マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
日本人は団子が好きですね。
団子は和菓子ですが、「団粉」とも書きます。
くず米や麦や雑穀などを石臼でひいて、丸くして食べるから団子(粉)というわけでしょう。
手間暇がかかりますが、江戸時代は普段の食事にも食べられていたようです。
わたしも昔、大豆を炒って石臼でひいて「きなこ」を作ったことがありますが、今はお手頃価格で簡単に手に入るのでありがたいです。
そして江戸時代の中期くらいになると濃い口醤油や味醂なども登場し、様々な味付けが可能になり、寺社の縁日などでは厄除けとして売られていたとか・・・。
やがて「みたらし団子」のように、団子を竹串に刺して売られるようになり、それが各地でバージョンアップして様々な団子が作られたようです。
花見客でにぎわう桜の名所などで「団子茶屋」がオープンしたのが、容易に想像できます。
ひとえに、江戸時代になり、戦が無くなり、平和な社会が訪れたおかげだと思います。
また江戸時代には「マナーうんちく話」で触れた、「麦湯」や「甘酒」が庶民に受けていたようですが、一人前が80円前後とお手頃価格です。
おそらく串団子も4つか5つ竹串に刺したものが、同じ料金で販売されたのだと思います。
ところで串団子の食べ方ですが、屋台などで竹串に刺した団子を手渡しで戴く場合は、そのまま口をつけて気軽に食べればいいと思います。
では改まった席で、鮮やかな色が魅力的の、春に相応しい3色団子が出されたらどう振舞いますか?
皿に懐紙が敷いてあり、その上に串に刺した3色団子に、紙袋に収めてある黒文字が添えられた状態で出された時を想定して下さい。
先ず黒文字を紙袋から取り出します。
袋は皿の下に置いておきます。
次に黒文字を使って、串から団子を外し、一つずつ外して、刺して食べればいいでしょう。
恐らく一口サイズで食べられる大きさだと思います。
団子を串から外すときには、皿の下に敷かれている懐紙を利用し、それで串をつまんで外す手もあります。
食べ終えたら、黒文字を紙袋に戻し、袋の先を5ミリから10ミリくらいのところで
織り込みます。
この黒文字は既に使用済みですというサインです。
「割り箸」の使用後もそうしますね。
ちなみに黒文字の持ち方ですが、基本的には親指、人差し指、中指の3本の指で挟むように持ち、薬指と小指は添える感覚がいいでしょう。
力がいるようだったらナイフを持つようにしたらいいと思います。
もし黒文字がない場合はどうでしょう?
串をもって直接食べればいいのですが、一番奥の団子がどうしても食べにくくなります。
※黒文字などが添えてない場合は、直接手で召し上がって下さいというサインです。
この場合は串の先を皿につけ、とんとんとたたけば、団子が下に落ちてくる可能性があります。
しかし落ちない場合も当然あります。
串を折るという方法もありますが、上品ではありません。
串を手で持って団子の上側を食べて、次に串を180度回転させ、残りの部分を食べます。
単に食べるだけであればこれでいいです。
ただ春を呼ぶ「3色団子」には、先人のいろいろな思いが込められています。
色には諸説ありますが、一番上のピンク色の団子は春、真ん中の白い団子は冬、一番下の緑の団子は夏を表現しているとか。
春、冬、夏がありますが「秋」はありません。
「あきない」ということで「飽きない」とか「商い」の意味があります。
いくら団子を食べてもおいしいので飽きないとか、商売繁盛の気持ちが込められています。
昔の人はとにかくダジャレが好きですね。
さらに3色の色は桜の開花状況を表現しているという説もあります。
ピンクは蕾の状態で、白色は満開になった状態、そして緑は葉桜という具合です。
加えて赤、白、緑は神様のお好きな色でもあるそうです。
ここにも「マナーうんちく話」で何度も触れた「神人共食」の概念が伺えます。
和食にせよ、和菓子にせよ豊かな精神文化があり、これらを理解しながら頂くと格別な味がしそうですね。