店からの電話・LINEを無視し続けるとどうなるか|放置の先に起きることの時系列
出張型のサービスを自宅やホテルで利用した、あるいはマンションの一室が個室として使われているサービスを利用した。その後になって、建物の管理者や警察から連絡が来た。こうしたご相談を受けることがあります。多くの方がまず気にされるのは店側の届出や許可の話ですが、実際にお話を伺うと、それとは別に住居侵入・建造物侵入という問題が顔を出す場面があります。
この記事の要点は一つです。個室に入る許しをくれた人と、その建物に入る許しを持っている人は、同じとは限りません。出張型・マンション型では、この二つがずれることがあります。侵入の問題が加わるかどうかは、部屋の中で何があったかではなく、そこにたどり着くまでの経路を誰が管理していたかによって分かれます。
ただし、こうした利用のすべてに侵入の問題がついて回るわけではありません。以下では、加わりうる場面と、加わらないと考えられる場面を分けて整理します。行為の責任を軽く見せるための説明ではなく、どこに線が引かれているのかを知っていただくための整理です。
この記事で扱う範囲
- 成人の利用者ご本人が、後から連絡や声かけを受けた場面を想定しています。
- 店側の届出や許可が必要かどうかという問題そのものは扱いません。
- 金銭の請求や示談の進め方には触れません。
- すでに呼び出しを受けている場合は、状況によって考え方が変わりますので個別にご確認ください。
出張型とマンション型は、何が違うのか
どちらも個室で人と二人になるという点では似ています。違いは、その部屋を用意したのが誰か、そしてその建物を管理しているのが誰かという点にあります。
出張型は、利用者が指定した場所に人が来る形です。場所を用意するのは利用者側です。これに対してマンション型は、店側が借りている居室が個室として使われる形で、場所を用意するのは店側です。そして、その建物全体を管理しているのは、店でも利用者でもなく、管理組合や管理会社、貸主といった別の立場の人であることが通常です。
| 利用の形 | 部屋を用意する人 | 建物全体を管理している人 |
|---|---|---|
| 出張型(指定した場所に来てもらう) | 利用者 | 利用者自身、または施設や建物の側 |
| マンション型(居室が個室として使われる) | 店側 | 管理組合・管理会社・貸主など |
| レンタルルームや宿泊施設を使う形 | 利用者または店側 | 施設の側 |
この違いは、料金や業態の違いではなく、何かあったときに誰が話に出てくるかという違いにつながります。
住居侵入という罪が見ているもの
刑法130条は、正当な理由がないのに人の住居や、人が管理している建物などに侵入した場合を処罰しています。法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です(2025年6月から、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されています)。
ここでいう侵入は、鍵を壊して入るような場面に限られません。裁判では、その場所を管理している人の意思に反して立ち入ったかどうかが問われます。立入りを断る意思をあらかじめはっきり示していなかった場合でも、建物の性質や使い方、管理の状況、管理する人の態度、立ち入った目的といった事情から、その立入りを認めていなかったと合理的に判断できるときには、侵入にあたると評価されることがあります。
なお、その建物が住居にあたるのか、それ以外の建物にあたるのかという区別は、成立するかどうかの結論を大きく左右する場面ばかりではありません。集合住宅の共用部分についても、居住のための建物の一部として保護が及ぶとした最高裁の判断があります。
部屋への許しと、建物への許しは別のことがある
個室に招き入れられたこと自体には、その部屋を使っている人の承諾があります。その意味で、居室に入る行為が単独で問題になることは通常ありません。
もっとも、その部屋にたどり着くまでには、エントランス、エレベーター、内廊下といった共用部分を通ります。ここを管理しているのは居室を借りている人ではなく、建物全体を管理する側です。居室を使う人の承諾は、共用部分に立ち入る承諾として当然に及ぶわけではありません。
とはいえ、居住者を訪ねる来客が共用部分を通ること自体は、通常は広く認められています。宅配や友人の訪問がそのつど問題になるわけではないのと同じです。問題が生じうるのは、この一般的な容認の範囲を超えていると評価される場合です。
同じ一室でも、建物の性格によって見え方が変わる
個室サービスが入っている建物には、いくつかの種類があります。飲食店や事務所が並ぶ雑居ビルの一室である場合と、人が生活している居住用マンションの一室である場合とでは、同じ「一室」でも前提が違います。
雑居ビルは、もともと不特定の人が出入りすることを予定して使われています。共用部分を通ることも、入居している店舗を訪ねる行為として想定の範囲にあります。これに対して居住用マンションは、そこで暮らす人の生活の場です。共用部分は、居住者とその来客のために用意されたものだと考えられています。
侵入の問題が加わりやすいかどうかを実質的に分けているのは、建物の名称ではなく、この使われ方の違いです。案内に「マンション型」と書かれていても、実際の所在が事務所ビルであることもありますし、その逆もあります。どちらであったかは、後から話をするときの前提として意味を持ちます。
マンション型で問題になりうる場面
住居として使われている建物であること
居住用として建てられ、実際に人が生活している建物では、営業のために不特定の人が出入りすることは想定されていないのが通常です。管理規約で住居以外の用途を制限している例もあります。こうした建物で、外部から次々と人が出入りする状態は、管理する側が認めていない使われ方だと評価されやすくなります。
入り方について特別な案内を受けていた場合
部屋番号を口頭でだけ伝えられた、エントランスで名前を出さないよう言われた、他の住人と一緒に入るよう案内された。こうした事情は、管理する側が認めていない立入りであることを知りながら入ったという評価につながることがあります。分かれ目になるのは通った経路そのものよりも、どのような前提でそこを通ったかである、という点は押さえておきたいところです。
管理する側がすでに拒む意思を示していた場合
掲示や貼り紙で関係者以外の立入りを断っている、以前に注意を受けている、近隣からの通報を受けて管理会社が動いた後である。このような経過があると、立入りを認めていなかったことが外から見ても分かる状態になります。
加わらないと考えられる場面
一方で、次のような場面では、侵入の問題は通常は生じないか、生じにくいと考えられます。
| 場面 | 建物を管理しているのは誰か | 侵入という問題 |
|---|---|---|
| 自分が借りている住まいに来てもらった | 利用者本人 | 通常は生じません |
| 受付所や案内所など、客の出入りが予定された場所を通った | 店側や施設側 | 通常は生じにくいといえます |
| 居住者を訪ねる来客として共用部分を通った | 管理組合など | 直ちに生じるとはいえません |
| 自分が宿泊している部屋に来てもらった | 施設の側 | 施設の定めによって扱いが分かれます |
ここで押さえておきたいのは、部屋の中で行われたことが違法かどうかと、そこに入ったことが侵入にあたるかどうかは、別々に判断されるという点です。部屋の中の話が問題になったからといって、通り道が自動的に侵入になるわけではありません。
出張型で見落とされやすい場面
呼んだ部屋が自分の管理する部屋ではない場合
実家、会社の社宅や寮、法人名義で借りている部屋、友人の住まい、複数人で使っているシェアハウス。こうした部屋では、その場所について決める立場にあるのが自分だけとは限りません。同居している人や貸主、勤務先が管理する立場にある場合、自分の判断だけで人を招き入れたことが後から問題として持ち上がることがあります。
宿泊施設を利用する場合
宿泊者以外の客室への立入りを断っている施設は少なくありません。この場合に建造物侵入が問題になりうるという指摘があります。他方で、これが刑事事件として扱われる例は多くないという見方もあり、実際には施設側との民事的なやり取りにとどまることが一般的です。なお、人数を偽って料金の負担を免れた場合は、これとは別の問題になります。
帰ってもらえないときは向きが逆になる
自分の住まいに来てもらった場合、その部屋について決める立場にあるのは自分です。退去を求めたのに応じてもらえないという状況では立場が逆になり、こちらが管理する側として対応することになります。この場面では、その場での押し問答よりも、安全の確保と記録を残すことを優先する判断が現実的です。
侵入の問題が加わると、何が変わるのか
話す相手が店だけではなくなる
店とのやり取りだけで終わるはずだった話に、管理組合、管理会社、貸主、施設といった建物の側が加わります。この人たちは、店との金銭のやり取りではなく、建物の管理と居住者の生活に関心を持っています。同じ出来事について、目的の異なる二つの話し合いが並行することになります。
建物の側に残る記録が前提になる
共用部分の防犯カメラ、入退館の記録、インターホンの履歴。こうした記録は、自分に不利な材料としてだけ働くわけではありません。滞在した時間、通った経路、同行者の有無といった点は、後から言い分が食い違ったときに、事実を確かめる材料にもなります。
自分の生活圏に話が及ぶことがある
自分の住まいで生じた出来事であれば、貸主や近隣との関係という別の問題が重なります。建物の側から連絡が来る経路は、店から連絡が来る経路とは異なりますので、思わぬところから話が広がったように感じられることがあります。
店が摘発された場合との関係
届出のない営業だったことと、利用者に侵入の問題が生じるかどうかは、別の話です。届出や許可のきまりは営業する側に向けられたものであり、それ自体が利用者を罪に問う根拠になるわけではありません。
ただ、店に対する捜査や近隣からの通報をきっかけに、建物を管理する側が事態を知ることはあります。侵入の話が出てくるのは、多くの場合この経路です。摘発された店を利用していた場合に利用者がどのような立場に置かれるかという点は、それ自体が一つのテーマになりますので、ここでは扱いません。
連絡や声かけを受けたときに気をつけたいこと
- 相手が警察なのか、建物の管理者なのか、店の関係者なのかを確かめます。
- 何について聞かれているのかを、その場で確かめます。
- はっきり覚えていることと、記憶があいまいなことを分けて話します。
- 書面に署名するよう求められても、内容を確かめる前には応じないようにします。
- やり取りの日時と内容を、自分の手元にも残しておきます。
- 判断に迷う点は、答える前に弁護士にご確認ください。
相談前に整理しておくと話が早いこと
- いつ、どの建物の、どの部分を通ったか。
- その部屋を手配したのが自分だったか、店側だったか。
- 入り方について、事前にどのような案内を受けていたか。
- 入口や共用部分に、立入りに関する掲示があったかどうか。
- その場で誰かに声をかけられたかどうか。
- 予約や支払いのやり取りが、どの端末に残っているか。
まとめ
- 個室に入る許しと、建物に入る許しは、同じ人が持っているとは限りません。
- 侵入にあたるかどうかは、その場所を管理する人の意思に反していたかで判断されます。
- 居住者を訪ねる来客として共用部分を通ること自体は、通常は問題になりません。
- 入り方について特別な案内を受けていた事情は、評価に影響することがあります。
- 自分が借りている住まいに来てもらった場合、侵入の問題は通常は生じません。
- 自分の管理する部屋ではない場所を使った場合は、別の人の立場が関わってきます。
- 宿泊施設については、施設の定めによって扱いが分かれます。
- 侵入の問題が加わると、店とは別に、建物を管理する側との話が生じます。
ご相談について
この種のご相談では、何が起きたかよりも先に、どこまで話してよいのかという迷いが生まれがちです。話しにくい事情が含まれていても、弁護士には守秘義務がありますので、そのままお話しいただいて差し支えありません。
連絡が来た段階でも、まだ何も起きていない段階でも、事実関係を早めに整理しておくことには意味があります。弁護士法人若井綜合法律事務所では、こうしたご相談も承っております。


