
利用時の名前や連絡先が回ごとに違っていて、店側が同一人物と認識していなかったこともあります。この場合は、過去の記録と今回を結びつけられるかどうかが、そもそもの前提になります。店側にどのような記録が残るのかについては、別の解説に譲ります。
過去の分をまとめて請求されたとき
繰り返しがはっきりと表れるのは、請求の範囲です。今回の一件ではなく、過去の利用分も含めた金額が提示されることがあります。
この場合に確認したいのは、一件ずつの中身です。過去の分についても、いつ、どの場面で、何があったのかが個別に示される必要があります。合計額だけが示され、内訳が示されないときは、その点を尋ねることから始まります。
時間の経過にも区切りがあります。民法724条は、不法行為による損害賠償を求める権利について、損害と加害者を知った時から3年、行為の時から20年という期間を定めています。人の身体を害する行為に当たる場合には、3年ではなく5年とされています。古い出来事について改めて請求を受けているときは、この点が問題になる余地があります。ただし、期間をいつから数えるかは事案によって判断が分かれ、日付だけで結論が決まるものではありません。相手が店の規約違反を理由とする請求という形を取っている場合には、期間の考え方も変わってきます。
こちらの説明の通り方が変わる
二度目以降で変わりやすいのが、こちらの説明がどのように受け止められるかという部分です。
初回であれば、店のルールを知らなかった、その場の流れで誤解したという説明が、一定の説得力を持つことがあります。同じ店で二度目となると、同じ説明は通りにくくなります。前回の時点でルールの説明を受けているはずだ、という反論が返ってくるためです。
もっとも、これは説明の受け止められ方に関わる話であって、事実そのものを置き換えるものではありません。相手方の同意があったかどうか、どのような経過だったかは、今回の事実として確かめられるべき事柄です。回数が多いことを理由に、今回の経過について事実と異なる内容を認めてしまうと、後の話が組み立てにくくなります。
相手が求める条件が増える
繰り返しがある場合、店側は金銭だけでなく、将来に向けた約束を求めてくることがあります。
- 今後その店舗、あるいは系列の店舗を利用しないという約束。
- 従業員への連絡や接触をしないという約束。
- 同じことがあった場合の取り決めを、あらかじめ書面に入れること。
- 支払いの方法について、後から争いにくい形を求めること。
これらは、今回の解決とは別に、将来のこちらの行動を縛る内容です。受け入れるかどうかは、範囲と期間を見たうえで判断することになります。範囲が広すぎる約束は、後になって解釈の争いを生むことがあります。
将来の違反に備えた金銭の定めを求められることもあります。その金額が妥当といえるかどうかは別の検討が必要な部分ですので、条項の中身については別の解説に譲ります。
刑事の手続に関わる場面
店側や従業員の方が被害届の提出を検討している場合、繰り返しがあるという事情は、その判断に影響することがあります。店として今回で区切るのか、外部の手続に委ねるのかという選択に関わるためです。
手続が進んだ場合、検察官が起訴するかどうかを判断する際の考慮要素は、刑事訴訟法248条に定められています。犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状、犯罪後の情況といった事柄です。同じような出来事を繰り返しているという事情は、このうち評価に関わる部分に乗ってきます。
ただし、先に述べたとおり、回数そのものを重くする仕組みが置かれている犯罪は限られています。前科がある場合の扱いや、量刑がどこで変わるのかについては、別の解説で扱っています。
利用を断られた後のこと
複数回のトラブルの後、店から今後の利用を断る旨を告げられることがあります。店舗が誰の立ち入りを認めるかを決めること自体は、店側の判断に委ねられている部分です。
告げられた後に立ち入った場合には、刑法130条前段が問題になる余地があります。断りの意思が明確に伝えられている以上、それに反して立ち入ったと評価されうるためです。系列の店舗を含めて断られているのか、期間の定めがあるのかは、告げられた内容によって変わります。
交渉に入る前に整理しておきたいこと
過去の経緯が絡む場合は、手元の材料を時系列で並べておくと、話の見通しが立てやすくなります。
- それぞれの利用がいつだったか、分かる範囲で日付を並べる。
- 前回のトラブルがどのような形で区切られたか(書面、支払い、注意のみ)。
- 前回に交わした書面や、支払いの記録が残っているか。
- 今回、店側が示している金額の内訳と、そこに過去分が含まれているか。
- 相手方が誰なのか(店舗なのか、従業員個人なのか)。
- 店側が求めている、金銭以外の条件があるか。
進め方を誤りやすい場面
繰り返しがある場面では、次のような対応が、後の交渉を難しくすることがあります。
- 過去の経緯を伏せたまま今回の話だけを進め、後から食い違いが表面化する。
- 早く終わらせたいという気持ちから、内訳の説明を求めないまま合計額に応じる。
- 前回と同じ条件で収めるよう求め、話が平行線になる。
- 店側に直接連絡を取り、その場のやり取りが後の交渉の前提として扱われる。
最後の点については、すでにご自身で連絡を取ってしまった後にどう立て直すかを扱った解説があります。
よくあるご質問
二度目だと金額は上がるのですか
回数によって金額が決まる仕組みがあるわけではありません。ただし、相手が解決に応じる姿勢や、提示してくる条件が変わることを通じて、結果として話が長引いたり、金銭以外の条件が加わったりすることはあります。
前回すでに支払っているのに、また過去の分を請求されています
前回の支払いが何を対象としていたかによります。書面が残っていればその範囲が手がかりになり、残っていない場合は振込の記録や当時のやり取りが材料になります。まずは、今回の請求に過去分が含まれているのかを確かめるところからです。
過去の利用について、こちらから先に説明したほうがよいのでしょうか
場面によって答えが変わります。相手がすでに把握している事柄なのか、こちらから持ち出すことで請求の範囲を広げてしまわないかを見たうえで判断することになります。方針を決める前にご相談いただくほうが、整理しやすい部分です。
まとめ
- 「常習」には、条文上の要件としての意味と、交渉の場での主張としての意味があり、両者は別のものである。
- 条文が繰り返しを加重の要件としている犯罪は限られており、行為があったといえるかは一回ごとの事実で判断される。
- 繰り返しが働きやすいのは、相手の姿勢と提示条件、そして手続に進むかどうかの判断である。
- 前回がどのような形で終わっていたかによって、今回の交渉の出発点が変わる。
- 過去分を含む請求では、一件ごとの内訳と、民法724条が定める期間の点を確認する。
- 金銭以外の条件を求められた場合は、その範囲と期間を見たうえで判断する。
- 利用を断られた後の立ち入りは、刑法130条前段が問題になる余地がある。
ご相談について
同じ店との間で複数回のトラブルになっている場合、今回の出来事だけを切り取っても話がまとまらないことがあります。過去の経緯をどこまで、どの順で相手に伝えるかは、その後の交渉の形を左右します。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、池袋と新橋に事務所を置き、風俗店とのトラブルに関するご相談をお受けしています。すでに店側とのやり取りが始まっている場合でも、途中からの対応が可能です。お手元の資料と経緯を整理したうえで、進め方をご一緒に検討します。


