風俗トラブルの無料相談で聞かれること|相談前に準備すべき情報
風俗店とのトラブルでお金を請求されるとき、店側は必ず何らかの「言い分」を添えてきます。「規約に書いてある」「誓約書にサインしたはずだ」「女の子が苦しんでいる」「払わないなら被害届を出す」。その場で立て続けに言われると、どれも反論のしようがない話に聞こえます。
ただ、これらの言い分は「正しいか、間違っているか」の二択で片づくものではありません。多くの場合、前半は事実として正しく、「だからこの金額を今日払え」という後半の一歩だけが飛んでいます。反論とは、その飛んでいる一歩がどこにあるのかを特定する作業です。
この記事では、店側からよく出てくる主張を取り上げ、それぞれ「どこまでが本当で、どこから先が別の問題なのか」という考え方の型を整理します。支払いを免れるための言い逃れを示すものではなく、正当な請求であれば正面から清算するという前提に立っています。個々の支払義務の有無は事案によって変わるため、結論を断定するものでもありません。
「反論」とは言い負かすことではない
店の主張に反論すると聞くと、その場で論破して引き下がらせる場面を想像するかもしれません。実際にはその逆で、こちらが強い言葉を返すほど話は長引き、感情的な対立に変わっていきます。
ここでいう反論とは、相手の主張のどの部分を争っていて、どの部分は争っていないのかをはっきりさせることです。争点が絞られれば、その場で決めなくてよい理由が自分の中でも整理され、判断を持ち帰りやすくなります。逆に全部を否定しようとすると、認めてよい部分まで争うことになり、かえって不誠実な対応と受け取られかねません。
店の主張は4つの層に分けられる
店側の一続きの発言には、たいてい次の4つが混ざっています。分けて聞くだけで、対応の方向が変わります。
| 層 | 店側の発言の例 | こちらの対応の方向 |
|---|---|---|
| ①事実の主張 | 「あなたは本番行為をした」 | その場で認否を急がない |
| ②評価の主張 | 「重大な違反だ」「深く傷ついている」 | 評価は事実が固まってからの話 |
| ③法的効果の主張 | 「だから100万円を支払う義務がある」 | 根拠と内訳を示してもらう |
| ④手続の予告 | 「払わないなら被害届を出す」 | 支払義務の有無とは別の問題 |
実務で争いになるのは、ほとんどが③です。①や②を全面的に争わなくても、③だけを検討することはできます。「事実はおおむねそのとおりだが、その金額の根拠が分からない」という立ち位置は、矛盾した態度ではありません。
どちらが何を示す立場にあるのか
お金の支払いを求める側は、何を根拠に、どの事実に基づいて、いくらを請求するのかを示す立場にあります。これは風俗店とのやり取りに限らず、金銭請求に共通する考え方です。
たとえば損害賠償として請求するのであれば、行為があったこと、損害が生じたこと、その間に因果関係があること、そして金額を、請求する側が明らかにしていくことになります(民法709条)。違約金の定めがあるという主張であれば、いつ、どのような形でその内容に合意したのかが問題になります。
ですから、反論の基本形は「払いません」という否定ではなく、「何を根拠に、どの行為について、いくらなのかを書面で示してください」という求めです。相手を挑発する言い方ではなく、支払う側として当然の確認であり、その場の圧力を下げる働きもあります。
ただし、示されなければ何もしなくてよい、という意味ではありません。放置すれば民事訴訟や支払督促の申立てを受けることもありますし、行為の内容によっては刑事の問題が別に残ります。「今は答えない」と「ずっと無視する」は違います。
よくある主張と、分かれ目のありか
| 店側の主張 | どこが分かれ目か |
|---|---|
| 規約に書いてある | どの条項に、いつ、どう同意したのか |
| 誓約書にサインした | 署名の有無と、内容の相当性・任意性は別 |
| これがうちの相場だ | 他人が払った額は自分の義務の根拠にならない |
| 女の子が苦しんでいる | 請求権は本人のもの。店は当然の代理人ではない |
| 店にも損害が出ている | 損害が実際に生じたか、金額が対応しているか |
| 今日中に払わないと上がる | 期限を切ること自体に法的な効力はない |
| 被害届を出す・弁護士に回す | 予告された手続と、支払義務の有無は別 |
| 会社や家族に連絡する | 権利の実現と関係のない不利益の告知 |
| 証拠は押さえてある | あると言うことと、実際にあることは別 |
「規約に書いてある」
あらかじめ表示された条件が契約の内容になること自体はあります。不特定多数を相手とする取引では、あらかじめその内容を契約の内容とする旨の表示があれば、個別の条項についても合意したものとみなされる場合があります(民法548条の2第1項)。「読んでいないから一切関係ない」とは言い切れません。
もっとも、同じ条文の第2項は、相手方の利益を一方的に害すると認められる条項については合意しなかったものとみなす、と定めています。金額の定めがある場合でも、違約金は損害賠償額の予定と推定され(民法420条3項)、内容次第では公序良俗(民法90条)の観点から効力が争われることもあります。そもそも、その規約が民法上の定型約款にあたるのかという点自体、個別の検討を要します。
型としては、「規約のどの条項か」「いつ、どのような形で示されたのか」「その金額はどの損害に対応するのか」の3点に分けて確認していくことになります。なお、私人が刑罰としての罰金を科すことはできず、店がいう「罰金」は違約金の俗称です。
「誓約書にサインしたはずだ」
署名した書面は、合意があったことを示す資料として重く扱われます。「サインしたものは無効に決まっている」という前提で動くのは危険です。
一方で、署名があれば内容がそのまま通るわけでもありません。金額の相当性(民法90条)、署名した状況の任意性(強迫による意思表示の取消し・民法96条1項)、内容の誤認(錯誤・民法95条)は、署名の有無とは別に検討される問題です。争うとすればこの3点のどれなのか、を意識して整理することになります。
「これがうちの相場だ」「他のお客さんも払っている」
他の利用者がいくら払ったかは、自分の支払義務の根拠にはなりません。相場という言葉が意味を持つのは、本人に対する慰謝料のように、過去の事案の積み重ねから幅が語られる場面です。店が独自に定めた金額表は、相場ではなく店のルールにすぎません。
金額の交渉に入る前に、「それは誰に対する、何の名目のお金なのか」を確認しておくと、話がかみ合いやすくなります。
「女の子が苦しんでいる。だから店に払ってくれ」
前半(本人が精神的な苦痛を訴えている)と後半(だから店に払う)は、別の話です。慰謝料を請求できるのは本人であり、店が当然にその代理人になるわけではありません。権限のない者との間で合意しても本人に効果が及ばないことがあり(民法113条)、後日あらためて本人から請求を受けたり、被害届が出されたりするおそれが残ります。
加えて、店が報酬を得る目的でキャスト本人に代わって示談交渉を行うことは、弁護士法72条が禁じる非弁行為の問題として検討されることがあります。2026年2月には、無店舗型の性風俗店の店長らが客との示談交渉などを行ったとして弁護士法違反の疑いで逮捕された、と報じられています。
型は単純で、「誰と誰の間の清算なのか」を確認することです。
「店にも損害が出ている」
これは筋としてあり得る主張です。予定していた勤務ができなくなった、部屋を使えなくなったといった損害が現実に生じているのであれば、店自身の請求として検討する余地があります。店側の言い分がすべて不当というわけではありません。
分かれ目は、その損害が実際に生じたのか、金額がその損害に対応しているのかです。あらかじめ決められた定額の一覧表は、損害が生じたことの証明ではありません。何が、いつ、いくらなのかを具体的に示してもらうことが出発点になります。
「今日中に払わないと金額が上がる」
期限を切ること自体に法的な効力はありません。支払いが遅れた場合の遅延損害金は、取り決めがなければ法定利率によって計算され、法定利率は2026年7月時点で年3%です(民法419条1項、404条)。翌日から倍になる、といった説明に法的な裏づけがあることは、まずありません。
期限は交渉のための道具であって、法律上の締切りではない、と考えておくとよいでしょう。ただし、示された期限を気にしないことと、請求そのものを放置することは別です。
「被害届を出す」「顧問弁護士に回す」
被害を警察に申告することも、弁護士に依頼することも、それ自体は正当な権利の行使です。そう言われたこと自体を違法だと決めつけることはできません。むしろ代理人が就いて書面でやり取りできるようになれば、こちらも冷静に検討しやすくなる面があります。
問題になるのは、その予告が金銭の要求と結びつき、手段や方法が社会通念上相当な範囲を超えている場合です。権利があっても、その実現の方法が相当な範囲を超えれば恐喝罪(刑法249条)などの問題になり得るという考え方が、最高裁昭和30年10月14日判決で示されています。
押さえておきたいのは、予告されている手続と、支払義務の有無は別だということです。刑事の問題は、店にお金を払ったからといって当然に終わるものではありません。
「会社や家族に連絡する」
これは前の項目とは質が違います。勤務先や家族への連絡は、請求している権利の実現とは関係がなく、知られたくないという事情そのものを材料にするものだからです。金銭の要求と結びつけば、脅迫罪(刑法222条)や恐喝罪(刑法249条)の問題になり得ますし、東京都の条例でも、迷惑を覚えさせるような方法での取立ては禁じられています。
この言葉が出た時点を、自力での交渉をやめる分岐点だと考えておくことをお勧めします。
「証拠はもう押さえてある」
証拠があると言うことと、実際に証拠が存在すること、そしてその証拠が店の主張を裏づけていることは、それぞれ別です。示されないものを前提に判断する必要はありません。
もっとも、「ないはずだ」と決めつけるのも危険です。飲酒していた、時間が経っているといった場面では、していないことと、していないと確認できることは違います。見せられた場合は内容と日時を記録し、見せられない場合は、判断を持ち帰る理由が一つ増えたと考えるのが安全です。
反論するときに避けたいこと
- 「そんな法律はない」と断定する。誤った断定は信用を損ない、正しい争点まで軽く扱われかねません
- 事実関係が曖昧なまま強く否定する。後から覆すと不利に働くことがあります
- こちらから脅し返す。居座り、怒鳴る、ネットに書くと告げるといった対応は、不退去罪(刑法130条後段)や威力業務妨害罪(刑法234条)などの問題になり得ます
- 反射的に謝る。謝罪が事実を認めた証拠として扱われることがあります
- その場で署名する、その場で振り込む。任意に支払ったお金の回収は容易ではありません
反論が通ったように見えても、終わらないことがある
金額が下がった、その場は引き下がった、というだけでは話が終わったことにはなりません。誰との間で、何について清算したのかが書面で特定されていなければ、名目を変えた再請求や、本人からの請求が後から出てくることがあります。
また、行為の内容によっては、民事の清算とは別に刑事の問題が残ります。不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は親告罪ではないため、店との間で金銭的な決着がついたことだけをもって刑事手続が終わるとは限りません。
まとめ
- 店の言い分は「正しいか誤りか」ではなく、どこまでが本当でどこから先が別の問題かで見る
- 発言は、事実・評価・法的効果・手続の予告の4つの層に分けて聞く
- お金を請求する側が、根拠・事実・金額を示す立場にある
- 反論の基本形は否定ではなく、書面で根拠と内訳を求めること
- 「店にも損害が出ている」のように、筋としてあり得る主張もある
- 「会社や家族に連絡する」が出たら、自力での交渉をやめる分岐点と考える
- その場で認めない、署名しない、払わない。そのうえで記録を残す
どの主張のどこが争点になるかは、行為の内容や書面の有無によって変わります。その場で結論を出さずに持ち帰り、早い段階で弁護士に相談することが、結果として選べる選択肢を広げます。当事務所は風俗トラブルについて利用者側の立場でご相談をお受けしています。秘密は守られますので、一人で抱え込まずにご相談ください。


