まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
四季が豊かな日本には、季節を楽しむ食べ物が実に多いのがよくわかります。
中でもその季節を表現する色や香りを楽しむ食べ物は魅力的です。
また年中行事にまつわる「行事食」も豊かですね。
年々桜の開花が早くなっている気がしますが、花見シーズンに欠かせないのが「桜餅」でしょう。
今から約300年前、江戸のお菓子屋さんが、隅田川の桜並木に花見に来た大勢の人を見て、考案したのが桜餅の由来です。
有名神社の前で商いをしていたお菓子屋さんが、七五三の頃になると、子連れの参拝客が急増するのを見て「千歳飴」を作って販売したのと似ています。
いつの時代にも頭がいい人はいるものですね。
では花見時の桜餅。
どれくらい売れたかというと、ひとシーズンに約30万個も売れたとか・・・。
当時の江戸の人口が約百万人といわれますから、いかに人気があったのかが理解できます。
花見にかけたのが良かったのでしょうね。
この時期になると桜餅の食べ方のマナーについての質問をよく受けます。
中でも桜の葉っぱを食べるか?否か?の質問が多いのですが、結論から言えば好き好きだと思います。
餅を桜の葉で包む理由ですが、餅を乾燥から守る、そして埃がつかないようにするなどもありますが、大きな理由は、桜の風味を団子に移すことが目的です。
従って桜餅は、香りとともに召し上がって下さい。
塩味が効いた桜の葉っぱと、甘い餡子を、同時に楽しみたければ葉っぱごと食べればいいでしょう。
葉っぱはどうも苦手という人は、葉っぱを取って食べればいいと思います。
ただ桜餅を作る場所も人も目的も、使用する桜の葉っぱも様々です。
つまり固い葉っぱもあれば、柔らかい葉っぱの場合もあります。
食べる人が、状況に応じて、食べるか、食べないかを判断すればいいということです。
ところで日本の和菓子には「黒文字」を添えますが、黒文字の香りを楽しむためです。(黒文字については後日詳しく触れる予定です。)
従って桜餅が、黒文字で切って食べられるようでしたらいいのですが、食べにくいようでしたら手で召し上がってもいいと思います。
黒文字を使用して葉っぱごと食べる場合は、葉脈に沿って縦に二つに切って下さい。
大きさにもよりますが、一口で食べられそうにない場合は、それをさらに二つに切ればいいでしょう。
葉っぱは食べたくない場合は、黒文字で葉っぱを取って下さい。
葉っぱが無ければスムーズに切れます。
ちなみに和菓子を黒文字で切って食べる時は、縦に切って、横に切ります。
また和菓子には日本茶が添えられますが、特に蓋つきのお茶が出されたときには、両手で丁寧に扱ってくださいね。
蓋月のお茶を出されたら、最高のおもてなしを受けていると思ってください。
蓋付きのお茶と、黒文字を添えた桜餅が出されたら、先ずは季節の温かいおもてなしを受けたことへの感謝の言葉を述べ、「頂きます」の挨拶とともに、先に桜餅から頂けばいいでしょう。
※一般的には菓子が先ですが、流派によってはお茶が先の場合もあるようです。
そしてお客様に桜餅を供する場合は、できる限り布製のお絞りと一緒に出してあげて下さい。
桜餅を手で食す場合は、お絞りで手を拭いて食べ、食べ終わったら使用したお絞りは裏返してたたんでください。