【不貞慰謝料】時効を主張する方法|援用のやり方と書き方
この記事は、2026年10月時点の法令(民法、刑法、電気通信事業法、情報流通プラットフォーム対処法)にもとづいて作成しています。刑法の「懲役」「禁錮」を「拘禁刑」に一本化した改正(2025年6月1日施行)を反映しています。個別の事案での見通しは、事情によって異なります。
「マッチングアプリで少しやり取りしただけの相手に、メッセージの画面をSNSに載せられた」「名前は消してあったのに、知人に自分のことだと気づかれた」。男女間のトラブルのご相談では、このようなお話を伺うことがあります。反対に、「相手から届いた失礼なメッセージを、注意喚起のつもりで載せたところ、削除を求められた」というご相談もあります。
アプリのやり取りを無断で公開する行為については、プライバシーの侵害や名誉毀損にあたる可能性がある、と説明されることが一般的です。その説明自体は誤りではありません。ただ、やり取りのスクリーンショット(以下「スクショ」)には、載せた人も会話の当事者であること、会話の一部だけを切り取れること、元の会話がアプリの中にしか残っていないことなど、写真の晒しとは異なる事情があります。
この記事では、アプリのメッセージ画面のスクショを公開された場面に絞って、問題になる権利と、気づいたときの対応の順序を整理します。交際中の写真や動画を公開された場合は交際中の写真・動画をSNSに晒された|肖像権・プライバシー侵害での削除を、まだ投稿されていない段階で予告を受けている場合は【不当要求対応】SNSでの『晒し』を予告された|投稿される前にできることをご覧ください。
やり取りのスクショが写真の晒しと違う3つの点
まず、メッセージ画面のスクショが、写真や動画の公開とどこが違うのかを確認しておきます。違いを押さえておくと、後の対応の組み立てが分かりやすくなります。
| 観点 | 写真・動画の晒し | やり取りのスクショ |
|---|---|---|
| 載せた人の立場 | 撮影者や入手した第三者 | 会話の相手本人であることが多い |
| 中身の性質 | 容姿や姿態 | 発言の内容と、その前後の流れ |
| 元データの所在 | 撮影者の端末など | アプリの中(運営会社のサーバ) |
載せた人も会話の当事者である
やり取りのスクショを載せるのは、多くの場合、その会話の相手です。そのため「自分あてに届いたメッセージを自分がどう使おうと自由だ」という言い分が出てくることがあります。この言い分がどこまで通るのかは、次の章で扱います。
一部分だけを切り取れる
会話は前後の流れの中で意味を持ちます。スクショは、そのうち載せる人が選んだ部分だけを見せることができます。前後を省くことで、実際のやり取りとは異なる印象が生まれることがあり、切り取り方そのものが名誉の問題につながる場合がある点は、写真の晒しにはない特徴です。
元の会話がアプリの中にしかない
マッチングアプリのメッセージは、運営会社のサーバ上でやり取りされ、端末には残りにくい仕組みになっていることがあります。相手がブロックしたり退会したりすると、自分の画面からも会話が見えなくなる場合があり、「本当はこういう流れだった」と示す材料を失うおそれがあります。
「自分あてのメッセージだから自由」は通るのか
載せた側からよく聞かれる言い分を、法律の仕組みに沿って整理します。
通信の秘密は、主に運営会社に向けられたルール
電気通信事業法が定める「通信の秘密」(電気通信事業法4条)は、アプリやSNSの運営会社のように、通信を取り扱う事業者に向けられたルールです。総務省は、通信の当事者が自分の端末に保存したメッセージの記録は、事業者が取り扱っている通信には当たらないとしています。そのため、受け取った人がスクショを撮ったことだけで、この条文の問題になるわけではありません。
それでも公開が自由になるわけではない
一方で、総務省は同じ説明の中で、当事者が保存した記録であっても、有効な同意なく取得・利用・提供すれば不法行為責任などが生じる場合があるという考え方も示しています。メッセージを受け取った人であっても、相手のプライバシーや名誉を害する形で公開してよいことにはならない、というのが基本的な整理です。
自分の発言だけを載せる場合は事情が異なる
自分が送ったメッセージだけを、相手が分からない形で載せる場合は、相手の権利を害する場面が限られます。問題になりやすいのは、相手の発言やプロフィール、アイコンなど、相手に関する情報が含まれている場合です。
プライバシーの侵害として問題になる場面
プライバシーの侵害は、法律の条文に直接の定めはありませんが、裁判例の積み重ねによって、不法行為(民法709条)として損害賠償や削除の根拠になることが認められています。
問題になる情報の目安
古い裁判例(東京地方裁判所昭和39年9月28日判決、いわゆる「宴のあと」事件)は、私生活上の事実またはそのように受け取られるおそれのある事柄であること、一般の人の感覚で公開を望まないであろう事柄であること、まだ一般に知られていない事柄であることなどを、プライバシー侵害の目安として示しました。マッチングアプリで交際相手を探していること、やり取りの中で話した仕事や住まいの話、相手への好意の表現などは、こうした目安に当てはまりやすい情報です。
名前や連絡先のような情報も保護される
最高裁判所平成15年9月12日判決は、氏名、住所、電話番号のような単純な情報であっても、本人がみだりに他者に開示されたくないと考えるのは自然なことであり、その期待は保護されるべきだとしました。アプリ上の名前やアカウント名、勤務先の手がかりなども、軽く扱ってよい情報ではないと考えられます。
公開する理由との比べ合わせ
最高裁判所平成15年3月14日判決は、プライバシーの侵害については、その事実を公表されない利益と、公表する理由とを比べ、前者が上回る場合に不法行為が成立するという枠組みを示しています。「注意喚起のため」という理由があっても、相手を特定できる形で、私的なやり取りまで公開する必要があったのかが問われることになります。
名誉毀損・侮辱として問題になる場面
スクショに添えられた文章や、切り取り方によっては、名誉の問題も加わります。
| 投稿の形 | 問題になりやすい権利 | 主に見られる点 |
|---|---|---|
| スクショのみ | プライバシー | 本人と分かるか、私的な内容か |
| スクショと「要注意」「既婚者」などの書き込み | プライバシー、名誉 | 社会的な評価を下げる事実を示しているか |
| 前後を省いたスクショ | 名誉 | 実際と異なる印象を与えていないか |
| 容姿や人格をおとしめる書き込み | 名誉感情 | 社会通念上許される限度を超えているか |
| アイコンや登録写真を含むスクショ | 肖像、プライバシー | 顔が分かる形で写っているか |
画像と書き込みは一体で読まれる
スクショだけでは単なるやり取りの記録でも、「この人は既婚者なのにアプリを使っている」「お金目当て」といった書き込みが添えられると、閲覧者は画像と文章をまとめて受け取ります。そのため、名誉毀損にあたるかどうかは、画像と書き込みを合わせた投稿全体から判断されることになります。
真実であっても名誉毀損になり得る
刑法の名誉毀損罪は、公然と事実を示して人の名誉を傷つけた場合に、その事実が本当かどうかにかかわらず成立し得るとしています(刑法230条1項)。事実が公共の利害に関わり、公益を図る目的で、真実と証明された場合には処罰されないという例外がありますが(同法230条の2)、私人どうしのアプリ上のやり取りがこれに当たる場面は限られると考えられます。容姿や人格をおとしめる書き込みは、侮辱罪(同法231条)や、民事上の名誉感情の侵害として問題になることがあります。
著作権が問題になる場合
短いやり取りは、著作権で保護される「著作物」とはされにくいと考えられます。ただし、ある程度の長さで書き手の個性が表れた文章や、相手が撮影した写真が含まれている場合には、著作権の問題が加わることがあります。
名前を隠してあれば問題にならないのか
名前やアイコンをぼかして載せられた場合、「誰のことか分からないから問題にならない」と言われることがあります。しかし、それだけで判断がつくわけではありません。
周りの人が見て本人と分かるか
権利の侵害が認められるには、投稿が自分についてのものだと分かることが前提になります。この点は、不特定の誰もが分かるかどうかだけでなく、知人や職場の人など、自分を知る人が見て本人と分かるかどうかという観点からも検討されます。
会話の中身や周辺の書き込みから分かる場合
名前を消していても、やり取りの中に職業、最寄り駅、勤務先の様子、趣味などが含まれていれば、知人には誰のことか分かる場合があります。また、投稿への返信や引用で、別の人が名前を書き込むこともあります。隠されているのが名前だけで、中身から本人と分かる状態であれば、問題として取り上げられる余地は残ると考えられます。
晒されたと気づいたときの順序
投稿に気づいたときは、気持ちが動揺しやすい場面ですが、最初の数日でしておくことで、後にとれる手段が変わります。
投稿を記録する
削除を求めると、投稿は見られなくなります。そのため、削除を求める前に、投稿の状態を記録しておくことが大切です。記録しておきたいのは次のような事項です。
- 投稿のURLと、投稿者のアカウント名・ユーザーID。
- 投稿の日時と、それを確認した日時。
- 画像と書き込みの全体が分かる画面の保存。
- 返信、引用、転載など、広がり方が分かる画面の保存。
記録の残し方の詳しい手順は男女トラブルの証拠の集め方|LINE・録音・写真を法的に有効にするで解説しています。
元の会話をアプリの中から保存する
この場面で見落とされやすいのが、元の会話の保存です。切り取られたスクショに対して「実際はこういう流れだった」と示すには、前後を含めた会話全体が必要です。相手がブロックや退会をすると、自分の画面からも会話が見えなくなることがあるため、早めに会話の全体を保存しておくことをおすすめします。退会と記録の関係は【男女トラブル・マッチングアプリ】退会するとやり取りは消えるのか|証拠を残す順序、運営会社からの取り寄せの限界は【男女トラブル・マッチングアプリ】アプリ内のメッセージは後から取り寄せられるのか|保存期間と開示の限界で扱っています。
反論の投稿や直接の抗議は控える
投稿に対して、同じSNSで反論したり、相手に直接抗議のメッセージを送ったりすると、注目が集まって投稿が広がったり、こちらの発言が新たに切り取られたりすることがあります。言い分は、削除の申出や、弁護士を通じた連絡の中で伝える方が落ち着いて進めやすいと考えられます。
削除を求める道筋
削除を求める先は、主に三つあります。それぞれできることと限界が異なります。
| 求める先 | できること | 限界 |
|---|---|---|
| SNSの運営会社 | 規約や法律にもとづく削除の申出 | 権利侵害が明らかでないと削除されないことがある |
| マッチングアプリの運営会社 | 規約違反としての通報 | SNS上の投稿を消す立場にはない |
| 投稿した本人 | 削除と再投稿しない約束を求める | 相手が応じない場合は別の手段が必要 |
SNSの運営会社への削除の申出
SNSの多くは、私的な情報の無断公開を規約で禁じており、申出の窓口を設けています。また、情報流通プラットフォーム対処法のもとで、総務大臣の指定を受けた大規模な事業者には、削除の申出に対して原則として7日以内に対応を判断し、申出をした人に通知する仕組みが設けられています。詳しくは【男女トラブル】削除申出への回答期限|以前と何が違うのかをご覧ください。
マッチングアプリの運営会社への通報
利用規約で、他の利用者の情報を外部に公開することを禁じているアプリは少なくありません。相手がまだアプリを利用している場合は、規約違反として通報することで、アカウントへの措置がとられることがあります。ただし、アプリの運営会社はSNS上の投稿を削除する立場にはありません。運営会社に求められることの範囲は【男女トラブル・マッチングアプリ】アプリ運営会社に責任を問えるのか|利用規約と免責条項の読み方で整理しています。
投稿した本人への削除の求め
やり取りのスクショの場合、投稿したのが会話の相手であると見当がつくことが少なくありません。その場合は、本人に対して削除と再投稿をしない約束を求める方法が考えられます。弁護士を通じて書面で求めると、こちらが本人と直接やり取りをせずに済み、合意の内容を書面に残すこともできます。ただし、相手から別の人に画像が渡っている可能性もあるため、投稿者を決めつけずに確認を進めることが必要です。
投稿者が分からない・別の人が広げている場合
見当がつく相手がいても、投稿は匿名のアカウントで行われていることがあります。また、会話の相手が、暴露を目的とするアカウントなどにスクショを渡し、別の人が投稿している場合もあります。
匿名のアカウントによる投稿
投稿者が分からない場合は、発信者情報開示の手続によって、投稿者を特定できるかを検討します。開示の手続と削除のどちらを先に動かすかは、事業者がアクセス記録を保存している期間との関係で判断が分かれます。詳しくは【不当要求対応】拡散された後の順序|削除と発信者特定のどちらを先に動かすかをご覧ください。運営会社が海外にある場合は【男女トラブル】プラットフォームが海外にある場合の削除|届かない請求への備えも参考になります。
スクショを渡した人の責任
自分では投稿していなくても、公開されることを知りながらスクショを渡した人は、投稿した人とともに責任を問われる可能性があります。ただし、誰が渡したのかを示すには、投稿者への手続を経て事情を確認していく必要があり、時間がかかることもあります。
晒された会話に、自分にとって不利な発言が含まれているとき
ご相談では、「自分のメッセージにも言い過ぎた部分があるので、強く言えない」というお話を伺うことがあります。
自分の発言の当否と、公開の当否は別の問題
自分の発言に問題があったとしても、それによって相手が私的なやり取りを公開してよいことになるわけではありません。ただし、こちらの発言の内容によっては、相手から別の請求を受けたり、削除を求める交渉の中で持ち出されたりすることがあります。削除を求めることと、自分の発言にどう向き合うかは、分けて考えた方が判断しやすくなります。
相手から金銭などを求められている場合
「消してほしければお金を払え」など、削除と引き換えに何かを求められている場合は、晒しの問題に加えて、脅しの問題になることがあります。この場合は、相手の求めに応じる前にご相談ください。
よくあるご質問
相手の失礼なメッセージを、注意喚起のつもりで載せてもよいのでしょうか
注意喚起という目的があっても、相手を特定できる形で私的なやり取りを公開すれば、プライバシーの侵害や名誉毀損として責任を問われる可能性があります。同じような被害を防ぎたい場合は、アプリの運営会社への通報を先に検討するのが穏当です。載せた側の責任については私生活を暴露した|プライバシー侵害は犯罪になるのか、他人の個人情報をネットに書き込んだ|特定と晒しの責任で解説しています。
鍵アカウントや親しい人だけに公開する設定なら、問題にならないのでしょうか
公開範囲が限られていても、閲覧した人がさらに画像を保存して広める可能性があります。名誉毀損では、公開の範囲や広がる可能性が検討されますし、プライバシーの侵害は、知られたくない相手に知られたこと自体が問題になり得ます。公開範囲が狭いことは事情の一つとして考慮されますが、それだけで問題がなくなるとは言い切れません。
投稿が削除されたら、もう何も求められないのでしょうか
削除は、それ以上の被害を止めるための手段です。投稿されていた間に生じた損害について賠償を求めることは、削除とは別に検討できます。その際には、投稿の内容や期間、広がり方を示す記録が必要になるため、削除の前に記録を残しておくことが重要です。
まとめ
- やり取りのスクショは、載せた人も会話の当事者であること、切り取りができること、元の会話がアプリの中にしかないことが、写真の晒しとの違いです。
- 「通信の秘密」(電気通信事業法4条)は主に運営会社に向けたルールですが、受け取った人であっても、相手の権利を害する公開が自由になるわけではありません。
- プライバシーの侵害は不法行為(民法709条)として、公表されない利益と公表する理由との比べ合わせで判断されます。
- 画像と書き込みを合わせて社会的な評価を下げる場合は、名誉毀損(刑法230条1項)や侮辱(同法231条)が問題になります。
- 名前を隠していても、会話の中身や周辺の書き込みから本人と分かる場合は、問題として取り上げられる余地があります。
- 削除を求める前に投稿を記録し、ブロックや退会で見えなくなる前に元の会話全体を保存しておくことが大切です。
- 削除を求める先は、SNSの運営会社、アプリの運営会社、投稿した本人の三つがあり、できることと限界が異なります。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。マッチングアプリのやり取りを公開されてお困りの方、投稿の削除や相手への対応の進め方を検討したい方は、記録が残っている早い段階でご相談ください。
また、自分が載せた投稿について削除や賠償を求められている方からのご相談もお受けしています。立場を問わず、事情を伺ったうえで、とり得る手段と見通しをご説明します。


