【不当要求対応】SNSでの『晒し』を予告された|投稿される前にできること

若井亮

若井亮

テーマ:不当要求

「明日までに返事がなければ、名前も写真もSNSに出す」と告げられた、というご相談があります。反対に、相手への強い不満から「事実なのだから公開しても構わないはずだ」と考えて予告を送ってしまい、その後にご自身の立場が心配になって相談に来られる方もいます。どちらの側からも、投稿がまだ存在しない段階でのご相談が寄せられます。

 インターネットで対処法を調べると、投稿を保存して運営会社に削除を申し出る、発信者情報の開示を求める、という説明が並びます。これらの説明が誤っているわけではありません。ただし、そこで前提になっているのは投稿がすでに存在している場面です。「まだ投稿されていない」段階では、同じ順序のままでは動かせない部分があります。

 この記事では、SNSでの晒しを予告された段階に絞って、いま取れる手と取りにくい手を整理します。投稿された後の削除や発信者情報開示の進め方、予告をした側に問われ得る罪名の詳しい振り分け、金銭の要求と一体になった場面での交渉の組み立ては、それぞれ別の記事で扱います。

予告の段階は、投稿された後とは前提が違います

 晒しへの対処として紹介される手段の多くは、投稿という対象があることを前提に組み立てられています。予告の段階では、その対象がまだありません。ここを整理しないまま調べ物を続けると、手順が自分の状況に当てはまらないまま時間が過ぎることがあります。

削除と開示は、投稿があってはじめて動く手続です

 運営会社への削除の申出も、発信者情報の開示を求める手続も、特定の投稿を指し示して申し立てる仕組みです。これから書かれるかもしれない投稿を対象にすることはできず、予告のメッセージを運営会社に転送しても、投稿への対応として扱われることは期待しにくいところです。

止められないことと、何もできないことは別です

 一方で、この段階だからこそ手をつけられることがあります。予告のやり取りは、時間が経つほど消えたり編集されたりします。予告の段階は、投稿を止める手段が乏しい時期である一方、後から使える材料を残しやすい時期でもあります

できること予告の段階投稿された後
運営会社への削除の申出対象となる投稿がないため申し出られません申出の対象になります
発信者情報の開示同じく対象がありません要件を満たせば検討できます
相手方への直接の申入れ相手が分かっていればこの段階でもできますできます
記録を残すこと予告のやり取りが対象になります投稿と広がり方が加わります


どこで予告されたかで、いま取れる手が変わります

 同じ「晒す」という言葉でも、どこで告げられたかによって現時点での位置づけが変わります。1対1のメッセージなのか、すでに公開の場に書き込まれているのかは、対応の入口を分ける違いです。

1対1のやり取りは、公開の場での発言ではありません

 個別のメッセージや電話は、不特定または多数の人が受け取ることを想定した通信ではありません。そのため、名誉毀損として問題にする道は立てにくく、発信者情報の開示を求める制度の対象からも外れると解されています。相手が誰か分かっていれば開示の手続は要りませんが、やり取りの記録は自分で残しておく以外に取り戻す方法が乏しくなります。

公開の場での予告は、その投稿自体が対応の対象になり得ます

 「この人のことを近いうちに全部書く」といった投稿が公開のタイムラインに置かれている場合、予告そのものがすでに公開された表現です。名指しがなくても、前後の投稿やアカウントの関係から周囲に見当がつく状態であれば、同定できる人が読者の中にいるかどうかという観点から評価されます。この場合は、予告の投稿自体について保存と申出を検討できます。

予告の形いまの段階での位置づけ留意しておきたいこと
1対1のメッセージや電話公開の場での発言ではないため、名誉毀損の問題としては立てにくい場面ですやり取りは自分で保存しておきます
自分あての公開投稿すでに公開の場に置かれた表現です投稿とアカウントを先に保存します
名前を伏せたほのめかし周囲に分かる人がいるかで評価が変わります前後の投稿とあわせて保存します
対面や電話での予告記録が残りにくい形です日時と発言をその日のうちに書き留めます


投稿される前に、裁判所に止めてもらえるのか

 ご相談で多いのが、「書かれる前に裁判所から止めてもらえないのか」というご質問です。制度としての入口はありますが、通る場面は限られます。

将来の侵害を予防するための差止めという考え方

 最高裁は昭和61年6月11日の大法廷判決で、名誉を侵害された人は人格権としての名誉権に基づき、現に行われている侵害行為の排除だけでなく、将来生ずる侵害の予防を求めることができるという考え方を示しています。つまり、公表を止めるという請求の枠組み自体は認められています。

公表の前に止めることには、慎重な枠組みが置かれています

 同じ判決は、表現行為の事前の差止めについて、原則として許されないとしたうえで、表現の内容が真実でないか、又は専ら公益を図る目的のものでないことが明らかであり、かつ、被害者が重大で回復の著しく困難な損害を受けるおそれがあるときに限って例外的に許されるとしています。仮処分で求める場合も、原則として相手方の言い分を聴く手続を経ることが求められています。相手を黙らせるための手段としては使えない、という前提で設計された枠組みです

私生活にわたる事柄では、公表の差止めが認められた例もあります

 もっとも、この枠組みは公職の候補者への評価や批判といった公共の利害に関する表現を念頭に置いたものです。最高裁は平成14年9月24日の判決で、公的な立場にない人の私生活にわたる事柄が書かれた小説について、公表により重大で回復が困難な損害を受けるおそれがあるとして、人格権に基づく公表の差止めを認めた原審の判断を維持しています。私人の私生活の情報は、政治的な言論と同じ物差しで測られるわけではありません。

実際に申し立てるときに立ちはだかること

 制度上の入口があっても、実務では別の壁が残ります。相手が匿名であれば申立ての相手方を特定できません。何を、どのSNSに、どのような表現で投稿するのかが定まっていなければ、止める対象を書き表すことも難しくなります。手続に要する時間と予告された期限との関係もあります。予告の段階での差止めは、相手が誰か分かっていて、公表される内容がある程度具体的に示されている場面で検討の余地が出てくる、という位置づけです。

予告そのものにも、別の評価が働くことがあります

 投稿を止められるかどうかとは別に、「晒す」と告げた行為自体をどう見るかという問題があります。名誉に対する害を告げる行為は、脅迫罪(刑法222条)の検討対象になり得ます。金銭の支払いを求めていれば恐喝罪(同法249条)、義務のない行為を求めていれば強要罪(同法223条)というように、要求の中身によって当てはまる条文が動きます。

予告どおりに投稿されなくても、評価は残ります

 実際に書かれてはじめて問題になると考えてしまいがちですが、告げた行為への評価と、公表された結果への評価は別に立ちます。書かれるのを待ってから動く必要はありません。他方で、相手の言い分が正当な権利の行使という形で組み立てられている場面もあり、どちらの評価に近いかは告げ方と要求の中身で分かれます。罪名ごとの振り分けは、脅迫・強要・恐喝の違いを扱った記事で整理しています。

交際関係のもつれから続いている場合

 別れ話や復縁の要求と結びついて予告が繰り返されている場合には、つきまとい等の規制の枠組みが関わることがあります。警察への相談を検討する場面でもあり、緊急性がないときは警察相談専用電話(#9110)が窓口になります。

この段階で残しておきたい記録

 予告のやり取りは、相手が消したり、アカウントごとなくなったりします。後から集め直すことは難しいため、先に手元に固めます。

  • 予告の文面。送信者の表示名とアカウント名が同じ画面に写る形で保存します。
  • 日時。端末の時刻表示が入るように画面を撮影しておきます。
  • やり取りの前後。一部分だけを切り取ると、経緯が読み取れなくなります。
  • 公開の場での予告は、投稿の内容と保存した日時のほか、そのページの所在が分かる形で残します。
  • 対面や電話で告げられた場合は、日時、場所、同席者、告げられた言葉を、記憶が新しいうちに書き出します。
  • 相手から示された期限や条件がある場合は、その文言のまま控えておきます。


投稿された場合に備えて、先にできること

 止めることに手が届かない場面でも、書かれた直後に動けるかどうかで、その後の広がり方は変わります。準備は投稿がない今のうちに進められます。

どこに出るのかを想定しておく

 相手が普段使っているSNSや、共通の知人がいる場は、ある程度見当がつくことが多いものです。想定される場ごとに通報や削除の申出の窓口を先に確認しておくと、書かれてから調べる時間を省けます。あわせて、自分のアカウントの公開範囲や、過去の投稿から住所や勤務先が読み取れないかを見直しておきます。

周囲への説明を自分の言葉で用意しておく

 書かれた後に周囲へどう説明するかを、短い言葉にまとめておく方法があります。先回りして自分から広く公表することは、伝わる範囲を自分で広げる結果にもなり得るため、誰にどこまで伝えるかは切り分けて考えます。職場や学校に伝えるかどうかは、投稿の内容と影響を見てから判断しても遅くはありません。

相談の窓口を先に決めておく

 弁護士への相談は、投稿されてからでなければできないものではありません。予告の段階であれば、記録の残し方や、相手への連絡窓口を代理人名義に切り替えるかどうかを、時間の余裕がある状態で検討できます。相談した内容は守秘義務の対象であり、相談によって秘密が広がるわけではありません。

控えたほうがよい対応

 急いで手を打とうとして、かえって選択肢を狭めてしまう対応があります。

  • 口止めのためにお金を渡すこと。一度の支払いで終わらず、同じ要求が繰り返される形になりやすい対応です。
  • 挑発に応じて長い反論を送ること。感情的なやり取りが増えるほど、後で経緯を説明しにくくなります。
  • 相手の情報を自分の側から公開すること。立場が入れ替わり、こちらが責任を問われる側になり得ます。
  • 自分のアカウントやトーク履歴を消してしまうこと。予告の記録まで一緒に失われます。
  • 期限だけを気にして、内容を確かめずに書面へ署名すること。清算の範囲が後から問題になることがあります。


要求とセットで予告されている場合

 「応じなければ晒す」という形で要求が付いている場合、二つの問題が同時に動いています。相手の告げ方が行き過ぎていても、こちらが本来負っている義務が消えるわけではなく、逆に、こちらに落ち度がある場面でも、それを理由に過大な要求まで通るわけではありません。この切り分けと、口外しない旨の取り決めを合意書に入れる場合の限界は、秘密を人質に取られた場面を扱った記事で述べています。

よくあるご質問

鍵アカウントや少人数のグループでの予告でも同じですか。

 公開の範囲が狭いほど問題が小さくなるとは限りません。読む人が限られていても、その中に自分を知る人がいれば、身近な範囲にそのまま伝わります。範囲が狭いことは、伝わる相手が近いことと表裏の関係にあります。他方で、不特定または多数への公表を前提とした枠組みは当てはまりにくくなる面もあり、個別の判断になります。

書かれる内容が事実なら、こちらからは何も言えないのでしょうか。

 そうとは限りません。名誉毀損については、公然と事実を摘示して人の社会的評価を低下させた場合、その事実の有無にかかわらず成立し得るとされています(刑法230条1項)。また、私生活上の事柄をみだりに公開されない利益は、内容が事実であることによって否定されるものではなく、むしろ事実であるからこそ問題になる場面があります。

相手が誰か分からない状態で予告が来ています。どうすればよいですか。

 差止めや直接の申入れは、相手を特定できないと進めにくくなります。この段階では、届いている予告の保存と、想定される投稿先の確認に力を向けることになります。公開の場で予告が行われている場合には、その投稿を対象に、投稿後と同じ道筋を検討できる余地があります。

まとめ


  1. 削除の申出と発信者情報の開示は、投稿という対象があってはじめて動く手続で、予告の段階では使えません。
  2. 予告が1対1のメッセージか、公開の場での投稿かによって、いま取れる手が変わります。
  3. 最高裁は昭和61年6月11日の大法廷判決で、人格権としての名誉権に基づき将来の侵害の予防を求められるとしつつ、公表前の差止めは原則として許されず、内容が真実でないか専ら公益目的でないことが明らかで、重大で回復の著しく困難な損害のおそれがある場合に限られるとしています。
  4. 最高裁は平成14年9月24日の判決で、公的立場にない人の私生活にわたる事柄について、公表の差止めを認めた判断を維持しています。
  5. 予告そのものは、要求の中身に応じて脅迫罪(刑法222条)、強要罪(同法223条)、恐喝罪(同法249条)の検討対象になり得ます。
  6. 名誉毀損は、摘示された事実の有無にかかわらず成立し得るとされています(刑法230条1項)。
  7. 予告の段階でできることの中心は、止めることではなく、記録を残し、書かれた直後に動ける状態を作っておくことです。


SNSでの晒しを予告されてお困りの方へ

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルや、要求を伴う脅しに関するご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。予告を受けている段階でのご相談も、投稿された後のご相談も、いずれも承っています。

 晒すと告げられた側の方には、記録の残し方と、相手への連絡窓口を代理人に移すかどうかの検討を。予告をしてしまい、ご自身の立場が心配になっている方には、現在の状況で取り得る対応の整理を。ご相談の内容は守秘義務の対象であり、ご家族や勤務先に事務所から連絡することはありません。まずはお一人で抱えずにご連絡ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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