マナーうんちく話1943《意外に理解されていない「ライス」をフォーク・ナイフで食す作法》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:洋食のテーブルマナー

日本は瑞々しく、美しい稲穂が実る国だから「瑞穂の国」と呼ばれますが、すでに縄文時代には米が作られていたとか・・・。

そして「水田」が整備され、日本で稲作が定着するわけですが、「和を尊び何事も共同して行う」いわゆる「和の精神文化」が養われてくるわけですね。

さらに元禄時代に入ると次第に白米飯の常食が定着してくるようになります。
栄養バランスがよく、栄養価が高く、保存性もすぐれているので、江戸に多かった力仕事をする職人にはもってこいの食べ物だったのでしょう。

ただ「不死の霊薬」とも呼ばれた白いご飯は簡単には口にできません。

明治時代に当時の帝国海軍が「海軍に入隊すれば白いご飯が腹いっぱい食べられる」という名目で、水兵を募集したという話があります。
物が貧しかった時代ですから、白いご飯はそれだけ魅力的だったわけです。

また明治時代になって欧米諸国から洋食文化が入ってきますが、フォークやナイフの食べ方が日本人にも新たな「食法」として根付き、現在に至ります。

「ライスにしますか、パンにしますか?」。
ホテルのレストランで勤務していた時、このような質問をお客様にしてきましたが、皆様はどちらのタイプでしょうか?

圧倒的に「ライス」と答える人が多いのがここ数十年の傾向です。

では、平皿に美しく盛られた「ライス」をフォークとナイフでどう食しますか?

【白いご飯を主食にするのはアジア特有の文化】
アダム・スミスが「国富論」の中でコメの重要性を説いていますが、恐らく世界中で100を超える国でコメが栽培されていると思います。

ただコメを主食にするのはアジアの文化で、西洋料理ではライスは野菜料理として扱われます。従ってフルコースにはライスはメニューに存在しません。つまりフォークとナイフでライスを食べるマナーは確立されていないということです。

【フランス式かイギリス式か?自分スタイルの確立を!】
では西洋マナーにないものをあえてフォークとナイフで頂く際、どのように振舞うか?ですが、「イギリス式」か「フランス式」かになります。

ちなみに日本の帝国海軍はイギリス式のテーブルマナーを採用しましたが、イギリススタイルの場合は、左手にフォークを持ち、フォークの背にライスをのせていただきます。一方帝国陸軍が採用したフランス・アメリカ式マナーでは、右手にフォークを持ち替え、フォークですくっていただきます。

食べ易いのはどちらか、自分流を確立させ、自信持っていただくことをお勧めします。ただエレガントさにこだわるのであればイギリス式がいいかも・・・。

食べ終わった後のフォークとナイフの置き方は、イギリス式はお皿に対して縦(6時の位置)に、フランスやイタリア式は斜め横(5時の位置)、そしてアメリカ式は真横(3時の位置)です。刃先は必ず手前(内側)に向けて下さいね。

【美しく頂くポイントは姿勢と食べ方】
また洋食は和食のように器を持ちません。前かがみになって、顔をお皿に近づけるのも感心しません。姿勢をただし、顔を下に傾ける程度で、フォークでライスを口に運んでください。

エビフライやステーキのセットにつく白いライスを、フォーク・ナイフを使用しての食べ方はマナーの本によってまちまちで、どれが正解で、どれが不正解とは言えません。

いろいろな国の食文化が明治以降日本に伝わり、色々な食べ方があるからです。
「自分はどこの国のスタイルで食べるから、この食べ方」という、自分流を確立されたらいいでしょう。

最後に「ライスにしますか、パンにしますか?」の問いに「ライス」とか「パン」と答える人が結構見受けられます。これは単に単語だけで会話ではありません。

「パンでお願いします」とか「ライスにしてください」とか、相手の目を見てきちんと笑顔で答えて下さいね。本当に大切なマナーはここです。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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