【風俗トラブル】女の子と連絡先を交換しただけで違約金を求められる?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月14日時点の民法、消費者契約法、刑法、弁護士法の規定をもとに、風俗店を利用した客の立場から書いています。刑法の法定刑は、2025年6月1日施行の拘禁刑への一本化を反映した表記です。個別の事情によって見通しは変わりますので、具体的な対応はご相談のうえで判断してください。


「女の子に『LINEを交換しよう』と言われて応じたら、数日後に店から『連絡先の交換は禁止なので違約金を払ってほしい』と電話が来た」「受付で『連絡先の交換は罰金20万円』と説明されていたが、名刺を渡しただけでも対象になるのか」。風俗トラブルのご相談では、店の外で会ったわけでも、本番行為があったわけでもなく、連絡先を交換したことだけを理由にお金を求められたという事情を伺うことがあります。

 インターネット上の解説では、「店がいう罰金に支払義務はない」と説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、違約金の定めが客との契約に組み込まれている場合には、店は損害を証明しなくても定めた額を請求できるのが原則で、「払わなくてよい」で話が終わるとは限りません。反対に、規約に書かれた金額をそのまま払う義務があるわけでもなく、連絡先の交換という行為に特有の事情によって結論が分かれます。

 この記事では、キャストと連絡先を交換したことだけを理由に違約金を求められた客の方を想定し、支払義務があるかを分ける点と、請求を受けたときの対応を整理します。連絡先を受け取った後に起きやすいこと全般、規約や違約金条項の一般的な効力、店の外で会った場合の問題はそれぞれ別の記事に譲り、ここでは「交換しただけ」の段階に絞ってお伝えします。

まず結論|「交換しただけ」で求められた違約金について

 最初に、この記事の結論をまとめておきます。詳しい理由は後の章で説明します。

  • 店がいう「罰金」に刑罰のような支払義務はなく、問題になるのは店との契約に基づく違約金や損害の賠償である。
  • 違約金を払う義務があるかは、規約が契約の内容になっていたか、自分の行為が禁止事項に当たるか、金額が損害に見合っているか、署名した書面があるかで分かれる。
  • 連絡先を交換しただけの段階で店に生じる具体的な損害は限られることが多く、高額な違約金はその点から見直しの対象になり得る。
  • その場で支払いや署名に応じず、規約の内容と、交換に至った経過を記録に残す。
  • 家族や勤務先に知らせると告げて支払いを迫られた場合は、自分だけで金額の話を進めない。


連絡先の交換は何の問題として扱われるのか

交換すること自体を罰する法律はない

 客とキャストが個人的な連絡先を交換することを、それだけで処罰する法律はありません。店から「罰金」と言われても、罰金は国が刑罰として科すものであり、店が客に科すことはできません。連絡先を交換したことだけで警察が関わる問題になることも通常はなく、ここで問われるのは、犯罪かどうかではなく、店との約束に反したかどうかという民事の問題です。

「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできない

「罰金」と「違約金」は分けて考える

 ただし、店の求めを「罰金だから払わなくてよい」と片づけると、見通しを誤ることがあります。店の請求は、呼び名が罰金であっても、法的には契約違反に基づく違約金や損害賠償の請求として組み立て直されるのが通常だからです。当事者は、契約に違反した場合の賠償額をあらかじめ定めておくことができ(民法420条1項)、違約金の定めは賠償額の予定と推定されます(同条3項)。呼び名にかかわらず、違約金の定めが客との契約に有効に組み込まれていれば、店は実際の損害額を証明しなくても、定めた額を請求できるのが原則です。そのため、本当に確かめるべきなのは「罰金かどうか」ではなく、次の章で挙げる4つの点です。

違約金を払う義務があるかを分ける4つの点

 「連絡先を交換したので違約金○万円」という請求に支払義務があるかは、おおむね次の4つの点で分かれます。

確かめる点主に問題になること
規約が契約の内容になっていたか利用の前に禁止事項と違約金を示され、同意していたか
禁止事項に当たる行為だったか規約の文言と、誰がどのように連絡先を渡したか
金額が損害に見合っているか交換によって店に生じた損害と、違約金の額との開き
署名した書面があるか発覚した後に書かされた誓約書や借用書の効力


1|規約が契約の内容になっていたか

 違約金を請求できるのは、その定めが店と客との契約の内容になっている場合です。受付で禁止事項の一覧を示されて署名した、予約の際に規約への同意を求められた、といった事情があれば、契約の内容になっていると評価されやすくなります。不特定多数の客に画一的に示す規約が定型約款に当たる場合には、規約を契約の内容とすることに合意したときや、店があらかじめその旨を表示していたときに、個別の条項にも合意したものとみなされます(民法548条の2第1項)。反対に、ホームページの目立たない場所に掲載されていただけで、利用の際に示されることもなかった場合には、そもそも客を拘束するかどうかが争点になり得ます。

「規約に書いてある」と言われたとき|約款が客を拘束する条件
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2|禁止事項に当たる行為だったか

 規約が契約の内容になっていたとしても、自分の行為がその禁止事項に当たるかは別の問題です。規約の書き方は店によって異なり、「キャストの連絡先を聞き出すこと」「店を通さずに連絡を取ること」「連絡先の交換」など、禁止の対象がどこまでかは文言によって変わります。キャストの側から連絡先を書いたメモを渡され、受け取っただけで一度も連絡していない場合や、キャストから求められて自分の連絡先を伝えた場合に、客が禁止事項に反したと言えるかは慎重に検討する必要があります。いつ、どちらから連絡先の話が出たのか、その後に実際に連絡を取ったのかを、記憶が新しいうちに書き留めておいてください。

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3|金額が損害に見合っているか

 違約金の定めが契約の内容となり、禁止事項に当たる行為があったとしても、定められた金額をそのまま払う義務があるとは限りません。事業者と消費者との契約で、消費者の義務を加重し、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項は無効とされ(消費者契約法10条)、定型約款でも同様の条項は合意しなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。また、実際に生じ得る損害と比べて著しく過大な違約金は、公序良俗に反するとして、その超える部分の効力が否定されることがあります(民法90条)。連絡先の交換に対する違約金がどの程度まで認められるかは、次の章で述べる損害の中身と照らして判断されます。

損害賠償額の予定(民法420条)は風俗の規約でも有効か

4|署名した書面があるか

 店に知られた後、店の事務所や電話でのやり取りの中で、違約金を支払う旨の誓約書や借用書への署名を求められることがあります。署名した書面があると、規約とは別に、その書面で支払いを約束したと主張されます。ただし、強く迫られて署名した場合には、強迫を理由に取り消せることがあり(民法96条1項)、書面の金額が損害と見合わない場合にはその部分の効力が問題になります。署名してしまった場合も、それだけで支払いが確定したと考える必要はありません。

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「交換しただけ」で店に生じる損害とは

店が禁止する理由として挙げることの多い事情

 店が連絡先の交換を禁じる理由としては、キャストが店を通さずに客と会うことで売上が失われること、キャストの安全や在籍の管理に支障が出ること、他の客やキャストとの公平が保てなくなることなどが挙げられます。禁止すること自体には、店の運営上の理由があると言えます。

損害が生じる「おそれ」と、実際の損害は別のもの

 しかし、これらの多くは、交換の後に店の外で会ったり、店を通さずにお金をやり取りしたりして初めて具体化するものです。連絡先を交換しただけの段階では、店の売上が実際に失われたとは言いにくく、店に生じた損害を具体的に説明することは簡単ではありません。損害が生じる「おそれ」があることと、実際に損害が生じたことは別であり、交換しただけの段階で高額な違約金を求められた場合、その金額は見直しの対象になり得ます。弁護士ドットコムにも、入室の際に「違反した場合は20万円」と説明されていた店で連絡先を渡してしまった客や、連絡先の交換に罰金を定めた店の利用について不安を抱える客からの相談が寄せられており、金額の根拠をめぐって迷う方が少なくないことがうかがえます。

店の外で会った・直接お金を払った場合は評価が変わる

 一方、連絡先の交換をきっかけに店を通さずに会い、本来は店に支払われるはずだった料金をキャストに直接渡していた場合には、店の売上が失われたという主張に具体性が出てきます。この段階になると「交換しただけ」とは事情が異なり、店から求められる金額や、それに対する見通しも変わってきます。

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店から違約金を求められたときの対応

その場で払わない・署名しない

 店から連絡が来ると、「今日中に払えば終わりにする」「払わないなら家族に連絡する」などと、決断を急がされることがあります。しかし、期限を切られたからといって、その期限までに応じなければならない法的な義務が生じるわけではありません。「規約の内容を確認してから返事をします」と伝え、その場では支払いや書面への署名に応じないことが基本です。正当な請求の根拠がないのに、あるいは根拠があってもそれを大きく超える金額を、家族や勤務先に知らせることなどを示して払わせようとする場合には、恐喝罪(刑法249条)が問題になり得ます。もっとも、こちらにも規約違反の事情があると、どこからが恐喝に当たるかの線引きは簡単ではありませんので、言われた内容を記録し、自分だけで金額の話を進めないようにしてください。

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規約と経過を手元に残す

 受付で示された禁止事項の紙や予約の際の画面、店のホームページに掲載された規約、店から届いたメッセージは、写真やスクリーンショットで保存しておきます。キャストとのやり取りも、店に知られたくないという理由で削除すると、経過を説明する材料を失うことになります。誰から連絡先の話が出たのか、交換の後に連絡を取ったのかが分かるやり取りは、支払義務の有無や金額を争ううえでとくに大切な記録です。

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弁護士に任せる場合の進め方

 弁護士が依頼を受けると、店に対して今後の連絡は弁護士にするよう求める通知を送り、窓口を一本化します。そのうえで、規約が契約の内容になっていたか、禁止事項に当たる行為があったか、金額の根拠は何かを店に確かめ、支払う場合も、それ以上の請求をしないことを確認する清算条項などを入れた合意を目指します。店との交渉を自分で続けるか、弁護士に任せるかの判断については、次の記事も参考にしてください。

【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情

よくあるご質問

連絡先を受け取っただけで、まだ一度も連絡していません。違約金を求められることはありますか

 店が規約違反を主張して連絡してくる可能性はあります。ただ、店の規約が客に禁じているのは、多くの場合、キャストの連絡先を聞き出したり店を通さずに連絡を取ったりすることです。キャストから一方的に渡されて受け取っただけであれば、禁止事項に当たるかどうか自体が争点になり得ますし、当たるとしても、店に具体的な損害が生じたとは言いにくい段階です。渡されたメモなどは、経過を説明する材料になるため、すぐに捨てずに保管しておくと安心です。

すでに違約金を払ってしまいました。取り戻すことはできますか

 支払った経緯や金額によっては、返還を求められる場合があります。強く迫られて支払った場合には強迫による取消し(民法96条1項)、金額が損害と比べて著しく過大な場合には条項の効力が問題になります。支払いの記録や、支払うまでのやり取りを保存したうえでご相談ください。

払ってしまった示談金・違約金は取り戻せるか?返金請求の可否

キャストから「店に知られたので、私の分の違約金も払ってほしい」と言われました

 店に知られた場合、キャストの側も店との契約に基づいて違約金を求められていることが少なくありません。しかし、キャストが店と結んだ契約上の負担を、客が代わりに引き受ける義務は通常ありません。また、店がキャスト個人の分まで含めて客と交渉し、金額をまとめて示してくる場合には、弁護士でない者が他人の法律事件の交渉を扱うことについて、弁護士法72条との関係が問題になり得ます。求められるまま負担せず、経過を整理してから対応を決めてください。

店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点
【風俗トラブル】キャスト本人から個人のLINEで連絡が来た|店を通さない請求の扱い

まとめ


  1. 連絡先の交換を処罰する法律はなく、店がいう「罰金」に刑罰としての支払義務はないが、違約金の定めが有効に契約の内容になっていれば、店は損害を証明しなくても定めた額を請求できるのが原則である(民法420条1項・3項)。
  2. 規約が定型約款に当たる場合、規約を契約の内容とする合意や事前の表示があって初めて客を拘束する(民法548条の2第1項)。
  3. キャストから一方的に連絡先を渡された場合など、自分の行為が禁止事項に当たるかは、規約の文言と実際の経過によって変わる。
  4. 消費者の利益を一方的に害する条項や、損害と比べて著しく過大な違約金は、効力が否定されることがある(消費者契約法10条、民法548条の2第2項、民法90条)。
  5. 交換しただけの段階では店に生じる具体的な損害は限られることが多く、店の外で会った場合や直接お金を払った場合とは評価が異なる。
  6. 強く迫られて署名した誓約書や借用書は取り消せることがあり(民法96条1項)、家族や勤務先に知らせると示して支払いを迫る行為は恐喝罪(刑法249条)が問題になり得る。
  7. その場で支払いや署名に応じず、規約と交換に至った経過の記録を残したうえで、窓口を一本化する方法を検討する。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店やメンズエステ、キャバクラなどの利用をめぐるトラブルのご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。店から連絡や請求が来る前の段階でのご相談も承っています。

キャストと連絡先を交換したことを理由に店から違約金を求められている方、誓約書や借用書への署名を求められて迷っている方は、お一人で判断する前にお電話・メールでご連絡ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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