【親子問題】SNSで知り合った相手に子が金を送り続けている|ロマンス詐欺・投資勧誘の構造と、止められない理由
本記事は2026年9月時点の法令に基づいて作成しています。
「娘がSNSで知り合ったスカウトの紹介で店に入ったらしい。辞めたいと言うが、借金があるから抜けられないと言っている」「息子がスカウトのような仕事をして、紹介料を受け取っているようだ」。親子の問題のご相談の中で、スカウトやその背後にあるグループとの関わりを心配する声が寄せられることがあります。
スカウトについては「違法だから関わらないように」「すぐに警察へ」という説明がよく見られます。それ自体は誤りではありません。ただ、すでに子が関わってしまった後のご家族にとっては、何から手をつければよいのか、いきなり連絡を断たせてよいのかという「順序」が見えにくいところがあります。
この記事では、子がスカウトや匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)に取り込まれている疑いがあるとき、親が状況をどう見立て、どの順序で接触を断っていくかを整理します。闇バイトへの関与は【親向け】子どもが闇バイトに関わっているかもしれない|兆候と最初の対応で、売掛を理由に性風俗店での勤務を求められた場面の規制は【風俗トラブル】『売掛を返すために働け』と言われた|53条2項が正面から禁じた要求で扱っているため、本稿では重ならない範囲に絞ります。
子の立場は「紹介される側」と「紹介する側」の二つがある
スカウトは、性風俗店や接待飲食店などで働く人を探して店に紹介し、紹介料を得る者を指して使われることが多い言葉です。警察庁は、トクリュウが性風俗店の経営やスカウト行為などに直接・間接に関わり、繁華街での活動を有力な資金源にしているとみています(令和6年版警察白書)。子がこうした場に取り込まれるとき、その立場は大きく二つに分かれます。
| 確認すること | 紹介される側 | 紹介する側 |
|---|---|---|
| 子の立場 | 店を紹介されて働いている、または働くよう求められている | スカウトや紹介役として動き、紹介料を受け取っている |
| 中心になる法律 | 風営法22条の2第2号・28条13項、労働基準法など | 職業安定法63条2号など |
| 親が最初に守るもの | 子の身の安全と住まい | 子の身の安全と、刑事手続への備え |
| 主な相談先 | 警察、女性相談支援センター、弁護士 | 弁護士、警察 |
二つの立場は入れ替わることがある
紹介された側の子が、やがて友人を店に紹介して紹介料を受け取るようになる、という流れもあります。性風俗店が紹介者に紹介料を支払うことは2025年6月から禁じられ、この「紹介者」はスカウトに限られません(風営法28条13項、31条の3)。紹介料を受け取る側に回っていれば、子自身が法的な責任を問われる立場になりえます。親がまず確かめたいのは、子がどちらの立場にいて、どこから入れ替わったのかという点です。
特別な事情のある子だけが関わるわけではない
報道では、大学生がSNSを通じてスカウトグループに加わり報酬を得ていたものの、法廷で犯罪だとは思っていなかったと述べた例も紹介されています。関わった子を特別な子だと決めつけず、事実を一つずつ確かめる姿勢のほうが、その後の対応を進めやすくします。
「抜けられない」の中身を分けて考える
子が「抜けられない」と言うとき、その理由はいくつかの要素が重なっていることが多くあります。まとめて「脅されている」と受け止めるより、何によってつなぎ止められているのかを分けたほうが、それぞれの外し方が見えてきます。
| つなぎ止めているもの | 典型的な形 | 考え方の手がかり |
|---|---|---|
| お金 | 売掛、立替金、前借り、スカウトからの借入れ | 風営法22条の2第2号、労働基準法16条・17条(労働者と評価される場合) |
| 情報 | 顔写真、身分証、家族の連絡先、性的な画像 | 刑法222条(脅迫)、249条(恐喝) |
| 住まい | 店や紹介者が用意した寮・部屋 | 関係を断つ前に移る先の確保が必要 |
| 人間関係 | 恋愛感情、仲間意識、紹介料の受領 | 本人の気持ちの整理と、自身の責任の確認 |
お金は「誰に対する、何の債務か」を確かめる
ホストクラブなどの売掛を支払わせるために、威迫や誘惑によって性風俗店での勤務などを求める行為は、改正風営法で禁止されました(風営法22条の2第2号)。警察庁の悪質ホストクラブ対策検討会の報告書でも、売掛金を回収するためにスカウトのあっせんを通じて性風俗店で勤務させる流れが指摘されています。また、店で働く形であっても、労働者と評価される限り、罰金や違約金をあらかじめ定めることや、前借金を賃金と相殺することは制限されています(労働基準法16条、17条)。金額の大きさだけで判断せず、相手・名目・書面の有無を確認することが出発点になります。
情報は「何が、誰に渡っているか」を書き出す
身分証や家族の連絡先を渡している場合、「家族にばらす」「実家に行く」といった言葉で引き止められることがあります。本人ではなく親族に害を加えると告げることも、脅迫罪の対象になりえます(刑法222条2項)。握られた情報への対処は身分証の写真を送ってしまった|個人情報を握られた後の対処もご参照ください。
住まいと人間関係は、外す前に受け皿が要る
寮や紹介者が借りた部屋に住んでいる場合、関係を断つことは住む場所を失うことに直結します。恋愛感情や仲間意識で結びついている場合は、外から強く否定されるほど、本人が相手の側に寄っていくこともあります。どちらも、「断たせる」前に「移る先」を用意できるかが鍵になります。
子の年齢によって親の法的な立場は変わる
親がどこまで関与できるかは、子が未成年か成人かで大きく異なります。
18歳未満の子の場合
未成年の子について、親は親権者として監護・教育にあたり、子が住む場所を指定する権限を持ちます(民法820条、822条)。また、未成年の子が親の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消すことができます(同法5条2項)。店や紹介者との約束を「本人が同意した」の一言で片づけられない場面があり、親が前面に出る法的な根拠があります。
18歳以上の子の場合
成年年齢は18歳であり(民法4条)、18歳・19歳の子も含め、本人が結んだ契約を親が未成年であることを理由に取り消すことはできません。親が子に代わって決めることはできず、子自身が離れる意思を持てるかが前提になります。一方で、親自身に向けられた要求への対応や、子が離れると決めたときの受け皿づくりは、親が担える部分です。18歳以上の子については、親の役割は「決める人」から「離れる準備を整える人」に移ります。成人した子に親が関われる範囲は【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲で整理しています。
接触を断つ順序
子が関係を断ちたいと考えている場合でも、連絡先を消す、店を辞める、部屋を出るといった行動を一度に起こすと、相手が握っている情報を使って引き止めにかかったり、子が住む場所を失ったりすることがあります。次の順序を目安に、準備を先に進めます。
- 子を責めずに話を聞き、いまの居場所と連絡の手段を確かめる。
- 相手の呼び名・連絡先・店の名前・渡した情報・金銭のやり取りを書き出し、画面を保存する。
- 移る先の住まいと、当面の生活費の見通しを立てる。
- 警察の相談窓口に家族として相談し、相談した記録を残す。
- 子が紹介料を受け取るなど紹介する側にいた可能性があれば、弁護士にも相談しておく。
- 準備が整った段階で、代理人を通じて連絡の窓口を切り替え、退店や退去を進める。
相談は家族からでもできる
悪質ホストクラブなどをめぐる被害について、本人だけでなく家族や友人からの相談も受け付けると案内している警察もあります(大阪府警察)。厚生労働省は、どこに相談すればよいか分からない場合の窓口として、各都道府県の女性相談支援センター(#8778)を案内しています。警察へ相談した記録の意味は【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続をご覧ください。
紹介する側にいた可能性がある場合
職業安定法は、有害な業務に就かせる目的で職業紹介などを行った者だけでなく、「これらに従事した者」も処罰の対象としています(同法63条2号)。子がスカウトとして動いていた可能性がある場合は、警察に出向く前後で、出頭の考え方や話す内容を弁護士と整理しておくと、子の立場を守りながら進めやすくなります。当事務所では、少年事件における弁護人・付添人としての活動もお受けしています。グループの性質についてはトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)とは何か|暴力団とどう違うも参考になります。
親がとりがちで、後に響きやすい行動
子を早く引き離したいという気持ちから、次のような行動に出てしまうことがあります。
- 親が直接グループや店に連絡し、話をつけようとする。
- 求められるまま、子の借金を親が肩代わりして支払う。
- 成人した子を、本人の同意なく連れ戻したり、部屋から出られないようにしたりする。
- 子のスマートフォンを取り上げ、やり取りを消去する。
親が直接連絡すると、要求の矛先が親に移り、親の連絡先や住所も相手に知られることになります。根拠のはっきりしない請求に応じると、支払えば済む相手だと受け止められ、次の要求につながることがあります。成人した子を意に反して連れ戻す行為は、子のためという目的があっても、それ自体が法的な問題を生じさせかねません。やり取りの消去は、相手の行為を示す材料を失うことにもなります。親が動く場面ほど、窓口を一本にまとめ、記録を残すことが大切になります。
弁護士と自立支援カウンセラーが担う部分
当事務所では親子の問題について、弁護士が親の代理人として連絡の窓口を担い、民間の自立支援カウンセラーが子の日常の支援にあたる体制をとっています。子を孤立させたままでは、離れた状態を保つことが難しいと考えているためです。
親の側で弁護士が担うこと
親に向けられた要求への対応、相手方との連絡窓口の切り替え、警察への相談に向けた事実関係の整理、子が紹介する側にいた場合の刑事手続への備えなどです。
子の側でカウンセラーが担うこと
関係を断った後、子が住まいや仕事を探し、生活を立て直すまでの支援です。家探し、仕事探し、必要に応じた生活保護の受給申請のサポート、日々の金銭管理などを担います。子をつなぎ止めていたものが住まいや生活費である場合、この受け皿があるかどうかが、離れた状態を保てるかを左右します。体制の詳細は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
よくあるご質問
子が「自分の意思で働いている」と言っています。親にできることはありますか。
18歳以上であれば、本人の意思を親が覆すことはできません。ただ、「自分の意思」の背後に借金や握られた情報がある場合、それが外れることで考えが変わることもあります。責めずに話を聞ける関係を保ちながら、いつでも相談できる窓口を用意しておくことが、現実的な関わり方です。
スカウトや店の関係者から、親に支払いを求める連絡が来ました。
親だからといって、子の借金を当然に負うわけではありません。保証人になるなど自ら約束していない限り、支払う義務は原則としてありません。その場で応じたり約束したりせず、連絡の記録を残したうえでご相談ください。
相談したことは子に伝わりますか。
親からご依頼を受けた場合、弁護士の守秘義務は依頼者である親に対して負うものです(弁護士法23条)。子にいつ、どこまで伝えるかも含めてご相談いただけます。詳しくは【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方をご覧ください。
まとめ
- 子の立場は「紹介される側」と「紹介する側」に分かれ、入れ替わることもある。
- 性風俗店が紹介者に紹介料を支払うことは2025年6月から禁じられている(風営法28条13項)。
- 売掛などの支払いのために性風俗店での勤務などを求めることは禁じられている(同法22条の2第2号)。
- 「抜けられない」の中身は、お金・情報・住まい・人間関係に分けて考える。
- 18歳以上の子の契約は未成年を理由に取り消せず、親の役割は離れる準備を整えることに移る(民法4条、5条2項)。
- スカウトとして動いていれば、子自身も処罰の対象になりうる(職業安定法63条2号)。
- 連絡を断つのは、住まいと窓口の準備が整ってからにする。
子とスカウトとの関わりを心配されているご家族の方へ
スカウトやその背後のグループとの関係は、子を責めたり、親が一人で相手と向き合ったりするだけでは断ちにくいものです。何によってつなぎ止められているのかを整理し、住まいと連絡の窓口を整えてから動くことで、子が離れた状態を保てる可能性が高まります。遠方にお住まいの方からのご相談については【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際をご覧ください。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。子がスカウトに関わっているかもしれない、子が紹介料を受け取っていたかもしれないなど、状況がはっきりしない段階でもご相談ください。


