マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
大暑、極暑、酷暑、猛暑、炎暑、盛暑、激暑、厳暑。
「うだるような暑さ」「くらくらするような暑さ」「ムッとするような暖かさ」「灼熱の太陽」「盛夏の候」・・・。
日本には暑さを表現する言葉が多く存在しますが、日本語の大きな特徴でしょうか。
ちなみにわたしも畑仕事を少しするので、暑さや寒さにはある程度慣れていますが、今年ばかりは、日中畑に出るのが「怖いような暑さ」でした。
しかし日本は四季の国ですから、厳しい暑さはいつまでも続きません。
8月23日は二十四節気の一つ「処暑」です。
暑さが峠を越して和らいでくる頃という意味ですが、私が住んでいる地域では朝夕の涼しさが実感できるようになってきました。
そして近くの田んぼでは赤とんぼが飛び交っています。
身体が赤いトンボを総称して「赤とんぼ」と呼びますが、この色はまさに実りの秋を連想させる色だと思います。
今年の夏は新型コロナに加え猛暑、激暑、炎暑、酷暑などのすべての言葉が当てはまるような夏でしたが、やっとそれも収まる気配を見せ、青々とした稲の絨毯の上を、赤とんぼがすいすいと飛ぶ姿をみると、ほっとした安らぎを覚えます。
また夜更けになると、庭先で泣き出す松虫・鈴虫の優美な声に癒されます。
平安貴族の間では、籠に鳴く虫を入れて、美しい音色を楽しむ遊びが流行したそうですが、江戸時代になると「虫売り」といわれる商いが誕生しています。
感性豊かな日本人ならではの風流の楽しみ方ですね。
そしてこの時期は各地で「秋祭り」の準備が始まる頃でもあります。
春は豊作祈願、夏は邪気払いを目的とした祭りが多いのに対して、秋祭りは豊作を神様に感謝する行事です。
従って殆どの国民が米を主食にしている日本人にとっては、とても大切な年中行事の一つといえるでしょう。
収穫を感謝する祭りですから、春と夏に開催される祭りより一風変わったところがありますが、その心は大昔から脈々と伝えられているわけですね。
実は秋祭りには、収穫を感謝する目的以外にも、「田の神様」をお見送りする儀式という目的もあります。
春になったら、村人たちは桜の開花と共に「山の神様」を迎えに山に入り、桜の木を囲んで山の神様と共にご馳走を共にします。神人共食です。
もちろん神様のお好きな酒も用意しています。
こうして山の神様に麓に降りていただき「田の神様」になっていただき、これから始まる田植えを見届けていただき、豊作を祈願するわけです。
そのおかげで秋に豊作になれば、秋祭りを開催し田の神様に感謝するとともに、田の神様に再び山にお帰りいただきます。そして「山の神様」になって、子孫を見守ってくださるわけです。だからにぎやかにお見送りします。
例えば「神輿」を担ぎますが、その際「わっしょい・わっしょい」と掛け声をかけます。
聖徳太子が十七条の憲法を制定した時、その冒頭で「和を以て貴しとなす」と説かれましたが、「わっしょい」の意味は、まさのその「和を背負う」ということです。
マナーの根源を成す要素の一つに「感謝」があります。
加えて「和」は古来日本人が最も大切にし続けてきたことです。
だから日本人にとって秋祭りは本当に大切な行事と言えます。
最近は超高齢化、過疎化等により日本の祭りが、次第に活気が失せていく中、今年は新型コロナのせいで、祭りそのものの開催が危ぶまれています。
せめて「感謝の心」や「和する気持ち」を大切にしていきたいものです。
そしてこのような素晴らしい文化を有する日本を誇りに思いたいですね。