SNSでの脅迫・晒しはどの罪になるか

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

SNSに書き込んだ言葉について、後から「脅迫にあたる」「晒された」と言われ、これからどうなるのか分からないまま不安を抱えている方からのご相談があります。書いた本人としては、腹が立った勢いで一度書いただけ、あるいは相手のほうに落ち度があったから事実を並べただけ、という感覚であることも少なくありません。

 ただ、SNSでの書き込みは、一回の投稿が「相手に伝える」ことと「不特定の人に見せる」ことを同時に行う点に特徴があります。その結果、対面や個別のメッセージであれば一つの問題で収まったはずのことが、複数の枠組みに同時に乗ってしまうことがあります。

 この記事では、SNSでの脅迫と晒しがどの罪の問題になるのか、そして罪名が分かれると手続の進み方がどう変わるのかを、書き込んだ側の立場から整理します。なお、書かれた側として困っている方に向けた削除や請求の手順は、この記事では扱っていません。

同じ一言でも、どこに書いたかで問われ方が変わる

 脅迫として問題になる部分は、書いた場所を問いません。一方、名誉毀損罪や侮辱罪は「公然と」示したことが要件とされるため、誰の目に触れる場所に書いたかによって扱いが変わります。

書いた場所脅迫として問われる部分公然と示したことが要件になる罪
1対1のメッセージ内容によって問題になる通常は要件を満たしにくい
相手あての公開投稿(リプライ・メンションなど)内容によって問題になる要件を満たしやすい
相手に直接あてない公開投稿相手が知ったかどうかが問題になる要件を満たしやすい


 個別のメッセージであれば名誉毀損罪や侮辱罪の要件を欠くと判断される場合がありますが、公開の場に書けば、その部分が新たに加わることになります。同じ文面でも、投稿した場所によって検討される条文の数が変わるということです。

脅迫として問われるのはどの部分か

 脅迫罪(刑法222条)は、生命・身体・自由・名誉・財産のいずれかに害を加えることを告げた場合に成立するとされ、法定刑は2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です。判断は一般的な人を基準とした客観的なもので、相手が実際に怖いと感じたかどうかは要件ではないと説明されています。

 害を向ける先は、本人とその親族に限られます。友人や恋人、勤め先そのものへの加害を告げた場合は、この条文の枠から外れると整理されるのが一般的です。ただし、後述するように別の罪の問題として残ることがあります。

相手が投稿を読んでいない場合

 脅迫罪が成立するには、相手が害を告げられたことを認識したことが必要とされる一方、脅迫罪には未遂を処罰する規定がありません。そのため、相手に向けた投稿を相手が読んでいない段階では、この条文の問題としては扱いにくいことになります。

 もっとも、相手あてのリプライやメンションは通知として届くことが多く、名前を出さない書き方でも、周囲の人から伝わって相手の知るところとなる場合があります。読まれていないと考えていた投稿が、後から証拠として提出されることも珍しくありません。

要求が付くと罪名が動く

 言葉に「消せ」「金を払え」といった要求が伴うと、強要罪や恐喝罪の問題に移ります。これらには未遂を処罰する規定があり、相手が応じなかった場合も検討の対象になります。恐喝罪は害を向ける先に条文上の限定がなく、脅迫罪の枠に収まらない相手への加害でも、財産の要求と結び付けば問題になり得ます。

「晒し」は一つの罪の名前ではない

 晒しという語に対応する条文はなく、何を公開したかによって、検討される枠組みが変わります。刑事の条文が見当たらない場合でも、民事の責任が残る点には注意が必要です。

晒した内容主に問題となる枠組み
氏名・住所・勤務先などの個人情報プライバシーの侵害。添えた文言によっては名誉毀損罪や侮辱罪
私生活上の事実や過去の出来事名誉毀損罪、プライバシーの侵害
性的な画像や動画私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律。撮影の経緯によっては別の法律
やりとりのスクリーンショット名誉毀損罪、プライバシーの侵害、文章の著作権


スクリーンショットの公開に特有の問題

 相手とのやりとりの画面を公開する行為は、次の三つが重なりやすい形です。

  • 画面に写った内容が、相手について具体的な事柄を示したものと評価される場合がある。
  • 本来は当事者の間にとどまる私生活上のやりとりを公開したことが、別の問題として扱われる場合がある。
  • 相手が書いた文章に創作性が認められる場合には、無断で公開したことが著作権の問題になり得る。


 名前やアイコンを伏せれば足りると考えられがちですが、前後の投稿や文面の特徴から誰のことか分かる状態であれば、伏せた意味は乏しいと判断されることがあります。また、自分の側の発言だけを切り取って並べた場合には、経緯を正確に示していないという評価につながることもあります。

予告と実行では、動く条文が入れ替わる

 「晒すぞ」と書いた段階と、実際に公開した段階とでは、問題になる条文が入れ替わります。前者は脅迫罪、要求を伴えば強要罪や恐喝罪の枠で見られ、後者は名誉毀損罪やプライバシーの侵害、画像であれば画像に関する法律の枠で見られます。

 両方を短い時間のうちに行ってしまうと、それぞれ別の問題として並ぶことになります。書き込みの前後関係が、そのまま検討される条文の並びになるとお考えください。

罪名が分かれると、終わらせ方も別々に進む

 同じ一連の投稿でも、罪名によって手続の入口が違います。告訴がなければ起訴できない罪(親告罪)では、告訴期間は犯人を知った日から6か月とされています。一方、告訴が起訴の条件になっていない罪では、被害届などをきっかけに捜査が進むことがあります。

問題になり得るもの告訴がないと起訴できないか公訴時効
脅迫罪告訴は起訴の条件ではない3年
名誉毀損罪・侮辱罪告訴が必要3年
業務妨害の罪告訴は起訴の条件ではない3年
画像の公表に関する罪告訴が必要3年


 著作権を侵害する罪も、原則として告訴が必要とされています。ここから分かるのは、一つの投稿について話し合いがついても、別の罪名の部分が同じように収まるとは限らないということです。相手が会社や店舗を巻き込んだ形で書かれていた場合には、話をする相手が個人と法人に分かれることもあります。

逮捕されるかどうかは何で決まるのか

 投稿の記録はサービス提供者側にも残るため、書き込みそのものについては在宅のまま捜査が進むことも多くあります。他方、次のような事情があると、身柄を確保したうえでの捜査に傾きやすくなります。

  • 投稿が繰り返されており、やめる見込みが立ちにくいと見られている。
  • 相手の住所や勤務先など、生活の場に踏み込む内容が含まれている。
  • 相手方と連絡を取り、取り下げを求めるなどの働きかけをしている。
  • 身元や生活の基盤が捜査機関から見て把握しにくい状態にある。


 逮捕は捜査の一場面であり、有罪が決まったことを意味するものではありません。逆に、逮捕されなかったことが、事件が終わったことを意味するわけでもありません。

投稿を消した後に残るもの

 投稿を削除しても、責任の有無の判断がそれで変わるわけではありません。相手や第三者が保存した画像は手元に残りますし、引用や再投稿の形で広がった分は、自分の操作では戻せません。

 また、指摘を受けた後にアカウントごと消す、端末を初期化するといった対応は、事情を説明する材料まで失わせることがあります。書き込みの前後のやりとりは、経緯を示すうえで意味を持つ場合があるため、消す前に立ち止まってご検討ください。

書き込んでしまった後にできること

 連絡や請求が来ていない段階でも、次の点を整理しておくと、その後の見通しが立てやすくなります。

  • いつ、どのアカウントで、どの内容を投稿したのかを時系列で書き出しておく。
  • 相手とのやりとりの経緯を、自分に不利な部分も含めて残しておく。
  • 拡散された範囲や、他の人の投稿として広がった分を把握しておく。
  • 勤務先や学校から事情を聞かれた場合に、どこまで話すかを決めておく。
  • 相手方と直接やりとりする前に、弁護士に相談する時間を取る。


控えたほうがよい対応

 良かれと思って取った行動が、かえって不利に働くことがあります。

  • 相手のアカウントに直接連絡し、取り下げや削除を求める。
  • 別のアカウントを作って経緯を説明したり、反論を投稿したりする。
  • やりとりの記録をまとめて削除する。
  • 事情を知る人に頼んで、相手に働きかけてもらう。
  • 書き込みの内容が正しいことを示そうとして、さらに情報を追加する。


書かれた側の立場になったときは

 同じSNS上のやりとりでは、書いた側と書かれた側の立場が入れ替わることもあります。ご自身が晒された、脅されたという立場になった場合には、投稿の内容と日時が分かる形で記録を残したうえで、警察相談専用電話(#9110)や弁護士にご相談ください。

よくあるご質問

鍵付きのアカウントや少人数のグループでも問題になりますか

 閲覧できる人が限られていても、そこから外に伝わる可能性がある状況では、公然と示したと評価される場合があります。人数の多少だけで結論が決まるわけではありません。

書いたことが事実であれば問題ないのではありませんか

 名誉毀損罪については、公共の利害に関する事実であることなど、いくつかの条件を満たす場合に処罰されないとする定めがあります。個人的なトラブルの経緯を公開しただけでは、この条件を満たさないと判断されることが多くあります。

相手のほうが先に問題のある行為をしていました

 相手の行為は、処分や量刑を考えるうえでの事情として説明できる場合があります。ただし、それによって投稿の責任が当然になくなるわけではなく、相手の行為と自分の投稿は別々に評価されるのが通常です。

まとめ


  • SNSでの投稿は、相手に伝えることと不特定の人に見せることを同時に行うため、検討される条文が増えやすい。
  • 脅迫として問われる部分は、害を向ける先が本人と親族に限られ、相手が知ったことが前提になる。
  • 晒しに対応する条文はなく、何を公開したかによって枠組みが変わる。
  • やりとりのスクリーンショットは、内容・私生活・著作権の三つが重なりやすい。
  • 「晒すぞ」と書いた段階と実際に公開した段階とでは、動く条文が入れ替わる。
  • 罪名によって告訴が必要かどうかが分かれ、一つが収まっても他が残ることがある。
  • 投稿を削除しても責任の判断は変わらず、消したことが不利に働く場合もある。


SNSでの投稿をめぐるトラブルにお困りの方へ

 当事務所では、SNSでの書き込みをめぐる刑事事件について、24時間体制でご相談を受け付けています。初回のご相談は無料です。警察から連絡が来ていない段階でも、投稿の内容と経緯を整理したうえで、今後の見通しと取り得る対応をご説明します。相手方とのやりとりが必要な場面では、窓口を弁護士に一本化することで、ご本人からの連絡を増やさずに意向を伝えることができます。まずはお一人で抱え込まず、ご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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