マナーうんちく話461≪手土産の頂き方≫
春の開花ラッシュに先立ち、我が家の庭の「サンシュユ」が見頃を迎えています。
早春に、まだ葉が出る前に花を一面に付けることから「春黄金花」と呼ばれますが、鮮やかな黄色の花びらが冷たい風にそよぐ様子は、コロナ禍でも春を迎えた喜びや、今後の幸運を願って微笑んでくれているようで心が前向きになります。
ところで日本人は世界屈指の贈り物が好きな国民だそうですが、何かと喜びごとが多いこの季節。お祝いを渡す機会も多いと思います。
前回は「祝儀袋の表書」に触れましたが、準備ができたら後は渡すのみ。
改めて「祝儀袋(のし袋)」の渡し方のマナーに触れてみます。
たとえば結婚の御祝い。
本来は結婚式の前日までに新郎・新婦の家に持参して渡すのが正式ですが、新郎・新婦との関係で微妙に変化します。
ただし前日は何かと多忙ですので、できれば1週間前くらいがいいでしょう。
また友人や同僚等の関係では会場で渡すのが一般的です。
いずれにせよ、祝儀袋は袱紗に包み、渡すときに、袱紗を開き、祝儀袋を出して、袱紗をたたんで、その上に祝儀袋を置いて、右回しして、相手側に祝儀袋が正面に来るよう渡します。
渡すときには、袱紗ごとでも、祝儀袋だけでもいいと思います。
両手で渡してくださいね。
そしてお祝いの言葉を添えて下さい。
袱紗を回す際は、左回しは不祝儀になるので、祝儀袋は右回しでお願いします。
ちなみに袱紗に包む目的は、祝儀袋を汚れや折れ目などがつかないようにするためです。
さらに相手に礼を尽くす目的もあります。
日本の礼儀作法は大変奥が深く、世界に誇る素晴らしい文化だと思いますが、最近はだれもが作法通りというわけではありません。
便利で物が豊かになるほど、礼儀・作法が遠のいていく気がしてなりません。
大切なことは心を込めて、祝いの言葉と共に、両手で丁寧に渡すことだと思います。
私はホテルで結婚式の仕事についていた時に、祝儀をいただくことが多々ありました。
祝儀を受け取らない会場もあれば、ありがたく頂く会場もあるわけですが、当時、私は戴く派でした。
そして、スタッフ全員で平等に恩恵に預かるわけです。
祝儀は挙式披露宴の前にいただくこともあれば、お披楽喜後の場合もあります。
殆どの場合祝儀袋に入れた状態で戴くケースが多いのですが、封筒やポチ袋で戴くこともありました。
その際の表書きは様々です。
戴くタイミングも何十年も記憶に残るようなケースもあります。
昔、昔の出来事ですが、披露宴のキャプテンとして、新郎・新婦を高砂の席に先導していた時に、大勢のお客様が見ている前で渡されたケースがありました。
突然だったので慌てた記憶があります。
しかし大勢のお客様の前で無下にお断りしたら、せっかく渡してくださったお客様が恥をかくことになるかもしれません。
満身の笑顔で、両手で丁寧に受け取り、深々と頭を下げ、そして戴いた祝儀袋を両手で高々と上げて皆様に披露しました。
拍手喝采で、その後披露宴も実に楽しく進行しました。
加えて現在は講演会講師ですから、講演終了後「謝礼」をいただくことが多くあります。
謝礼の渡され方は実に様々です。
表書きもしかりです。
後日振り込みの場合もあれば、講演終了後、別室で祝儀袋や白い封筒や茶封筒等で渡される場合もあります。
封筒の場合はその場で領収書を書くケースが殆どですが、紅白の祝儀袋で戴くときには領収書を書くことは殆どありません。
殆どないということは、たまに領収書を書くこともあるということです。
表書きも「御礼」と記したものもあれば、ずばり「謝金」と書かれたものもあり、「感謝」も珍しくありません。
いずれにせよ、講演終了後、代表の方や幹事の方から渡されるのはいいのですが、たまに講演終了時に、参加者の前で、「謝礼贈呈式」などがあるときがあります。
これは何度経験しても恥ずかしい気持ちになりますが、笑顔で丁寧に受け取るように心がけています。
祝儀袋も実に様々です。
やはり金額に応じた祝儀袋がお勧めです。
水引も大切なポイントです。
「蝶結び」がふさわしいのですが、結構「結びきり」のもありました。
時として最高位の水引の結び方である「あわじ結び」もあります。
ある婦人会主催の「冠婚葬祭のマナー」講演の時でした。
講演終了時に謝金贈呈式があり、非常に豪華な祝儀袋で大勢の参加者の前で戴いたことがありました。
5万円から10万円の金額用の祝儀袋で、見栄えはとても良かったですが、中身は3000円でした。
たまたま贈呈式が終わった直後に、参加者からせっかくの機会ですから「正しい贈呈の仕方」を教えて頂きたいと申し出がありました。
このような場合は時間をいただき、本音で、いろいろと説明します。
会場は大爆笑の雰囲気になり、その後、次から次へと質問が出て、2時間の講演会が4時間経過したケースでした。
以上のように必ずしもマナー教本通りにはいきません。
むしろ私が経験した限りでは、作法通りにいくことは非常に少ないのが現実だと思います。もてなしの仕方しかりです。
マナーに精通されていない限り無理だと思います。
ただ祝儀や謝金を戴く側からすれば、両手で、お祝いや感謝の言葉を添えて頂くのが一番うれしいと感じます。
やはり何事も杓子定規より《心をこめる》ということがいいですね。
最後にこのような素晴らしい文化が、度重なる違法接待の精で年々影を薄めていくことが心配です。
次回に詳しく触れてみます。
是非お付き合いください。