【解決事例】根拠のない浮気疑惑に伴う脅迫トラブル|弁護士の介入により直接連絡・危害の予告を阻止し沈静化させた事例
「別居している息子あてに、消費者金融の名前が入った封書が実家に届き続けています」「弟の未払いだと言われ、家族なのだから払ってほしいという電話が私のところに来ています」。同居していない家族の名義で請求が届いたというご相談は、金額の大小にかかわらず、何から手をつければよいのか分からないまま日数が過ぎてしまう点が共通しています。
「家族に支払義務はない」という説明は、多くの場面で当てはまります。ただ、実際に届いた封書を前にすると、その説明だけでは決まらないことがいくつも残ります。名義人が住んでいない住所に届いた郵便をどう扱うのか、住民票の世帯が同じままだとどうなるのか、以前に何かへ署名した記憶があるとしたらそれは何だったのか。ひとまとめに「払う必要はない」と片づけると、確かめないまま進んでしまう部分が出てきます。
この記事では、同居していない家族の名義で請求が来た場面を、誰の債務なのかという一点から整理します。親やきょうだい本人から生活費や介護費用を求められている場合の扶養義務、保証債務の内容そのもの、相続手続の進め方は、それぞれ別の解説に譲ります。
この記事で扱う場面と、扱わないこと
次のような場面を想定しています。
- 同居していない親・子・きょうだいの名義で、請求書や督促状が自分の住所に届いた。
- 名義人本人とは連絡が取りづらく、書面だけが積み上がっている。
- 債権者や事業者から、家族なのだから代わりに払ってほしいと求められている。
- 以前に何かの書類へ署名した記憶があるが、それが何だったのか思い出せない。
- 亡くなった家族の名義で請求書が届いた。
一方で、親やきょうだい本人から生活費や介護費用を求められている場面は、扶養義務という別の枠組みの問題になります。自分が保証人であることがはっきりしている場合の責任の範囲や、相続放棄の具体的な手続も、それぞれ専用の解説に譲ります。
宛名が誰かということと、義務が誰にあるかということは別です
宛名は差出人の側が決めています
請求書や督促状の宛名は、差出人が自分の手元にある情報にもとづいて書いたものです。過去に登録された住所、住民票上の住所、以前の連絡先などが使われます。宛名が家族の名前で自分の住所に届いたという事実は、その住所に名義人が住んでいると差出人が考えていることを示すにとどまります。そこに住んでいる人が支払う立場にあることを示すものではありません。
法律は家族という単位ではなく、個人ごとに義務を定めています
契約から生じる債務は契約をした当事者が負い、事故やトラブルの賠償は行為をした本人が負います。民法には、家族であることだけを理由に他人の債務を負わせる一般的な規定は置かれていません。請求が自分に向いていることと、義務が自分にあることは、別々に確かめる必要があります。
自分にも支払義務が生じうるのはどのような場合か
例外にあたるのは、家族という関係そのものではなく、別に約束や法律上の仕組みがある場合です。
| 求められている内容 | 原則 | 自分にも及びうる場合 |
|---|---|---|
| 家族が結んだ契約の代金や借入金 | 契約をした本人の債務 | 保証人・連帯保証人になっている場合 |
| 家族が起こした事故やトラブルの賠償 | 行為をした本人の債務 | 監督する立場にあると評価される場合 |
| 夫婦の一方が日常の家事で作った債務 | 夫婦が連帯して責任を負う | 親子やきょうだいの関係には及ばない |
| 亡くなった家族の債務 | 相続人が承継する | 承認と放棄を選べる期間が定められている |
| 自分の名義で結ばれた契約 | 名義人である自分の債務 | 無断で使われた場合は成立そのものが問題になる |
| 国民健康保険料や国民年金保険料 | 世帯を単位に義務者が定められている | 住民票上の世帯が同じ場合 |
保証は、書面がなければ効力を生じません
保証契約は、書面でしなければ効力を生じないとされています(民法446条2項)。電磁的記録によるものは書面とみなされます(同条3項)。口頭で「連帯保証人になってほしい」と言われて返事をしただけでは、保証としての効力は認められません。また、一定の範囲の債務をまとめて保証する個人根保証については、極度額の定めがなければ効力を生じないとされています(民法465条の2)。署名した記憶があるときは、何にいつ署名したのかを確かめるところから始まります。
「日常の家事」は夫婦についての規定です
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他方も連帯して責任を負うとされています(民法761条)。これは夫婦について定められた規定であり、親子やきょうだいの関係には適用されません。同居していない家族の生活費や買い物についての請求が、この規定を理由に自分へ向かうことにはなりません。
同居していなくても、住民票の世帯が同じなら関わる請求があります
見落とされやすいのが、世帯を単位に納付義務者が決まる公租公課です。国民健康保険の保険料は、世帯主が納付義務者とされています(国民健康保険法76条1項)。世帯主自身が国民健康保険に加入していない場合でも、世帯の中に加入者がいれば、世帯主あてに通知が届く扱いになります。国民年金の保険料についても、世帯主はその世帯に属する被保険者の保険料を、配偶者の一方は他方の保険料を、それぞれ連帯して納付する義務を負うとされています(国民年金法88条2項3項)。
ここで基準になるのは、実際に一緒に暮らしているかどうかではなく、住民票上の世帯が同じかどうかです。就職や進学で家を出たものの、住民票を実家に置いたままにしている、という状態は珍しくありません。この場合、日常の感覚では別居でも、制度の上では同じ世帯として扱われます。心当たりがあるときは、市区町村の窓口で世帯の記載が実際の住まいと合っているかを確かめておくと、通知の宛先が自分になっている理由が分かります。
家族名義の郵便物をどう扱うか
封をしてある信書を開けることには制約があります
正当な理由がないのに封をしてある信書を開ける行為は、刑法で犯罪とされています(刑法133条)。この罪は親告罪です(同法135条)。家族の間では、同居していて日ごろから互いの郵便を開けている事情などから、開けたこと自体が問題にならない場面もあります。もっとも、同居していない家族あての封書については、そうした事情が説明しにくくなります。関係が良好なうちは表面化しなくても、後に本人との間で対立が生じたときに持ち出されることがあります。
受け取らないという選び方
その住所に名義人が住んでいないのであれば、受け取らずに、あて名の人が居住していない旨を示して差し戻す方法があります。開けずに保管して本人へ渡している方もいますが、量が増えると管理が続きません。なお、郵便の転居届は、転居した本人が出す仕組みです。同居していない家族あての郵便を、こちらの判断で別の住所へ回すことはできません。
裁判所から届いた郵便は意味が違います
裁判所からの書類は、原則として本人の住所などに送られます(民事訴訟法103条1項)。本人に出会わないときに、その場にいた同居者などへ交付する扱いがありますが(同法106条1項)、これは同居している人がいることを前提とした仕組みです。ここでの問題は、受け取った人が支払う立場になるかどうかではなく、名義人が知らないまま手続だけが進んでしまう点にあります。裁判所名の入った郵便が届いたときは、開封するかどうかを考える前に、本人へ連絡することを優先してください。
返事をする前に確かめておきたい三つのこと
電話や訪問を受けると、その場で何か答えなければならない気持ちになります。次の三点が分かるまでは、確認して折り返す旨を伝えて構いません。
- 誰が誰に何を求めているのか。差出人の名称、名義人の氏名、金額、いつの何についての請求なのかを、書面で確かめます。
- 自分の氏名が書面のどこに出ているのか。宛名だけなのか、保証人欄や連帯債務者欄にも記載があるのかで、話が変わります。
- 書かれている日付が何の期限なのか。支払いの期限なのか、返答の期限なのか、法律上の手続に関する期限なのかを区別します。
一部でも払うと、その後どう変わるか
自分の債務ではない請求を支払っても、それによって自分が債務者になるわけではありません。ただし、支払った後に起きることがいくつかあります。
まず、債務の弁済は第三者もすることができますが、弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができないとされています(民法474条1項2項)。親族であることだけでは、この正当な利益があるとは扱われないと考えられています。本人の意向を確かめないまま支払うと、本人との間で位置づけの定まらないお金が残ります。
次に、渡し切りにするのか、立て替えて後で返してもらうのかを決めていないと、家族の間で後から食い違いが生じます。返還の約束をして渡したのであれば消費貸借になり(民法587条)、約束がなければ贈与と評価されることがあります。
そして、一度支払うと、以後の連絡先が自分になりやすくなります。相手からすれば、支払う人が現れたという事実が残るためです。支払うと決める場合でも、本人の依頼にもとづく形にしておくこと、渡し切りか立替えかを先に決めておくことが、後の負担を小さくします。
相手の求め方が線を越える場面
貸金業者やその委託を受けた者については、取立ての方法が法律で定められています。債務者や保証人以外の者に対して、代わりに債務を弁済するよう要求すること(貸金業法21条1項7号)、借入れに関する事実その他の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること(同項5号)、居所や連絡先を知らせることなどの協力を断っている人にさらに協力を求めること(同項8号)は、いずれも禁じられています。
債権回収会社についても、債務者等の親族などに対し、債務者等に代わって債務を弁済することをみだりに要求してはならないとされています(債権管理回収業に関する特別措置法18条7項)。家族に支払いを求めること自体が、業種によっては規制の対象として条文に書かれています。
これらは貸金業者や債権回収会社についての規制であり、すべての債権者に同じ条文が適用されるわけではありません。もっとも、深夜の電話が続く、勤務先に繰り返し連絡が入る、その場を離れないといった態様になれば、業種を問わず別の問題として扱われることになります。日時と相手の名前、言われた内容を記録に残しておくと、後の判断材料になります。
本人と連絡が取れない場合にできること
家族であることから当然に代理権が生じるわけではありません
成人した家族の債務について、家族が代わりに条件を決めたり、減額を約束したりすることはできません。交渉の当事者は名義人本人であり、本人からの委任がなければ、こちらが決めたことは本人を拘束しません。弁護士に対応を依頼できるのも本人です。もっとも、家族が状況を整理するために相談すること自体はできますので、何が起きているのか分からない段階で相談先を探しておくことは無駄になりません。
判断能力が下がっている家族について求められた場合
認知症などにより責任能力がないと判断される人の行為について、周囲の家族へ賠償が求められることがあります。最高裁は、法律上の監督義務者にあたらない場合でも、監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情があるときには、監督義務者に準ずる者として責任を問いうるとしたうえで、その判断にあたっては、親族関係の濃淡、同居の有無その他の日常的な接触の程度、財産管理への関与の状況などを総合して考えるべきだとしています(最高裁平成28年3月1日判決)。同居していないという事情は、この判断の材料の一つになります。
後から負担になりやすい対応
次のような対応は、その場は収まっても、後で選べる幅を狭めます。
- 電話口で、とりあえず自分が払うと答えてしまう。
- 家族名義の封書を開け、自分の判断で返事を書いてしまう。
- 名義人の転居先や勤務先を、求められるまま伝えてしまう。
- その場で現金を渡し、何の名目でいくら渡したのかを残さない。
- 裁判所名の入った郵便を、本人に伝えないまま手元に置いておく。
よくあるご質問
同居していない家族あての請求書が届き続けます。放っておいてよいですか
自分に支払義務のない請求であれば、支払わないという判断そのものに問題はありません。ただし、放っておくことと、何も知らないままにしておくことは違います。名義人に届いていない状態が続くと、本人が期限を知らないまま手続が進むことがあります。連絡がつくのであれば、届いている事実だけでも伝えておくとよいでしょう。
「家族なのだから払うのが当然だ」と言われました。断ってもよいのでしょうか
法律上の支払義務がないのであれば、支払わないと答えることはできます。理由を長く説明する必要はなく、自分は契約の当事者ではないこと、本人へ直接連絡してほしいことを伝えれば足ります。その場で結論を出すよう求められた場合は、確認して折り返すと伝えて構いません。
亡くなった家族の名義で請求書が届きました
相続の問題になります。相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、承認するか放棄するかを選ぶこととされています(民法915条1項)。この期間の途中で相続財産から支払ってしまうと、相続財産を処分したものとして単純承認とみなされることがあります(民法921条1号)。負債の全体像が分からない段階では、支払う前に確かめておくことをおすすめします。
まとめ
- 請求書の宛名は差出人が決めるものであり、宛名の住所に届いたことと、そこに住む人へ支払義務があることは別です。
- 自分に義務が生じるのは、保証や相続など、家族関係とは別の根拠がある場合です。
- 保証契約は、書面でしなければ効力を生じません(民法446条2項3項)。
- 日常の家事による連帯責任は夫婦についての規定であり、親子やきょうだいには及びません(民法761条)。
- 国民健康保険料や国民年金保険料は、住民票上の世帯を単位に義務者が定められています(国民健康保険法76条1項、国民年金法88条2項3項)。
- 同居していない家族あての封書を開けることには制約があり、裁判所からの郵便は本人へ伝えることを優先します(刑法133条、民事訴訟法106条1項)。
- 貸金業者や債権回収会社が家族へ支払いを求めることは、規制の対象とされています(貸金業法21条1項7号、債権管理回収業に関する特別措置法18条7項)。
家族名義の請求でお困りの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、金銭の請求や不当な要求に関するご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。届いた書面の内容から、誰に向けられた請求なのか、自分に関わる部分があるのかを整理するところからお手伝いします。
家族なのだから払うべきだと繰り返し求められている方も、名義人本人と連絡が取れないまま書面だけが増えている方も、支払うかどうかを決める前の段階でご相談いただけます。判断がつかないときは、届いた書面をお手元にご用意のうえ、お問い合わせください。


