【解決事例】店舗型風俗店のキャストに貸した200万円|LINE履歴と弁護士会照会で回収に至った事例
本記事は2026年11月時点の法令に基づいて解説しています。刑法の「懲役」「禁錮」は、2025年6月から「拘禁刑」に一本化されています。
温泉旅館での宴会にコンパニオンを呼び、その席でのやり取りをきっかけに、翌朝や帰宅後になって旅館から金銭を求められるというご相談があります。「コンパニオンの女性が嫌な思いをした」「宴会場の備品が壊れた」「ほかのお客様に迷惑がかかった」など、告げられる理由はさまざまです。請求書や電話の窓口が旅館になっているため、言われた金額をそのまま旅館に払うものだと受け止めてしまう方も少なくありません。
しかし、旅館を通じて届く請求には、性質の違うお金が一つにまとめられていることがあります。本記事では、請求の中身の分け方、その場で避けたい対応、刑事事件になる可能性、旅行から帰った後の進め方を順に整理します。
旅館からの請求に混ざりやすい3種類のお金
旅館から「〇〇万円をお支払いください」と一つの金額で告げられても、内訳をたどると、請求する権利を持つ人がそれぞれ異なる場合があります。まずは次の3つに分けて考えると、何を確かめればよいかが見えやすくなります。
| お金の種類 | 本来の請求者 | 主な確認点 |
|---|---|---|
| 客室や宴会場の備品の破損・汚損、清掃費、時間超過の料金など | 旅館 | 実際に生じた損害か、宿泊約款や宴会プランに定めがあるか |
| コンパニオン本人への慰謝料・治療費など | コンパニオン本人 | 本人が請求の意思を持っているか、誰が代わりに話しているのか |
| 延長料金・キャンセル料・「違約金」など | コンパニオンの所属事務所 | 申込みの際の料金表や規約に定めがあるか |
この3つは、根拠も金額の考え方も異なります。旅館がまとめて請求している場合でも、どの部分が旅館自身の損害で、どの部分がそうでないのかを分けて尋ねることは、請求を受けた側として自然な確認です。
コンパニオンは旅館の従業員とは限らない
宴会コンパニオンは、旅館が直接雇っている従業員ではなく、外部の派遣事務所などに所属していることが多いとされています。旅館は宴会場や料理を提供し、コンパニオンについては事務所を紹介したり手配を取り次いだりする立場にとどまる、という形も珍しくありません。
そうすると、コンパニオン本人が受けた精神的な苦痛やけがについての賠償は、本来、本人(または本人から依頼を受けた弁護士)が請求するものです。旅館が自らの損害として請求できるのは、設備や営業に生じた損害が中心になります。
弁護士でない者が、報酬を得る目的で他人の法律事件について交渉することは、弁護士法72条で禁じられています。2026年2月には、風俗店の店長らが、女性従業員とのトラブルになった客と示談交渉をし、示談金を受け取ったなどとして、弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられました。旅館が当事者として自らの損害を請求すること自体に問題はありませんが、コンパニオン本人の慰謝料まで旅館が金額を決めて交渉し、受け取ろうとしている場合には、どのような立場で話しているのかを確かめておく意味があります。
その場で求められやすいことと、控えたい対応
宴会の最中や翌朝のチェックアウトの際に、旅館の担当者や事務所の関係者から、次のようなことを求められる場面があります。
- あらかじめ用意された念書・示談書・誓約書への署名。
- 運転免許証などの写しの提出や、勤務先の名前の記入。
- その場での現金払いや、近くのATMでの引き出し。
- 「罰金」「ペナルティ」として告げられた定額の支払い。
- 同じ宴会に参加した全員の連名での支払いの約束。
宿泊の予約の際に氏名や住所はすでに旅館に伝わっているため、その場で結論を出さなくても、後から連絡を取り合うことはできます。署名した書面は、内容によっては後から「合意した」と主張される材料になるおそれがあります。内訳の分からない書面には、その場での署名を控え、写しをもらうか写真に残して持ち帰る対応が考えられます。
また、私人が一方的に「罰金」を科すことはできません。名目が罰金であっても、実際に支払う義務があるかどうかは、損害の有無とその中身によって決まります。即時払いを求められたときの考え方は【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断、書面に署名する前に確かめたい点は店が用意した示談書にサインする危険性|宥恕条項・清算条項の落とし穴、罰金という名目の請求については「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないで詳しく解説しています。
宴会の形によって、請求を受ける人が変わる
社員旅行や団体旅行では、幹事の方の名前や会社名で宿泊と宴会を申し込んでいることがあります。この場合、旅館との契約の当事者は幹事の方や会社になるため、旅館自身の損害については、まず契約者に連絡が入ることがあります。勤務先に知られることを心配される方が多いのは、こうした事情によるものです。
一方、コンパニオン本人に対する行為を理由とする賠償は、契約の当事者かどうかではなく、実際にその行為をした人が責任を負うのが原則です。自分は関わっていないのに、同じ席にいたというだけで連名での支払いを求められた場合には、自分が何をしたとされているのかを具体的に確かめることが出発点になります。同行者の行為で請求を受けたときの考え方は、【風俗トラブル】同行した友人がトラブルを起こした|自分も請求されたときもご参照ください。
刑事事件になる可能性はあるか
宴会コンパニオンにはいくつかの種類があり、宴会での振る舞いの範囲は申込みの内容によって異なります。ただ、どのような宴会であっても、本人が同意していない身体への接触は、不同意わいせつ罪(刑法176条)が問題になる場合があります。法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です。お酒に酔っていたことや、ほかの参加者も同じようにしていたことは、それだけで罪の成立を否定する理由にはなりにくいと考えられます。どのような接触が問題になり得るかは、服の上から触れた|わいせつな行為の範囲はどこまでかや【風俗トラブル】キャバクラでキャストに触れたと言われた|請求と刑事の両面で解説しています。
ここで押さえておきたいのは、旅館にお金を払うことと、刑事事件が収まることは別の問題だという点です。被害届を出すかどうか、処罰を望むかどうかを決めるのはコンパニオン本人です。旅館に支払いをしても、本人との間で合意ができていなければ、後から本人の側から被害の申告がなされる可能性は残ります。反対に、旅館の担当者が「警察に届ける」と口にしていても、実際に被害を申告するかどうかは本人の意思によります。警察の話が出た後の動き方は、【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間が参考になります。
なお、旅館業法では、違法な行為や風紀を乱す行為をするおそれがある場合などに、宿泊を断ることが認められています(旅館業法5条1項)。今後の利用を断られることはあり得ますが、それは金銭の支払義務の有無とは別に考えるものです。
請求の金額をどう確かめるか
旅館自身の損害
備品の破損や汚損であれば、修理やクリーニングの見積書、損傷箇所の写真を示してもらうよう求めることが考えられます。宿泊約款や宴会プランの規定に「違約金」の定めがある場合でも、消費者との契約で、実際に生じる平均的な損害を大きく超える額をあらかじめ定めた条項などは、消費者契約法によって効力が制限されることがあります。定額の金額だけが示されているときは、その金額がどのように算出されたのかを尋ねてみることが一つの手がかりになります。
コンパニオン本人の損害
慰謝料や治療費の請求であれば、本人が実際に請求の意思を持っているのか、けががあるのであれば診断書の内容はどうか、といった点を確かめていくことになります。本人との間で解決を図る場合には、宥恕条項(処罰を望まない旨)や清算条項(ほかに請求しない旨)を含めた合意を、本人または本人の代理人との間で書面にしておくことが、後の蒸し返しを防ぐうえで大切です。診断書を示されたときの考え方は、【風俗トラブル】キャストの診断書を見せられた|怪我や体調不良を理由にした請求で解説しています。
所属事務所の料金
延長料金やキャンセル料は、申込みの際に示された料金表や規約が基準になります。宴会を途中で打ち切られた場合の扱いなども含め、事前に示された条件と照らし合わせて、根拠のある請求かどうかを確かめます。
旅行から帰った後の進め方
旅館が遠方にある場合、その後のやり取りは電話や郵便が中心になります。次の順序で整理しておくと、落ち着いて対応しやすくなります。
- 宴会の日時、参加者、コンパニオンの人数、その場でのやり取りを、記憶が新しいうちに書き出します。
- その場で受け取った書類や、署名した書面の写真を整理します。
- 誰が請求しているのか、その内訳と根拠を書面で示してもらうよう求めます。
- 旅館・事務所・本人など複数から連絡が来る場合は、窓口を一つにまとめます。
- 支払いや署名の前に、弁護士に相談して見通しを確かめます。
遠方の旅館とのトラブルでも、東京から代理人を通じて交渉することは可能です。旅行先でのトラブル全般については出張・旅行先での風俗トラブル|遠方で逮捕・被害届が出たらどうなると【風俗トラブル】出張先・旅行先の店でトラブル|東京に戻ってからの交渉、ご自身で対応するか弁護士に任せるかの判断については【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情もご覧ください。
旅館から請求を受けたときは
旅館から届いた請求には、旅館自身の損害、コンパニオン本人の損害、所属事務所の料金が混ざっていることがあり、それぞれ相手も根拠も異なります。当事務所では、誰が何を理由に請求しているのかを切り分けたうえで、旅館・事務所・本人それぞれとのやり取りの窓口となり、刑事手続の見通しも含めて対応の方針をご一緒に考えます。宴会から日が浅い段階でも、時間が経ってから連絡が来た段階でも、ご相談いただけます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


