まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
秋は全国的に祭りが多い月ですが、農作業が一段落することや、収穫後ですから経済的にもゆとりがあるからではないでしょうか。
ちなみに全国には約八万の神社があるので、それぞれの神社で収穫に感謝する秋祭りが行われれば、これだけですごい数の祭りが存在することになりますね。
いろいろな意味で10月は神様とのご縁が深い月といえるでしょう。
●諸説ある「神無月」の語源
「マナーうんちく話」で以前にも触れましたが、神無月の「無」には「・・の」の意味があるので、「神無月」は「神の月」という意味があります。
6月は「水無月」ですが、田植えをするにあたり田んぼに水を張るので「水の月」と呼ばれるのと同じ理屈ですね。
一方、全国の神様が出雲に出張されるため不在になるので、神がいなくなる月という説もあります。
したがって八百万の神が集結される出雲地方では「神在月」と呼ばれます。
●では、なぜ出雲大社に出張されるの?
日本最古の文献に記載されている「国譲り神話」に基づくと、全国各地の神様が一年に一度、出雲大社の大国主神のもとに集まるといわれています。
旧暦10月10日に日本海を超え出雲の稲佐海岸に上陸され、そこから約一キロ離れた出雲大社に向かわれ、そこで7日間にわたって会議を行います。
会議の内容は収穫に関する話題もあるようですが、主に「縁結び」が中心です。
社会に存在する様々な人と人とのつながりについて話し合われ、日本の国が明るく、国民が幸せになれるよう、様々なご縁を結んでくださるわけです。
だから今でも出雲大社は「縁結びの神様」として有名です。
●神在月の神事に学ぶ日本の「おもてなし」
ところで島根県の出雲地方では、神在月は大変忙しくなります。
全国から来られた神々をお迎えし、おもてなしをするための神事が沢山ありますね。
東京オリンピック招致委員会の際話題になった日本の「お・も・て・な・し精神」は、これらの神事の中にしっかり表現されていると思います。
恐らく人間が神様をおもてなしするというのは、世界でもあまり例がないのではないでしょうか。
目に見えないモノに誠心誠意、心を込めて接する素晴らしい精神性こそ、日本の誇りであり、次世代に紡いでいきたい貴重な宝だとおもいます。
●「おもてなし」のポイント
長い人生にはお客様をおもてなしする機会は多々ありますが、その際「さりげない心遣い」を大切にしていただきたいものです。
意気込みすぎて、お客様に精神的な負担をかけないよう心掛けて下さいね。
お客様への配慮は大切にしてほしいところですが、度を過ぎても良くないということです。
ちなみに千利休は「叶いたるはよし、叶いたがるはあしし」と説いています。
例えばお客様をおもてなしする時、お客様に喜んでもらいたいという気持ちばかりが先走るのではなく、玄関、トイレ、客室等の掃除を徹底し清潔感を出し、季節の花などをさりげなくあしらい、心地よい空間で、茶菓や酒や料理でもてなしをします。
そしてお帰りの際も、敷地の限界まで出かけて丁寧にお見送りをした結果、お客様と自然に心が通い合って大変喜ばれたというのが理想です。
●SDGSが話題になる中「八百万の神」の存在意義
四季が豊かな日本の自然と大変深い関係にある「八百万の神」の概念は、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」を達成するために、大いに評価されるべきではないでしょうか。
理由は自然に畏敬の念を抱いたり、感謝する考え方こそ、自然保護運動と共鳴することができるからです。
また環境問題等の取り組みにも貢献できるでしょう。
さらに多神教である日本の神道は、異文化や世界のいろいろな宗教とも共存するおおらかな精神を持ち合わせているので、国際社会でも素晴らしい存在になっていると考えます。
ただ残念なことは何度も触れましたが、日本の公立学校では宗教教育も礼節教育も受けられないので、このようなことを理解されてない人が大変多いということです。
ともすればITやAIに頼りがちですが、それらは使い方次第で、悲劇にもなりかねません。
現に現代の戦争兵器はAI技術をフルに活用した大量殺人が可能になっており、多くのとうとう命が失われています。
痛ましい限りです。
だからこそ地味な取り組みですが、日本の、このような精神性を再評価することも大事だということです。