交際・パパ活相手の妊娠|認知・養育費・中絶同意書の基礎知識
SNSやマッチングアプリで知り合った相手にお金を渡してしまい、詐欺だと気づいたとき、多くの方がまず考えるのは「どうにかして取り戻したい」ということです。その気持ちにつけ込む形で、被害回復をうたう相談先に高額な着手金を支払い、結局ほとんど何も進まなかった——という相談が、各地の弁護士会に寄せられています。これがロマンス詐欺の「二次被害」と呼ばれるものです。
警察庁の統計では、令和7年のSNS型ロマンス詐欺の認知件数は5,645件、被害額は546.4億円で、いずれも前年から増加しています。被害が広がるほど、それを狙う二次被害のリスクも高まります。
この記事では、被害に遭われた方が相談先を選ぶ際に、契約前の段階でご自身で確認できるポイントを整理します。
「二次被害」として何が起きているのか
複数の弁護士会が、同じ趣旨の注意喚起を出しています。要点はおおむね共通しており、次のような状況が問題視されています。
- 回収の見通しについて十分な説明がないまま、被害額に比例した高額な着手金を支払ってしまう
- 契約するまで弁護士本人と一度も話さず、事務職員と称する人物とのやり取りだけで手続きが進む
- 広告に表示された電話番号が、弁護士が登録している連絡先と異なる
- LINEなどでの電子契約を用いて、短時間で契約と着手金の支払いまで進められる
東京弁護士会は、弁護士業務広告の問題例として、架空の取扱事例の掲載、弁護士が1人しかいないのに24時間365日対応と表示すること、これから取り扱う分野を「専門」と表示すること、他の詐欺事案での回収実績をロマンス詐欺で得られたかのように見せることなどを挙げ、業務広告に関する規程(事実に合致しない広告、誤導・誤認のおそれのある広告、誇大または過度な期待を抱かせる広告の禁止)に違反するおそれがあると指摘しています。
一方で同会は、インターネットで大きく広告している弁護士が必ず問題のある弁護士だ、という意味ではないとも述べています。広告の有無そのものではなく、中身と手続きの進め方を見ることが大切です。
なぜ「着手金」が問題になりやすいのか
着手金は、結果にかかわらず、依頼した時点で発生する費用です。回収できてもできなくても原則として返ってきません。だからこそ、回収の見込みと着手金の額が釣り合っているかが重要になります。
ロマンス詐欺は、被害回復が難しい類型とされています。相手の身元が特定できない、口座を凍結しても残高がわずかしか残っていない、他の被害者と分配するため十分な額に届かない、暗号資産での送金は送金先を調べても特定が極めて困難、といった事情が重なるためです。
つまり、支払った費用のほうが最終的に得られる金額を上回る可能性が小さくない案件だといえます。東京弁護士会は、こうした事情を説明しないまま受任することを不適切だとし、高額な着手金を払ったのに成果がないという状態こそが「被害」なのだと整理しています。
第二東京弁護士会も、弁護士職務基本規程29条1項が、受任にあたって事件の見通し・処理の方法・弁護士報酬について適切に説明する義務を定めていること、同条3項が、期待する結果が得られる見込みがないのに見込みがあるように装って受任することを禁じていることを挙げ、見通しと着手金の妥当性について十分な説明を受けたうえで依頼を検討するよう呼びかけています。
なお、弁護士費用は2004年に統一の報酬基準が廃され、各事務所が自由に定めています。一般的な目安としては、着手金は10万円〜30万円程度、あるいは被害額の5〜10%程度、報酬金は回収できた金額の10〜30%程度とする例が多いとされますが、これはあくまで目安です。
「高額だから問題」ではなく、判断の分かれ目は説明にある
着手金が高いこと自体が、ただちに不適切だとは限りません。手間のかかる調査や訴訟を予定していれば、相応の費用がかかることもあります。
判断の分かれ目になるのは、次の3点です。
- 回収の見込みについて、難しい部分も含めて説明があるか。可能性の高い場面と、事実上難しい場面を分けて話してくれるか。
- 着手金の算定根拠が示されるか。何をどこまで行う費用なのか、被害額に連動するならその理由は何か。
- 成果が出なかった場合にどうなるかが、契約前に明示されるか。着手金が戻らないこと自体は通常ですが、その前提が共有されているかが問われます。
「必ず取り戻せる」「全額回収できる」といった表現や、明確な理由を示さずに回収見込みがあると言われる場合は、いったん立ち止まる目安になります。
契約する前に、自分でできる4つの確認
1.弁護士の登録情報と広告の表示を照合する
日本弁護士連合会のウェブサイトには弁護士情報検索があり、氏名から所属弁護士会・登録番号・事務所所在地・登録上の連絡先を確認できます。神奈川県弁護士会は、広告に表示された電話番号が登録上の連絡先と異なるケースを注意すべき状況として挙げています。まず、名前と所属会、連絡先が一致するかを確かめてみてください。
2.契約前に弁護士本人と直接やり取りする
事件の内容を詳しく聴き取ること、見通しを説明すること、着手金の額を決めること、委任契約の内容を決め説明すること——これらは弁護士本人にしかできません。事務職員が見通しや費用を決めているようであれば、適切な進め方とはいえません。可能であれば事務所を訪ね、対面で説明を受けるのが最も確実です。
3.委任契約書の内容をその場で読み込む
契約書に、依頼する業務の範囲、着手金・報酬金の計算方法、実費や日当の扱い、途中で終了した場合の精算、報告の頻度が書かれているかを確認します。電子契約であること自体が問題なのではありませんが、その場で即決させる流れになっていないかは意識してください。
4.急かされたら、いったん持ち帰る
「今日中に契約しないと間に合わない」と言われても、一度持ち帰って家族や別の弁護士に相談する時間を取ることをおすすめします。口座凍結など時間が重要な手続きはありますが、それは金融機関や警察への連絡で先に着手できる部分でもあります。
相談の場で聞いておきたい5つの質問
そのまま使える形で挙げておきます。答えをはぐらかされないかどうか自体が、判断材料になります。
- 私のケースで、回収できる可能性が残っているのはどの部分ですか。逆に、難しいのはどの部分ですか。
- 着手金は何に対する費用で、どのように算定されていますか。
- 回収できなかった場合、費用の総額はいくらになりますか。
- 実際に対応するのはどなたですか。進捗はどのくらいの頻度で報告いただけますか。
- 依頼せずにできること(口座凍結の届出、被害届など)はありますか。
「取り戻します」と持ちかけるのは弁護士だけではない
調査会社や探偵、被害回復をうたう事業者、SNSのダイレクトメッセージで接触してくる相手からの勧誘もみられます。他人の代理人として交渉や返還請求を行えるのは、原則として弁護士(および一定の範囲で司法書士)に限られます。「調査」の範囲を超えて「取り戻す」「交渉する」と持ちかけてくる相手には注意が必要です。
被害者名簿が出回っていることをうかがわせる勧誘や、先に支払った費用を取り戻せると持ちかけて再び費用を求める、いわば二重の二次被害も報告されています。心当たりのない連絡から契約に進むのは避けてください。
すでに支払ってしまった場合
「もう払ってしまった」という場合でも、できることはあります。
- 委任契約書、振込記録、やり取りの履歴を保存する。これがその後の相談の出発点になります。
- 所属弁護士会の市民窓口に相談する。各弁護士会は、弁護士の対応に関する苦情の窓口を設けています。
- 弁護士会の紛議調停を利用する。弁護士と依頼者の間の紛争について、弁護士会が調停を行う手続きです。
- 懲戒の請求。弁護士法上、誰でも所属弁護士会に懲戒の請求ができます。
- 別の弁護士に相談する。支払った費用の返還請求ができる場合もあります。
おわりに
ロマンス詐欺の被害回復は、率直に申し上げて簡単ではありません。だからこそ、「取り戻せる」という言葉ではなく、難しい部分まで説明してくれるかどうかで相談先を見てほしいと考えています。
見通しを聞くだけであれば、費用をかけずにできる相談窓口もあります。まずは手元の記録を整理し、複数の窓口で話を聞いたうえで、依頼するかどうかを判断してください。


