【風俗トラブル】家族が代わりに交渉に出た|本人以外が動くことの是非

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

風俗店やメンズエステの利用をめぐって金銭を請求されたとき、本人ではなく家族が相手方と連絡を取ることがあります。事情を知った親や配偶者が「自分が話をつける」と申し出る場合もあれば、本人が伏せていたことが家庭に伝わり、家族が先に電話を受けてしまう場合もあります。

 家族が代わりに動くこと自体を禁じる決まりはありません。ただし、動けることと、その場で決められることは別の話です。家族が交渉に出た後で問題になるのは、多くの場合、その日の話し合いが本人を拘束するのか、渡したお金がどう扱われるのか、相手方に何が伝わったのか、という3点に集約されます。

 この記事では、家族が本人に代わって動く場面について、どこまでが動ける範囲で、どこから先は本人でなければ決められないのかを整理します。すでに家族が話をしてしまった後にできることにも触れます。

この記事で扱うこと、扱わないこと

 この記事は、風俗店やメンズエステの利用に関して金銭を請求されている側を前提に、本人以外の家族が相手方と接触する場面を扱います。

 次の点は別の話題として整理したほうが分かりやすいため、ここでは深入りしません。

  • 請求されている金額そのものが妥当かどうかの判断。
  • 示談書に入れる条項の中身や、清算条項の書き方。
  • 店舗が在籍する女性に代わって交渉に出てくることの当否。
  • 家庭や勤務先に知られないための連絡手段の設計。
  • すでに警察が関与している場合の刑事手続の流れ。


家族が代わりに動くこと自体は禁じられていない

 弁護士でない人が報酬を得る目的で他人のもめごとの交渉を引き受けることは、弁護士法によって制限されています。もっとも、家族が身内の件について、報酬を受け取らずに相手方と話すことは、通常この制限が問題になる場面ではありません。相手方から「弁護士でもないのに口を出すな」と言われても、それだけで家族が話をすること自体が違法になるわけではありません。

 考えるべきなのは、適法かどうかよりも、家族が動いた結果として何が残るかです。

「動けること」と「決められること」は別

 支払いの約束や示談は、当事者の間の合意です。請求されている当事者は本人であり、家族ではありません。家族が相手方と話し、金額や支払期限まで詰めたとしても、本人から権限を与えられていなければ、その合意はそのままでは本人のものになりません。

相手方が本人との話し合いを求めることもある

 相手方の側にも、後から「知らない」と言われては困るという事情があります。そのため、家族が窓口になると告げても、本人の署名や本人からの連絡を求められることがあります。これは家族を軽んじているというより、合意の効力を確かめたいという反応です。

家族が何をしたかによって、後の扱いが変わる


家族がしたことその場で起きること後から動かせる余地
書面を受け取り、事実関係を聞き取る内容と期限が把握できる本人の立場に影響しにくい
謝罪や説明を伝える事実を認めたものとして受け取られることがある言い分を整理し直す余地は残る
金額や支払方法を約束する相手方は話がついたものとして動く本人が権限を与えていなければ本人には及ばない
書面に署名する、その場で支払う形として残る取り戻すには相応の交渉が必要になる


 同じ「代わりに動く」でも、表の上の行と下の行では性質が違います。事実関係の確認や書面の受領は、本人の立場をほとんど動かしません。一方、金額の約束や支払いは、後から動かすことが難しくなります。家族が関わるなら、上の行にとどめておくほど選択肢が残ります。

代理権のない合意は本人に及ばないのが原則

 民法には、代理権を持たない人が本人の名前で結んだ契約は、本人が認めなければ本人に効力を生じない、という考え方があります。本人が後から認めれば、初めから権限があった場合と同じように扱われます。

相手方にとっても不安定な合意になる

 家族との間で条件が固まっても、本人が認めなければ、相手方は改めて本人に請求することができます。「家族と話がついたはずだ」という主張と、「自分は関与していない」という反論が後から衝突し、解決したはずの話が蒸し返されることになります。

受け入れたと評価される場合もある

 本人が内容を知りながら支払いを続けた、減額された条件の利益だけを受け取ったといった事情があると、本人が合意を受け入れたものと評価される余地があります。「家族が勝手にやったことだ」と述べれば当然に無関係になる、というわけではありません。

家族が代わりに支払ったお金はどう扱われるか

 お金の支払いは、家族が動く場面のなかで、もっとも後戻りが難しい部分です。

本人以外が支払うこと自体はできる

 債務の支払いは、債務者以外の人がすることもできるとされています。ただし、支払うことについて法律上の利害関係を持たない人は、本人の意思に反してまで支払うことはできないとされ、親子や夫婦といった関係があるだけでは、この利害関係にはあたらないと解されてきました。もっとも、本人の意思に反することを相手方が知らなかった場合には、その支払いが有効なものとして扱われることもあります。

支払った分は家族と本人の間の問題として残る

 家族が肩代わりした分は、法律の上では本人に対して返還を求められる関係になります。家庭のなかで精算しない前提であっても、後に家族間で意見が食い違ったときには、この点が争いの種になることがあります。

一部でも支払うと、その後の話し合いが動かしにくくなる

 金額や事実関係に疑問が残る段階で一部でも支払うと、相手方はその金額を前提に話を進めます。請求の根拠を確かめないまま支払うことは、後から内訳を問い直す機会を狭めます。

誰に払ったのかが曖昧になりやすい

 この分野では、店舗の請求と、在籍している女性個人の請求とが混ざった形で示されることがあります。家族が急いで支払うと、何に対する支払いだったのかが記録に残らず、後から同じ出来事について別の相手から請求を受ける余地が残ります。

家族が出ることで、相手方に渡る情報が増える

 この種のトラブルには、情報の非対称という特徴があります。相手方は本人の電話番号や身分証の内容を把握していることがある一方、こちらは源氏名と店舗名しか知らないという状態が珍しくありません。

実家や配偶者の連絡先が新しい接点になる

 家族が連絡を取ると、その電話番号やメールアドレスが相手方の手元に残ります。本人と連絡が取りにくくなったとき、相手方はそちらへ連絡するようになります。家族に伝わることを避けたいと考えていた場合、その前提そのものが変わります。

本人が説明していなかった事情まで伝わる

 家族は事情の一部しか知らないまま話すことになりがちです。悪気なく口にした勤務先や生活の状況が、相手方にとっては交渉の材料になります。

家族自身が相手方になってしまう場面


支払いを引き受ける形の書面に署名する

 その場で示された書面に、家族が支払う立場として署名すると、家族自身が請求を受ける立場になり得ます。口頭で「私が払います」と述べた段階と、書面に署名した段階とでは意味が異なります。書面の当事者欄と署名欄が誰になっているかは、金額よりも先に確かめたい点です。

家族だからといって当然に支払義務があるわけではない

 成人した子どもの債務を親が当然に負うわけではありません。夫婦の間には、日常の家事に関する債務について連帯して責任を負うという定めがありますが、この種の請求がそこに含まれると考えるのは難しい面があります。「家族なのだから払うのが筋だ」という言い方は、法律上の義務の説明とは別のものです。

強い言葉のやり取りが別のトラブルを生む

 家族は本人以上に感情的になりやすい立場です。相手方の言い分に強く言い返した内容が録音され、後から持ち出されることもあります。会話は記録されている前提で臨むほうが、結果として落ち着いた対応につながります。

本人が出られない事情があるとき

 体調を崩している、遠方にいる、身柄を拘束されているなど、本人がすぐに動けない事情もあります。その場合でも、家族がすべてを決める形にしなくて済む方法があります。

本人の意思を書面にしておく

 何について、どこまで任せるのかを書いた書面を本人に用意してもらうと、家族が話せる範囲がはっきりします。「金額の合意は本人の確認を得てから行う」というように、範囲を限定しておくこともできます。

本人が同席する形にする

 本人が電話口や同じ場にいて、家族が横で内容を確認する形であれば、合意の当事者は本人のままです。落ち着いて聞き取れる人が同席するだけでも、その場で結論を出さずに済みます。

家族が窓口になる場合に決めておくこと


  1. 連絡の窓口を一人に決め、ほかの家族は個別に返信しない。
  2. その場では結論を出さず、いったん持ち帰ると最初に伝える。
  3. 金額と期限については、本人に確認してからでなければ答えない。
  4. やり取りの日時、相手の名乗り、言われた内容を記録に残す。
  5. 現金を持って会いに行かない。
  6. 家族の氏名や連絡先をどこまで伝えるかを、あらかじめ決めておく。


 このなかで特に効くのは、最初に「持ち帰る」と伝えておくことです。その場で答えないと決めておけば、家族が独断で条件を約束してしまう場面を避けられます。

弁護士に依頼する場合、依頼者は本人になる


費用を家族が負担しても依頼者は変わらない

 家族が相談を申し込み、費用を負担する場合でも、事件の依頼者は請求を受けている本人です。方針の決定や合意の可否は、最終的に本人の判断によります。

家族に伝えられる範囲は本人の同意による

 弁護士には守秘義務があり、依頼者について職務上知った事柄を家族に伝えてよいかは、本人の同意の範囲で決まります。家族とどこまで共有するかは、依頼の入口で本人と決めておくと、後で行き違いが起きにくくなります。なお、刑事事件として手続が進んでいる場合には、家族が弁護人を選任できる立場に置かれる場面もあります。

すでに家族が話をしてしまった後にできること

 家族が動いた後でも、できることは残っています。

  • 家族が誰と、いつ、何を話したのかを時系列で書き出す。
  • その場で渡した書面や、署名した書面の写しを確認する。
  • 支払った金額と、支払先、支払方法の記録を集める。
  • 相手方から届いた文面をすべて保存する。
  • 本人が了解していない内容がどれかを整理する。
  • 以後の連絡先を一本化し、その旨を相手方に伝える。


 家族が約束した内容が本人の意思と違っている場合、そのままにするのか、修正を申し入れるのかは方針の分かれ目になります。放置すれば、相手方は約束が生きているものとして動き続けます。

よくある質問


家族が謝罪の連絡を入れると、本人が認めたことになりますか

 家族の発言がそのまま本人の認識として扱われるわけではありません。ただし、事実関係に踏み込んだ説明をすれば、相手方はそれを前提に話を進めます。事実の詳細には触れず、届いた書面の内容を確認したいという趣旨にとどめるほうが、後の選択肢が残ります。

親が支払ったお金は返してもらえますか

 相手方から取り戻せるかどうかは、その支払いにどこまで根拠があったかによります。根拠のない金額であれば返還を求める余地はありますが、いったん渡したお金の回収は、支払う前に交渉する場合よりも手間がかかります。金額と支払先の記録が残っているかどうかが、その後の交渉を左右します。

相手方が「家族と話す」と言ってきた場合、応じるべきですか

 応じる義務はありません。本人が対応できる状態であれば、窓口は本人か、本人が依頼した代理人に置くのが自然です。家族に連絡すると告げること自体が圧力として使われている場合もあり、その言葉に急かされて結論を出す必要はありません。

まとめ


  1. 家族が代わりに動くこと自体は、通常は制限されていない。
  2. ただし、支払いや示談を決められるのは本人である。
  3. 権限のない合意は、本人が認めなければ本人には及ばない。
  4. 家族が支払ったお金は、家族と本人の間の問題として残る。
  5. 家族が動くと、相手方に渡る情報と接点が増える。
  6. 書面への署名によって、家族自身が請求を受ける立場になり得る。
  7. 記録を残し、その場で結論を出さないことが、後の選択肢を広げる。


ご相談について

 家族が先に動いてしまった後でも、状況を整理し直すことはできます。当事務所では、風俗店やメンズエステの利用に関する金銭トラブルについて、ご本人からのご相談を承っています。

 すでに交わした書面や支払いの記録がある場合は、その内容を確認したうえで、今後の窓口の置き方を含めてご案内します。ご家族から先にお問い合わせをいただくこともありますが、方針はご本人の意向を確かめながら決めていきます。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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