マナーうんちく話2225《夜長月と粋で風流なお月見》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

9月は旧暦では夜が長くなるので「夜長月」、略して「長月」と呼ばれますが、これからは空気中の水蒸気が少なくなり、月の輪郭がくっきりしてくるので、月が綺麗に見える頃になります。
文豪夏目漱石は「アイラブユー」を「月が綺麗ですね」と翻訳したといわれていますが、これはさておき、このような会話は今の日本では聞かれなくなりましたね。
物質的な豊かさや利便性を謳歌している日本ですが、反面、大事なものをどんどん失っていく気がしてなりません。

ちなみに綺麗な月といえば「中秋の名月」が頭に浮かびますが、令和6年は9月17日(火)です。
旧暦では1月から3月が春、4月から6月が夏、そして秋は7月・8月・9月ですから、8月は秋の真ん中になり「中秋」とよばれるわけです。(旧暦の8月は今の9月頃です)

今の新暦に対し「旧暦」は月の満ち欠けをもとにしていますが、昔の人は月が満ちたり、掛けたりするのを見て、死と再生を頭に描いたのでしょうか。
月が満ちているときには前向きな行動に出ることも多いのではないでしょうか。
たとえば私がホテル業界に入ったころにはホテルで結納を執り行う人も多くありました。
そして「結納の儀」の日時を決めるにあたり、大安の日で〇〇湾の満潮の時刻に合わすような決め方があったのを記憶しています。
月の満ち欠けをもとに暦が作られ、それを参考にしながら農作業に取り掛かっていたので、昔の人は今と比較にならないくらい「満月」の行事を大事にしてきたと思います。
小林一茶の《名月を取ってくれろと泣く子かな》の句に読まれているように、大人も子供も月は日本人にとって身近な存在だったようですね。
私も農作業に携わっていますので、中秋の名月には、家で月見団子や畑で採れた野菜、庭に咲いている花を飾り「お月見」をします。
「月見酒」をいただきながら、お月様に収穫の感謝をするわけですね。
恐らく昔の人もそうだと思いますが、そうすることで健康や豊作に恵まれると考えていたのでしょう。
またかぐや姫が登場する「竹取物語」でも、月は不老不死の力を持ち、地球より神聖な場所と捉えられていたようです。

科学が発達したお陰で人類が月に出かける日も間近の様ですが、今の地球を取り巻く環境は最悪です。
人工衛星の破片等の宇宙ゴミや核弾頭の脅威などなど・・・。
私が幼かった時の様に、お月様はいつまでも夢とロマンに満ちた存在であって欲しいもので、軍事競争等に利用してはいけないでしょう。
月の開発もいいかもしれませんが、先ずは地球の平和だと思います。

平安貴族は空の月を見るとともに、池や川の水面、さらに杯に映るいろいろな形の月を鑑賞し、歌を詠み、風流を楽しんだようです。
恐らく当時は、醸造技術はあまり発達していなかったので、酒のアルコール度数も低く、大きめな土器(かわらけ)で作った盃を使用していたと思います。
その盃になみなみと注がれた酒に満月を映して、それを一気に飲み干す。
この上ない粋で風流な月見酒ですね。
今年のお月見は大きめな杯に、月の姿を映して愛でる「月映し(つきうつし)」を楽しんで見られたら如何でしょうか。
日本には四季を愛でながら酒を楽しむ文化が根付いていましたが、私も季節の味覚とともに、「雪見酒」や「花見酒」や「月見酒」を楽しみます。
9月9日の重陽の節句(菊の節句)には「菊酒」をいただきました。

令和の今を生きる私達も、月の饗宴とまでいかなくても、家庭でできる範囲で家族そろって虫の音を楽しみながら、きれいなお月様を見て、秋の風情を感じるのもお勧めです。
感性とはこのような豊かな時間の中で芽生えるのではないでしょうか・・・。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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