【風俗トラブル】セラピストから私的な連絡を誘われた|応じた後に生じるリスク
風俗店やメンズエステの利用中にトラブルになり、その場で、あるいは後日になって、店舗の担当者やキャストとご自身で連絡を取られてから相談に来られる方は少なくありません。その場を早く収めたい、家族や勤務先に知られたくないという気持ちが働くためです。
そうした経緯のある方から多く出るのが、次のような質問です。「あのとき自分が送った内容は、これからの話し合いに響くのか」「弁護士に入ってもらえば、それまでのやり取りは白紙に戻るのか」というものです。
先に申し上げると、ご自身でされた連絡がなかったことになるわけではありません。ただし、影響の大きさは連絡の中身によって段階が分かれており、まだ選び直せる部分も残っています。この記事では、何が残り、どこから先が動かしにくくなるのかを整理します。
この記事で扱うことと、扱わないこと
本記事は、風俗店・メンズエステなどの利用に関するトラブルで、弁護士に依頼する前にご自身で店舗やキャストへ連絡してしまった方に向けた内容です。金銭を請求されている側の立場を想定しています。
- 扱うこと=自分でした連絡のうち、何が残り、何がまだ言い直せるのか。
- 扱うこと=連絡の中身の違いによって、後の話し合いでの出てき方がどう変わるのか。
- 扱うこと=これから弁護士に相談する場合に、手元で整えておくとよいもの。
- 扱わないこと=示談書の条項の作り方、分割払いの設計、支払先の確認方法(別の記事で扱っています)。
- 扱わないこと=刑事手続の見通し、弁護士費用の目安や料金体系。
自分で連絡したこと自体が、責められる話ではありません
まず前提として、自分に向けられた請求について、本人が相手方へ直接連絡すること自体を禁じる決まりはありません。説明する立場も、応じるかどうかを決める立場も、本人のものだからです。
実際、相談に来られる方の多くは、すでに一度は相手方とやり取りをされています。その場で強く求められれば、何らかの返事をしてしまうのが自然です。
ただ、風俗トラブルには他の場面と違う点があります。それは、相手方はこちらの素性を把握しているのに、こちらは相手方が誰なのかを把握できていないという状態になりやすいことです。この非対称が、その後の交渉の進みにくさにつながります。
残るものは、三つに分かれます
ご自身でされた連絡が後に効いてくる場面を見ていくと、残り方は大きく三つに分けられます。この三つは、後から動かせる余地がそれぞれ違います。
| 残り方 | 風俗トラブルでの例 | 後から動かせる余地 |
|---|---|---|
| 言葉として残るもの | 送ったメッセージ、謝罪の文面、通話で話した内容 | 内容そのものを取り消すことはできない |
| 情報として残るもの | 身分証の画像、氏名や住所、勤務先、連絡先 | 渡した事実は消せず、回収も難しい |
| 形として残るもの | 署名した書面、渡した現金、振込の記録 | 条件を見直せる場面はあるが手続きが要る |
一般には「何を言ってしまったか」を気にされる方が多いのですが、風俗トラブルで後を引きやすいのは、言葉よりも渡してしまった情報と、形にしてしまった支払いのほうです。
渡してしまった情報は、言葉より後を引きます
その場の流れで求められるまま提示してしまう情報があります。これらは、後になって交渉の材料として使われることがあります。
身分証の提示と撮影
運転免許証やマイナンバーカードを見せた、撮影された、という経緯はよくあります。撮影されている場合、その画像は相手方の手元に残ります。返還や削除を求めることは考えられますが、消したことをこちらで確かめる手立てが乏しく、実際には話し合いの中で扱いを決めることになります。
勤務先や家族に関する話
勤務先の名称、実家の住所、家族構成といった情報を伝えてしまうと、「知られたくない」という事情そのものが相手方に把握された状態になります。以後の連絡がその点を前提に組み立てられることがあります。
連絡先とアカウント
個人の電話番号やメッセージアプリのアカウントを伝えていると、話し合いの窓口を切り替えた後も、そちらへ直接連絡が届くことがあります。窓口を一本化する場合には、この点をどう扱うかも決めておく必要があります。
誰に向けて話したのかが、後で問題になります
ご自身で連絡された場合、相手方が誰なのかが曖昧なまま話が進んでいることがあります。ここが整理されていないと、話がまとまったつもりでも終わっていない状態になり得ます。
源氏名しか分からないまま話している
キャストについては源氏名しか分からず、店舗の担当者も名字だけということが珍しくありません。誰との間で何を約束したのかが特定できないと、後から確認する手段が限られます。
店舗と当事者は同じではありません
店舗の担当者と話をまとめても、当事者本人の意思が反映されていなければ、本人との関係では話が終わっていないという評価になり得ます。誰の意思にもとづく話なのかは、確かめておくべき点です。店舗が代わりに交渉することの当否については、別の記事で扱っています。
複数人に囲まれた状況で答えている
その場に複数の担当者がいた、といった経緯がある場合、どの発言が誰に向けられたものかが後から整理しにくくなります。当時の状況を思い出せる範囲で記録しておかれると、後の説明がしやすくなります。
口にした金額と、約束した期日について
「その場で払うと答えてしまった」「金額を自分から言ってしまった」という相談も多く寄せられます。ここは段階によって扱いが変わります。
相手方がまだ受け入れていない段階
こちらが示した条件に相手方がまだ応じていない段階であれば、内容を言い直せる場面があります。ただし、いつでも自由に引っ込められるわけではなく、返事の期限を付けていたか、示してからどれだけ時間が経っているかによって扱いが変わります。伝え方によって受け取られ方も変わりますので、送る前に整理しておかれると無難です。
相手方が受け入れた、署名した段階
示した条件に相手方が応じていれば、話し合いによる合意が成立していると評価される余地があります。書面を交わしていなくても、やり取りの内容から合意が認められることがあります。この段階になると、後から弁護士が入っても、合意そのものを白紙に戻すのは容易ではありません。
署名済みでも、終わっていないことがあります
もっとも、その場で署名した書面が、争いを終わらせる内容になっているとは限りません。「これ以上の請求はしない」という趣旨の条項が入っていない書面では、支払った後に別の名目で請求が続く余地が残ります。当事者の署名がなく源氏名だけが記載されている、といった不十分な形になっていることもあります。
このような場合、支払条件はそのままに、内容を整えた形で改めて取り交わすという進め方が考えられます。署名してしまった=すべてが確定した、とは限りません。書面の条項の詳細については、別の記事で扱っています。
すでに支払ってしまった場合
現金をその場で渡した、指定された口座に振り込んだという場合でも、そこで確定するわけではありません。請求の根拠が乏しいと判断できる事案では、支払った分の返還を求める交渉が考えられます。
そのためには、いつ、いくらを、誰に渡したのかが分かる資料が要ります。領収書を受け取っていない、渡した相手の名前が分からないという状態だと、交渉の出発点を作るところから手間がかかります。手元にある振込明細やメッセージのやり取りは、そのまま残しておいてください。
「警察に言う」と言われて送った連絡
その場で警察や勤務先を持ち出され、あわてて謝罪の文面を送ったという経緯もよく見られます。この点は、二つに分けて考える必要があります。
一つは、送った文面が、民事の話し合いの中で相手方の材料として示されることです。もう一つは、事案の内容によっては、その文面が刑事の場面で参照される可能性があることです。後者に当たり得るかどうかは事情によって大きく変わりますので、心当たりがある場合は、その点も含めて早めにご相談ください。
なお、警察に相談すると告げること自体が、直ちに違法になるわけではありません。ただ、告げ方や求めている内容によっては評価が変わり得ます。この線引きについては、別の記事で扱っています。
弁護士が入ると、何が変わり、何が変わらないのか
依頼した後の状態を、実際より広く考えている方がいらっしゃいます。ここは分けて理解しておくと、判断がしやすくなります。
変わること=これから先の窓口
依頼をすると、以後のやり取りは代理人を通す形になります。夜間に連絡が入る、返事を急かされるといった負担は軽くなります。
変わらないこと=それまでのやり取り
依頼前のやり取りは、依頼後もそのまま前提として引き継がれます。弁護士は、事件の処理に当たって必要かつ可能な事実関係の調査を行うよう努めるものとされており(弁護士職務基本規程37条2項)、依頼者が過去にどう伝えていたのかを踏まえて方針を立てます。
相手方はすでにその内容を読んでいますし、多くの場合は保存もしています。弁護士が入ることで、経緯が相手方の手元から消えるわけではありません。
説明の仕方は組み立て直せます
過去の連絡が残るからといって、そこで結論が決まってしまうわけでもありません。どういう状況で送ったのか、何を指して述べたものなのかを整理し直すことで、受け取られ方が変わる場面はあります。
相談のときに出しておきたいもの
ご自身で連絡された経緯がある場合、その内容をどこまで出すかによって、返ってくる見通しの精度が変わります。次のものを揃えておかれると、話が早く進みます。
- 相手方とのやり取りの全文。抜粋ではなく、始まりから最後までをそのまま。
- やり取りの日時が分かる形。画面の記録であれば、日付が表示された状態のもの。
- 署名した書面がある場合は、その写し。手元にない場合は、覚えている限りの内容。
- 支払いの記録。渡した金額、日時、方法、領収書の有無。
- 渡した情報の範囲。身分証を見せたか、撮影されたか、勤務先や住所を伝えたか。
- その場にいた人数と、誰と話したのか。源氏名だけでも構いません。
このうち出しにくいのは、3番目から5番目でしょう。ご自身にとって都合が悪いと感じる部分ほど、相手方の側では手元に残っています。先に出しておいたほうが、方針を立て直せる幅は広くなります。
連絡してしまった後に、今日からできること
すでに連絡を取ってしまった段階でも、これ以上を動かさないための整理はできます。
新しい約束をしない
いちばん影響が大きいのは、この先に加わる約束です。金額、期日、支払方法について返事をすれば、相手方が応じた時点で合意になり得ます。判断が固まっていない段階では、答えを出さずに持ち帰る形にしておくほうが選択肢は残ります。
これ以上の情報を渡さない
追加の身分証の提示、家族や勤務先の連絡先、保証人の話などを求められることがあります。応じるかどうかは、内容を確かめてから決めれば足ります。
やり取りを消さない
都合の悪い部分を削除したくなる場面がありますが、相手方の手元には残っているのが通常です。こちらの側だけ記録がない状態になると、前後の文脈を説明しにくくなります。
今後の窓口を短く伝える
弁護士への相談を予定しているのであれば、その旨を一言伝えたうえで、返答を保留しておく方法があります。長い説明を重ねる必要はありません。
よくあるご質問
送信を取り消せば、なかったことになりますか
相手方が読む前であれば、内容が伝わらずに済むこともあります。ただし、読まれた後であれば記憶が残りますし、画面の記録を取られていることもあります。取消しの操作をしたこと自体が、後から話題になる場合もあります。
その場で署名した書面は、もうどうにもなりませんか
内容によります。争いを終わらせる条項が入っていない、当事者の署名がないといった場合には、改めて取り交わす形で整理できる余地があります。まずは書面の写しをご用意ください。
弁護士に依頼すれば、これまでのやり取りは無効になりますか
無効にはなりません。依頼によって変わるのは、これから先の窓口と進め方です。過去のやり取りは、双方の材料として残ったまま話し合いが続きます。
まとめ
- 本人が自分に向けられた請求について直接連絡すること自体を禁じる決まりはない。
- 風俗トラブルでは、こちらの素性だけが相手方に渡っている状態になりやすい。
- 残るものは、言葉として残るもの・情報として残るもの・形として残るものの三つに分かれる。
- 後を引きやすいのは言葉よりも、渡してしまった情報と、形にしてしまった支払い。
- 相手方が誰なのかが曖昧なままだと、まとまったつもりでも終わっていないことがある。
- その場で署名した書面が、争いを終わらせる内容になっているとは限らない。
- すでに支払った分についても、根拠が乏しい請求であれば返還を求める交渉が考えられる。
- 弁護士が入っても過去のやり取りは引き継がれるが、説明の組み立て直しができる場面はある。
ご相談について
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店やメンズエステの利用をめぐる金銭請求について、ご相談をお受けしています。すでにご自身で店舗やキャストと連絡を取られた後、あるいは書面に署名された後のご相談も少なくありません。
やり取りの記録や書面の写しが手元にある場合は、そのままの状態でお持ちいただければ、どこまでが動かしにくく、どこにまだ幅が残っているのかを整理したうえで、今後の進め方をご説明します。池袋・新橋の各事務所でご相談を承っています。


