【風俗トラブル】「被害届を出す」と言われた風俗トラブルでやるべきこと・避けたいこと|状況別の判断表

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

風俗店の利用後に、店のスタッフやキャストから「被害届を出す」と告げられると、多くの方は「このまま逮捕されるのではないか」「家族や職場に知られるのではないか」という不安から、求められた金額をその場で払ったり、言われるままに書面へ署名したりしがちです。しかし、被害届がどのような手続で、出された後に何が起きるのかを知っておくと、急いで決めなくてよいことと、早めに手を打ったほうがよいことの区別がつきやすくなります。この記事では、「被害届を出す」と言われた場面を状況ごとに分け、やるべきこと・避けたいことを判断表の形で整理します。

本記事は、2023年の刑法改正による不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の新設、性的姿態撮影等処罰法の施行、2025年6月の拘禁刑の導入を反映した内容です。個別の事情によって取るべき対応は変わるため、実際の判断にあたっては弁護士にご相談ください。


「被害届を出す」と言われたときに、まず押さえておきたいこと


被害届が出されても、それだけで逮捕が決まるわけではない

 被害届は、犯罪の被害に遭ったと考える人が、その事実を警察に申告するための書類です。受理されると捜査のきっかけにはなりますが、それだけで逮捕や起訴が決まるわけではありません。警察は、申告の内容や裏付けとなる資料、当事者の説明などを確かめたうえで、事件として扱うかどうか、在宅のまま捜査を進めるか、身柄を拘束する必要があるかを判断します。
 逮捕は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があることに加え、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなど、身柄を確保する必要がある場合に行われる手続です。住所や勤務先がはっきりしていて、呼び出しにも応じる見込みがあると判断されれば、在宅事件として進むこともあります。もっとも、事案の内容や経過によっては逮捕に至ることもあるため、「出されても問題ない」と軽く考えるのも避けたいところです。

被害届と告訴の違い

 被害届とよく似た手続に「告訴」があります。告訴は、犯罪事実を申告するだけでなく、犯人の処罰を求める意思を示すもので(刑事訴訟法230条)、告訴を受けた警察は書類や証拠物を検察官に送ることとされています(同法242条)。被害届には、こうした処罰を求める意思表示は含まれません。
 店から「被害届を出す」と言われても、実際には告訴状の提出が検討されていることもあれば、まだ警察に相談すらしていないこともあります。言葉だけで状況を決めつけず、何が、いつ、どこに出された(または出されようとしている)のかを分けて確かめることが出発点になります。

風俗トラブルで問題にされやすい罪名


罪名問題にされやすい場面告訴がなくても起訴できるか
不同意性交等罪(刑法177条)同意のない本番行為があったと訴えられた場合できる(非親告罪)
不同意わいせつ罪(刑法176条)同意のない身体への接触などがあったと訴えられた場合できる(非親告罪)
性的姿態等撮影罪(性的姿態撮影等処罰法2条)盗撮を疑われた場合できる(非親告罪)
暴行罪・傷害罪(刑法208条・204条)押さえつけた、けがをさせたと訴えられた場合できる(非親告罪)
器物損壊罪(刑法261条)店の備品やキャストの私物を壊したと言われた場合できない(親告罪・刑法264条)


 このうち不同意性交等罪、不同意わいせつ罪、撮影罪は、被害者の告訴がなくても起訴できる罪です。そのため、被害届が取り下げられたり示談が成立したりしても、それだけで捜査が必ず終わるとは限りません。一方で、被害者との示談が成立しているか、被害者が処罰を望まない意思(宥恕)を示しているかは、検察官が起訴・不起訴を判断する際に重視される事情の一つです。罪名ごとの整理は【風俗トラブル】不同意性交等罪と言われた|風俗の場面で罪名が出たときの整理でも解説しています。

状況別の判断表|やるべきこと・避けたいこと

 「被害届を出す」と言われる場面は、その場で告げられるもの、帰宅後に電話やSMSで告げられるもの、「もう出した」と言われるものなど、いくつかに分かれます。下の表は、ご相談の多い状況ごとに、優先したい行動と控えたい行動をまとめたものです。

状況やるべきこと避けたいこと
店の事務所やホテルの部屋で、その場で告げられた身の安全を優先する。可能な範囲でやり取りを録音し、相手の名前・店名・言われた内容を控える。その場で結論を出す。示談書・念書・借用書に署名する。身分証や財布、スマホを預ける。
帰宅後に電話やSMSで告げられた着信履歴やメッセージを保存し、日時と内容を記録する。折り返す前に弁護士に相談する。慌てて折り返し、事実関係を細かく話す。示された口座へすぐに振り込む。
「被害届を出されたくなければ払え」と金額を示された誰が請求しているのか(キャスト本人か店か)と、金額の根拠を確かめる。根拠を確かめないまま払う。個人名義の口座や電子マネーで送金する。
キャスト本人から直接連絡が来た内容を保存し、直接のやり取りは最小限にとどめる。謝罪や説得のつもりで何度も連絡する。会いに行く。
「もう出した」「受理された」と言われた警察からの連絡に備えて手元の記録を整理し、弁護士に相談する。真偽を確かめようと自分で警察署に問い合わせ、事情を話す。データを消す。
警察から連絡が来た呼び出しの日時・担当者・連絡先を控え、出頭前に弁護士に相談する。連絡を無視する。準備をしないまま供述する。
身に覚えがない、または事実と違うことを言われている当日の経過を時系列で書き出し、残っている記録を保全する。波風を立てないために、ひとまず認める。


その場で告げられた場合|結論は「その場」で出さなくてよい

 店の事務所やホテルの部屋で複数のスタッフに囲まれ、「警察を呼ぶか、ここで払うか」と迫られる場面は少なくありません。このとき最も優先したいのは、身の安全を確保し、その場を離れることです。示談は、本来は当事者が内容を確かめ、納得したうえで結ぶものですから、深夜の密室で即決しなければならない性質のものではありません。
 店側が用意した示談書や念書、借用書への署名は、後から内容を争うことが難しくなる場合があるため、できるだけ控えたい行動です。身分証の提示やコピーを求められた場合も、相手に渡った情報が後の連絡や請求に使われることがあります。即時の支払いを迫られたときの考え方は【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断で整理しています。

後日、電話やSMSで告げられた場合

 帰宅後や数日たってから「女の子が被害届を出すと言っている」と連絡が来ることもあります。この段階では、まだ警察に何も届いていないことも多く、残された時間をどう使うかが重要になります。着信やメッセージは消さずに保存し、いつ、誰から、どのような言葉で告げられたかを記録しておきましょう。
 慌てて折り返し、当日の出来事を細かく話してしまうと、その発言が録音され、後の交渉や捜査で不利に扱われるおそれがあります。折り返す前に、何を伝え、何を伝えないかを決めておくことが大切です。翌日以降の動き方は【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間もご参照ください。

金額を示して支払いを求められた場合

 「被害届を出されたくなければ○○万円」と金額を示されたときは、まず誰が請求しているのかを確かめます。仮に同意のない行為があったとしても、損害を受けたと主張できるのは基本的にキャスト本人です。店が「営業損害」や「罰金」の名目で独自に請求してくる場合、その根拠は別に検討する必要があります。
 また、弁護士でない者が報酬を得る目的で他人の法律事件の示談交渉を行うことは、弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたる可能性があります。実際に、風俗店の店長らが客との示談交渉や示談金の受領をしたとして、弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられた例もあります。さらに、告げ方や金額によっては恐喝として評価されうる場面もあり得ます。いずれにしても、根拠の分からないまま個人名義の口座や電子マネーで送金すると、後から取り戻すことが難しくなります。

「もう出した」「受理された」と言われた場合

 「すでに被害届を出した」「警察に受理された」と言われても、それが事実かどうかは本人の側からは分からないことがほとんどです。警察が捜査中の事件について、被疑者とされる側からの問い合わせに内容を答えることは通常ありません。真偽を確かめようとして自分から警察署に電話をかけ、当日の出来事を話してしまうと、それが事実上の申告として扱われることもあり得ます。
 この段階では、警察から連絡が来た場合に備えて記録を整え、弁護士に相談しておくことが現実的な対応です。受理後の流れについては【風俗トラブル】被害届が受理されたと言われた|その後の流れと呼び出しまでの期間、真偽の確かめ方については【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかで詳しく解説しています。

警察から連絡が来た場合

 警察から電話があったときは、呼び出しの日時、担当部署と担当者の名前、折り返しの連絡先を控えます。連絡を無視すると、呼び出しに応じない人と受け止められ、身柄を確保する必要性の判断に影響するおそれがあります。他方で、準備をしないまま取調べに臨むと、記憶があいまいな点まで相手の言い分に沿った調書が作られてしまうことがあります。出頭前に弁護士と供述の方針を確認しておくと安心です。取調べで気をつけたい点は「認める調書」を作られないために|風俗トラブルの取調べ対応の注意点にまとめています。

避けたい行動と、その理由

 判断表に挙げた「避けたいこと」は、いずれも不安から反射的にとってしまいやすい行動です。それぞれの理由を確認しておきます。

  • 店が用意した書面に、内容を確かめないまま署名すると、事実と異なる内容を認めたものとして扱われるおそれがあります。
  • キャスト本人に直接連絡したり会いに行ったりすると、圧力をかけたと受け取られ、証拠隠滅のおそれがあると判断される材料になることがあります。
  • スマホの写真やメッセージを消すと、自分に有利な記録まで失われるうえ、消したこと自体が不利に評価される場合があります。
  • 根拠を確かめずに支払うと、示談の相手や効果があいまいなまま、再度の請求を受けることがあります。
  • 事実と違うのにひとまず認めると、その発言が後の手続で前提として扱われ、訂正が難しくなることがあります。


示談で被害届は止められるのか

 被害届が出される前に示談が成立すれば、キャスト本人が被害届を出さない、あるいは処罰を望まないという意思を書面で示してもらえることがあります。すでに被害届が出された後でも、示談によって取下げや宥恕の意思を示してもらえれば、検察官の処分の判断で考慮される事情になります。ただし、先に述べたとおり不同意性交等罪などは非親告罪のため、示談をすれば必ず事件にならない、とまでは言えません。
 また、示談の効果が及ぶのは、合意をした当事者の範囲です。店とだけ合意し、キャスト本人の署名がない示談書では、後になってキャスト本人から被害届が出されたり、別途請求を受けたりすることがあります。示談書には、当事者を明確にすることのほか、清算条項や宥恕の意思、被害届の取扱いなどを盛り込む必要があります。具体的な条項は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かない、示談後に被害届が出された場合の考え方は【風俗トラブル】示談金を払ったのに被害届を出された|合意の効果と刑事手続で解説しています。

弁護士に相談するタイミングと、手元に用意したいもの

 弁護士への相談は、「被害届を出す」と言われた時点で早すぎるということはありません。被害届が出る前であれば、弁護士が窓口となってキャスト本人との示談を進め、家族や職場への連絡を控えるよう求めるなど、取れる手立てが多く残っています。事件化した後でも、弁護人として検察官を通じて被害者側に示談を申し入れたり、取調べへの対応を助言したりすることができます。ご自身で対応するか、弁護士に任せるかの分かれ目は【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情もご参照ください。
 ご相談の際は、次のものを手元に揃えておくと、状況の把握が早くなります。

  • 利用した店の名前、利用日時、場所(店舗・自宅・ホテル)。
  • 店やキャストとのやり取りの記録(通話の録音、SMS、LINE、着信履歴)。
  • 署名した書面や、渡された書面の控えまたは写真。
  • 相手に伝えた個人情報(氏名、電話番号、住所、勤務先、身分証の種類)。
  • すでに支払った金額と、支払いの方法・相手。
  • 当日の経過を時系列で書き出したメモ。


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まとめ

 「被害届を出す」という言葉は強い圧力になりますが、被害届はそれだけで逮捕や処罰を決めるものではなく、言われた直後にすべてを決める必要もありません。その場では署名や支払いを控えて記録を残し、誰が何を求めているのかを確かめたうえで、早めに専門家と方針を整理することが、結果として選べる手段を広げることにつながります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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