【風俗トラブル】店の担当者が「上と相談する」と言って返事を保留した|待っている間にできること

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月時点の民法・弁護士法の規定をもとに、風俗店・メンズエステの利用をめぐって店側とやり取りをしている客の立場から書いています。個別の事情によって適切な対応は変わりますので、具体的な判断は弁護士にご相談ください。


「店の人が『上と相談してから連絡します』と言ったまま、二日たっても何の連絡もない」「次にどんな話が来るのか分からず、こちらから電話をかけたほうがよいのか迷っている」。風俗店やメンズエステでトラブルになった方からのご相談では、店側の返事を待っている間の過ごし方についての質問がよく寄せられます。

 ネット上には「店から連絡が来てもすぐに応じないほうがよい」「早めに弁護士へ」といった説明が多く見られ、それ自体は誤りではありません。ただ、返事を保留された状態が法的にどのような意味を持つのか、待っている数日の間に何を整えておけばよいのかまで踏み込んだ解説は多くありません。

 この記事では、店の担当者が「上と相談する」と言って返事を保留した場面に絞り、その時点で決まっていることと決まっていないこと、待っている間にしないほうがよいこと、できることを順に整理します。期限を切られたときの伝え方や、店側の請求に応じる義務があるかどうかの判断は、それぞれ別の記事に委ねています。

「上と相談する」と言われた時点で決まっていること・決まっていないこと

 担当者が返事を保留したとき、多くの方は「何かが決まってしまったのではないか」と不安を感じます。まずは、この時点で法的に何が起きているのかを確認しておきます。

返事の保留は、まだ合意が成立していない状態

 示談は、当事者が互いに譲り合って争いをやめる約束で、法律上は和解契約にあたります(民法695条)。契約は、一方の申込みに対して相手方が承諾したときに成立します(同法522条1項)。担当者が「上と相談する」と言って結論を持ち帰った以上、少なくともその場では、金額や条件について双方の合意はできていません。返事を保留されたことそのものによって、客の側に新しい支払義務が加わるわけではありません。

口頭のやり取りでも合意は成立しうる

 一方で、契約の成立には原則として書面は必要ありません(同法522条2項)。示談書に署名していなくても、電話で示された条件に「それで結構です」と答えれば、その内容で合意したと主張される余地があります。返事を待っている間にかかってくる電話への答え方は、店の中でのやり取りと同じように慎重に考えておく必要があります。

その場で口にした金額の扱い

 トラブルの場で、客の側から「この金額なら払えます」と提示していることもあります。対話の中で示した申込みは、その対話の間に承諾されなければ原則として効力を失いますが、対話が終わった後も効力が続くことを示していた場合は別とされています(同法525条3項)。「上と相談して返事をください」という形で預けていると、提示した金額がその後も生きていると扱われる余地があります。撤回したい場合の伝え方も含めて、早めに弁護士に確認しておくと安心です。

店が返事を保留する理由として考えられること

 「上」が誰を指すのか、なぜ保留したのかは、待っている側からは分かりません。店によって事情は異なりますが、ご相談の中で見えてくる理由はおおむね次のとおりです。

考えられる理由待っている側から見えること次の連絡で出てきやすい話
担当者に決める権限がない担当者が店長やオーナーへの報告を口にしていた店長・オーナーの名前での金額の提示
キャスト本人の意向を確認しているキャストがその場にいなかった、または途中で退出したキャストの意向を伝える形での請求や、被害届の話
顧問弁護士などに相談している「弁護士に確認する」と言っていた弁護士名義の書面や電話
事実関係を確認している防犯カメラや他の従業員の話が出ていた確認した事実を前提にした説明
時間を置くこと自体が目的になっている具体的な説明がないまま保留された不安が高まった頃の連絡や、期限付きの要求


 表のどれに当たるのかを、待っている側が確定させることはできません。どれか一つに決め打ちせず、どの話が来ても慌てずに済むよう備えておくのが現実的です。キャスト本人の意向が関わる場合は、店とキャストの立場や損害を分けて考える必要があります。詳しくは誰に払うのか|店の損害とキャスト個人の損害は別で解説しています。

返事を待っている間にしないほうがよいこと

 沈黙が続くと、こちらから何か動いて早く終わらせたくなるものです。しかし、待っている間の行動が、後の交渉の前提になることがあります。

こちらから金額を上乗せして連絡する

 「返事がないのは金額が足りないからではないか」と考え、自分から高い金額を示し直す方がいます。店側が何も示していない段階で金額を上げると、その金額が交渉の出発点になりやすくなります。保留しているのは店の側であり、待っている間にこちらから条件を変える必要はありません。

「とりあえず」の一部支払い

 誠意を示すつもりで一部を振り込むと、請求があること自体や金額を認めたものと受け止められるおそれがあります。支払った後で全体の金額が上乗せされると、既に払った分の扱いをめぐる話し合いも必要になります。支払いは、誰に対する何の支払いなのかがはっきりし、清算の内容を書面で確認できてからにするのが基本です。

求められていない情報を渡す・店に出向く

 「上の者と直接話してほしい」と、事務所や店舗への来訪を求められることもあります。相手の側が人数や場所を選べる状況では、その場で書面への署名を求められる場面も考えられます。勤務先や家族の連絡先など、これまで伝えていない情報を追加で伝える必要もありません。すでに自分で連絡をしてしまった場合の影響は、【風俗トラブル】弁護士に頼む前に自分で連絡してしまった|その後の交渉への影響で整理しています。

待っている間にできること①記録を整える

 返事を待つ数日間は、後の交渉や相談に使える材料を整える時間として使うことができます。記憶は時間とともに薄れるため、早いうちに書き出しておくことをおすすめします。

その日のやり取りを時系列で書き出す

 利用した日時と店名、対応した担当者の名前や呼ばれ方、誰が何と言ったかを、できるだけその人の言葉のまま書き出します。「上と相談する」と言われたときの言い回しや、いつ頃連絡するという目安が示されたかどうかも残しておきます。録音がある場合は、保存先を分けて控えを作っておきます。録音の扱いは録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方で解説しています。

店が把握している自分の情報を洗い出す

 店の側がどの情報を持っているかによって、次の連絡の経路や、こちらが気をつけるべき点が変わります。次のような項目を確認しておきます。

  • 身分証を見せたか、撮影されたか、預けたか。
  • 予約に使った電話番号・メールアドレス・アカウント。
  • その場で口頭や書面で伝えた勤務先・住所・家族の情報。
  • 署名した書面と、その写しを受け取っているかどうか。


手元に残っている資料を保存する

 予約時のメッセージ、料金の説明、店のサイトに載っている規約の画面などは、店側が後から内容を変えることもあるため、日付が分かる形で保存しておきます。規約を理由にした請求を受けた場合の確かめ方は【風俗トラブル】店から『うちの規約では』と言われた|規約の効力を確かめる順序、記録の作り方全般は【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料で扱っています。

待っている間にできること②次の連絡への備え

 店からの連絡は、こちらの都合のよいときに来るとは限りません。仕事中や家族といるときに電話が鳴っても慌てないよう、受け方を先に決めておきます。

次の連絡で確かめたい3つの点

 返事が来たときに、その場で結論を出す必要はありません。まずは次の点を確かめ、内容を書き留めることに専念します。

  1. 誰が判断したのか。担当者の言う「上」が、店長・オーナー・運営会社・弁護士のどれにあたるのか。
  2. 誰に対する請求なのか。店の損害なのか、キャスト本人の損害なのか。
  3. 何の名目で、いくらなのか。その金額の根拠として何が示されているのか。


その場で答えず、折り返す段取りを決めておく

 「今日中に返事を」と期限を切られたとしても、内容を確認してから回答する旨を伝えることはできます。回答の時期と方法をこちらから示しておくと、話を落ち着いて進めやすくなります。期限を示されたときの具体的な伝え方は、【風俗トラブル】支払期限を切られた|『今日中に』に応じないための伝え方で例文とともに紹介しています。

連絡の手段をそろえておく

 電話は言葉が残りにくく、後で「言った」「言わない」の食い違いになりがちです。可能であれば、SMSやメールなど記録の残る手段での連絡を求めるか、電話で話した内容をその日のうちに書き出しておきます。知らない番号からの着信にすぐ出る必要はなく、留守番電話の内容を確認してから折り返す方法もあります。

待っている間にできること③相談の準備をする

 返事を待つ時間は、弁護士に相談するかどうかを考える時間でもあります。返事が来てからでは、限られた時間の中で判断を迫られることがあります。

返事が来る前に相談しておく意味

 弁護士に依頼すると、弁護士が代理人として店に連絡し、以後の窓口を弁護士に移すことができます。店からの次の連絡が弁護士宛てになるため、ご本人が着信に身構え続ける状態から離れやすくなります。相手の返事を待つだけの立場から、こちらの方針を先に伝える立場に変わることが、この段階で相談する主な意味です。もっとも、交渉がどう進むかは事案によって異なり、弁護士が入ったからといって相手の請求が直ちになくなるわけではありません。

相談の際に伝えると話が早いこと

 相談の場では、次の点を順に伝えていただくと、見通しを立てやすくなります。

  1. 利用した日時、店名、店の形態(店舗型・派遣型など)。
  2. トラブルの内容と、その場で言われたこと・自分が言ったこと。
  3. 「上と相談する」と言われた日と、その後の連絡の有無。
  4. 店側が把握している自分の情報と、署名した書面の有無。
  5. すでに支払ったお金があるかどうか。


 持参するものの一覧は相談時に用意するもの|風俗トラブル特有の持ち物にまとめています。

返事がなかなか来ない場合

 「数日中に連絡する」と言われたまま、何週間も音沙汰がないこともあります。待つ時間が長くなるほど不安は大きくなりますが、連絡がないことの意味を一つに決めることはできません。

こちらから確認の連絡を入れるかどうか

 確認の連絡を入れれば状況が分かる一方で、店の側が改めて請求を組み立てるきっかけになることもあります。入れる場合は「先日の件について、状況をお知らせください」程度の用件にとどめ、謝罪を重ねたり金額に触れたりしないようにします。どちらがよいかは、預けたままの物があるか、店側がどの情報を持っているかによって変わります。

身分証などを預けたままになっている場合

 その場で身分証を預けさせられ、返事の保留と一緒に返してもらえていないこともあります。身分証はご本人のものですから、返還を求めることが考えられます。ただ、返還を求める連絡がそのまま交渉の再開につながる場合もあるため、伝え方は慎重に考えます。弁護士が介入して身分証の返還を受けた例は【解決事例】同意書に署名させられた後の風俗トラブル|身分証の返還と示談成立までの流れで紹介しています。

連絡がないまま時間が過ぎた場合の受け止め方

 店から連絡がないまま事態が落ち着くこともあります。ただし、店の判断とキャスト本人の判断は別であり、刑事手続と民事の請求とでは時間の流れも異なります。連絡が途絶えたことをもって終わったと考えるより、記録を保管したまま様子を見るほうが落ち着いて対応できます。被害届をめぐる分かれ目は被害届が出る場合と出ない場合|キャスト・店の判断で何が変わるか、時間の区切りは風俗トラブルの時効早見表|公訴時効と民事の消滅時効はいつ終わるのかで整理しています。

保留の後に来た返事への向き合い方

 保留の後の連絡は、最初の場面よりも整った形で届くことがあります。誰から何が届いたかによって、確かめる点が変わります。

「上」が弁護士だった場合

 店の顧問弁護士などから連絡が来た場合は、その弁護士が店の代理人なのか、キャスト本人の代理人なのかを確かめることが出発点になります。確認すべき点は風俗トラブルで店の「顧問弁護士」が出てきた|客側がまず確認すべきことでまとめています。

「上」が弁護士ではない人だった場合

 店長やオーナー、あるいは店と関係する第三者が、キャストに代わって示談の条件を伝えてくることもあります。弁護士でない者が報酬を得る目的で他人の法律事件について交渉することは、弁護士法72条との関係で問題になることがあります。対応の考え方は店の担当者が弁護士でない場合|非弁の疑いがある交渉への対応で解説しています。

警察の話を持ち出された場合

 「払わないなら警察に行く」と告げられると、急いで支払いたくなるものです。被害を申告するかどうかはキャスト本人の判断に関わる問題であり、支払いの約束と結び付けて迫られたときの考え方は「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法で扱っています。書面を差し出された場合は、署名の前に店が用意した示談書にサインする危険性|宥恕条項・清算条項の落とし穴もご確認ください。

よくあるご質問

返事を待っている間に、店に電話をかけ直してもよいですか。

 かけ直すこと自体が禁じられているわけではありません。ただ、電話では謝罪や金額の話に流れやすく、その場の言葉が後で合意の根拠として持ち出される余地もあります。用件を決めてから連絡し、話した内容はその日のうちに書き留めておくことをおすすめします。

「上と相談して金額を決める」と言われました。示された金額は払わなければなりませんか。

 店が決めて伝えてきた金額に、そのまま応じなければならない決まりはありません。示談は双方が合意して初めて成立するもので、金額の根拠や、誰に対する支払いなのかを確かめたうえで判断することになります。

連絡が来ないまま1か月が過ぎました。もう心配しなくてよいのでしょうか。

 時間がたって連絡が途絶えることはありますが、それだけで解決したとは言い切れません。店とキャスト本人の判断は別であり、刑事と民事でも区切りの時期が異なります。記録を保管し、新たな連絡があったときに落ち着いて対応できるよう備えておくことが大切です。

まとめ


  1. 「上と相談する」と保留された時点では、示談の合意は成立していない(民法522条1項・695条)。
  2. 電話でのやり取りでも合意は成立しうるため、待っている間の受け答えにも注意が要る(同法522条2項)。
  3. その場で示した金額は、預けた形によっては効力が続くと扱われる余地がある(同法525条3項)。
  4. 待っている間に、金額の上乗せや一部の支払い、店への来訪をする必要はない。
  5. やり取りの時系列、店が把握している自分の情報、手元の資料を整理しておく。
  6. 次の連絡では、誰が判断したか、誰に対する請求か、何の名目でいくらかを確かめる。
  7. 連絡が途絶えても終わったとは限らないため、記録を保管して備える。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店・メンズエステの利用をめぐるトラブルのご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。店の担当者から返事を保留されたまま連絡を待っている段階でも、ご相談いただくことができます。

返事を待つ間に何を整え、次の連絡にどう向き合うかは、店側がどの情報を持っているか、その場で何を約束したかによって変わります。一人で着信を待ち続ける前に、一度状況をお聞かせください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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