まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
正月に里帰りされた歳神様は元日、3が日、松の内、人日の節句(七草の節句)をへて、しだいに人から遠ざかれます。
歳神様が人から離れられたころを見計らって、正月に歳神様が宿っておられた鏡餅を下げ、雑煮やぜんざいなどにして食す風習が「鏡開き」です。
地域により行われる日は異なりますが、一般的には1月11日が多いようです。
●鏡餅をいただく理由
鏡餅は私たちに家内安全、五穀豊穣をもたらし幸運を授けて下さる歳神様の霊力が凝縮されています。
それを下げて頂くということですから、体の中に歳神様のエネルギーを取り込むということになり、そのおかげで今年も元気に、幸せに暮らせるということです。
ちなみに神前挙式で「三三九度」や「親族杯」の儀式を執り行いますが、これも神様にお供えした御神酒を下げ、新郎新婦など参列者が頂くことにより、神様の霊力を身体に取り込むという考えです。
●あえて鏡開きと呼ぶ理由
鏡餅は包丁で切ってはいけません。
歳神様との縁を切ることになるからだといわれています。
また武家社会では切るとか、砕くとか、割るという言葉を嫌いましたので、代わりに末広がりにつながる縁起のいい「鏡開き」になったというわけです。
開運の意味も込められています。
●鏡餅の開き方
鏡餅には歳神様の霊力がやどっているので、刃物は使用しないでください。
木槌でたたいて開けばいいでしょう。
基本的には砕けて小さくなったものまで残さず食すとされています。
食べきれない場合は、しっかり乾燥させて保存し、必要な時に好きなように調理して食べればいいでしょう。
●もともと「雑煮」も「ぜんざい」も神様と縁の深い食べ物
〇「雑煮」は一年の無事を祈願し、主に正月にいただく日本の伝統料理ですが、餅を主な具として、いろいろな具材を煮合わせたことからきております。
大晦日に、その土地で採れた山の幸や海の幸を歳神様にお供えして、そのお下がりをみんなで食べた名残です。
〇「ぜんざい」は、もとは神様のおもてなし料理です。
和風月名では10月は「神無月」ですが出雲地方は「神在月」です。
つまり出雲地方では旧暦10月には全国から神様が集結されるわけですが、その神様をおもてなしするために、小豆を浸した中に餅を入れてお供えしたわけです。これを「神在餅(じんざいもち)」と呼んでいましたが、出雲弁はズーズー弁で、「じんざい」が「ぜんざい」となって全国に伝わったといわれています。
もともと昔の商家では1月11日に蔵開きが行われていたようで、このときは、主と使用人、家族らが一堂に揃って絆を深める貴重な時間になるわけです。
この様な由来を持つ鏡餅ですから、歳神様のパワーをみんなで戴きながら、令和5年の幸運をぜひみんなで祈って下さいね。
以上鏡餅は、作って、飾って、食べてこそ、その意味を成すということです。
ちなみに歳神様は1月15日の「小正月(女正月)」を経て、1月20日の「二十日正月(骨正月)」にそれぞれの場所のお帰りになるとされています。
日本の正月は、12月13日の「松迎え」から1月の20日の「二十日正月」まで実に長いイベントなのですね。