出張先・地方でトラブルになった場合|遠方での対応
本記事は、2026年10月時点の法令(2023年に施行された不同意性交等罪・性的姿態撮影等処罰法、2022年に施行されたAV出演被害防止・救済法など)をもとに解説しています。実際の見通しは、やり取りの内容や撮影の経緯によって変わります。
スマホアプリやSNSには「個人撮影のモデル募集」「撮影させてくれる方を探しています」といった投稿が数多くあります。ポートレートの撮影として成り立っているものもありますが、一対一で会い、密室で撮影し、謝礼を手渡しするという形が重なるため、会った後に話がこじれることも少なくありません。
当事務所には、撮影を依頼した男性の側から「後になって『同意していない』と言われた」「相手が18歳未満だったと告げられた」「データを消してほしいならお金を払えと言われた」といったご相談が寄せられます。この記事では、個人撮影の募集で会った相手とのトラブルについて、どこが法的な争点になるのか、その日のうちに何をしておくとよいのかを順に整理します。
個人撮影の募集で起きやすいトラブルの形
個人撮影をめぐるトラブルは、きっかけはさまざまでも、争点はおおむねいくつかの型に分かれます。どの型に当たるかで、確かめるべき事実も、取るべき対応も変わってきます。
- 撮影の範囲をめぐるもの(服装・露出の程度、撮影中の接触など)。
- 撮影データの扱いをめぐるもの(削除の求め、公開・販売への反発など)。
- 相手の年齢をめぐるもの(撮影後に18歳未満だったと分かる、または告げられる)。
- 金銭をめぐるもの(謝礼の上乗せ、データ削除と引き換えの支払いなど)。
- 第三者が出てくるもの(交際相手や知人を名乗る男性からの連絡など)。
実際には、これらが重なって持ち込まれることが多くあります。たとえば「撮影中に体に触れられた。データを消して慰謝料を払わなければ警察に行く」という連絡には、撮影の範囲、データの扱い、金銭の3つが含まれています。一つの連絡のなかに複数の問題が混ざっているときは、ひとまとめに受け止めず、項目ごとに分けて考えることが出発点になります。
| 相手から言われたこと | まず確かめること |
|---|---|
| 同意していない、触られた | 募集文やメッセージで、撮影内容・接触についてどこまで取り決めていたか |
| 未成年だった | 相手の年齢を示す根拠と、会う前に年齢をどう確認していたか |
| データを消してほしい | データの保存場所、すでに誰かへ渡したり公開したりしていないか |
| お金を払えば終わりにする | 請求している人物は誰か、何の費目か、払った後に終わる保証があるか |
撮影の「同意」はどこまで及んでいるか
個人撮影のトラブルで最も多い争点は、相手が何に同意していたのかという点です。撮影に応じてくれたことと、撮影中の行為すべてに同意していたことは、法的には別のものとして扱われます。
撮影への同意と、接触や性的な行為への同意は別
撮影の途中でポーズを直すために体に触れた、撮影の流れで性的な行為に及んだ、という場面では、撮影そのものへの同意とは別に、その行為への同意があったかが問われます。同意がなかったと評価されれば、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が問題になる可能性があります。
一対一の撮影では、相手が「断りにくかった」「その場から離れられなかった」と感じていたかどうかも判断の材料になります。不同意性交等罪などでは、同意しない意思を形成し、表明し、全うすることが困難な状態だったかが見られるため、「拒絶の言葉がなかった」というだけでは同意があったとは言い切れないことがあります。
撮影の内容と、撮った後の使い道も同意の範囲で考える
撮影する部位や露出の程度、撮った映像を誰が見るのかについても、相手の同意の範囲が問題になります。性的姿態撮影等処罰法では、相手が同意できない状態に乗じて性的な姿態を撮影した場合のほか、「特定の人以外は見ない」と相手に誤信させて撮影した場合も処罰の対象とされています(3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)。
たとえば「個人で楽しむだけ」と伝えて撮影し、実際には販売や投稿を予定していた場合、撮影の時点で問題になる余地があります。また、撮影時の同意がはっきりしていても、それを第三者に渡したりネットに公開したりすることには別の規制が及びます。撮影に応じてもらえたことが、そのまま公開や販売への同意になるわけではありません。
相手が18歳未満だった場合
撮影の後に「実は高校生だった」「18歳になっていなかった」と分かる、あるいは告げられることがあります。相手が18歳未満であれば、性的な姿態を撮影することは、相手が応じていたとしても児童買春・児童ポルノ禁止法の児童ポルノ製造に当たる可能性があります。さらに相手が16歳未満の場合には、年齢差によっては同意の有無にかかわらず性犯罪が成立することがあります。
「年齢を偽られていた」「大人に見えた」という事情は、それだけで責任を免れる理由にはなりにくいのが実情です。会う前に年齢をどのように確認していたか、相手がどのように年齢を示していたかといった具体的な経緯によって評価が分かれます。
一方で、「未成年だった」という言い分が、金銭を引き出すための材料として使われることもあります。年齢の根拠を確かめないまま支払いに応じると、その後も同じ理由で要求が続くおそれがあります。事実関係の確認と、金銭の求めへの対応は分けて進めることが大切です。
撮った映像を公開・販売するつもりだった場合
個人撮影で性行為を含む映像を撮り、配信サイトなどで販売・公開するつもりだった場合には、個人であってもAV出演被害防止・救済法の対象になり得ます。この法律では、出演者との間で書面による契約を結ぶこと、契約書面などを渡してから1か月は撮影しないこと、撮影の終了から4か月は公表しないことなどが定められ、出演者は一定期間、契約を解除できる仕組みになっています。
これらの手順を踏まずに撮影していた場合、相手から公開の停止やデータの削除を求められたときに、こちらの言い分が通りにくくなることがあります。あわせて、映像を有料で配信する形をとっていれば風営法上の届出の問題が、修正のない映像であればわいせつ電磁的記録の頒布などの問題が生じることもあります。販売や公開を考えていたかどうかは、トラブルの見通しを大きく左右する事情です。
金銭を求められたときの考え方
個人撮影のトラブルでは、相手やその関係者から金銭を求められる場面が少なくありません。請求に応じるかどうかを考える前に、それが何に対する請求なのかを確かめる必要があります。
謝礼や約束した金額をめぐる請求
撮影の謝礼が未払いだった、当初より高い金額を求められた、といった請求は、もともとの取り決めの内容によって判断します。募集文やメッセージで金額や撮影時間をどう決めていたかが基準になるため、やり取りの記録がそのまま判断材料になります。なお、謝礼の実質が性行為の対価だった場合には、約束そのものの有効性が問題になることもあります。
「警察に言う」「拡散する」と組み合わされた請求
「払わなければ警察に行く」「家族や職場に知らせる」「ネットに晒す」といった言葉とともに金銭を求められることがあります。被害を受けたと考える人が損害の賠償を求めること自体は正当な権利ですが、金額や求め方が社会通念上の範囲を大きく超える場合には、恐喝などに当たり得ます。撮影の現場に交際相手や知人を名乗る男性が現れて話をまとめようとする場合には、いわゆる美人局の可能性も視野に入れて、請求している人物が誰なのかを確かめることが欠かせません。
その場で支払う、借用書や念書に署名する、身分証の写しを渡す、といった対応は、後から取り消すことが難しくなります。支払うとしても、何に対する支払いで、支払った後にデータの削除や接触の終了がどう約束されるのかを書面で確定させてから進めることが望ましいと考えます。
トラブルになった直後にしておきたいこと
相手から連絡が来た直後は、慌てて謝罪や支払いの約束をしてしまいがちです。次の点を押さえておくと、その後の対応の選択肢を残しやすくなります。
- 募集文、アプリやSNSのメッセージ、送金の記録を保存し、アプリの退会やアカウントの削除はしないこと。
- 撮影データを自分の判断で消さないこと。
- 相手に繰り返し連絡したり、事実を認める内容の謝罪文を送ったりしないこと。
- その場での支払いや書面への署名、身分証の写しの交付に応じないこと。
- 早い段階で弁護士に相談し、連絡の窓口をどうするか決めること。
撮影データについては、相手から削除を求められることが多く、すぐに消してしまいたくなるかもしれません。しかし、刑事手続が動いている場合には証拠を隠したと受け取られるおそれがあり、また撮影の範囲がどこまでだったかを示す材料にもなります。削除する場合は、示談の条件として、どのデータをいつ消すのかを相手と書面で取り決めたうえで行うのが一般的です。
弁護士に相談すると何ができるか
弁護士が代理人となれば、相手との連絡を弁護士が引き受けることができます。相手が求めている内容を整理し、請求している人物が本人なのか、代理する立場にあるのかを確かめたうえで、支払うべきものとそうでないものを分けて交渉を進めます。
話し合いがまとまる場合には、解決金の額だけでなく、撮影データの削除と不拡散、互いに接触しないこと、今回の件について他に請求をしないことなどを盛り込んだ合意書を作成します。相手が18歳未満であったり、すでに警察に相談していたりする場合には、刑事手続の見通しを踏まえて対応の順序を組み立てる必要があります。当事務所でも、マッチングアプリで知り合った相手から撮影をめぐって高額の請求を受けたご相談で、請求の中身を整理し、合意書の締結によって解決に至った例があります。
関連する解説記事
- 【解決事例】マッチングアプリで知り合った相手から撮影を巡り50万円を請求されたが、5万円の解決金で合意した事例
- 【男女トラブル】アプリで知り合った相手に「同意はなかった」と言われた
- 相手が18歳未満だと知らなかった|年齢の確認と認識の評価
- 「未成年だった」と脅された|事実確認と恐喝への対応
- 同意を得て撮影した画像を持ち続けている|削除する義務はあるのか
- 撮影データを消してしまった|証拠隠滅と復元の実際
- 撮影物をSNSに投稿した|撮影罪と提供・公然陳列の重なり
- 美人局と正当な慰謝料請求の見分け方|払う前に確認すべきこと
- 払ってしまった後に取り戻せるか|恐喝・強迫を理由とする返還
まとめ
個人撮影の募集で会った相手とのトラブルは、撮影の範囲、データの扱い、相手の年齢、金銭の求めといった複数の問題が一度に持ち込まれることが多く、どれから手をつけるかで結果が変わります。相手の言い分をそのまま受け入れる前に、やり取りの記録を手元に残し、何が問われているのかを分けて確かめることが、状況を落ち着かせる第一歩になります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


