マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
お盆は祖先の霊をお迎えし、おもてなしして、再びお見送りする一連の行事で、お彼岸と並んで大切な仏教行事の一つです。
このような仏説があります。
釈迦の弟子である目連の亡くなったお母さんが、飢えや渇きに苦しむ餓鬼道に落ち、逆さまにつるされ苦しんでいました。
目連はなんとか救いたいと思い師に教えを請いました。
そして師の教えに従って7月15日に供養したわけですが、これがお盆の行事の始まりだといわれています。
お寺では施餓鬼供養が営なわれ、祖先の追善供養も行われます。
ちなみに「追善供養」とは生きている人が故人に対し供養を行うことです。
生きている人が行う善行(善い行い)をもって、故人の善行となる。
それがまた自分に返ってくるという考えです。
そしてそれぞれの家では祖先の霊をお迎えし、おもてなしをします。
おもてなしには入念な準備が必要です。
まず「先祖棚」「精霊棚」といわれる「盆棚」を作ります。
仏壇があればその前に小さな机を用意して、シキミを備え、香炉、位牌を置きます。仏壇の戸は締めます。
さらに、ご先祖の霊は馬に乗ってやってきて、牛に荷物を背負わせて帰られるという言い伝えがあるので、これに合わせてナスビで牛を、キュウリで馬を作ります。
夏野菜や果物も備えて下さい。
それに盆提灯があればいいですね。
ほおづきを盆棚につるしてもいいでしょう。
また正月には門松を立て先祖の「道しるべ」としますが、お盆には13日に玄関で「迎え火」を焚いて、先祖の霊が迷うことなく家に帰られるようにします。
お盆は「餓鬼道に落ちた人を救った」という仏教の物語がもとになっている行事ですから、とにかくごちそうをしっかりお供えしてくださいね。
宗派によっては棚や迎え火などをしない宗派もあります。
ところで日本には昔から人が亡くなって長い時間が経過したら、「祖霊神」の仲間入りをするという考えがあります。
期間は33年間といわれていますが、亡くなって33年経過したら、近くの山から子孫の暮らしを見守って下さるわけです。
そして村人は、田植えが始まる季節には「田の神」としてお迎えし、秋になって豊作を見届けたら「山の神」として丁寧にお見送りします。
また正月には「歳神様」としてお迎えするわけですが、数ある年中行事の中でもこれらは最も大切な行事であり、お盆もしかりです。
目に見えないご先祖の霊と真摯に向き合い、手間暇かけて、裏表のないおもてなしをしてきたわけです。
日本のおもてなしがなぜ世界的に有名になったかというと、物質的にも、精神的にも、見返りを求めず、真心を込めてしてきたからです。
今はおもてなしの言葉が氾濫していますが、そのほとんどが営利目的です。
勿論悪いことではありませんが、「おもてなし」の言葉を使用する限りは、先人の心意気を理解し、心を込めて頂きたいものです。
ちなみに「盆踊り」は夏のビッグイベントになっていますが、元は盆に里帰りした霊をもてなすためのもので、お寺の境内で開催されたようです。
今はテンポの速い曲ですが、昔は何となく哀愁が漂うような曲だったわけです。
江戸時代になると、娯楽性が強くなり、盆踊りは当時の若者の「合コン」の場になったとか・・・。